あなたは、わたしのもの:悪夢の始まりは、黒髪の美女と過ごした一夜。突然狂った、順風満帆な男の人生

あなたは、わたしのもの:悪夢の始まりは、黒髪の美女と過ごした一夜。突然狂った、順風満帆な男の人生

女の人の価値は、美しさだけではない。

どれほど純粋に自分を愛してくれるかだ…そんな風に思っていました。

でも、あの女のおかげで僕はやっと気がついたんです。

異常なほどの愛情が、女の人を、そして関わる人間の人生すらを壊してしまうってことを。

純粋な愛情は行き過ぎると執着に変わり、執着は憎しみへと変貌を遂げるってことを…

少し長いけれど、どうか僕の話を、聞いてください―



皆よりも、少しだけ恵まれた僕の人生


LINEのアイコンに表示された、『6』という未読メッセージの数字。

画面をタップして、トーク画面を上から順に確認する。

カチカチカチ…

ーユウキ、今夜空いてる?
ー好きな食べ物はね、お鮨です。今度、ユウキ君一押しのところに連れて行って下さい♡
ー今夜の食事会、男が1人これなくなりました。困っています!至急連絡求む

最後のメッセージの後には、かたい文章にそぐわない懇願するようなスタンプが3つ。

僕は女たちからのLINEを飛ばして、最後に目にとまった、友人の秋吉からのメッセージに最初に返信をすることにした。

ーオッケー、いいよ。今出先だからカジュアルで良ければそのまま向かうわ。どこ開催?

相当切羽詰まっていたのか、すぐさま銀座の店のリンクと、秋吉に似合わぬクマのスタンプが送られてくる。

秋吉は、同じ28歳。早稲田大学時代からの仲だ。

大手商社に勤めており、おまけに父親がスペイン人というハーフ。モデル顔負けのルックスに、身長は180cm越えときたら、女に不自由しないのは誰が見ても納得というところ。

秋吉と比較すると相当の”塩顔”らしい僕は、何故か奴に気に入られていた。

2人で食事会に行けば女の方で秋吉派と僕派に分かれるので、比較的やりやすいコンビだからだろうか?

それとも僕が、父親から受け継いだ不動産管理で得た収入で、同年代の商社マンと同じくらいには自由になる金があったからだろうか?

いや、それよりも何故。

何故この時僕は、一番最初に来ていた女友達からのLINEメッセージに返信しなかったのだろうか?

後から考えたって、なにも分からないし、意味もない。

ただひとつ確かなのは、あの秋吉からのLINEに返信してしまったのが、すべての始まりだったということ。

おかしなことってのは、大体いつも音を立てずにやってくるものだ。


何気なく食事会に行ったユウキに、なにが起こる?

美しい女に魅せられるのは、ふつうのこと


「東急プラザ銀座」の屋上『KIRIKO TERRACE -WATER SIDE-』に着いた時には、もう僕以外の全員が着席しているところだった。



ゆったりとしたプレミアムシートに浅く腰掛け、グループ全体を盛り上げようとする秋吉。隣のOL風の美女を挟むようにして、秋吉の同僚の宮崎君が座っている。そしてその隣にはアイドル系美女が並び、その横には…

あの女がいた。

盛り上がる4人に、少し置いてきぼりを食ったような顔をして座っていた黒髪の女の子。

夜風があまりにも心地良かったから。

普段なら賑やかな会話に一番に入っていく僕だけど、その日に限って、端っこの静かな席を選んだ。

そう、西岡ひとみの隣に。

「飲んでますか?」

たしか、そう声をかけたんだと思う。

僕は昔っから、いじめられっ子とか、クラスで1人ポツンとしてる奴とかを放って置けないタイプだった。だからその日も当たり前のように、賑やかな輪の中に入れないひとみを気遣った。

