夫の束縛が、段々激しくなる…。モラハラ男が妻に「外出禁止令」を出した衝撃の理由とは

夫の束縛が、段々激しくなる…。モラハラ男が妻に「外出禁止令」を出した衝撃の理由とは

可憐な妻と優しい夫。

わたしたちは、誰もが羨む理想の夫婦だったはずなのに。

若くして結婚し、夫の寵愛を一身に受ける真美・27歳。

鉄壁で守られた、平穏で幸せな生活が、あることをきっかけに静かに狂っていく。

そしてやがて、気付くのだ。この男が、モラハラ夫だということに。


温厚で優しい夫・陽介が、突然機嫌が悪くなったあの夜から、数週間が経ち…



「マミちゃん、今日の予定は?」

丁寧に折りたたんだ朝刊をビジネスバッグに入れると、陽介はマミに笑顔を向けた。

「今日は、午前中に食材の配達が来るから受け取って…そのあとは、久しぶりにパンを焼こうかな。」

「そう。マミちゃんのパン楽しみだな。くれぐれも戸締りに気を付けてね。」

真美が「外で働きたい」と口にしたあの日から、陽介は毎日妻の予定を事細かに確認するようになっていた。

おでん事件以降、日々の買い物はネットスーパーを利用するようにと手筈を整えてくれたが、それ以外の外出予定がほぼない真美にとっては、正直ありがた迷惑だ。

元々「心配だから」と、真美一人での外出にいい顔をしなかった陽介だが、近頃はますますエスカレートしている気がする。

今日のように外出予定がない日はいいが、そうでない日は納得するまで理由を確認されるので、朝から気分が滅入ってしまうのだ。

「いってらっしゃい。」

無事陽介を送り出したのもつかの間、「ロックして!」という外からの声に、真美は慌ててドアロックをかける。

妻を守る金属音を確認した陽介は、やっと安心したように出社していくのだった。



「あ、レーズン。」

届いた食材でいっぱいになった冷蔵庫を見て、真美は肝心な材料を頼み忘れていたことに気付く。陽介はレーズンパンが好きなのだ。

時計を見ると、まだ12時。隣駅のオーガニックスーパーまで行ったとしても、十分に時間はある。

―ただの買い物だし、別に報告しなくていいわよね。

スーパーの近くには、お気に入りのカフェもある。

せっかくだから久しぶりにランチもしてこようと、真美はクローゼットの奥から、先日こっそり買ったブラウスを上機嫌で取り出したのだった。


夫にナイショの外出で、真美はあるミスを犯す…。

買い物を済ませた真美は、お気に入りの『ラルゴ』のテラス席で、ぼんやりと空を見つめ小さく息をついた。

隣のテーブルでは少し年上に見える主婦たちが、夫の愚痴大会で盛り上がっている。鮮明に聞こえるその内容が、真美の小さな悩みをチクチクと刺激してくるのだ。

「何も手伝わない」「うちのはケチ」など、いつもなら他人事と気にも留めない会話が、今はやたらと頭に響く。

―陽介さんはケチじゃないし、私のためになんでもしてくれる。…きっと、いい夫なのよ。

真美が、最近の夫に違和感を感じていないと言えば、ウソになる。

けれど、すべてが自分のためだと言い張る夫の愛情を疑うことなど、するべきではない。真美は自分にそう言い聞かせるのだった。



「あれ!真美?」

その声が聞こえたのは、下世話な会話を振り切ろうと席を立った時だった。真美は思わずビクッとしながら振り返る。

「…颯太?えーっ!なんでなんで?」

声の主の正体は、幼馴染の颯太だ。成人式ぶりだというのに、その笑顔は全く変わっていない。

先週、留衣から颯太も交えて3人で飲みに行こうと誘われたが、夫に確認する勇気がなく断ったのだ。それ以降気になっていたので、まさかの再会に真美は驚きを隠せなかった。

「やっぱ、真美だよな!この辺に住んでるって聞いてたけど、大人っぽくなってたから話しかけるかちょっと迷ったわ!」

生まれてはじめて自分に向けられた「大人っぽい」という言葉。真美はVネックのブラウスを着てきた自分を、心の中で褒めたたえた。

颯太の話によると、この辺り一帯は営業担当エリアらしい。移動中にカフェでぼんやりしていた真美の姿が目に入り、懐かしさのあまり声をかけてくれたそうだ。

「このあいだは来られなくて残念だったけど、会えてよかった!また集まりたいし、真美の連絡先教えて!」

「そうだね!…あ、電源切れてる。」

連絡先を交換しようと取り出したスマホの画面は、真っ黒のまま、動かない。普段外出機会が少ない真美は、スマホの充電をマメにする習慣がなく、こうしていつのまにか充電が切れてしまうことも多々ある。

