東京離婚事情:「子供ができない」。残酷な現実に直面した夫婦が下した、苦渋の決断とは

東京離婚事情:「子供ができない」。残酷な現実に直面した夫婦が下した、苦渋の決断とは

夫婦とは、不思議なものである。赤の他人同士が一緒になり、そして家族となって家庭を築いていく。

しかし、厚生労働省が発表している人口動態統計調査によると、2017年度で21万2,000組の夫婦が離婚している。

—永遠の愛を誓いますか?

そう誓ったはずなのに、どうして離婚を選んだのか。踏み留まった方が良かったのか、それとも離婚して正解だったのか…。当人たちにしかわからぬ事情。

この連載では、離婚まで至った背景とその原因について探ってみた。

これまでに、6年も交際したのに1年半で離婚した淳平や元嫁の浮気が発覚した太郎に迫った。今週は?



名前:正人
年齢:37歳
職業:広告代理店勤務
年収:1,200 万
結婚歴:6年
前妻の年齢と職業:34歳・元客室乗務員


2年前に離婚したという正人は、爽やかな笑顔と共に待ち合わせ場所である『アンダーズ タヴァン ラウンジ&バー』にやってきた。

正人は、大手広告代理店勤務で仕事も充実しているようだ。見た目も良く、程よい日焼けは週末のゴルフによるものだという。

「前妻の真由香との結婚生活は、トータルで6年間でした。楽しいことばかりではないけれど、それなりに幸せな結婚生活だったと思います」

それまで笑顔だったが、ふと遠くを見つめてどこか懐かしそうな顔をする正人。そして少し神妙な面持ちに変わる。

「あまりこれはオープンに話すことではないと思うのですが…」

そう前置きをしてから、正人は重い口を開いてくれた。


「僕たちが離婚した理由。それは子供ができなかった、ということに他なりません」


迫られた苦渋の決断。離婚に至るまでの経緯とは?

楽しかった最初の3年間


「僕と真由香が出会ったのは、先輩が主催した食事会でした」

当時、客室乗務員として勤務していた真由香。綺麗で聡明な雰囲気に正人が一目惚れし、すぐに交際が始まった。

「彼女が仕事を辞めたがっていたこともあり、交際して約1年半で結婚。物凄く豪勢な生活ではないけれど、それなりに幸せな生活でした」

真由香は結婚を機に退職。しばらく悠々自適な専業主婦を楽しんでいたが、夫婦で武蔵小杉のタワーマンションを購入したのをキッカケに、自宅でサロンを開き始めたそうだ。

「何て言うんでしたっけ...お花をアレンジして何かを作ることを。そんなようなことを教えていました」

タワーマンション住まいに、代理店の夫。そしてサロネーゼの妻。

絵に描いたような東京の幸せ夫婦だったが、暗雲が立ち込めてきたのは結婚して3年が経った頃だった。

「ある日突然、真由香が泣き始めたんです。“子供が欲しいのに、どうして私たち夫婦にはできないんだろうか”、と」



当時31歳だった正人と、28歳だった真由香。

まだ若く、新婚気分が抜けていなかった正人は全く気にも留めていなかったそうだ。

「そのうちできるだろう、と。そんな風に呑気に構えていました」

しかし、真由香の方は正人とは全く違う思いでいたらしい。

周囲は皆子供ができ始め、結婚して月日が経つごとに“お子様はまだなの?”と聞かれる日々。

双方の両親からのプレッシャーも、正人は受け流していたが真由香は真剣に受け止めていたそうだ。

そんな風に、日々焦りが募る一方の真由香に対して、子作りに本腰も入れず、呑気な正人。

「当時の真由香の思いを考えると、本当に悪いことをしたと今でも後悔しています。ただ仕事が忙しかったこともあり、どこか能天気に考えていたんです。

子供なんていつかはできる、くらいに思っていて...」

しかし、無情にも時だけが過ぎ、正人が本腰を入れて子作りに向き合い始めたのは、もうしばらく経ってからのことだった。

「正直、僕は夫婦二人、DINKSでも良かったんです。でも真由香の方は違いました。子供が欲しくて欲しくてたまらない。子供に対する価値観が、決定的に違っていたんですよね」

