年内婚約 2017:紳士で真面目な外銀男と、恋の予感。“超優良物件”なんてウマい話はあるのか?

年内婚約 2017:紳士で真面目な外銀男と、恋の予感。“超優良物件”なんてウマい話はあるのか?

―私、年内に婚約するー

都心で煌びやかな生活を送る麻里・28歳は、ある日突然、こんな決意を固めた。

というのも、麻里は気づいてしまったのだ。

“女は30歳過ぎてからが魅力的?近年、女の賞味期限はどんどん伸びている?”

そんなの、絶対にウソである。

女の市場価値を冷静に受け止めれば、20代で結婚した方が絶対お得に決まっている。

掲げた目標は“今年中にプロポーズされる”こと。3年間をヤバい元彼に費やしてしまった女の本気の婚活が、今、はじまる。



「肩甲骨を大きく動かして、身体の代謝をあげていきましょう...」

麻布十番の溶岩浴ヨガスタジオで、大量に流れる汗を拭いながら、麻里は心地よい爽快感に浸っていた。

年内婚約という目標を掲げたため、毎晩のようにお食事会やらデートで外食が続いているが、今日のように予定のない休日の昼間は、ヨガを2レッスン受けてデトックスすると決めている。

鏡の近くのスペースを陣取り、麻里はスポーツブラにレギンス姿の自分の身体を念入りにチェックする。

モデル並みのスタイルとは言わないが、一般人としてはかなり上澄みの体型を保っているはずだ。ヨガでむくみはすっかり取れ、手足ウエストが女性らしいイイ感じのラインを描いている。

大量に発汗したことで、肌艶の具合も抜群だ。すっぴんでこれだけ肌の美しい28歳の女も珍しいのではないだろうか。

決して、自惚れているわけではない。

実際に麻里は、先週は計8回も出会いの場に赴き、10人もの男たちから誘いを受けていた。


恋愛市場において、余裕の勝ち組。麻里の今宵のデート相手は...?

いつでも見せられる身体をキープ。婚活女の基本中の基本


「そのメンズのラインナップだったら、デートするなら浩一さんと和也くんがいいんじゃない?他は次のお食事会に繋げるとか、飲み友達にしておくのが良さそう」

「さすが、みゆき。私も全く同じこと思ってた」

ヨガレッスンのあと、麻里は親友のみゆきと『クリスプ・サラダワークス』にて、ここ最近出会った男たちの品評会をしていた。

ボリュームたっぷりの色鮮やかなサラダ越しに、女のおしゃべりは止まらない。

女同士の食事は、なるべくヘルシーなものと決めている。特にここのサラダは、30種類以上のトッピングから自分好みの具材や味を組み立てられ、美容に敏感な女にとっては必須の店である。



男性と一緒のときはお酒も飲むし、カロリーなんか気にせず美味しいものを心置きなく食べたい。

華奢な女が意外に食欲旺盛というのは男性の評価も比較的高くなるから、こうして裏で全体量を調整するのは基本中の基本である。

婚活に本気の女は、いつでも見せられる身体をキープしておかなければならないのだ。

「特に浩一さんなんて、超優良物件じゃない?33歳、外銀IBDのディレクター。ガツガツしてなくて品も良かったし、港区婚活市場の逸材だわ。さっそく食事に誘われるなんて、さすが麻里」

みゆきの賛辞に、麻里はついヘラヘラとニヤけてしまう。

浮気・束縛癖のある浮世離れしたバツイチの元彼に3年もの時間を費やしてしまったが、恋愛マーケットに戻ってさえしまえば、自分はまだまだ余裕で勝ち組なのだ。

親友のみゆきも某大手弁護士事務所の秘書をしていて、麻里と同じく年内婚約の目標を掲げている。女子アナっぽい雰囲気の正統派の美人で、かつ頭の回転が速く、男心を転がすスキルに長けた女だ。

