全国行脚にかかった費用は150万!女子アナの座を執念で掴んだ女の、本当の野望とは?

全国行脚にかかった費用は150万!女子アナの座を執念で掴んだ女の、本当の野望とは?

就職活動は、今や「売り手市場」と言われ、かつての就職氷河期などどこ吹く風。

しかし、時代を問わず“狭き門”とされる企業は常に存在し、選ばれし者だけが生き残るのが現実だ。

そして「就活の頂点」を目指す若者たちは皆、こう信じている。

−就職で、すべての人生が決まる。

本連載で紹介するのは、内定のためなら手段を選ばない数々の猛者たち。彼らが語る、驚くべき就活のリアルとは?

先週、OB訪問100人、泥臭さで内定を勝ち取った“ネタ枠採用”の商社マンに驚かされたが、今週は・・・?



【今週の就活女子】

・名前:沙耶(25歳)
・現在の勤務先:東北の地方テレビ局
・就活時エントリーした企業数:約100社
・内定企業数:現在の勤務先のみ


「おはようございます!本日はどうぞよろしくお願いします」

沙耶は、待ち合わせの『アンダーズ タヴァン』に、朝の情報番組のキャスターにふさわしい、爽やかな笑顔で登場した。

小動物系の愛らしい顔立ち。透明感のある素肌を強調したベースメイクに、控えめな色味のアイシャドー。唇は桜色でぷるんと艶がある。

シックなグレーのワンピースにベージュのパンプスを合わせ、指先にはコーラルピンクのネイルが施されている。

足を揃えて斜めに流して座り、微笑みを絶やさずこちらを見つめる彼女は、上品で華やか、まさに“女子アナ”。

東北の地方局で働いているとのこと。てっきり出身がその辺りなのだろうと思っていたが、意外なことにも彼女は東京出身だという。

「就活では、北は北海道から南は九州まで、全国を飛び回りました」

沙耶は、ニッコリと微笑みながら教えてくれたが、全国行脚とは驚きだ。

下世話な話、かなりお金がかかったことが想像出来る。一体いくら使ったのだろうと想像していると、彼女は驚きの事実を自ら口にした。

「交通費だけで、150万円かかったんです」

そして沙耶は、その清純そうなルックスからは想像しがたい言葉を続けた。

「注ぎ込んだのは、交通費だけじゃありません。…どうしてもアナウンサーになりたくて、あらゆる手を使ったんです」


150万かかっても、女子アナになりたかった理由とは?

自分の知らなかった世界


沙耶がアナウンサーに憧れたきっかけは、中学時代に遡る。

ある朝、学校に行く準備をしながら情報番組を見ていた時のこと。司会を務める女性アナウンサーが、沙耶の大好きなハリウッドスターにインタビューしていたのだ。

女優顔負けの美しさ、上品な仕草に洗練された装い。流暢な英語でインタビューする姿は、沙耶の脳裏に焼きついた。

数年後、雑誌で再び彼女を見かけた。

メジャーリーグで活躍する野球選手と結婚した彼女は、プール付きの豪邸に住まい、セレブ妻に変貌を遂げていた。雑誌の中で、アナウンサー時代を振り返った彼女は、こう言っていた。

—アナウンサーになって良かったと思うことは、普通では会うことが出来ない人に会えたり、今まで知らなかった世界を見られること。

自分の知らない世界。沙耶にとって、これほどワクワクする言葉はなかった。

「アナウンサーになれば、キラキラした世界が待っている。そう信じて疑いませんでした」

高校に入った沙耶は、両親に「アナウンサーになりたい」と打ち明ける。すると「沙耶ちゃんはとっても可愛いから、絶対になれるよ」と、大賛成で背中を押してくれた。

自分でも、容姿には自信があった。渋谷や原宿でスカウトされたことは何度かあったし、男子からもよくモテたからだ。



「絶対にアナウンサーになる。これだけを目標に学生生活を過ごしてきました」

そう話す沙耶の就職活動は、大学1年から既に始まっていた。

沙耶は、都内にあるミッション系の大学に入学した。入学と同時に放送研究会に所属し、テレビ局でアルバイトをするチャンスを手に入れた。

あまり知られていないが、在京キー局には、完全紹介制の学生アルバイトが存在する。業務内容は雑務がメインだが、人脈を作るには絶好のチャンスだ。どこの大学でも、放送研究会がアルバイト枠を持っていることが多い。

放送研究会に入った沙耶は、テレビ局でバイトをしている男の先輩に近づき、付き合うことに成功した。先輩は沙耶の目論見通り、アルバイトを紹介してくれたという。ちなみに、その彼とはその後すぐに別れたそうだ。

