「結婚だけが女の幸せじゃない」。偏屈イケメンからの意外な言葉に、33歳独身女が背中を押された瞬間

「結婚だけが女の幸せじゃない」。偏屈イケメンからの意外な言葉に、33歳独身女が背中を押された瞬間

ーただ、結婚していないというだけなのに。

30代独身だというだけで、蔑まれ虐げられ、非難される…。その名も、独身ハラスメント。

それとは一切無縁だったはずの莉央(33)は、ある日突然、独身街道に再び投げ出される。彼女を待ち受けるのは、様々な独身ハラスメントだった。

—結婚だけが幸せの形だなんて、誰が決めたの…?

そんな違和感を強く抱く莉央。自分なりの“幸せの形”を見つけるため、奮闘の日々が始まるのであったー。


アパレルブランド「Noemie(ノエミー)」のブランドマネージャーとして働く莉央は、結婚式目前に突然婚約破棄をされてしまう。

独身街道を再び歩き出した途端、既婚女子・優子からの独身ハラスメントや、周囲からの「美人なのにどうして結婚してないんですか?」という発言にウンザリさせられる。

そんな矢先に、取引先の年下男・将暉(まさき)から、「あなたが独身でよかった」という発言をされ、莉央は動揺していた。



ー私って、そもそも結婚したいのかなあ…。

莉央は、昼休み中のオフィスでサンドウィッチを片手に、ぼんやりと遠くを見つめていた。

莉央が深いため息をつく理由。それは、昨晩母親から電話で、お見合いの話を打診されたせいである。

『知り合いの息子さんなんだけどね、どうしてもって言われちゃって断れなかったのよ。お見合いって言ってもカジュアルにお茶するだけでいいんだし、会うだけだと思って気楽な気持ちで行ってきてちょうだいよ』

婚約破棄以来、母は、娘の顔色を伺うようにして決して結婚の二文字は口にしなかった。それなのに突然そんなことを言い出したのだ。

しかし実は、結婚が破談になってから、莉央自身、自分が本当にいつか結婚したいのかどうかわからなくなっていた。

独身であることを周囲からはとやかく言われ、嫌な思いもさんざんしてきた。しかしその都度、あるセリフが喉まで出かかる。

『恋愛は素敵だし、好きな人がいたら一緒にいたいとも思う。だけど、そんなに結婚しないとダメー?』

再びため息をついて、ふとオフィスの隅に目をやると、亜樹と優子が何やらやり合っていた。

「亜樹さんのインスタ、見ましたよ〜!亜樹さんって、お料理得意なんですね!でも、こんな立派なお料理、自分一人のために作るんですか?なんか寂しいですね」

「あら、意外にこんなの簡単ですよ。優子さんもご主人に毎日料理してるんだったら、このくらい作ってあげたら?」

「うーん、結婚すると現実はそうも言ってられないですよー。夫が帰宅するまでに料理を完成させること考えたら、パエリヤだのローストビーフだの、毎日作っていられませんから。主婦は時短が命なんで!」

少し前までの亜樹なら、優子の棘のある発言に押されっぱなしだったが、近頃ではすかさず反撃をしかけている。

そんな二人の様子に呆れながら、莉央が仕事に戻ろうとしたとき、すかさず亜樹が近づいてきた。

「莉央さん。今夜予定あります?寒くなってきたし、きのこ鍋でも食べにいきませんか?」

「いいわね。行こう行こう」

するといつのまにそこにいたのか、優子が背後からぬっと顔を出した。

「あの…。それ、私も一緒に行っちゃダメですか?」


単なる既婚マウンティング女だったはずの優子が、意外な本音を漏らす。

「ゆ、優子さん、平日の夜はご主人に夕飯の支度したいっていつも言ってるのにどうしたんですか」

亜樹が一歩退きながら、優子に恐る恐る尋ねる。

「それが、今夫が大阪出張中なんです!せっかく外食できるチャンスなので、私もきのこ鍋食べたいです」

優子に何か狙いがあるのではないかとつい勘ぐってしまうが、莉央はふと考える。

普段から、莉央や亜樹などの中途入社組と、新卒からこの会社にいる優子の間には、言葉にはしにくい壁のようなものがあると仕事をしながら感じていた。

日頃何を考えているかよくわからない優子のことをよく知る良い機会かもしれない。それはきっと、今後円滑に仕事を進める上でもマイナスにはならないだろう。そう思った莉央は、笑顔で頷いた。

