「好きな子に引かれたら凹む…」30歳の大阪男が、東京女には絶対言い出せなかったある秘密

「好きな子に引かれたら凹む…」30歳の大阪男が、東京女には絶対言い出せなかったある秘密

あなたが大阪に抱くイメージは、どんなものだろうか?

お笑い・B級グルメ・関西弁。東京とはかけ離れたものを想像する人も少なくないだろう。

これは、そんな地に突然住むことになった、東京量産型女子代表、早坂ひかりの大阪奮闘記である。

ストーカー気味の隆二にきっぱり別れを告げ、仕事に打ち込むひかりに突然告げられた淳子の退社宣言。

戸惑うひかりだったが、その決意を聞いて、絶対に全国大会で勝とうと心に誓うのだった。



「あかん…俺まで泣きそうや…!淳子さん、素敵やな!」

淳子の退社のニュースを聞いた太郎は、目をウルウルさせながら手にした串カツを「…ウマっ」と頬張っている。

全国大会を翌週に控えた土曜日、『勝つにはカツ!』と、太郎が北新地にある『again』の予約を取ってくれたのだ。

「うん!だから、絶対優勝して、恩返ししたいんだ。」

そういってひかりも揚げたての串カツに手を伸ばす。今までとは雰囲気の違った、カウンターでの“デート”。緊張してしまって、うまく太郎の顔を直視できない。

加えて、普段はカジュアルな服装を好む太郎が、今日はきちんとした恰好をしている。それがなんだかかっこよく見えてしまい、照れくさいのだ。

「絶対大丈夫やって!そうや、渡したいものあるねん!」

そういって太郎が取りだしたのは、小さなお守りだ。

「これな、友達の妹が福娘やってたこと思い出して。願掛けで、その子に今宮戎神社で買ってきてもらってん。商売の神様のお守りやから勝負運はばっちりや!」

―福娘…?今宮エビス…?

聞いたことはある言葉だが、ぴんとは来なかった。しかし太郎が自分のために苦労して手に入れてくれたであろうプレゼントが、嬉しくないわけがない。

「太郎くん…ありがとう!これで、絶対勝てる気がしてきた!」



美味しい串カツをたらふく食べ、大満足で店を出た頃にはすでに22時を回っていた。

大阪駅まで並んで歩くと、ふとした瞬間に手と手が触れる。

ひかりと太郎は、恐らく両思いだ。でもまだ、お互いの気持ちをきちんと口にはしていない。

両思いだけど、付き合っていない。そんな甘酸っぱい期間を長く味わっていたい気もする。けれど、このクリームパンのような手を自分のものにできたら、もっと幸せなはずだ。

「太郎くん、全国大会終わったら、お礼させてね!私、太郎くんがいなかったら、ここまでやってこれなかったと思う…。ありがとう!」

斜め上を見上げると、太郎も目をウルウルさせてこちらを見ていた。

「あかん!そんなん言われたらうれしすぎて死んでまう…!」

太郎が立ち止まり、真剣な顔でひかりの手を握る。

「あんな…全国大会終わったら言おうと思っててんけど…、俺、実はひかりちゃんに隠してることあるねん。」

―か、隠し事?!

まさかのタイミングでの、嫌な予感がする言葉。いいムードは一気に吹っ飛んだ。


太郎の「隠し事」は関西あるある!東京女に受け入れられるのか!?

「あんな、実は俺、実家暮らしやねん!」

―え?なんの話?

「周りの独身のやつらもそうやし、全然なんも思ってなかってんけど、東京やと30近くで実家暮らしやったら引くって聞いたから、なかなか言い出せへんくて…」

胸のつっかえを吐き出すように話す太郎に、ひかりは思わず吹き出した。

「いや、笑うとこちゃうで!実家暮らしって言っても、別にマザコンとか借金まみれではないから!会社も実家から通えるし、部屋いっぱいあるから住んでるだけで…ひかりちゃん、引かんといて!!!」

必死で説明する太郎が面白くて可愛くて、いとおしい。どこまで本気なのかわからないけれど、そんなことを気にする必要は、きっとないのだろう。

「引くわけないよ!ていうか、そんなこと隠し事でもなんでもないよー!私もずっと実家暮らしだったし。」

「あー良かった!好きな子に引かれたら俺ヘコむもん。腹以外ヘコみたくないし…。これで安心して、ひかりちゃんに好きって言えるで!」

「いや、もう言ってるじゃん!二回も!」

こんな漫才みたいな告白が自分に訪れるなんて思っていなかったけど、嬉しくて、そして楽しくて。思わず大好きな太郎の手をぎゅっと握ったのだった。



「なんなん、その少女漫画みたいな展開…!ほんであんたのツッコミスキル、確実に上がってるな。」

翌日、大会プレゼンの練習中に、絵美子にデートについての報告をせがまれ、ついつい詳細を話してしまった。

「うん、自分でもあんなツッコミができるようになるとは思ってなかった…。あ、ごめん、浮かれて脱線しちゃったけど、大会は今まで通り全力で燃えてるの!プライベートと仕事は別だからね!」

