セカンドの逆襲:デートはドタキャン、LINEは未読。最高の一夜を過ごした恋人が、変異した理由

セカンドの逆襲:デートはドタキャン、LINEは未読。最高の一夜を過ごした恋人が、変異した理由

ー夢は極上の男との結婚。そのためには、どんな努力も惜しまない。

早川香織、26歳。大手IT企業の一般職。

世間は、そんな女を所詮「結婚ゴールの女」と馬鹿にするだろう。

しかし、先入観なんぞに惑わされず、彼女の“秘めたる力”をじっくりと見届けて欲しい。

一般OL vsハイスペ男との熾烈な戦いが、今、幕を開ける...!

香織が“最高の彼氏”と崇める、南拓斗。しかし、大きな秘密があった。



南拓斗、もうすぐ30歳。父の転勤で高校生からニュージャージーに移住し、大学はそのままニューヨーク州にある有名私立大学へと進んだ。

そこで出会ったのが梓(あずさ)だ。僕より二つ年下の彼女も、高校生の時にアメリカに来たらしく、同じ日本人ということですぐに仲良くなった。

けれど、お互いそれなりに相手がいたので、すぐに付き合ったわけではない。友人関係を続けているうちに、ある時フリーになるタイミングが重なった。

「ねぇ、私たち、付き合ったらうまく行くと思わない?」

そんな彼女の言葉をきっかけに、もともとお互いに惹かれ合っていた僕たちは、自然と付き合うことになった。

大学卒業後、二人とも日本で就職をすることにした。両家族とも日本に帰国していたし、僕もそろそろ日本が恋しくなっていたからだ。

けれど、彼女は入社4年目で、研修を兼ねた新規事業の立ち上げのために、再びアメリカに行くことになった。

「急だけど、再来週に日本帰国が決まったの。希望の部署に配属されることになったの、楽しみ」

もともと自立した関係だった僕たちは、特に変わらず2年ほど前から、遠距離恋愛をしていた。

「やっと帰国するんだね。うん、うん、俺も愛している」

LINE通話を切ると、肌寒さとともにサーっという雨の音が耳に響いた。その途端、ふと我に返る。

「梓、帰国か……。香織は、どうしようか…」

用心深く窓から香織の姿を確認する。何も気がついていないように、幸せそうな笑みを浮かべて食器を洗う姿が目に入り、少しホッとした。

ーまぁ、そのうち…

そうして僕は、何気ない顔をして、暖かい部屋へと戻るのだった。


香織が感じた拓斗の異変

香織:何かがおかしい


何か…、最近何かが変なのだ。

と言っても、私のことじゃない。私自身は、相変わらず絶好調で怖いくらいだ。変なのは…そう、自慢のハイスペック彼氏、拓斗のことである。

前回私の家へ招待した時は、それはもう完璧と言えるお家デートだった。

拓斗が来る前に部屋は念入りに掃除したし、いい匂いがするようにルームフレグランスも新しいものを新調した。

そしてデートのメインだった料理は…、史上最高に素晴らしい出来栄えだった。拓斗だって目に涙を溜めて感動していた(に違いない)し、何よりも、プロポーズ(のような言葉)まで引き出せたのだ。

それなのにー。



あの日、拓斗はいつもと変わらず私と素敵な夜を過ごした。

朝も拓斗のために、鯵の干物に明太子入りのだし巻き卵、茄子のお味噌汁に大根と人参の酢の物、そしてわざわざ土鍋で炊いたご飯をせっせと用意した。お茶には高級八女茶を選んだ。

しかし「美味しい」と食べてくれたものの、何となく前日とはテンションが違った。

そしてそれ以来、連絡が来る頻度が徐々に減少している。本人は仕事が忙しいと言っていたが、何だか腑に落ちない。

もしや、拓斗は朝食はパン派だったのだろうか。あるいは、寝言で変なことを口にしたかも知れない。いや、それとも...。

ー分かった。拓斗ってば、もう“マリッジブルー”になっちゃったのかも...!

相手がどれほど愛する女性とはいえ、いざ結婚となれば、色々と不安にもなるのだろう。男らしい拓斗にも、案外繊細なところがあるのだ。

ーこれからは“妻”として、そんな拓斗も支えていかなくちゃ。

「ブブッ」

そうして前向きになったとき、デスクの上のスマホに、LINEのポップアップが表示された。

「元気?今夜、ご飯行かない?」

拓斗からだと思い一瞬喜んだが、名前のローマ字を見て、少しだけ肩を落とす。

ーRIE…なんだ、里衣か。でも…私も会いたい!

