「あいつより絶対稼いでやる…」外資コンサルを目指して、2年間の無給生活に耐え忍んだ男の残酷な末路

「あいつより絶対稼いでやる…」外資コンサルを目指して、2年間の無給生活に耐え忍んだ男の残酷な末路

就職活動は、今や「売り手市場」と言われ、かつての就職氷河期などどこ吹く風。

しかし、時代を問わず“狭き門”とされる企業は常に存在し、選ばれし者だけが生き残るのが現実だ。

そして「就活の頂点」を目指す若者たちは皆、こう信じている。

−就職で、すべての人生が決まる。

本連載で紹介するのは、内定のためなら手段を選ばない数々の猛者たち。彼らが語る、驚くべき就活のリアルとは?

先週、就活にかけた交通費は150万の女子アナが登場したが、今週は…?



【今週の就活男子】

・名前:雅人(30歳)
・勤務先:外資系IT企業 コンサルティング事業部
・出身大学:東京工業大学
・就職時の内定企業:現在の勤務先、ほか日系企業


「就職活動かあ。随分、懐かしい響きですね。話すと長くなるから、まあ飲みましょうよ」

そう言って、雅人は『バーアンドカフェ カメリア』で、カクテルに口をつけた。

雅人は現在、日本橋・箱崎にある外資系大手IT企業のコンサルティング部門で働いている。

外資系といっても、制度や給与体系はまるで日系企業だし、コンサルといってもいわゆる外資系コンサルティングファームとは全く異なる。

オールバックが似合う端正な顔立ち。上質なスーツの袖から、エルメスのカフリンクスがさりげなく覗き、セクシーな香りがふわりと漂っている。

ギラギラした雰囲気は一切なく、知的でエレガントな姿には思わずうっとりさせられる。

早速、就職活動について話してほしいと頼むと、彼は口を開いた。

「僕ね、学生時代、ボランティアしてたんですよ」

東工大の学歴に、安定した企業。恵まれたルックスに加えて、彼には奉仕の精神まであるようだ。ますます感心してしまう。

しかし、雅人は思わぬことを口にした。

「奉仕の精神?いやいや、僕がボランティアをした目的はたったひとつ。内定のためだけですよ。つまり、自分の利益のため以外の何物でもありません」


彼が取り組んだボランティア活動の驚くべき内容とは?


本来ボランティアといえば、報酬や利益を求めない活動のはず。それなのに自分の利益のためとは━。

しかし、就活目的でボランティアをする学生は、決して珍しくないのが現実だ。きっと雅人も、”自己PRの足しになれば”くらいの安易な気持ちで、その場しのぎのボランティアを行ったのだろう。その程度に考えて話を聞いていた。

しかし、彼の経験を具体的に尋ねると、それは生半可な覚悟では到底成し遂げられない、驚くべき内容だったのだ。

そもそものきっかけは、コンサル希望の雅人が、ある准教授に就職の相談をしたことが始まりだった。

その准教授は、外資コンサル出身の経営工学専攻で、こんなことを教えてくれたのだ。

「とあるNPO法人があるんだ。ほとんど知られていないが、そのNPOでボランティアをしていた人間を積極的に採用している外資系企業がいくつかある」

しかも企業名を尋ねると、雅人が喉から手が出るほど行きたい企業ばかりが並んでいるではないか。

しかし、このNPOのボランティアは生半可な気持ちで出来るようなものではない。2年間、地方の学校でボランティアするプログラムなのだ。

「2年間、地方の無給生活なんて、ふざけるなって思いましたよ。でもね、どうしても内定を取りたいという強い気持ちが僕を奮い立たせた。休学を決意して、九州のど田舎に乗り込みましたよ」

奉仕の精神はゼロだと言いながら、2年の休学をしてまで、ボランティアに取り組んだ雅人。彼を突き動かしたものは一体なんだったのだろうか?



