シバユカ:モテ男との恋愛は一か八か…勝機を掴むのは、磨き抜かれた直感をもつ女

シバユカ:モテ男との恋愛は一か八か…勝機を掴むのは、磨き抜かれた直感をもつ女

−男に頼って、何が悪いの?−

「恋の大三角形」に登場したゆるふわOL・“シバユカ”は、慶大経済学部卒の学歴を有していながら、大手不動産会社の役員秘書に甘んじている。

“結婚ありき”の人生を描くシバユカは婚活に勤しむが、早々にお食事会は無意味だと悟る。

THE港区女子のしたたかさに惑わされたりしつつも、元カレ・祐介の助言や師事している料理家・留美先生夫妻の理想的な姿に、目指すべき姿を再確認。

そんな中、慶応テニスサークル時代の先輩・一ノ瀬大地と再会。

昔からシバユカに好意を持っていたという彼に初デートで直球告白されるが、友人・梨奈から「先輩には婚約者がいる」と聞かされ…!?



彼は、嘘をついている?


デートの約束をしていた週末、一ノ瀬先輩はBMWのカブリオレで私を迎えにきた。

初デートから2ヶ月近く。ふたりで会うのも、かれこれ5回を数えるだろうか。

今回泊まりで軽井沢に行こうと誘われ迷いながらもOKしたのは、私の中でもいよいよ彼の存在が大きくなってきたからだった。

しかし−。

「俺も軽井沢、久しぶりなんだ。一緒に行けて嬉しいな」

助手席に乗り込む私に、一ノ瀬先輩は穏やかに微笑む。

リネンのシャツにジーンズ、薄いグレーのニット。

そのシンプルな装いも、高級車も、甘いフェイスに長身の彼に驚くほど馴染んでいる。すべて当たり前にそこにある、といった風情だ。

それは何も彼のせいではないが、私は一ノ瀬先輩の恵まれた境遇をほんの少し呪った。

“欲するものは、すべて手に入れて当然”

そんな風に思われては、困るのだ。


「ディナーは旧軽にある『オーベルジュ ド プリマヴェーラ』って店を予約した。昔よく家族で行ったんだけど、すごくいい雰囲気だからユカちゃんもきっと気にいると思う」

…おそらく彼はそこで、もう一度私に告白しようとしているに違いなかった。

しかし−。

−私、一ノ瀬先輩の婚約者だって女に会ったのよ。

梨奈の声が蘇る。

「俺を信じてほしい」と言った彼の目は、本気だった。嘘があったとは思えない。

私が、判断ミスをしているのだろうか?