相変わらずだなと颯太は笑い、真美に名刺を渡すと仕事に戻っていった。

真美はその姿を見送ってから、バッグの奥に名刺を押し込み、急いでカフェを出たのだった。



家に着いたのは、午後3時を少し過ぎたころだった。

陽介の帰宅時間は、毎晩7時を回る。偶然の再会もあり少しだけ遅くなってしまったが、夕食もパンの仕込みもギリギリ間に合うはずだ。

スマホを充電器に差し込むと、陽介が買ってくれたレースのエプロンを付け、早速準備に取り掛かる。今日の献立は、チキンのトマト煮込みと、手作りレーズンパンだ。

下準備を終えたころ、充電中だったスマホが音を立て、再度電源が入ったことを知らせる。

―ブブ、ブブ、ブブッー

いつもとは違う、ひっきりなしの振動音。不思議に思って手に取り、一気に血の気が引いた。

陽介からの不在着信とメールやLINEが連なって、待ち受け画面を埋め尽くしていたのだ。


そして、陽介が帰宅。恐怖の時間が幕を開ける…!

おびただしい数の着信に気づいた真美は、震える手ですぐさま陽介に電話をかける。

「マミちゃん!大丈夫?!」

ワンコールで聞こえてきた夫の声からは、怒りと焦り、両方の感情が聞いて取れる。

「陽介さんごめんなさい!レーズンが足りなくって、お買い物に行ってたの。電源が切れてるって気付かなくて、…本当にごめんなさい。」

「お昼からずっと電話してたんだよ。どれだけ心配したか…。あ、着いたから切るね。」

電話が切れると同時に、玄関のドアがガチャリと音を立てた。

「ただいま」

―陽介さん?!なんで?

突然の帰宅に驚き、立ち尽くす真美に、陽介は電話の続きと言わんばかりに話を続ける。

「もう。ドアロックしていなかったよ。…一体何度言ったらわかってくれるのかな。」

「…ごめんなさい。こんな早いなんて思わなくて、ご飯もまだできてなくて…。」

「今日は早く帰るって電話してるのに、マミちゃんが出ないからいけないんだよ。とりあえず着替えるから。」

陽介はジャケットを真美に差し出すと、ため息をついてリビングを出る。真美は、鍋の火を一度止めたあと、不機嫌な背中を追いかけた。

「陽介さん、本当にごめんなさい。…あっ!」

陽介が、ベッドの前に立っている。その手には、後でしまおうとベッドに置いておいたブラウスが握られていた。

「…ねえ。この服、何?」

「あ、あの、それは…」

“自分で買ったの”と、そう言えばいいだけなのに。なぜか真美にはそれがとてつもなく恐ろしいことのように思えて、声に出せなかった。

無言で青ざめていく真美の顔をじっと見つめ、陽介は、んー、と呟く。

「…こんな"はしたない"服、マミちゃんのじゃないな。洗濯物がどこかから飛んできちゃったのかな?…そうでしょう?」

陽介は、黙って頷く妻の姿を確認すると、僕が捨てておくねと笑顔を見せたのだった。



「うん。今日のご飯もとっても美味しかった。」

急いで作ったトマト煮込みを二度もおかわりした陽介は、こんな日も真美を称賛することを忘れない。

「レーズンパンも、僕が大好きな味だ。」

捏ねも発酵時間も不足しているというのに、陽介は満面の笑顔でパンを頬張ってくれる。

「あの、陽介さん。今日は心配かけて本当にごめんなさい。今後は電源ちゃんと入れておくようにするわね。」

夫の機嫌を見計らい、真美は改まって謝罪の言葉を口にする。パンを食べ終えた陽介は、真美の目を見て呟いた。

「うん。あと、心配だから、黙って外出しようなんてしない事。…もう二度と。」

そして「ねえ、マミちゃん」と言って、そっと真美の手をとった。

「マミちゃんを守れるのは、僕だけなんだから。」

不安げな表情を浮かべる夫にじっと見つめられ、真美はこくりと頷いた。


▶NEXT:11月1日 木曜更新予定
「なんか、それ変じゃない?」洗脳されかけの真美を救うのは…?!



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