「僕、2歳年上の兄がいるんですよ。関係は最悪ですけどね」

そう話す雅人は、先ほどまでの穏やかなイメージと打って変わり、突然不機嫌な表情を覗かせる。そして、話を聞いていくうちに、彼の悲しきルーツが見えてきた。

横浜のあざみ野で生まれ育った雅人。父親はエネルギー会社の役員で、母親は専業主婦。庭付きの一戸建てに暮らし、数年に一度は海外へ家族旅行に出かける。客観的に見れば、何不自由なく育てられたと思う。

しかし雅人には、家族との幸せな記憶など、何一つない。物心ついた頃から、彼は兄へのコンプレックスと戦ってきたのだ。

兄と雅人、ともに地元の小学校へ通っていた。兄は、運動神経抜群、成績優秀、さらには絵画も得意で、さらりと1位をかっさらう、いわゆる“天才型”だった。

それに対して雅人は、兄と比べると要領が悪く、運動会でもテストでも、いつも2番手か3番手。努力しているのにトップにはなれないタイプだ。

両親も周りも、兄のことばかり褒める。そして、その褒め言葉を当然のように受け取り、何事も要領良く片付ける兄が憎くて仕方なかった。

横浜の超名門男子校から東大に進学した兄。横浜でNo.2の高校から、東大を志しながらも成績及ばず、東工大に進学した自分。

さらに両親は、雅人に向かってこんな言葉を放ったのだ。

「なんだ、東大じゃないのか」

その日以来、強い劣等感に苛まれてきた雅人だが、兄が財務省の官僚に内定したのをきっかけに、彼の中にある野望が芽生えた。


何を引き換えにしてでも内定を欲しかった理由とは?


「官僚って社会的ステータスはありますけど、若いうちは、給料は低いですよね。あいつより稼いで、あいつより良い生活をして見返してやる。”兄貴、給料安くない?”ってバカにしてやる。そう、決めたんです」

雅人の就活における業界や企業選びの軸は、たったひとつ。“兄より圧倒的に稼げる企業”。この軸で企業を選ぶと、外資金融と戦略コンサルに候補が絞られた。

−絶対に内定を取って、あいつに勝ってみせる。



こうして彼は、ボランティアへの決意を固めた。

突如休学してからの九州での2年間。雅人は、がむしゃらに活動に打ち込んだ。

彼の目的は、たったひとつ。NPOからの高評価を獲得し、内定のアドバンテージを取ることだ。

そのために、平日の学校運営だけでなく、放課後の学童や休日の預かり教育にも力を入れたし、さらには地域活動に参加して、地域での交流も深めていったそうだ。

ここまで必死に働いても、結局はボランティア。2年間もの無給生活には何度も心折れかけたが、その都度自分に言い聞かせた。

—2年後内定さえとれれば、無給どころか自分には高給取りの道が待っている。そうすれば状況はひっくり返り、今度こそ親が自分を認めてくれる…。

気がつけば地域の人からも次第に受け入れられるようになり、ボランティアも終わりに近づいた頃、印象的な出来事があった。地域の人から「このまま残って欲しい」と嘆願されたのだ。

「家族の事情で戻らないといけなくて…と涙目で説明しましたが、心の内では悪態をついていましたよ。僕にとって、ボランティアは手段でしかすぎないのに、何を馬鹿言ってるんだってね」

雅人の活動は、NPO内でもかなりの高評価だった。代表からも太鼓判を押され、「絶対に落ちることはない」と確信した。自信たっぷりに外資金融、戦略コンサルの試験に臨んだ。

しかし、結果は全て不合格だった。自分の世界がガラガラと音を立てて崩れ落ち、休学してまで無給で働いた2年間が無駄になった瞬間だった。

今振り返れば、「会社に入ること」が目的化してしまい、会社に入った後のビジョンがあまりに不明確だったことが敗因だったという。

なんとか内定をもらえたのは、現在勤務するIT企業のコンサルティング部門や日系企業ばかり。どこも給料は大して変わらなかったため、その中では、”外資系”という響きの良さと、ほんの少し給料が高いことから、今の企業に行くことにした。

「兄と比較するのではなく、どうにか折り合いをつけて人生を送ろうと思っていたんです。それなのに…」

先日、久しぶりに法事で顔を合わせた兄から、こんな言葉を浴びせられた。

「俺さ、財務省辞めて六本木にある外資金融で働くことにしたんだ」

雅人が2年間耐え忍んでも手に入れられなかったものを、兄はいとも簡単に手に入れていたのだ。

雅人の人生への葛藤は、おそらくこの先も、永久に続くことであろう。


▶NEXT:3月1日木曜日更新予定
女を使って何が悪いの?広告代理店勤務女登場!



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