「あなたはもう、庶民じゃないでしょ?」結婚してセレブ妻の仲間入りした女の心をエグる、ママ友の一言

「あなたはもう、庶民じゃないでしょ?」結婚してセレブ妻の仲間入りした女の心をエグる、ママ友の一言

あなたが港区界隈に住んでいるならば、きっと目にしたことがあるだろう。

透き通るような肌、絶妙にまとめられた巻き髪。エレガントな紺ワンピースに、華奢なハイヒール。

まるで聖母のように微笑んで、幼稚園児の手を引く女たちを。

これは特権階級が集う「港区私立名門幼稚園」を舞台にした、女たちの闘いの物語である。


麻布十番在住の菱木悠理は、作家の夫・邦彦の願いで娘の理子を名門幼稚園に入れることになった。

痛烈な嫌味を受けて、高輪妻に啖呵を切ってしまい、母親たちの中で孤立していた悠理だったが、妻たちから夏休みのハワイ集合に誘われる。

ハワイで偶然にも悠理が目にしたのは、政界名門妻・東郷綾子と、芝浦妻リサの夫・遠峯涼真の密会現場であった。

一方、幼稚園の母親たちに届いた一斉メール。そこには、悠理の夫・邦彦の不倫報道が。

風紀を乱すとして退園を迫られる悠理。夫と対峙するも、報道は誤解であり、悠理には母親業をもっと楽しんで欲しいという言葉に、悠理は部屋を飛び出した。



―また、いる!きっと週刊誌の記者だ…!

幼稚園の前で、悠理の足はすくんだ。つないだ理子の小さな手を、ぎゅっと握る。

門から少し離れたところに止まった黒い車に、明らかに幼稚園にそぐわない雰囲気の男が乗って、こちらを伺っていた。

そして同じタイミングで悠理に気がついたのか、男は車を降りてこちらに近づいてくる。

ーどうしよう、こっちに来る…!?

理子を連れて引き返そうとしたとき、後方から来た白いメルセデスが悠理の真横で止まった。後部座席に座っているのは、女優の藍沢美紀だ。

美紀は娘の手をひいて車を降りると、「いってらっしゃい」と頬にキスをする。

それから悠理と理子を見ると、「理子ちゃんも一緒に行こう」と手を差し出すではないか。

「うん!一緒に行く!ママ、バイバイ、あとでねー!」

理子は嬉しそうに美紀に手を引かれ、幼稚園の門扉の中に入っていく。ちらりと通りの向こうを見ると、記者は送迎の車の連なりに遮られてまだ近づいてこられない。

「あの、美紀さん、ありがとうございます」

二人を門の中に届けて戻ってきた美紀に、悠理が御礼を言うと、美紀は待機していたメルセデスの後部座席に乗りながら手招きした。

「乗ったら?また面倒なことになるわよ」

悠理が迷いながら車の向こうを見ると、こちらに近づいて来ようとしている記者と目があった。

「―ありがとうございます!」

悠理が飛び乗ると、運転手は滑らかに車を発進させた。


女優・藍沢美紀が語る、予想外すぎる言葉とは?

藍沢美紀の恐るべき本音


「随分派手にやられてるじゃない。作家さんだと、慣れてないから大変でしょ」

藍沢美紀は、窓の外を見ながらのんびりと言う。車は広尾のほうへ向かっているようだ。

「―はい。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「どうして悠理さんが謝るの?ワルイのは写真撮られたご主人でしょ。思ってもないのに謝るの、体に悪いわよ」

どう体に悪いのか、イマイチわからなかったが、美紀の言葉は温かく響いた。

「ありがとうございます…。私みたいな庶民を追いかけまわして、何が面白いんでしょうか」

思わず気が緩んだ悠理が漏らした言葉は、思いがけず美紀に冷たく遮られた。

「悠理さん、庶民じゃないでしょ」



―え?

予想だにしていなかった言葉に、悠理は美紀を見た。相変わらずの美しい横顔。美人は声まで美しいのだと、この状況でさえ感心させられる。

「菱木邦彦は、とてもいい作品を書く作家だし、テレビにも出ずっぱりで、文化人として発言に影響力もあるわ。才能で莫大なお金を稼いでいる。あなた、そのパートナーなんだから、望まなくたってもう庶民じゃないのよ」

「確かに主人は有名になりましたけど、私は何も…」

「もう覚悟を決めなさい。普通だなんて、甘えないで。腹を括らないと、大切なものは守れないのよ」

美紀が初めて、悠理を正面から見据えた。

悠理は言葉を失う。

―「普通」じゃないと、腹を括る…?