麻里も外資系メーカーの社長秘書をしていることもあり、二人揃うと男性ウケはやたらと良い。

イイ男と出会うために必須なのは、自分と同レベルの、一緒にいれば何倍もの相乗効果を発揮してくれる女友達の存在と言っても過言でないと、最近痛感している。

「まぁ、浩一さんは悪くないわよね。和也くんとも、来週平日に約束しておいた」

和也くんというのは、慶応幼稚舎出身の広告代理店の営業マンである。同い年で、ジャニーズ系のイケメンだった。

―楽勝―

この二文字が、頭の中にドンと浮かぶ。

食事会でもホームパーティでも、28歳の美しい女が二人でフラッと立ち寄れば、確実にその場の男たちの視線は麻里たちに集中し、何かしらのお誘いの声がかかる。

みゆきも今夜はアパレル系の経営者とディナーに行くという。

二人はお互いの健闘を祈り、レモネードで乾杯した。


超優良物件の外銀男。好印象しか抱かないデートだが...?

西麻布から麻布十番まで、ピンヒールで夜散歩に応じた意味


「麻里ちゃん、今日は忙しい中、時間を作ってくれてありがとう」

西麻布の『エルバ・ダ・ナカヒガシ』のカウンター席に案内されると、浩一は笑顔で麻里を迎えた。

目立つイケメンではないが、顔の造りは癖がなく、高い鼻筋と綺麗な歯並びは前回初めて会ったときも好印象だった。

ネイビーの麻のシャツにジーンズという私服もシンプルで品が良く、程よく落ち着いた大人の雰囲気がある。

「こちらこそ、ありがとうございます。このお店、前から気になってたんです」

京都の名店『草喰 なかひがし』の出身のシェフがオープンしたこの店は、野菜がたっぷり使われるイタリアンとして、グルメに敏感な女心をくすぐる話題のレストランだ。

港区を我が物顔でハイエナの如く練り歩く外銀男(そういう男は散々見てきた)のような浮ついた気配はないのに、初回のデートでこんな店を指定するなんて、浩一はかなりセンスが良い。

みゆきの言う通り、彼は港区婚活市場の逸材かもしれない。

「麻里ちゃんみたいな素敵な女性と週末に食事ができるなんて、僕はラッキーだな」

―うふふ。やっぱり楽勝...

人気店の薄暗いカウンター席で、市場価値の高い男が照れながら自分を褒め称えるのを聞くのは、麻里にとっても良き週末の過ごし方である。



浩一は特別に話が面白かったりトーク力が高いわけではないが、紳士的な気遣いと、麻里の目をじっと見つめて話を聞く姿勢に人柄の良さが滲みでていて、初デートは想像以上に楽しかった。

食事の間、彼は何度も「麻里ちゃんのことをもっと知りたい」と言い、デザートが終わる頃には、二人の間にはほんわかと温かな空気が流れていた。

「麻里ちゃん、麻布十番に住んでるんだよね。もう一軒誘いたいと思ったんだけど、夜風も気持ちいいし、良ければ散歩がてら家の方に送っていってもいいかな。もちろん、送るだけ」

―え?十番まで、歩き...?

麻里はジミーチュウのピンヒールにチラリと目をやり、一瞬考える。西麻布から十番まで、歩けば20-30分はかかるだろう。通常であれば、当然タクシーで送ってもらう意外あり得ない。

しかし、浩一はおそらく純粋にロマンチストで、本気で麻里と夜の散歩を楽しみたいと思っている風である。年内婚約と決めたからには、多少の労力は惜しむべからずだ。

「ぜひ。夜のお散歩なんて、久しぶりです」

麻里は瞬時に頭の中で損得計算を済ませ、とびきりの笑顔で散歩オファーに応じた。

実際、浩一との夜散歩はかなり新鮮で、青春時代のような甘酸っぱさがあった。最後にはそっと手を握られたりして、二人は恥ずかし気に微笑み合いながら、別れるときは名残惜しさを感じたくらいだ。

しかし、帰宅後に若干の靴擦れに絆創膏を貼り、淡く芽生えそうな恋心に身を委ねていた麻里は、酷な真実を知ることになる。

―麻里、まだデート中?緊急だから取り急ぎ。浩一さん、既婚者よ。しかも二人の子持ち。早急に帰宅してー

「...は?」

みゆきからのLINEの衝撃の大きさに、麻里は暫くの間、時が止まったように動けなかった。


▶NEXT:8月27日 日曜更新予定
外銀男・浩一の罠にもめげず、広告マンの春樹とのデートに赴く麻里だが...?


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