イケメン・爽やか・御曹司の暴かれた秘密を知ってしまったシバユカ。二人は軽井沢へ小旅行に出かけるが…

女友達からの忠告


「本当に偶然だったんだけど、イベント会社でボスの秘書っていうか雑用をしてる子でね。確かどっかの社長令嬢かなんかのお嬢様よ。

打ち上げで隣になったから色々話してて、私が慶応卒だって言ったら一ノ瀬先輩の名前が挙がって。私、彼の婚約者なんですって言うもんだから驚いたわ」

あの夜、梨奈はそう早口でまくし立て、最後に私を諭すよう静かに告げた。

「シバユカのことだから大丈夫だとは思うけど…一ノ瀬先輩って昔から女癖悪いじゃない?あんまり深入りしないのが身のためかも」

「そうね…教えてくれてありがとう」

目眩を感じながらかろうじてそう答えたけれど、その事実が私に与えた衝撃は想像以上で、その証拠に、私の声は自分の耳にも震えて聞こえた。




覚悟を決めるとき


「着いたよ」

一ノ瀬大地の(正確には、両親所有の)別荘は中軽井沢の千ヶ滝別荘地内にあり、傾斜地をうまく利用した眺望抜群のログハウスだった。

遮るもののない開放的なリビングを中心に、広々としたバスルーム、そして3つの寝室すべてが平屋におさめられている。

休暇を楽しむためだけに建てられたのだろう。THE別荘といった、見るからにとても贅沢なつくりだった。

「ユカちゃん、ひと部屋使ってくれていいから」

一通りの案内を終え、彼が遠慮がちに、しかし反応を伺うように私に告げる。

その言葉に、私は「今しかない」と覚悟を決めた。



「一ノ瀬先輩…婚約者がいるって、本当?」

口を開いたら、自分でも思う以上に咎めるような口調になった。

「え…?」

彼は私の言葉にわかりやすく目を丸くした。が、すぐに落ち着きを取り戻す。

覚悟を決めたように向き直ると、まっすぐに私を見据えた。

「それ、誰に聞いた?…ってまぁいいか、そんなことは。婚約者というか…確かに少し前に、親の勧めで見合いはした。でも俺はすぐに断ったよ。

もしかしたら彼女の方は気に入ってくれてて、それでそんな話になってるのかな。よくわからないけど…」

弱ったな、と頭を掻く彼は、私にはやっぱり嘘を言っているようには見えない。

−一ノ瀬先輩って、昔から女癖悪いじゃない?深入りしない方が身のためかも。ー

梨奈はそう忠告したが、しかしながら“女癖が悪い”というのはモテ男・一ノ瀬大地に抱く私たちの勝手なイメージでしかない。

そもそも2つ年上の彼とはキャンパスが被らないため、梨奈も私も一ノ瀬先輩の恋愛遍歴をつぶさに知っているわけはないのだ。

しかしどちらにせよ、彼の本気を確認しなければ、先には進めない。

「…前にも伝えましたけど、私は遊びの恋愛をする気はないんです。決まった相手が他にいるなら私、ここには泊まれない。遅くなる前に帰ります」


毅然とした態度に、一ノ瀬の反応は…そしてついにシバユカも覚悟を決める

この時、もし彼が腕を掴んだり強引に引き止めるなどしたら、私はきっと頑なに拒んでいただろう。

しかし彼の反応は、私の予想に反するものだった。

「…ちょっと待って。そんなに俺のこと信じられない?」

そう呟く一ノ瀬先輩の声はひどく悲しい響きで私の耳に届き、ハッとして見上げた彼の瞳はまるで子犬のように潤んでいた。

それは私に、信じてあげたい、と思わせる魔力を宿していた。

「ユカちゃんに信用してもらいたくて、俺なりに色々努力してるつもりなんだけどな…」


淋しそうに呟く彼の言葉もすべて作戦だというなら…潔く、私の完敗だ。

しかし一ノ瀬先輩とふたたび目と目が合ったとき私は、騙されているならそれでもいい、と思ったのだ。

私はもうすでに、一ノ瀬先輩に恋をしていたのだろう。

そしてその瞬間をすかさず捉えるように、彼は私を抱き寄せ、唇を重ねたのだった。



24歳の秋。

その日の夜、『プリマヴェーラ』でディナーを楽しみながら私は一ノ瀬先輩に改めて告白をされ、私は彼と正式に付き合いを始めることになった。

「30歳になる前には、今勤めてる商社は辞めて家業を継ぐことになるはず。そしたらきっと今よりさらに仕事三昧になってしまうと思うけど…。

だからこそ、ユカちゃんには自分の好きなことをして楽しんで欲しい。料理家になる夢も、できる限りサポートしてあげたいと思ってるよ」

私は、私の夢を尊重し応援すると言ってくれる彼を、信じることに決めた。

周りが何を言おうが、男女の関係などというものは、当事者にしか決してわからない機微がある。

最後に頼るべきは、自分の直感でしかない。だからこそ女は、ここぞという時のために、直感を磨きぬいておくのだ。

「ありがとう。私も、先輩…大地くんをしっかりサポートできるように頑張るね」

甘い空気に微笑み合う私たちは、このまま結婚へ向けてまっしぐら…の、はずだった。




元カレの誘い


軽井沢から戻って…つまり大地と付き合い始めてから1ヶ月が経とうという頃だった。

“久しぶりに飲もうよ”

珍しく残業でオフィスに残っていると、視界の隅でスマホが光るのが見えた。

差出人は、学生時代の元カレ・祐介。久しぶりの連絡だった。

その日はちょうど大地と約束もしておらず、留美先生のお手伝いもなかったから、私は軽い気持ちで「OK」のスタンプを送り返す。

送ってしまった後、化粧室でメイク直しをしながら、ふと“大地に悪いかな”という思いがよぎったが、まぁ今さら祐介と何があるという訳でもない。

むしろ祐介に大地のことを報告しておこう、などと考えながら、私はいつも通りの気軽さで、彼が指定した赤坂に向かうためオフィスを後にした。

しかしこれが、大きな間違いだった。


▶NEXT:4月24日火曜更新予定
一ノ瀬との結婚を阻む、トラブル発生!?


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