同じフォルムのOLが湧き出る19時×丸の内南口。独身貴族のお眼鏡にかなう女子はいるのか?

同じフォルムのOLが湧き出る19時×丸の内南口。独身貴族のお眼鏡にかなう女子はいるのか?

丸の内勤務の証券マン・江森(通称:えもりん)、30歳。おとめ座。

外見はプーさんそっくり、愛されキャラな男。好きな食べ物はハチミツ...ではなく、『ウルフギャング』のプライムステーキ。

港区生まれ、港区育ち、育ちのいい奴らは皆トモダチ。生まれながらに勝ち組な彼は、日本を代表するエリート・サラリーマンとして独身生活を謳歌している。

イケてるはずなのに拗らせ気味な男・えもりんは、恋人探しに精を出している。だが、デートにことごとく惨敗し、さらにイケメン商社マンの親友・ハルの結婚報告&説教をうける。

そして、強気な美女・まゆこの涙に心揺れたものの、彼女は恋人とヨリを戻してしまった。



―まゆちゃん、彼と仲直りしたのか......。

江森は自宅のソファで、まゆこが抱いていたダッフィー人形を切なく見つめていた。

つい先日、まゆこはここにいたのに。

別に何をしたワケでもないが、彼女は部屋にやってきて、泣いたり笑ったり、いつになく自然な姿を見せ、他の男の元へ戻って行った。

あの日は、落ち込んだまゆこを励ますのに必死だった。その甲斐あって、彼女は立ち直ったのだ。

それなのに江森はあれ以来、胸が沸々と泡立つような苦い思いを抱えている。

何もヤル気が起きず、会社から自宅に直帰し、UberEATSで頼んだ『筋肉食堂』の塩麴弁当をチマチマと突きながらテレビを眺めているだけだ。

―このアバンチュールの季節に、ボクは一体、何してるんだろう......。

世間は夏真っ盛り。散らかった部屋のソファに一体化するほどダラしなく過ごす自分が情けないが、やはり身体に力が入らない。

すると、ブルブルとスマホが振動しているのに気づく。確認するのも面倒だが、ノソノソと手を伸ばしてみる。

「...おう、久しぶり。今、何してんの?」

相手は、“薄っぺらい”と憐れまれて以来、ちょっぴり気まずくなっていたハルだった。


イケメン商社マンのハルが、江森に歩み寄る...?

“フィードバック・イズ・ギフト”。男の友情に、乾杯


「...この前は言い過ぎたよな。悪かったよ」

『大衆酒場 山忠』に到着するなり、ハルは拗ねたような顔でボソッと謝罪した。

ここは麻布十番という派手な場所にありながら、昔ながらの庶民的な雰囲気と価格を守り続けている、実に良心的な酒場だ。

料理の質も高く、カウンターの上にずらりと並ぶ大皿料理の匂いと適度に人でガヤガヤと賑わった店内に溶け込むと、気持ちがホッコリと落ち着く。



「えもりんてさ、実は打たれ弱いじゃん。気にしてんじゃないかなぁと思ってさ」

傍若無人で自由気ままなハルも、意外に自分のことを気にしていたのだろうか。目を合わさずに黙々と刺身を口に運び続けるハルを見ていると、照れ臭いような嬉しさが込み上げてくる。

「そんなの、全然気にしてないぜ。むしろ、“フィードバック・イズ・ギフト”だろ。ハルの意見は貴重だからな」

江森が言うと、ハルは返事の代わりに、冷えたビールのジョッキを掲げた。男の友情に乾杯だ。

「それよりハル、お前の結婚式はいつ?」

「んー、まだ考えてないけど、プロポーズはちゃんとやらないとな...。えもりん、バラの安い店知らない?100本買わなきゃいけないだろー」

恥ずかしそうにニヤけて“プロポーズ”なんて言葉を口にする悪友に、江森は平静を装いながらも小さな感動を覚える。

あれほどチャラチャラと女をとっかえひっかえしていた男が、覚悟を決めた途端に“100本のバラ”なんてロマンチックなことを言い出したのだ。

「ハル、そこはケチるなよ。どうせなら『ニコライバーグマン』でプロポーズ用の花束の相談して来いよ。一生に一度だろ」

熱々の唐揚げを頬張りながら、江森は改めてこのイケメンの親友を誇らしく思った。



先日まゆこともハルの結婚の話題になったが、相手は総合職としてバリバリ働く2つ年下の後輩だそうだ。

外見は派手ではないが、ハルと同じく帰国子女で、サバサバした真面目なタイプの女の子らしい。

―ハルったら、最後にいい決断したわよ。本当に要領のいい男ね。

毒舌のまゆこがそんな評価を下したのだから、きっとイイ子なのだろう。

―ボクも、やっぱり堅実にいこうかな。堅実な女性と言えば、やっぱり...。

江森はハルと解散した後、損保OLの奈央に久しぶりにLINEを送った。


ハルを見習い、江森は無難な女とのデートを再度試みるが...?

