ライバルの蹴落としは“SNS”で。性悪女が堂々と胸を張る、インフルエンサーの闘いの全貌

ライバルの蹴落としは“SNS”で。性悪女が堂々と胸を張る、インフルエンサーの闘いの全貌

女同士の闘いなんて、くだらない?

美貌・財力・センスのすべてを手に入れた女たちが繰り広げる、ヒエラルキー争い。

男からは求められ、女からは妬まれ、そして羨望の的となるカリスマ読者モデルの世界。

己の自己顕示欲を隠すことなく曝け出す彼女たちは、時に結託し、時に競い合う。

くだらない、と思うならどうか覗かないで欲しい。

優雅で美しくも、水面下で死にもの狂いで闘う、女たちの醜い生き様をー。

会計士として働くあおいは、女性ファッション誌『GLORY』の読者モデルとなり、その地位を確立していく。

そして、スタイルブック発売企画の候補だと知らされたあおいは、同じ候補の景子と張り合い、彼女がフォロワーを購入していることを編集部に告げ口して本発売の座を手に入れるが、気持ちは晴れなかった。



「売り上げはそう悪くないですが…。少し、PRを増やす必要があります。」

数ヶ月間準備をし、2週間前に満を持して発売された、あおいのスタイルブック。

編集部一丸となって作り上げた渾身の1冊だったが、予想以上に売れ行きが悪いのだ。世話になっているGLORY編集部に「数字」で貢献が出来ない自分に、いたたまれなくなる。

発売後2週間経っても全く発行部数の伸びないあおいのスタイルブックは、「大コケ」と言われるレベルだそうだ。内部事情に詳しい何者かによるInstagramのコメント欄への書き込みで知った。

あおいは、匿名の誰かに何を言われても傷つかない心は手に入れていた。ただ、あれだけ頑張ったのに結果を出せなかったことが申し訳なく、悔しい。

副編集長の大沢は企画側の落ち度や、発売時期のタイミングの悪さを必死に説明してくれたが、自己嫌悪に陥るあおいに、追い討ちをかけるような一言を付け加えた。


大沢から伝えられた、衝撃のニュースとは?

かつてのライバルとの再会


「実は…高田景子さんも、来月他社でスタイルブックを発売するそうなんです。」

驚きを隠せずにいるあおいに、大沢が続けた。

あおいのスタイルブック発売が決まって以来、景子がGLORYの読者モデルよりも、インフルエンサーとしての活動に重きを置き始めていたこと。また、もうすぐ29歳という年齢もあり、他社のアラサー向けの雑誌に移籍予定らしい。

ほんの一瞬だが、景子のスタイルブックも売れなければいいのに…という陰険な思考が頭を過った。

しかし、自分のスタイルブック発売を祝ってくれた景子に一言でもお祝いをするべきだと思い直し、久々に彼女にLINEを送る。

ースタイルブック発売のこと、大沢さんに聞きました。おめでとう!雑誌も変わるの?GROLYで会えなくなるのは寂しいけれど、たまには会いたいです。

久しぶりに景子に送る文章。

ところどころ敬語にしてしまうのは、以前のようには景子との距離感が掴めないせいもある。

意外なことに、景子からはすぐに返信が来た。忙しさも落ち着いてきたから、と週明けにパレスホテル東京の『グランド キッチン』で久々に会うことになった。



「あおい、こっちこっち。」

久しぶりに会う景子はカッチリとしたジャケットを着こなし、いかにも大人の女性らしい雰囲気を身につけている。

そんな景子が、ふとあおいを見て「しばらく会わない間に、綺麗になったね。」と微笑む。その表情からは、敵意や他意は感じられない。

まただ。胸の奥が締め付けられるような、あの痛み。

あおいは、自分のスタイルブックを発売したいが為に彼女を陥れた自分に、耐えられなくなった。

ー景子、あのね、私のせいなの。私があなたのことを編集部に告げ口したから…。

全てを打ち明けてしまいたい。そして、謝りたい。

だが、以前のような笑顔を見せてくれるようになった景子に、また嫌われてしまうのが怖かった。せっかくこうして普通に会えるようになった関係を、もう壊したくないー。

あおいは、喉まで出かかった謝罪の言葉を飲み込んだ。

しかし、この時の決断が大きなミスだったとわかるのは、もう少し後のことである。


トラブルは、想定外の人間が運んでくる...?

罪悪感なく、人を陥れる女


景子のスタイルブック、「Keiko’s Style ~”シンプルなのに女らしい”が叶う、毎日の服選び~」は、発売後たったの2週間で発行部数1万部を記録したという。

GLORYのロケ撮影中も、景子の話題で持ちきりだ。

あおいの本のようにライフスタイル要素は少なく、細かいコーディネート術を中心とした構成がウケたのだろう、Amazonのレビューにも好評価が並んでいる。

「仕事もしてない会計士に、キャリアもおしゃれも語られたくない」といった罵詈雑言が並ぶあおいのレビュー欄とは雲泥の差だ。

読者モデルの自分にとって、スタイルブックというのは発売さえしてしまえば「勝ち」で、そこからは自動的に成功への道が約束されていると過信していた。

しかし、実際は違う。

現実は、まるで本職のモデルや芸能人と同じように、発行部数や重版の有無などの結果至上主義の世界で心身を削ることになるのだ。

それなのに、“読モ”には守ってくれるマネージャーもいない。

そして目立つ読者モデルには、様々なプレッシャーや思惑がとめどなく押し寄せるのだ。

撮影終わりにと立ち寄ったカフェで、GLORY紙面で一緒に企画を組まれることの多い真奈美が唐突に言い放った。

「ねぇ、あおい。景子さんってスタイルブックは売れてるけど、たしかフォロワー買ってるんだよね?」

「まぁ、そうだけど…。」

あまり触れたくない話題なので、曖昧に答える。

「ふぅん」

広告代理店勤務・24歳の真奈美は、手元のスマホをいじり終えると、さも大仕事をしたかのような様子で「ふう」と溜息をつく。



イヤな間があった。

長い長いマツエクに縁取られた真奈美の瞳を、あおいは恐る恐る眺める。

「オッケー、景子さんのネガキャンの手配終了しました!あおいのスタイルブックの方が売れてくれないと、後続の私たちもGLORYも困るしね。」

「ネガキャンって…真奈美、何をしたの?」

「何って、私も無駄に広告代理店勤めしてるわけじゃないから。人脈の多い後輩に頼んで、SNSで景子さんがフォロワー買ってる残念な人だっていうイメージ流しておいて、ってお願いしたの。」

全く悪びれる様子もなく意気揚々と答える真奈美を見て、あおいは改めて悟った。

私と、この子は違う。

景子ほどの容姿やカリスマ性もない。真奈美や珠緒ほど罪悪感なく人を蹴落とす覚悟もない。

強者の女たちが蠢く“インフルエンサー”の世界。何もかも中途半端な自分は、ここで生き残るに相応しくないのだ、と。



▶NEXT:3月30日 金曜更新予定
図らずして再び景子を陥れてしまったあおい。景子の反応はー?



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