それに、第三者に拓斗のマリッジブルーのことを相談してみるのもアリだろう。彼の負担を軽減させてあげるのも、未来の嫁の仕事である。

里衣は、大学時代からの大親友だ。私とは真逆な性格で、今は都内の大手電気メーカーでバリバリと働いている。

「OK!会おう!」


親友・里衣の嫌な予感


場所は恵比寿にある『リストランテ・ダ・バッボ』。苺とスプマンテのスパークリングワインを美味しそうに一口含むと、香織はニヤリとしながら里衣に言い放った。

「私、拓斗と結婚するの!」

「え、なになに!?拓斗さんって、香織が史上最高って言っていた彼氏?いつ?」

香織からの思いがけない報告に、里衣は好奇心をそそられる。

「いつ…かはまだ決まってないの。でも、そろそろプロポーズされると思うの!」

香織の予想外の言葉に、クールにシャンパーニュのグラスを傾けていた里衣は、思わず手を滑らせそうになった。

「え…、どういうこと?プロポーズされた訳ではないの?」

「うん、まだね。でもこの間のデートで、プロポーズもどきはされたの。“ずっとこうしていたい”って。これって、もうプロポーズも一緒でしょう?」

あまりにも自信満々な表情で語る香織に、里衣はツッコむことを諦めて、静かに彼女の話を分析することにした。

「それにね…、拓斗ったら可愛いの。もうマリッジブルーになっちゃったみたい。気が早いよね」

ー拓斗さんがマリッジ…ブルー!?まだプロポーズもしていないのに…?

気が早いのはあなたよ、と思いながらも、里衣は必死で言葉をシャンパーニュとともに飲み込む。香織はもともと素っ頓狂なところがあるが、今日は格別だ。

「ええっと…、ちょっと整理させて?拓斗さんは、プロポーズはまだしてないのよね?それなのに、彼がマリッジブルーだと思う根拠って…何?」


香織の考える根拠とは?

ポジティブな女


里衣の冷静な問いの意図が掴めていない香織は、得意そうな顔で話し続けた。

「最後にデートした日…1ヶ月以上前なんだけど、その時は最高だったの。私の渾身の手料理に感動して喜んでくれて…。そこで“ずっとこうしていられたら最高だろうな”って言われたのよ。これってもう、プロポーズよね?」

里衣は、トリュフがたっぷりのった手打ちのタリオリーニを頬張る手を止めた。何と返そうかと考えている中、香織は気にせず話し続ける。



「でもね…その後から徐々に連絡が取りにくくなったの。それまではその日中には返信が来てたのに、2、3日既読がつかないことも増えて。その上…」

「その上…?」

里衣には、もはや嫌な予感しかしなかった。

「デートも仕事だとかでドタキャンされたし、電話をしても折り返しがLINEの一言だけなの。でも、嫌われるようなことは特に思い当たらない…。ってことは、やっぱりマリッジブルーなのかなって…」

香織は良くも悪くもかなりのポジティブ思考の持ち主だ。しかし、こんな時のポジティブさは、たいてい良い結果をもたらさない。

里衣は目の前の親友が傷つくことになるのを恐れ、慎重に言葉を選んで諭すように言った。

「香織…それってさ、本当にマリッジブルーかな?マリッジブルーって、普通は婚約した後でなると思うんだよね…。本当に、原因は他に思い当たらないの?」

香織は少し納得が行かない顔をしながらも、「うーん」と考え込む。けれど、本当に思い当たる節がないようだ。

「私が香織の立場だったら、冷められた、とか、他に女性ができたのかなって思うよ?本当に仕事が忙しいのかも知れないけれど、1ヶ月以上もその状態だったら、ちょっと心配になる…。一度きちんと確かめてみたら?」

里衣の反応は予想外なようで、香織は一瞬考えて、いやいや、と切り返す。

「他に女性…?ないない!そりゃ、拓斗はモテるけど…彼、私に夢中だし!」

香織は強く否定したものの、里衣につられて心の奥に不安の種が芽生える気配を感じたのだろう。けれどそれに目を向けたくなかった彼女は、さらに否定することで、その種を根絶しようとしたのだ。

「それに、私は彼を信じているの。心配してくれているのは分かるけど、大丈夫よ。…それよりさ、私語学を勉強しようと思っててね…」

香織のシャットアウトに、里衣は何も言えなくなってしまった。ここは親友の強さを信じよう、と再びタリオリーニを口に運びながら、彼女の幸せを願うのだった。


香織:聞きなれた苗字が、なぜここで?


「今日は誘ってくれて、ありがとう!久しぶりに会えて楽しかったー」

ひとしきりの楽しいおしゃべりを終え、素晴らしい料理を堪能した香織は、ご機嫌に店を出ようとしていた。

その時、ふわりとディオールの香水の匂いに包まれ、思わず立ち止まる。それは、拓斗が昔好きだと言った香りだった。

匂いのする方を見やると、今入って来たばかりのモデル体型のゴージャスな美女が見える。

ー綺麗な人…。

思わず見とれていると、店員がその美女に「おひとりさまですか?」と話しかけた。

「いえ。えっと、”ミナミ”で2名で予約していると思うのですが…」

「ミナミ様ですね、お待ちしておりました。お連れ様もご到着されています」

香織はその聞き慣れた苗字に、無条件にビクッと反応してしまった。


▶︎NEXT:7月2日 月曜更新予定
モデル体型のゴージャス美女の相手とは?香織はまさかの鉢合わせか?



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