「辛いのは、裏切られたと思うから」夫の浮気の真相に愕然とする妻を突き動かした、ある言葉

「辛いのは、裏切られたと思うから」夫の浮気の真相に愕然とする妻を突き動かした、ある言葉

一見、何の問題もなく幸せそうに見える仲良し夫婦。

けれども彼らの中には、さまざまな問題を抱えていることが多いのだ。

仲良し夫婦だと思っていた北岡あゆみ(32歳)は、あるメールをきっかけに、夫である樹が浮気をしていることを知る。

あゆみは、樹と浮気相手の由香里、さらには探偵の星川を入れた4人で、話し合いを行うことにした 。そこで、メールの送り主の話になり、星川がある一枚の紙を差し出した。



「メールの送り主は、一体誰なのよ…」

浮気相手の由香里との話し合いの中、あゆみがそう問いかけると、探偵の星川がある地名が書かれた紙を差し出した。

それを見て、由香里が言った。

「元夫の…実家のある場所です」

「やはり、そうでしたか…」

浮気騒動の全ての始まりだった、一通のメール。星川はすべてが繋がったのか、小さくうなずいてから、皆に説明した。

「あゆみさんにメールの話を聞き、調べさせて頂きました。フリーアドレスだったので難しかったのですが、どこの地域から送られたのか調べることができました。メールの犯人は多分、神山さんの元ご主人でしょう」

星川の推測は、こうだった。

由香里の元夫が、なんらかの形で樹との関係を知った。けれども、知ったのは離婚後で、もう何もできない上に離婚前から二人に関係があった証拠もない。未練の残っていた彼は二人を別れさせるべく、または二人に罰を与えるべく、あゆみにメールを送った。

あゆみの会社のメールは、名前と会社のドメイン名で構成されている。そのことを知っていれば、メールを送ることができたのだ。

「そんな…。やっとストーカー行為をやめてくれたと思ったのに……」

よほどの衝撃だったのか、由香里は言葉をなくしているようだった。その様子から、本当に何も知らなかったことが窺えた。


全ての真相を知ったあゆみは…?

夫婦とは


「実は…離婚してからもしばらく、ストーカー行為のようなことをされていて…。でも、警察に相談して、注意をしてもらってからはパタリと嫌がらせは止んだんですけど……」

由香里の元夫は、彼女に近づけない代わりに、あゆみにメールで知らせたのだろう。

結局、あゆみたちはこの夫婦の内輪揉めに振り回されていたのである。そう思うと、怒りを通り越して苦笑いするしかなかった。

「すべての事実確認はできました、ご協力ありがとうございます。では、私はそろそろ失礼します…」

星川はそう言って、さっさと立ち去ろうとした。そしてあゆみも「私も、もう聞きたいことはありません。これで終わりにしましょう」と、その場を締めた。

もうこれ以上、この場に居るのが耐えられなかったのだ。

由香里と樹が別々に帰るのを確認した後、あゆみは今日の礼を言おうと、星川の元へ駆け寄った。

「星川さん、今日は本当に、ありがとうございました」

「いえ、仕事のうちです」

相変わらずそっけない返事だが、今日は星川がいて本当に心強かったと改めて思った。

「とりあえず、女性側が不倫の継続性について自供しました。どうしますか、慰謝料を請求しますか?ここからは私の管轄外ですが…」

たしかに当初は慰謝料を取るかどうか、ということも視野に入れていた。けれども今のあゆみは、そんなことはどうでも良いと思っていた。女性の口から樹との関係を聞かされ、予想以上に深く傷ついていたのだ。

「いえ…結局、どうするべきか分からなくなりました。自分が求めているのは、慰謝料というかたちではない気がして」

「そうですか、まぁ急がなくても後からでも請求はできますしね。そこはお任せします」

淡々と話す星川に、少しだけ、あゆみは気持ちを吐露したくなった。

「星川さん…。なぜ…なぜ、裏切られた方ばかりが、こんな辛い思いをしなければならないのでしょう……。夫婦って、一体何でしょう?」

あゆみの口から溢れた問いかけに対して、星川はまた、変わらず淡々と答えた。

「辛いのは、“裏切られた”と思うからではないですか?」

星川からの回答に、あゆみは意図が読めずに怪訝な表情を見せる。

「夫婦になると言うのは、一生を共にするということです。その間に、色々あるのは当然なんです。大切なのは、何かがあったときにどう思うかです 」

星川の発言の真意がつかめず、あゆみは真剣に耳を傾けた。

「裏切られると言うのは、辛いことだと思います。けれど、そこにいつまでも捕われていては、ずっと苦しくて相手を恨むばかりです。”裏切られた”ではなく、”どうすれば自分がこの先幸せになれるか”…そこに注力できれば、きっと苦しさも紛れるでしょう」

たしかに…星川の言うことはもっともだ。

けれど、人はそんな風に割り切って考えられるものだろうか?


星川の言葉の意味とは…?

