お食事会で起きた「自分より可愛い子瞬殺」事件。その女の手口とは…!?:手配師ルナの事件簿

お食事会で起きた「自分より可愛い子瞬殺」事件。その女の手口とは…!?:手配師ルナの事件簿

地球上に男と女がいる限り、事件は起きる。

それはLINE上やデートのときだけでなく、男女の出会いの場である“お食事会”でも多発しているのだ。

五十嵐ルナ、35歳。

彼女は数々の食事会をセッティングし、男女の縁をつなぎ、夜の社交界での人脈形成も怠らない。

食事会の“手配師”として名を馳せている人物だ。

そんな彼女が、今週目撃した食事会での事件とは・・・?



事件ファイルNo.1 女同士の蹴落としあい


「それでは...かんぱ〜い!」

男女6名の声が『Cast78』の店内に響き渡る。

—シャトー・マルゴー1985年...

ルナが生まれた年より3歳若い1985年は、グレートヴィンテージである。“高貴なるボルドーの女王”が放つ、丸みがありながらもシルクのような滑らかさを、噛み締めるようにゆっくりと味わった。

今日の食事会のメンツは、30歳前後のIT起業家の男性たちと、26〜28歳くらいの女性たちである。

“手配師”として今日の仕事ぶりは大丈夫かしら、と談笑する男女6名の顔を交互に見つめた。

元々、ルナは某自動車メーカーの社長秘書をしながら食事会に参加する立場だった。

長い黒髪に、色白で日本人離れした茶色い目。その神秘的な見た目と名前の“ルナ”が見事に調和しており、港区界隈で知らぬ人はいない美女として、いつの間にか名を馳せることになったのだ。

しかし結婚を機に食事会への”参加”は卒業し、今はこうして人脈形成の傍ら、男女の出会いのチャンスを”手配”する側になっているのである。

プライベートでは、愛する旦那と愛犬のゴールデンレトリバー・ジョンと、代々木神園にあるグロブナープレイスで幸せに暮らしていた。

「じゃあ早速だけど、自己紹介しようよ!」

男女それぞれの中心人物である健太と美緒が、何やら盛り上がっている。

しかし、ルナは知っている。

一見楽しそうなこの食事会で、既に事件が起きていることを。


日常的に行なわれているお食事会。そこに潜む女同士の争いとは?

事件は、“他己紹介”で起きていた!


「じゃあ俺の方から説明するね!こちらに座っているチェックのシャツが小林さんで、アプリ開発で成功して今や億万長者」

「そしてその隣が高橋さんで、こちらもIT業界で知らない人はいない、有名人です!女性陣、もしクルージングしたいなら、お二人に言って下さい」

その紹介を聞いて、急に女性陣の目の色が変わる。“やめろよ、その紹介”と言いながらも、小林も高橋もまんざらでもなさそうな表情を浮かべていた。

今日の幹事である健太は、元々ルナとゴルフ仲間だ。結婚を機にゴルフから遠のいているルナだが、「大先輩のお二人に、接待を兼ねて食事会を開催してほしい」と健太が連絡してきたのだ。

