彼女に高級ブランドを“列買い”する男。トップ・オブ・ハイスペ外銀マンに目が眩んだ女の誤算

彼女に高級ブランドを“列買い”する男。トップ・オブ・ハイスペ外銀マンに目が眩んだ女の誤算

一流の仕事につき、高い年収を稼ぐ東京の男たち。

世の中の大半の女性が結婚を夢見る、いわゆる“アッパー層”と呼ばれる人種である。

しかしその中でも、ハイスペであるが故に決定的に“残念な欠点”を持つ男、というのが存在するのだ。

元彼を35歳の美女・恭子にとられて傷心中の瑠璃子は、彼を忘れるためにハイスペ男との出会いを積極的に繰り返すが、なぜか残念男たちを次々引き寄せてしまう。

瑠璃子が出会う、“残念極まる男”たち。あなたも、出会ったことはないだろうか?

前回は、押しが弱くてタイミングを逃す歯医者に出会ってしまった瑠璃子。さて、今週は…?



「瑠璃子ちゃん、隣の席、いいかな?」

名前を呼ばれて顔を上げると、そこには爽やかな笑顔を浮かべたスーツ姿の男が立っていた。片手にはロエベの鞄をぶら下げ、袖口からはHUBLOTの腕時計が覗いている。

—えーっと、確か彼の名前は…ユウスケさんだったよね。

瑠璃子はにっこり笑って頷き、隣の椅子に置いていた自分のバッグを素早く片付けた。

瑠璃子は1ヶ月ほど前から、ワインスクールの講座を受け始めた。スクールの教室で、隣に座ったユウスケの顔をちらりと盗み見る。鼻筋の通った、整った顔立ち。

40代以上の既婚男性が多いクラスの中で、35歳のユウスケは初回からひときわ目立っていた。日本橋にある外資系証券会社に勤めていると自己紹介で話したとき、クラスの女子たちの空気がなんとなく変わったのを、よく覚えている。

休み時間になると、ユウスケが瑠璃子にそっと話しかけてきた。手には小さな手帳を持っている。

「これ、うちのセラーに眠っているワインのリストなんだ。よかったら見る?」

瑠璃子はユウスケの手帳を見せてもらうことにした。そこには、DRCのリシュブールやラターシュなど、初心者の瑠璃子でも一度は聞いたことのある超高級ワインが名を連ね、リストは何ページにも渡っている。

「えっ、ユウスケさん、これ全部持ってるの?すごい…」

感心して呟くと、ユウスケは嬉しそうに言った。

「うちのワインセラー、200本しか入らないんだよね。だから入りきらないワインがゴロゴロ転がってて、家中ワインだらけ」

—どれだけ広いおうちに住んでるのかしら…。外資系証券会社ってやっぱり凄いのね…。


イケメン外銀男からデートのお誘いが!

「瑠璃子ちゃん、何年生まれ?…88年かあ。88年だったら、シャトー・マルゴーがあるよ。いつか一緒に飲もうよ」

生まれ年の高級ワイン。ベタだけど、女はこういうロマンティックな演出には弱いものだ。まだ知り合ったばかりの男からそんな提案をされるのはなんだか妙だが、相手がユウスケほどの男だと思うと、決して悪い気はしなかった。


高級ブランドを列買いする男


数日後、ユウスケから、ワインが美味しく飲めるお店に二人で食事に行かないかと、誘いがあった。

—通い始めたばかりのワインスクールで、早速、ハイスペ・イケメンと仲良くなれるなんて、ラッキーだわ!

ユウスケが予約をしてくれたのは、広尾にある『ボン ピナール』だ。以前ワイン好きの友人から勧められたこともあり、特にブルゴーニュワインが豊富に揃っている店だと聞いていた。瑠璃子は、店のチョイスにも大満足だった。

はじめはたわいのない話をしていたが、気がつくと二人は恋愛について語り合っていた。

「瑠璃子ちゃんは、彼氏いないの?」

「うん、いないの。ユウスケさんは?」

するとユウスケは、2ヶ月前に彼女とは別れたばかりなのだと説明した。

「俺から別れたんだ。すっごくワガママな子で、疲れちゃってさ」

「へえ…ワガママって、例えばどんなことがあったの?」

ユウスケは、前の彼女と付き合っていた頃、誕生日やクリスマスなど、事あるごとにハリーウィンストンのジュエリーをねだられていたそうだ。

さらに極めつけは、ホワイトデーのできごとだったと言う。バレンタインに有名ショコラティエのチョコレートをくれた彼女が、お返しにねだったものは、ルイ・ヴィトンでのショッピングだった。