あゆみへの、最後のエール


「偉そうなことを言ってすみません。ただ僕は、傷ついた人にこそ、幸せになって欲しいと願っています」



そう言って、星川は少しはにかみながら穏やかに笑った。

一人称が”私”から”僕”になっている。これは仕事としてではなく、彼なりの応援のメッセージなのだろうと、あゆみはその言葉を素直に受けとめることにした。

「では、もうひとふんばり、頑張ってください。北岡さんが後悔のないよう、思う存分悩んで苦しんで、幸せになれる道を模索してください。自分で人生を決められると言うことは、ある意味幸せなことです」

星川の最後の言葉が少し気になった。彼には彼なりの人生があったのだろうか。

「では後日、本日の報告書と音源をお渡ししますね」

それだけ言うと、星川はさっさと帰って行った。相変わらず、ペースを崩さない男だ。

一人になった途端、脳裏に今日のやりとりが蘇ってきて、あゆみはその場でうずくまった。こんなに辛い状況から、幸せになれる道などあるのだろうか…?そう思うと、途方もない道のりのように感じて、足が動かなくなる。

—大丈夫、今がどん底なんだとしたら、あとは這い上がるだけ。これからは、上り坂を登るんだ。

あゆみは自分に無理矢理そう言い聞かせ、何とかタクシーを止めて、家へと向かった。



それからの数日間、あゆみはまるで何事もなかったかのように日常を淡々と過ごしていた。あまりの衝撃の強い出来事に、何かを感じることも考えることもできなかったのである。

そんな風に過ごしていたある日、清香からLINEが届いた。

「皆さんにご相談があります。集まっていただけますか?」

いつにも増して真剣なそのLINEに、何かあったのだろうか、と心配になったあゆみと紀子は、また3人で集まることにした。

今回は清香が選んでくれた『エカオ』にした。様々なワインが楽しめて、富山から届く鮮魚のガーリックオイルソースのグリルがたまらなく美味しいと評判の店だ。

3人が揃うや否や、清香が神妙な面持ちで口を開く。

「今日集まって頂いたのは、ブレストを行うためです」

「ブレスト…?」

普段3人の会話では発しないような言葉に、あゆみと紀子はぽかんとした。一体何の話をしているのだろうか?

「お題は…、『どうやって婚約者に復讐するか』です!」

「復讐…!?」

紀子とあゆみは面食らった。

「どうしたの…?何があったの…!?」

「それが…彼がなんだか最近おかしいと思って、思い切って聞いてみたんです!そしたら…」

清香は悔しさで顔を歪ませながら、話を続けた。

「浮気をしかけたって言うんです!バーで知り合った女性と、一夜限りでって…。でも、直前で我に返ってやめたって言うんですけど、そんなの信じられません!!」

いつもの冷静な清香らしくなく、感情があらわになっていた。

「だから、何か復讐というか罰を与えてやりたいんです!じゃないと、気持ちが収まりません!!」

清香の妙な話に、紀子がのっかった。

「良いわね、私も丁度、旦那に良い罰はないか、考えていたの」

そうして3人は、冗談とも本気とも思える復讐方法を、色々と思案し始めた。


3人の考えた復讐方法とは…?

それぞれの思い


「じゃあ、定番なところで坊主にしてもらうとかは?」

「坊主…。でもすぐに伸びて忘れちゃいそうですよね」

紀子が色々と提案する中、「あーでもない」「こーでもない」と3人は夢中になって話した。

「そうね…。あとはバーキンとか、ショパールのハッピーダイヤモンドを買ってもらうとか…」

「いいですね!でも、お金だけで解決っていうのも…。“二度としない”って決定的に思わせたいというか… 」

「それじゃ、下着ぜんぶに“清香”って大きく刺繍を入れるとかどう?」

紀子の突拍子もない発言に、それまでずっと聞き役だったあゆみは、思わず笑ってしまった。いい大人が、一体何を言っているのだろうか。

「…それ、名案ですね!下着を見るたびに清香ちゃんを思い出していたら、浮気できないですもんね 」

あゆみはその姿を想像したらおかしくなってしまい、クスクスと笑い出したら止まらなくなってしまった。ここ数ヶ月、こんなに笑ったのは初めてだ。

するとそれにつられ、紀子も清香も口を大きく開けて笑う。

あの話し合い以来、あゆみは初めて気持ちが揺れ動くのを感じた。

辛いことは、真正面から受け止めようとすると身動きがとれなくなる。だからこそ、時にはあらぬ方向から解決策を考えてみて、自分の心を少し軽くしてみることが大切だ。

清香もきっと、そうしたかったのだろう。

「あー、何だかたくさん笑ったら、こんなに悩んでいるのが馬鹿らしくなっちゃった。あんな男たちのことで、何で私たちがこんなに悩まないといけないのよ!」

「本当ですよ!やられた方ばかりがこんな悩んで辛い思いして…、馬鹿みたい」

「本当…腹がたつ…!」

それぞれが思い思いに感情を吐露した。こんなに素直に怒りを口に出したのも、久しぶりな気がした。

「それでも…。どうしようもないけれど、愛してるのよね…」

紀子が最後にポツリと言った言葉が、胸に痛かった。愛しているからこそ、こんなに辛いのだ。

「あー、何だかスッキリした!スッキリしたら、お腹減っちゃった!」

「私も!デザート頼みますか?」

紀子と清香の話を横でぼんやりと聞きながら、あゆみは星川の言葉を思い出していた。

—自分が幸せになれる道を、見つけてください。

もう、うじうじと相手を責めて悩むのはやめよう。自分の幸せのためにどうするのが一番良いのか考えて、一歩、前に踏み出そう。

この日をキッカケに、あゆみは静かに、だが力強く、そう心に誓ったのだった。


▶NEXT:5月3日 木曜更新予定
いよいよ最終回!それぞれが出した結論とは…?



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