その連絡を受け、先日友人の誕生日パーティで知り合って以来しきりにルナに連絡してくる美緒に、女性陣を集めるよう依頼したのだった。

「皆さん、すごい方ばかりですね♡ちなみに健太さんは、何をされているんですか??」

女性陣の幹事である美緒は、大きな目をキラキラと輝かせながら健太を見つめている。

それもそのはず、本日参加している男性陣はメディアにもよく登場する、若手経営者たちなのだ。嗅覚の鋭い女性ならば、どこかで一度くらい顔を見たことがあるのだろう。

「僕もIT系なんだけど、このお二方に比べたら足元にも及ばないようなちっぽけな会社です」

そういう健太の会社は、年商50億弱。

成功している人間ほど、食事会で自分のことを大きく言わないものである。

そんな健太を微笑ましく見ていると、次は女性陣の紹介になった。

…そして、ここで事件は起きたのだ。



「じゃあ、私も紹介しますね。私の隣に座っているのが菜穂ちゃんで、丸の内でOLしている26歳です。で、その隣が麻里ちゃんです」

女性側の幹事である美緒が、早口で友達を紹介し始めた。

セミロングヘアの菜穂は、いかにも丸の内OLさんらしい、可愛らしい雰囲気だ。

そして隣の麻里は、おっとりしているのに女性らしい色気が溢れ出ている。花で例えると薔薇のようだと、ルナは思った。

一方、幹事の美緒はどちらかと言えば素朴な感じで、こちらも花で言うならば薔薇を引き立たせるかすみ草、といったところだろうか。

「...。」

ここで、美緒の他己紹介は終わってしまった。

皆もう少し他の説明もあるかと思い、美緒が次に発する言葉を待っていたが、麻里については職業さえ紹介しなかったのだ。

「それだけ?女性陣の皆さまはなかなか秘密主義なのかな〜」

小林が気を遣ってフォローに回る。

たしかに、美緒の紹介は短すぎる。他己紹介ならば通常相手のことを多少は褒めるのがマナーだと、ルナは心得ている。

「ヤダ〜私ったら。ごめんなさい、たしかに短すぎでしたね♡」

小林に指摘され、美緒は可愛らしい笑顔を浮かべて慌てて言葉を足した。

「菜穂ちゃんは、この前同棲していた彼氏と別れたばかりで、先月中目黒に引っ越しました。絶賛彼氏募集中です!麻里ちゃんは、年上のおじ様が大好きで(笑)」

菜穂と麻里の表情が、一瞬で凍りつく。

この時点で、美緒が麻里を蹴落としにかかったのは明白だった。


他己紹介で仲間を蹴散らす女。それに気づかぬ愚かな男

「菜穂ちゃんは、どうして別れちゃったの?」

小林が話を盛り上げようとして聞くものの、菜穂はあまり答えたくなさそうな表情を浮かべている。

「ちょっと、色々ありまして...」

別れる理由は千差万別。しかしさっきの他己紹介ならば、聞かずにはいられない雰囲気だ。

「そっか、そうだよね。麻里ちゃんは年上が好きなの?たしかにおじ様方から好かれそうな雰囲気を醸し出しているよね」

小林は、美緒の言うことを信じ切っているようである。これでは、彼女の思うツボだ。

「そうなんですよ〜。麻里はすごい年上の人が好きで。今も芝浦のブルームに住んでいるんですよ。...男性陣は、麻里からするとちょっと若すぎるかもですね?でも私はお二人結構タイプですけど♡」

ニコニコと可愛らしい笑顔を浮かべながら、美緒は自分より可愛い麻里を蹴落としにかかっている。

青ざめた表情の麻里を見てルナはいたたまれない気持ちになり、美緒の言葉を封じるようにこう言った。

「まぁ、そうなの。でも麻里ちゃんは若いのに色気があって、私はとても素敵だと思うわ。年上の方に好かれるのも、よく分かる」

するとルナのこの一言で、男性陣が矢継ぎ早に麻里に質問を始めた。その途端、美緒は明らさまに不機嫌な顔になり、更なる追加攻撃を仕掛けてきた。

「でも麻里は普通のOLなはずなのに、私にはできないようないい生活をしていて。とてもオシャレだから服も鞄も良い物ばかりなんですよぉ。今日の鞄も可愛くないですか?シャネルの新作かな?いいなぁ〜」

小林にべったり引っ付きながらも、美緒はチクチクと麻里を攻撃し続けるのだった。



男と女のいたちごっこ


「で?本日の一番人気はどなただったの?」

皆を見送った後、ルナは健太と二人で『プレゴ』でお茶をしながらプチ反省会を開く。

「男性陣の一番人気は麻里ちゃんかな。でも小林さんは美緒ちゃんもいいって言っていたけど」

自己紹介の後、美緒は小林に狙いを定め、妙にボディタッチしながらずっと彼の隣をキープしていた。

他己紹介は、その女性の本性が露骨に出る。

きちんと相手を立てた紹介ができる人は、人としても魅力的だとルナは思う。一方、他人を蔑むようなことを言う人は、その程度の人間なのだ、とも。

しかし小林は、そんなことも見抜けず猫を被った美緒の作戦にまんまと引っかかったのだ。

—男って、バカね...

それを見抜けぬ、騙される男がいる限り、美緒のような女性は食事会から撲滅されないのかもしれない。

―ルナさん♡今日はありがとうございました!またぜひ呼んでください♡♡♡

ルナは、♡マークたっぷりの美緒のLINEをしばし見つめながら、もう二度と彼女を食事会には呼ばないと心に決めるのだった。

▶NEXT:4月24日火曜更新予定
食事会後に飛び交うLINE。そこで犯してはいけないタブーとは?



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