そこから何度トライをしても子供はできず、二人は不妊治療という道を選んだ。


しかし、これが離婚の引き金となってしまったのだ。


交錯する思い、嵩んでいく費用。しかし意外な結末が待っていた・・・

辛くて長い冬の先に見つけた幸せ


そこから3年間、二人は不妊治療に励んだ。

しかし神様は時に残酷なこともする。

様々な方法に挑み、良いと聞いたものは全てトライしたが、結果は毎回陰性。

どんなに夫婦二人で頑張っても、子供ができなかったのだ。

「精神的にも身体的にもボロボロになっていきました。それだけでなく費用もかかるし、ここまでして子供を作る意味ってなんなのだろうか、と…」

最初は、二人で頑張ろうと手と手を取り合って努力していた。

しかし歳月と費用が嵩むのと比例するように夫婦関係は、子作りに対する意欲の違いから亀裂が入り始める。

生理が来るたびに激しく落ち込み、泣き崩れる真由香。その落ち込みようは、見ている側も相当辛かったそうだ。

そしてそんな真由香をなだめながらも、また次のタイミングが来たら正人自身も無機質な病院で不妊治療をさせられるストレス。

徐々に、二人はそんな苦しい日々に耐えられなくなっていった。

「頑張ることに疲れてしまったんです。このままいったら二人ともダメになる。そう思い、“もう子供は諦めないか”と。提案したのは、僕の方からでした」


何度も、夫婦で泣いた。
何度も、夫婦で話し合い、励ましあった。


しかし結果として、二人は子供を作ることを諦める道を選んだ。それぞれの、幸せのために。

「もう限界でした。これ以上頑張ったら、お互いが自分らしくいられなくなる。そう判断したんです」

そして不妊治療を止めると決断して半年経った頃、真由香の方から離婚を切り出されたのだ。



「真由香の中で、結婚とは幸せな家庭を築くことのステップ。そしてその幸せな家庭には、子供がいることが絶対条件だったんです。そして夫である僕に対する愛情よりも、子供が欲しいという思いの方が強かった、ということでしょうね」

どうしても子供が諦められなかった真由香は、離婚届けを提出した。

どちらも、悪くない。お互いを憎しみ合い、嫌いになったわけでもない。

双方にとって、それは苦渋の決断だった。

「ただ、長く治療をしている中で、あまりにも子作りにフォーカスを当てすぎて、僕たちは“純粋に愛し合う”という大切な思いを失っていっていたのかもしれません」

離婚を決意する少し前に、真由香はCA時代の友人が立ち上げた会社の正社員に雇用されていた。

お互い経済的に自立をしていたこともあり、慰謝料はなく裁判もなし。こうして、6年間にわたる結婚生活は幕を閉じたのだ。

最後に正人が家を出て行く時に、真由香は泣き崩れたそうだ。


「もし子供ができていたら、今でも私たちは幸せに暮らしていたのかな、と...」


正人は、今でもあの時の真由香の顔が忘れられないそうだ。



しかし、この話にはまだ続きがあった。

2年前に離婚した二人。しかし、正人も真由香も再婚していたのだ。

しかも正人の新妻は、現在妊娠5ヶ月目。そしてなんと真由香も、ちょうど先月元気な男児を出産したという。

「皮肉な話ですよね。お互い、パートナーを変えた瞬間に子供ができたんです。しかも自然妊娠で」

夫婦の形は、それぞれである。

正人たちは辛い経験と離婚を経て、各々の幸せを掴んでいた。


▶NEXT:7月26日 木曜更新予定
義母との付き合い、どうしますか?



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