本番用のメイクをチェックしながら、絵美子が振り返る。

「んー、なんかいいことあったんやったら、仕事にもいい影響でるからどんどん取り込めばいいと思うけどな!プライベートとごっちゃにした方がいい時もあるやん?うちも彼と進展あったし、大会に向けてお肌の調子も最高潮やし、大会にも好印象やろ!」

絵美子の想い人であったサプリ会社の営業マンは、ひかりの目撃情報を元に再開し、今では頻繁に連絡を取り合う仲にまで発展したらしい。

絵美子の言う通り、大阪に来てからはマイナス面を見るよりも、プラスの面を見ることが明らかに増えた。淳子も言っていた、加点方式だ。

「安いから、そんなにおいしくない」と考えるのではなく「まあまあの味なのに、安い」と考えたほうが、人生のお得感が少し増える気がして、ひかりもそう考えるように心がけているが、まだまだ絵美子にはかなわない。

「さあ、もう準備できることは全部やった!あとは、本番、自信もってやるだけやな!待ってろ!東京!」

絵美子と目を合わせ、頷きあう。

全国大会と、淳子との別れの日は、刻一刻と近づいていた。


いよいよ全国大会!大阪チームの運命は…!

いよいよ発表当日。抽選の結果、発表順は6チーム中一番最後になった。

「どの発表も、いい感じだね…。」
「うん。でもうちら負けてへん!絶対いけるって!」

今、4番目の熊本チームの発表がもうすぐ終わりそうなので、30分後には、あの舞台の上に立っているはずだ。

「うちらの前が東京っていうのにも、なんかドラマを感じへん?」
「そうだね…!あ、東京出るよ!」

東京チームが出ていくと同時に舞台袖に移動すると、審査員席より少し後ろに淳子が座っているのが見えた。

「…あかん、淳子さん見えたら、急激に緊張してきたー!」
「ちょ、絵美ちゃん!大丈夫だって!」

急に弱気になる絵美子の背中をさすりながら、東京チームの発表タイトルに耳を傾ける。

“東京チームのテーマはおもてなし。特別なお買い物体験をご提案いたします!”

「…嘘やろ!“お買い物体験”って…かぶったぁ〜!!!」

まさかの東京とテーマ丸被りに、絵美子と顔を見合わせてへなへなと崩れ落ちたのだった。



「もーあんたら、なんなん!テーマかぶるとかいつかのM-1みたいやん!」
「まさかすぎますよ!しかも東京と丸被りとは…!もー悔しい!!」

大会終了後,表彰式を終え解放された二人を、淳子が笑い飛ばす。

「でも、賞取れてよかったな!あんたらの発表一番良かったで。ほんまに。」

ひかりが手にした小さいトロフィーには「準優勝」と刻まれていた。

「テーマがかぶっちゃったのは残念でしたけど、おもしろかったです。東京と大阪、一緒のテーマなのに、結論は真逆でしたから。」

特別なサービスを上顧客様に提供し、つながりを強固にすることが大事と結論づけた東京と、一見のお客様をリピーターにするサービスを幅広く提供することが大切と力説した大阪。

結果として、ひかりたち大阪チームは準優勝、東京チームは3位入賞ということで、どちらも審査員に支持されたプランであったことは間違いない。

「淳子さん、うち決めました!2年後もここに立ちます!で、絶対優勝します!だから、その時に見に来てくださいね!」

「気い早いけど楽しみにしてるわ」と淳子が目を細める。

「な!そうしよ!もう2年もしたらひかりちゃんも立派な大阪人やで!一緒に頑張って、名実ともに日本一達成しよ!」

絵美子はそう言い残したあと、遠くにいた知り合いのもとへ走っていく。ひかりは淳子と二人きりになったタイミングで、改めて言った。

「2年後なんて考えもしなかったけど、また大阪代表としてリベンジしたいです!」

淳子と熱い握手を交わしながら、東京から出てくるときは考えもしなかった大阪での未来を楽しみに思える自分のことを、少し誇らしく感じるのだった。


▶NEXT:7月23日 月曜更新予定
次週 最終回!ひかりは真の大阪LOVERになれるのか。



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