「彼は私にぞっこん♡」円満をアピールをしてくる“円満大王”に限って不幸せという悲しい現実

「彼は私にぞっこん♡」円満をアピールをしてくる“円満大王”に限って不幸せという悲しい現実

東京に“ネブミ男”と呼ばれる男がいる。

女性を見る目が厳しく、値踏みすることに長けた“ネブミ男”。

ハイスペックゆえに値踏みしすぎて婚期を逃したネブミ男・龍平は、恋愛相談の相手としてはもってこい。

相手を値踏みするのは女だけではない。男だって当然、女を値踏みしているのだ。

そこで値踏みのプロ・龍平に、男の値踏みポイントを解説してもらおう。

これまでに、姫気質な「ワタシ姫」春菜や、婚活に必死になりすぎてにゃんにゃんOLから猫娘と化した紗弥加、ぬり化け女子の絵美里や自称サバサバ系の鯖女子・麻里子を見てきた。

今週、彼の元にやってきたのは...?



「龍平さんって、いつ会っても変わらないですよね」

そう言って眩しいほどの笑顔を向けてくる由香子。

彼女と龍平の出会いは、5年ほど前に開催された食事会だった。

当時は二人ともまだ若く、何度かお互いの友人を招集して食事会を開いた記憶がある。

(その時はまだ結婚に対して夢があり、龍平自身も、自分がこの歳まで結婚せずにこじらせることになるなど想像していなかったのは言うまでもない)

「そうかなぁ?由香子もあまり変わらないと思うけど」

出会った時より少し歳は取ったものの、由香子は相変わらず美しく、肌もツヤツヤしている。

由香子と会うのは1年ぶりくらいだ。

たまにLINEでのやり取りはあったものの、久しぶりに食事へ行きたいと彼女から連絡が来た時、龍平はピンと来た。

「で、今日はどうしたの?婚約でもした?」

「違うんです。彼氏はいるんですが、結婚はまだで...」

一瞬だけうつむくと、由香子はすぐに顔を上げて明るい顔を向けてきた。

こうして今夜は、彼氏からなかなかプロポーズをされない女の、悲しい習性を龍平は目の当たりにするのだった。


幸せそうにしている女は、危険信号?

「へぇ。その彼氏とは長いの?喧嘩でもしたのか?」

—なんだ、恋愛相談か。

龍平はいつものことだと思い、ぷっくりとした厚みのある『鮨 竜介』の大トロの握りに視線を戻す。

龍平は何故か昔から、女性の恋愛相談に乗ることが多かった。

話しやすいのか、男として見られていないのかは分からないが、“的確なアドバイスをくれる”と、女性陣からの信頼は厚いのだ。

—はぁ...なんて美味しいんだ。

赤酢のシャリで握られた大トロは絶品で、口の中で溶けていく過程を一人でゆっくりと堪能する。

ーやっぱり、鮨は最高だ。

そんな大トロの余韻に一人で浸っていると、由香子から思いがけない一言が飛び出してきた。



「違いますよ〜付き合ってもうすぐ3年になるんですけど、喧嘩なんてしたことがないくらいに仲が良くて。周りから引かれちゃうくらいにラブラブです」

「...そ、そうなんだ。それは羨ましい限り」

今日に限っては、恋愛相談ではないらしい。勝手に恋愛相談だと決めつけていたことを、龍平は一人反省する。

しかし今日呼び出された理由を知るため、質問を続けてみる。

「どうした?それ以外に、何か悩みでもあるの?」

そしてここから、由香子の中に隠れていた妖怪がニュルッと顔を出してきたのだ。

「悩みなんて、ないんです。私今、最高に幸せなんですよね〜」

「...…」

「彼は35歳の外銀マンで、すごく優しくて。私の誕生日にはホテルのスイートルームを予約してくれて、部屋に着いたらバラの花束が置いてあったんです!」

「へ、へぇ。それはすごいね。まるでプロポーズだね」

「それだけじゃなくて、大好きだよって何かある度に言ってくれるし、記念日とかは必ずお祝いしてくれて。Instagramで、二人だけの専用アカウントもあるんですよ〜。それはさすがに恥ずかしいから見せられないですけど♡」

話の途中から、龍平の耳に由香子の言葉が入らなくなっていく。

ーでた…。

龍平は、由香子の話はろくに聞かず適当な相槌を返しながら、残念な気持ちになった。

由香子がこのタイプの女になるとは、出会った当初からこれまで、思いもしなかったからだ。

—円満をアピールする“円満大王” ...。

円満大王と化した女は、大抵幸せではない。

龍平は、鮨と円満大王を交互に見比べながら、彼女の悲しい真実へと思いを馳せるのだった。


他人に無駄な幸せアピールをしてくる女の胸のうち

円満大王の悲しい真実


「ね、だから私たちって本当に円満なんです♡」

なおも由香子は喋り続けていた。

だが龍平が、とりあえず食事を楽しもうと決意したちょうどその時、由香子が本音を漏らした。

「でも周りの友達はみんな結婚していて、私たちだけまだなんです...

でもそれは結婚制度に縛られなくても絆が深い証で。いつでも結婚できるからこそ、今は敢えて二人の時間を楽しもうねって言っているんですよ〜」

「由香子は、その彼と結婚したいの?」

「したいですけど、今でも十分幸せなので。すごく順調ですし、今度のハワイ旅行はカハラのスイートに泊まろうか、って話してて。私、本当に愛されてるなぁって思います♡」

やはり、由香子だって本当はその彼と早く結婚したいなど、幾つかの不安や不満を抱えているのだろう。

ただ彼女はそれを認めたくないのだ。

自分がそれを認めてしまったら、きっと彼女の中の何かが崩壊する。

だから由香子は、円満大王と化して幸せアピールに必死になる。

そのアピールは、周りに向けたものではなく、自分自身へのアピールなのだ。

友人たちが皆結婚したり子供が生まれて幸せになっていく中で、一人だけ取り残されたと思っている彼女の中では、“円満だ”と自分に暗示をかけないと、バランスが取れなくなってしまう。

自分の弱さや悩みを隠すために、由香子は円満大王に変身してしまったのだ。



さらに、自分に暗示をかけながら、誰かに“すごいね、さすがだね、幸せそうで羨ましい”と言われることで、彼氏が埋めてくれない寂しさや不安を埋めるのだろう。

由香子の彼氏が、なぜプロポーズしないのかはわからない。

もしかしたら本気で付き合っているわけではないのかもしれないし、単純に結婚願望がないだけなのかもしれない。

本当のところは、二人にしか分からない。

龍平はただ、由香子が円満大王ではなくなり、心の中で幸せを噛み締められる日が来ることを祈るばかりだった。

「ほら、こんな旨い鮨が目の前にあるんだから。とりあえず美味しいものを食べようよ」

龍平はもう一度、鮨と向かい合う。大将が握ってくれた鮨は、今日も安定の美味しさだ。

「あぁ、幸せだなぁ」

一人で“旨いなぁ”と唸りながら、龍平はしみじみと幸せを感じた。

そして、鮨を食べただけでこんなにも幸せな気分になれる自分は単純で良かったと思ったのだった。


▶NEXT:5月3日木曜更新予定
リッチな男の血を求め...吸血鬼・男キラーの恐怖


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