女はやっぱり、堅実が一番なのか...?


「江森さん、お待たせしました!」

平日の19時。仕事を早めに切り上げ、東京駅の丸の内南口の待合せ場所に向かった。奈央に真正面から急に話しかけられたとき、江森は思わず「うぉっ」と驚いた。

ずっとその方向を眺めていたはずなのに、目の前で話しかけられるまで、奈央の姿は見事に目に入らなかったのだ。

「久しぶり、奈央ちゃん。お、おつかれ...」

白い光沢のあるブラウスに、黒の膝丈のスカート。身長は160cm弱だろうか、髪は適度に明るい栗色で適度な長さに切り揃えられている。

要は、同じようなフォルムの女が丸の内の南口に大量に溢れていて、奈央はそこに完全に埋もれていたのだ。言っちゃ悪いが、まさに10人並みの丸の内OLの典型例である。



“フィードバック・イズ・ギフト”なんて、ハルの前では虚勢を張ってみたものの、やはり自分大好きで理想が高く面食いな江森は、その無難さに早速引いてしまう。

「じゃあ、行こうか」

それでも江森はお得意のプーさんスマイルを顔に浮かべ、奈央を紳士にエスコートする。

今宵は、『丸の内 焼鳥 瀬尾/東京ステーションホテル』を予約した。東京駅のすぐそばでありながら、喧騒は全く感じさせない落ち着いた雰囲気の店だ。

「焼鳥じゃ美人CAは釣れない」なんてまゆこには言われたが、美味くてお洒落でアクセスも良い、三拍子揃った焼鳥屋である。



しかし奈央との会話は、やはりどうしても上手く盛り上がらないし、正直テンションも上がらない。

笑いをとろうとしても、ちょこっと仕事の愚痴など混ぜて同情を引こうとしても、奈央は一貫してニコニコと微笑み受け身な態度で、会話のキャッチボールが上手く続かないのだ。

―なんでだ?ボクがこんなに頑張ってるのに、なぜ盛り上がらない...?!

焦りで額とシャツの中にダラダラと汗をかき始めた頃、しかし奈央は、突然モジモジと何か言いたげな仕草を見せた。

「あの...江森さんて......」

少し恥じらいながら、しかし彼女はなかなか本題を切り出さない。

「...?どしたの、奈央ちゃん?」

「江森さんて、今、他にデートしてる人とか、好きな人とかいるんですか...?」

「...え?」

その突拍子もない発言に、江森はひどく衝撃をうける。

―なぜに今、このタイミングで...?

汗がさらに吹き出し、何と答えていいのやら、あたふたと動揺してしまう。

奈央が自分に好意を持っているだろうことは前々から分かっている。“上手くやる”ならば、ここで真剣ぽく、こちらも気を持たせるのが正解だろう。

しかし“好きな人”と言われた瞬間、江森の頭に鮮明に蘇ったのは、まゆこの顔だった。

「今は、別に...」

完全に微妙過ぎる回答をしてしまった。奈央も「そうですか」と、しょげた顔で、二人の雰囲気はさらに悪化している。

江森は気まずさを紛らわすために、一瞬スマホを手に取った。するとそこには、まゆこから何件も着信があり、LINEも届いていた。

―えもりん、すぐ会いたいの。なるべく早く連絡ちょうだい。

その後、まゆこの元へ早急に駆けつけるまでの記憶は、なぜかすっぽりと抜けている。

どうやって奈央と解散したのか、何と言い訳したのか、悪いが全く覚えていないのだ。

しかし江森は、それほど必死に行動してしまう自分に、不思議な高揚感を抱いてもいた。


▶NEXT:8月29日 火曜更新予定
まゆこの呼び出しに必死で応えた江森。彼女に何が起きたのか...?


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