「謙虚であることがいつも正しいわけじゃない。時に自己欺瞞になりうるの」

女優藍沢美紀は、痛切に突き付けた。悠理が、「普通」を言い訳に、いつまでたっても状況に応じて成長することができない母親であるという事実を。

その言葉には、長らくプロとして一線を走り続けてきた女の、そして同時に家族を守ってきた女の凄みがあった。

「そう…か、私…邦彦君が成功したことも…その妻として悠々と暮らすのも…仕事を辞めて"理子のお母さん"であることだけに集中しなきゃいけないのも、どこかで受け止められずにいたのかな…」

裕福な専業セレブ妻として生活し、子育てだけに邁進することは、あまりにも想定外だった。

邦彦と結婚するずっと前から、結婚後も仕事をして、パートナーと対等の結婚生活をイメージしていた悠理は、ここ数年で自分の身に起こったことを、どこか他人の人生に起こったことのように感じていたのだ。

「客観的でクールな自分」でいたかった。「本当の自分の居るべき場所はここじゃない」と言い訳しているうちは、たとえ周囲に馴染めなくても、母親として100%じゃなくても、逃げ場があったから。

「…美紀さんて凄い。痛いとこ、突きますね」


美紀の言葉で、悠理はどう変わる?

ボス妻たちとの直接対決


苦笑いと一緒に一筋、悠理の目から雫が落ちた。

「当たり前よ。女優は、馬鹿じゃやってられないの」

藍沢美紀は、曇らせた窓ガラスに、細い指で「幹」と書いた。

「これが私の本当の名前。『美紀』は社長がつけた当て字。幹じゃ女優らしくないから。でも、こっちのほうがタフでいいでしょ?」

そう言って歯を見せて笑うと、美紀はまた普段どおり、ゆるっと外を眺め、それ以上何かを言うことはなかった。



「ごきげんよう。あら、悠理さん、久しぶり。元気にしてた?」

夏休みが終わり、新学期。

緊張しながら幼稚園に来た悠理に、真っ先に話しかけてきたのは麻布グループのモデル妻、神崎葵だった。

「ごきげんよう、ご無沙汰してます、葵さん。夏はずっとヨーロッパにいらしてたんですよね?」

「そうよー、もう飽きちゃった。子供の語学とマナー研修っていう名目で行ったんだけどね。ああ、でも送り付けられてきたリンク読んだわよ、悠理さんも成金仲間だったんじゃない。早く言ってよね」

直球の物言いに、思わず悠理は言葉に詰まる。

「す、すみません…。隠すつもりじゃなかったんですけど、なんだか言いそびれたまま1学期が終わってしまいました。でも、立派にご自身の力で有名な葵さんと仲間だなんてとんでもないです」

「いいじゃないの、旦那の力は自分の力よ。その分、支えてるんでしょ?堂々としてなさいよ」

2学期の始業式には先生からの連絡や挨拶があるため、園庭には全員の母親がいる。

葵の言葉は、なんとはなしに周囲に言ってくれているような気がして、悠理は葵の好意を感じて胸が熱くなる。

「ごきげんよう、皆様。悠理さん、そのご主人の権力で、マスコミを追い払ってくださったのかしら?」

背後から、高輪妻・藤堂麗子がやってきて、悠理にとげのある言葉をかける。

「…麗子さん。それから、皆さんも…一連の騒動は本当に申し訳ありませんでした」

悠理は朝から決めていたとおり、母親たちに心から頭を下げた。

「マスコミがこの件で後追い取材をしてくることがないように、対策をして参りました。それから…入園以来、お話する機会はたくさんあったのに、主人のことを何も話さなくてごめんなさい」

考えた末に、悠理が謝ろうと心に決めていたことは、むしろそちらのほうだった。



「せっかく少しずつ仲良くなって、フェスティバルや役員であんなに毎日一緒に時間を過ごして、ハワイでまで一緒に遊んだのに。自分のことも主人のことも、何も話さなくて。

挙句に週刊誌沙汰で主人のことを知ったら、皆さんが嫌な気持ちになるの、当たり前だと思います。せっかく楽しくしていたのに…本当にごめんなさい」

藤堂麗子や、ハワイでも一緒に過ごした遠峯リサたちが、悠理に冷たくあたる原因。

それは、マスコミに追われ幼稚園の風紀を乱す悠理を排除したがっているから、と考えるのは簡単だ。不倫などという話題がこの名門幼稚園で忌むべきものとして扱われるのも当然である。

でも、根本的な原因は他にある気がしていた。

マスコミや不倫がどうこうという問題ではない。それよりも、悠理が友だちのような顔をしながら実際は心を許さず、夫の正体さえ話さなかったことが、芽生え始めた友情に水を差してしまったのではないか。

そう思い当って素直な気持ちをぶつける悠理を、母親たちは居心地の悪そうな表情で見ている。

―唐突すぎたかな…。見当違いだったかも…。

そのときー。

気まずさに耐えかねて俯く悠理を救ったのは、とても意外な人物だった。

「ごきげんよう、皆様。新学期早々、麻布チームがご迷惑をおかけしているようね」

圧倒的な存在感で園庭に入ってきたのは、麻布妻にして名門政治家妻―ともすれば未来の首相夫人、東郷綾子であった。


▶NEXT:11月25日 日曜更新予定
次週、最終回。どうなる、悠理のセレブ園生活!?そして浮気夫との関係は?



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