「店の一角の商品を“列買い”させられちゃってさ。カバンや洋服を列で買い占めたんだよね」

瑠璃子は驚きのあまり、むせ返りそうになる。

—ヴィトンを列買いって…一体いくら分になるんだろう…。

「おかげで、あの辺の店で俺のことを知らない店員はいないみたい。すっかりVIPになっちゃったよ」

こうして、次から次へと要求を突きつける元彼女のワガママに付き合いきれなくなり、ユウスケはついに別れてしまったようだ。瑠璃子はぼんやり考える。

—ハリーの指輪に、ヴィトン列買いかあ…。正直にいうとちょっぴり羨ましいけどな。そんなにプレゼントを買ってあげるなんて、彼女のこと大切にするタイプなのかも…。



「ここ、素敵なお店だね」

食事のコースが後半に差し掛かった頃、瑠璃子が店内を見回しながら言うと、ユウスケは満足げに頷く。

「ワインが美味しく飲めるお店だったら、俺にいつでも聞いてよ。友達からは“歩く食べログ”って絶賛されてるんだ」

そしてユウスケは、普段一緒にワインを飲み歩いている友達について語り始めた。

「俳優のN、わかる?あいつと俺はワイン仲間」

瑠璃子は思わずその話に食いついた。

「え!私、あの俳優大好きなの!お友達なんて凄い!プライベートだとどんな感じの方なの?」


ワインスクールのクラスメイトが、ユウスケの正体を明かす?

興奮する瑠璃子を前に、ユウスケは涼しい顔で答える。

「テレビだとかっこつけてるけど、プライベートは全然違うよ。私服もすっごくダサくてさ、何度かあいつに泣きつかれて、俺が見立てて全身コーディネートしてやったよ。ワインの楽しさを教えたのも、俺だしね」

好きな俳優の意外な一面に少しがっかりしつつも、瑠璃子はユウスケの顔の広さに驚き、彼の話に夢中になるのだった。


自慢のオンパレード


翌週、ワインスクールにいくと、教室にユウスケの姿はなかった。

—そういえば…プライベートでフランスに行くって言っていたっけ。

先日のデートのとき、ちょうど週末からパリに行くとユウスケは話していた。ステイ先はヴァンドーム広場のホテル・リッツで、常連の余りホテルスタッフとも顔見知り、いつもお気に入りの同じ部屋をアサインしてもらえるそうだ。



帰国したらまた二人で食事に行こう。ユウスケとはそんな約束をし、ワクワクしていたところだ。

瑠璃子は適当に空いた席を見つけて、腰掛ける。隣の席には、瑠璃子と歳の近いクラスメイト・アキが座っていた。そういえばアキは、初回の授業の時にユウスケとかなり親しげに話していた。

授業が始まる前に、アキが瑠璃子に囁いてきた。

「ユウスケさんの自慢大会がないと、なんだかクラスが静かよね」

自慢大会、という単語に瑠璃子は目をぱちくりさせる。するとアキは続けてスマホを取り出して、瑠璃子に画面を見せてきた。

「見てよ、ユウスケさんのFacebook。今日も自慢のオンパレードよ」

瑠璃子はアキに促され、Facebookを覗き込む。

そこには、ファーストクラス・ラウンジにチェックインするユウスケの投稿があった。写真にはさりげなく、First Classと書かれた赤絨毯も写り込んでいる。

さらにその次の投稿は、航空券を撮った画像。「F」のマークが大きく印字された、航空券アップの画像だ。

「わざわざ、ファーストクラスをここまでアピールしなくてもいいのにね」

クスクス笑うアキに向かって、瑠璃子は咄嗟にユウスケを擁護する。

「…旅行に行けるのが嬉しくて、何か投稿したくてたまらないんじゃない?私も空港でチェックインなら旅行先でよくやるし、気持ちはわかるわよ」

しかしアキは顔をしかめた。

「だったら、エコノミークラスの航空券でも平等に投稿すべきじゃない?」

「エコノミーなんて、乗らないんじゃない?それに、確かに自慢は凄いかもしれないけど、誰にも迷惑かけてないわけだし…」

ユウスケを必死でかばう瑠璃子を、アキは冷ややかに見つめた。

「私は、初回の授業の日に、マンションはどこだとか、乗ってる車は何だとか、そんなことまで彼から自慢されて、こういうタイプは絶対無理だって思ったけどなあ…。それに、アイツの本当の正体、私知ってるの」

正体とは、なんだろう。瑠璃子は思わず黙り込んだ。

「瑠璃子も知りたい?」

アキにじっと瞳を見つめられ、恐る恐る頷いたとき、ちょうど先生が教室に入ってきた。

「みなさん、教科書を広げてください。授業をはじめます」

アキは小さな声で「この話はまた今度ね」と囁くと、姿勢を正して授業に集中してしまった。

—ユウスケさんの本当の正体…!?気になる…。

瑠璃子はアキの言葉が気になって、その後も全く授業に集中できなかった。


▶Next:2月21日水曜更新予定
自慢のオンパレードが止まらない!外銀男・ユウスケの正体が次週明かされる。


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