青田買いのスゝメ:結婚に必死な一般職。そう言ってる間に、良い男を取られる総合職女子

青田買いのスゝメ:結婚に必死な一般職。そう言ってる間に、良い男を取られる総合職女子

結婚に適した男は、30歳までに刈り取られる。

電車で見かけた素敵な男は大抵、左手薬指に指輪がついている。

会社内を見渡しても、将来有望な男は30歳までに結婚している。

そんな現実に気づいたのが、大手不動産会社勤務の奈々子・28歳。

会社の先輩・聡美に結婚への焦りを相談すると、「青田買い」を勧められたのだった。



「青田買い、すれば良いのよ」

奈々子は、ティーカップを落としそうになった。

「青田買い、ですか・・?」

聡美は、さも当然、何か問題でも?という顔でコクリと頷いた。

「良い男は、30歳までには売り切れてることに気づいたんでしょう?それが事実よ。だったら解決策は、余り物から選ぶか青田買いするか、どちらかしかないと思うんだけど」

「はぁ・・・」

事実だ、解決策だ、と理路整然と話す聡美に、奈々子は驚いていた。

「青田買いっていうのは、将来有望な男を見極めて、市場価値が上がる前に付き合っておくこと。で、市場価値が上がり始めたら結婚するの。牧田くんも、奥さんは大学時代からの付き合いって言ってたじゃない?奥さん、青田買い成功だと思うわ」

奈々子が、返す言葉を探しながら目を丸くしていると、聡美はさらに続けた。

「35歳を過ぎると、いかにも青田買いって感じで周りからの視線も痛いだろうから、奈々子ちゃん、今すぐ動くべきよ」

「でも、結婚するしか道がない一般職でもないので、そんなにガツガツいくのは・・・」

奈々子が控えめに本音を吐露するが、聡美にぴしゃりと一喝された。

「そんなこと言ってるあいだに、どんどん売れちゃうわよ」


聡美からのアドバイスにギクリ。そのわけとは・・・?