ひとみは少し緊張しながらも、歳は23歳で、誰もが知る大手企業の一般職勤めだと教えてくれた。

白いシャツワンピースから覗く二の腕は華奢なのに、胸元のあたりは分かりやすく大きさを主張していて、若い僕は当たり前の様に彼女に吸い寄せられたのだ。

やや大き過ぎる位のこぼれそうな瞳に、今時珍しい位の艶々した黒髪。よく見ると顔立ちは美しいのに、他の2人に比べて彼女に華やかさがないのは、この黒髪のせいなのかもしれないと思った。

シャンパンに酔った僕は、ふざけてひとみの髪に顔を近づけて呟く。

「綺麗な黒髪だね…」

まったく、あの時の僕ときたら調子に乗っていたとしか言いようがない。初対面の女性にあんな事を言ってのけるなんて、少し正気じゃなかったのだ。

だが、ひとみは嫌な顔一つすることなく応えてくれる。

「生まれてから一度も髪を染めたことがないんです」

生まれてから一度も…?

「それに、こういうお食事会にくるのも、初めてで」

今時こんな純粋な子がいるのか…?と、僕はひとみに対してかなり前のめりになった。

食事会の間中、秋吉には目もくれず僕のことだけを目で追い続けてくれて…僕らは何度も目が合い、そして微笑みあう。

その日は平日で、次の日はみんな仕事だったはずだけど、僕らは飲み続けた。

ひとみはごく自然に僕の五反田の自宅までついてきて、

そしてごく自然に、僕らは結ばれた。


食事会で出会った美女と一夜を過ごしたユウキに襲いかかる、覚めない悪夢の始まりとは?

あなたのこと、好きになってもいいですか?


「ふふ、ふふっ」

翌日の朝、僕は、聞きなれない女の笑い声で目が覚めた。

自宅に女性を連れてきたのは1度や2度ではないし、付き合っていた彼女がしばらく居着いたこともある。

だが、良く知らない女の笑い声で目覚めたのは初めてだった。

頭がガンガンと痛む。この痛みを感じるたびに、2度と飲みすぎるのはやめようと思うのに…。

僕はやっとの思いで隣にいるひとみに声をかける。

「ごめん、頭痛くて…いろいろなんか、ごめんね、俺とりあえずシャワー入るわ。ひとみちゃん…も、好きにしてて。」

ひとみはにっこりと笑っていた。

熱いシャワーを浴びているうちに、頭がだんだんと覚醒してくる。



次第に記憶が蘇ってきた。

2人で手を繋いで、僕の自宅にやってきたこと。

あの銀座の店でギリギリまで飲んで、2軒目も行かずに2人でタクシーに乗り込んだ。ひとみの白いシャツワンピースに、清楚な雰囲気。艶々の黒髪。彼女が勤めているという企業、そして、年齢…。

全てを思い出して、浴室を出た。

彼女は一晩の関係で終わるには、もったいなさすぎる相手だ。僕はベッドで待っていたひとみに丁重に声をかける。

「ひとみちゃんも、シャワー入る?今日仕事だよね、時間平気かな?あ、お腹空いてる?」

矢継ぎ早に質問する僕のことをじっと見つめたかと思うと、ひとみは、あの大きな目を見開いて、僕のそばにすっと近づいてきた。

「あなたのこと…好きになってもいいですか?」

下着姿をシーツで覆うように隠すひとみに上目遣いに見つめられて、僕は理性を失った。

ひとみを再びベッドに連れてゆき、胸元に、首筋にキスを重ねながらつぶやく。

「僕も好きだ」
「何も心配することないよ」
「こんな可愛い子に会ったのは、初めてだよ…」

この時もまだ、僕は何も気がついていなかった。

だが、彼女と別れてから3時間後。

僕はようやく、ほんのすこしの危機感を抱くことになる。

仕事を終えて、ふと眺めたLINEのアイコンに…

『66』という数字が表示されていたからだ。

66件のうち、62件はひとみからのメッセージだった。


▶NEXT:7月27日 金曜更新予定
ユウキの生活に突然現れたひとみ。彼女は一体何者なのか―?



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