大学2年になってからは、キー局主催のアナウンススクールに通ってアナウンス技術を磨き、大学のミスコンにも出場。

ミスコンに出場するために、クラスにいた広告研究会所属の女子と仲良くした。すべては、彼女に幹部を紹介してもらい、顔を売り込むためだった。

結果は、惜しくもミスは逃したが、ファイナリストまで上り詰めた。さらに、某テレビ局のイベントコンパニオンも務めた。

そんな沙耶に、千載一遇のチャンスが訪れる。

BSの学生アナウンサーに選ばれ、週に一度、BS生放送のニュース番組を担当させてもらうことになったのだ。

「BSの学生アナウンサー」といえば、アナウンサーの登竜門となっており、現役女子アナの中にも出身者は多い。

「アナウンサー試験に向けて、自分は優位に立っているって確信していました」

そしてその頃から、沙耶のプライベートも少しずつ変わり始めたという。

「業界の方やスポーツ選手と遊ぶことも増えてきて…」

沙耶の世界は、どんどん広がっていった。今まで出会わなかった人、知らなかった世界。すべてが、沙耶の心をときめかせた。

アナウンサーになったら、世界はもっともっと広がるはずだ。そう夢見ながら、キー局の試験に臨んだ。

しかし、結果はなんとすべて不合格。惨敗だった。


キー局不合格。地方行脚を始めるが・・・。

想像を絶する全国行脚の過酷さ


キー局に受かると思っていた沙耶は、厳しい現実を突きつけられた。

蓋を開けてみれば、キー局に受かったのは、元アイドルなどの芸能活動経験者や、有名人や資産家の娘ばかり。自分にはないものを持っている人ばかりが受かっていたことに愕然とした。

「どんなに努力したところで、過去や出自は変えられない。正直悔しかったです」

そう言って、唇を噛んだ。

キー局敗退後に、CAや総合商社の一般職に転向したアナウンススクール仲間も数多くいたが、沙耶はどうしても諦めることが出来なかった。

「私は、戦いの場を地方局に移しました」

確かに、最近では、地方局で経験を積んだアナウンサーがフリーに転身し、人気を博しているケースもある。決してこれで終わりではないのだと、自分を奮い立たせた。

地方都市の比較的大きなテレビ局から、ローカルの小さなテレビ局まで、ほとんど全ての局にエントリーした沙耶。

しかし、地方局行脚は、想像を絶して過酷だった。



エントリーシートを通過すると、各社一斉に面接が始まる。

今日は北海道、明日は北陸、明後日は四国、こんな具合に面接の予定が入ってくるのだ。一次面接を通過すると、今度は二次面接に呼ばれる。九州にとんぼ帰りなんて日常茶飯事だった。

時間がもったいないので、新幹線や飛行機を使うしかなかった。

「面接の結果次第なので、事前にチケットを購入出来なかったんです。直前だとチケットが本当に高くて。九州や北海道までの往復、8万円はきつかったです」

しかし、こんな生活をしているうちに、貯金はすぐに底をつき、首が回らなくなった。沙耶は、両親に頭を下げてお金を借りたという。

ちなみに、九州のテレビ局は最終試験まで残ったものの、不合格。合計25万ほどかかったという3回の往復旅費は、一瞬にして水の泡となった。

度重なる不合格に、身も心もボロボロになっていた沙耶。持ち駒も残りわずかとなり、アナウンサーの夢を諦めるしかないと思っていた矢先のこと。

ついに、今勤務するテレビ局から内定をもらったのだ。

沙耶は面接の自己PRで、この地方の方言を使って会話を試みたそうだ。地域にいち早く溶け込むために、少しでもいいからと、方言を学んだ。たとえ付け焼刃でも、その積極的な姿勢が大きく評価されたようだった。

「東京で生まれ育った私は、初めてこの県を訪れました。アナウンサー試験がなかったら、一生訪れなかったかもしれませんね」

アナウンサーになってから、沙耶は地域に溶け込む努力を続けた。地域のヨガサークルやフラワーアレンジメント教室、異業種交流会などあらゆる場に顔を出し、自分を覚えてもらうこと、地域の人と仲良くなることに全力を尽くした。

愛らしいルックスに、人懐っこい笑顔が印象的な沙耶の知名度は徐々に上がり、昨年から、朝の情報番組のメインを務めるまでになった。

最近、とある雑誌の“かわいい地方局アナウンサー特集”で紹介してもらったと嬉しそうに話す沙耶だが、当初はかなりの葛藤があったそうだ。

「キー局に落ちて地方に来た。事実なんですけど、そういう見方をされるのが嫌だったんです。だから、ここで成功すれば、地方に来た意味が見出せる、そう思ってがむしゃらに頑張りました」

話を聞けば聞くほど、負けん気が強い沙耶。

今でも東京進出の夢は捨てていないのだろうか。今後について聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

「秘密ですけど、そろそろアナウンサーは辞めるつもりです。理由は…ふふふ」

そう言った数週間後、彼女が直接メールで連絡をくれた。

テレビ局を退社し、結婚することが決まったという。以前取材で知り合った、地元で知らない人はいない有名企業の御曹司をちゃっかり捕まえていたらしい。

学生時代にはじめて女子アナへの憧れを抱いたあの日から、沙耶が目指すゴールは「女子アナになること」それだけではなかった。

女子アナはあくまで通過点。沙耶が目指していたのは、その先にある「新しい世界」だったのだ—。

こうして、玉の輿婚を見事掴み取った沙耶。150万円をつぎ込んででも、女子アナになった意味があった。彼女はそう思っているのではないだろうか。


▶NEXT:2月22日木曜日更新予定
ボランティアは就活のため?!外コン男、登場。


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