中途半端なプライドと経済的余裕が邪魔


奈々子は、婚活に必死になるのは、自分のお給料だけでは生きていけない女性達だけだと思っていた。

彼女達にとって結婚は生存戦略だから、そうなるのも理解出来ると憐れんでさえいた。

つまり、自分には関係のない話だと。

それに加えて、大した給料でもないのに微妙な店で「おごるよ」と偉そうに会計したり、「俺が養う」なんて言う男はごめんだ。

そういう男達にはわざとボーナスの話を出したりして、一撃食らわせてやることもあった。

あなたとは釣り合わない、そう教えるために。

そんな奈々子を見透かしたのか、聡美が畳み掛けた。

「総合職女子って、中途半端なプライドと経済的余裕が邪魔するのよね。男性にも一般職の女性にも上から目線っていうか。手遅れにならないようにね」

奈々子はその言葉を聞いて、思わずギクリとしてしまうのだった。



翌日のランチタイム。奈々子は明日香を『バードランド丸の内』に呼び出し、聡美から聞いた話を報告した。

すると明日香は、「聡美さん、さすがだわ」とつぶやいた。

明日香は、先日行われた役員会議を手伝った時に、財務部にいる聡美の夫が社費留学でイギリスのビジネススクールに留学するという情報を得たらしい。

奈々子たちの会社では、社費留学は狭き門。経験者のほとんどが役員になっており、エリート街道の関門のようなものだ。

つまり、聡美の夫は将来の役員候補ということだ。

「聡美さんも休職して付いていくんだって。ほら、最近、家族の転勤のための休職制度が出来たじゃない?第一号みたいよ。聡美さん、憧れるなぁ」

明日香の言葉に、奈々子も便乗するように言った。

「私も、聡美さん見習って新卒くんターゲットにしようかなぁ」

聡美の強かさに素直に感心して言うと、すかさず明日香は眉根を寄せてこう言った。

「えー、社内恋愛はリスク高いと思うよ。社外の方が絶対にいいよ」

明日香の言葉には力がこもっている。彼女は先輩と付き合って別れた過去から、社内恋愛のリスクの高さを知っているらしい。



仕事を終えると、珍しく飲み会の予定がなかった奈々子は、上司から「一杯どうだ?」と言われる前に帰ろうと、終業とともにさっさと席を立つ。

エレベーターホールに行くと同期の相沢とばったり出くわし、先日明日香から聞いた結婚の話を思い出した。

「相沢、結婚するんだって?おめでとう」

「そうなんだ。籍入れたら改めて報告しようと思ってたんだけど。ありがとう」

その流れで東京駅まで並んで歩いていると、「一杯だけどう?」と相沢が誘ってきた。

−今日は休肝日の予定だったけど・・・。ま、いっか。

そうして『スタンドティー』に入り、ビールを一杯ずつ頼んで乾杯した。

「相沢、結婚早かったね。奥さんはどんな人なの?」

奈々子が聞くと、大学時代のゼミの後輩で、現在は大手生命保険会社のエリア総合職だと教えてくれた。

「相沢が転勤になったら、奥さんは仕事辞めるの?」

「そうだな。お互い総合職だと、転勤、転勤できついじゃん?俺、単身赴任したくないし」

−お互い総合職だときつい・・・。

同期の男子が、さりげなく言うこの言葉。

奈々子は、同士としては見られても、恋愛対象としては見られていないことを再確認した。


奈々子、青田買いに乗り出す。ターゲットは?

“自然”な出会いはどこにある?


帰宅した奈々子は、缶ビール片手にパソコンで調べ物をしていた。

休肝日だと言いつつ、帰宅後も缶ビールを飲んでしまう自分に苦笑いする。

パソコンで検索しているのは、「年下男性と自然な出会いが出来る場」。

大学時代の同級生と破局したのが3年前。実は、それ以来彼氏がいない。

食事会で知り合った人とデートしたことはあったが、それ以上の関係にはならなかった。

今まで、同級生か年上としか付き合ってこなかったし、結婚相手もそのはずだった。

しかし28歳になった今、同級生も年上も、良い男はすでに売り切れという悲しき現実。

興味本位ではあるが、ものは試し、年下にも範囲を広げてみようと考えたのだ。

−別に、本気じゃないし。良い男がいれば、の話だから。

色々と調べた奈々子が思いついたのは3つ。食事会、ゼミのOB会、習い事だ。

①食事会:×
28歳の女性が参加する食事会の男性陣は、多くの場合30歳以上。会社と同じく、微妙な男が多い可能性が高い。

かといって、「男性25歳以下限定」という条件も変だし、突然の年齢確認も怪しまれる。

②大学ゼミのOB会:△
年に一度、卒業の時期に開催されるため、今すぐの出会いは期待出来ない。長い目で見る必要あり。

③習い事・英会話:◎
新入社員の習い事ランキング、上位の英会話。
英会話ならば、奈々子自身も堂々と“スキルアップのため”と言える。(動機は不純でも)

しかも、若いうちから英会話に通うなんて、海外駐在予定のビジネスマンとか、聡美の旦那のように社費留学を狙っているエリート予備軍の可能性が高い。

奈々子は、早速会社近くのビジネス英会話スクールの体験教室に申し込みをした。名だたる企業が集まる大手町という土地柄も悪くないだろう。

もちろん、グループコース。英語で議論や交渉する、実践的なコミュニケーション力を身につけるという建前で。

本気じゃないと言いつつ、良い出会いに期待して、残りのビールをグビグビっと飲み干した。



英会話スクールの体験当日。

奈々子は教室に入るなり、テンションが上がった。

さすがは、ビジネス英会話のグループコース。7人すべて男性だった。しかも、明らかに奈々子よりも若い。

周囲の自己紹介を聞きながら、奈々子は、自分は間違っていなかったと心の中でガッツポーズした。

総合商社3人、メガバンク、大手電機メーカーにシンクタンク。なんと、海外ロースクールを目指している司法修習生まで。

−この中に、将来の旦那様がいるかもしれない。

1時間の体験クラスを終えると、そのまま入会申し込みの手続きをした。とりあえず、短期集中の3ヶ月コース。

−私の彼氏探しも、短期集中だもの♪

こうして、本気になった奈々子の青田買いプロジェクトが、幕を開けた。


▶NEXT:11月22日 水曜日更新予定
歓迎会ラッシュの奈々子。転勤してきた先輩の中に、ターゲットがいた!?


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