「じゃあ3人で行きましょうか!」

こうして、奇妙なメンバーで食事をすることになった。


優子の本音


『シャングリラズシークレット』で、きのこがぐつぐつと煮える「宝茸黒湯」を前に、ふと優子に目をやる。

すると彼女は急ピッチでドリンクを飲んでいる。彼女がこんなに勢いよくアルコールを飲み干す姿を見るのは初めてのことで、莉央は呆気に取られた。

「優子さん、そんなに飲んで大丈夫…?」

「あら、こう見えて私、お酒は大好きなんですよ」

そう言いながらも、既に優子の顔は赤くなっている。

「夜飲みに行くと夫がいい顔しないし、女の酔っ払いは嫌いだとか言われるから家で飲むこともないし…結婚してから自由に飲みに行けなくなって、私ストレスが溜まってるんです…」

優子の顔はなんだかどんより暗くて、いつもの攻撃的な様子とはどこか違っている。彼女がグラスを飲むピッチはさらに上がって、そのうち彼女は自ら家庭生活の不満を口にし始めた。

「それに結婚してまだ一年なのに、夫は私のことをもう女として見てくれないの…。だから、莉央さんや亜樹さんみたいに女としてキラキラ輝いてて、自由に人生を謳歌してる人たちのことが、私本当に羨ましくて…」

莉央はハッとした。彼女がたびたび口にする“独身はいいなあ”という言葉は、単なる嫌味だけではなかったことに気がついたのだ。

亜樹が慌てて、優子に優しく声をかける。

「そんな風に思っていたなんて…。てっきり私、優子さんは私たちが独身だからって本気で見下してるのかと思ってた…」

「だって亜樹さんは口を開けば“結婚してる人はいいわよね”って、自分から線引きするじゃない!そう言われたら何も言えなくなるし…。それに莉央さんも亜樹さんも、いつも独身の人たちばかりでつるんでいて距離を感じるし」

優子の意外な本音は、莉央の胸に突き刺さった。

「優子さんの言う通りかもしれない。壁を作っていたのはこっちだったのかな…。ごめんなさい」

それは莉央の本心から出た言葉だった。


次に莉央を待ち受けるのは、親からの結婚の重圧…!

その後すっかり心を許した優子は、夫の愚痴を好きなだけまくしたてていたが、さらに飲むスピードを上げていたせいか、食事を終えて店を出るころには完全に足元がふらついていた。

「すみません…最近ほとんど飲んでなかったせいか、すっかり弱くなっちゃったみたいで…」

優子がそう言いながらタクシーに乗り込んでいくのを見届けると、莉央はポツリと呟いた。

「優子さんにも色々あるのね…」

亜樹も隣で「私、今まで大きな勘違いをしていたかもしれません」と言って小さく頷いた。

「結婚してるとかしてないとか、子供がいるとかいないとか。女はどんなステージにいても、それぞれの悩みを常に抱えてるんですよね。結婚さえすれば一丁あがりだなんて考え、間違ってた」




親からの結婚の重圧


その週末−。

「莉央さん、子供は何人欲しいですか!?」

莉央は「ウェスティンホテル東京」の『ザ・ラウンジ』で、思わず手に持っていたティーカップをひっくり返しそうになった。

「こ、子供ですか?」

今日莉央は、母の知人の息子と例のお見合いをしているのである。柄にもなくAラインの膝丈ワンピースを着て、ストッキングにベージュのパンプスを合わせている。

母は『会うだけでいいのよ』 と軽い調子でそう言っていた。ところが、目の前に座る男は“気楽さ”なんて微塵も感じさせず、むしろギラギラとした視線で莉央をじっと見つめている。

「僕はどうしても、男の子と女の子一人ずつ欲しいんです。莉央さんは僕と同い年だから、33歳ですよね。子供を二人作ることを考えると、諸々の段取りも急いだ方がいいと思うんです!」

「ま、待ってください。まだ私たち、今日初めてお会いしたばかりですし…ちょっと展開が早すぎるというか…」

莉央が苦笑いを浮かべると、男はやれやれ、といった調子でため息をついた。

「莉央さん、僕の母が言ってましたよ。莉央さんのお母さん、いつになったら莉央さんがお嫁にいくのか心配で夜も眠れないって。莉央さんだって、お母さんを喜ばせてあげたいですよね!?悠長なことを言っている場合じゃないんですよ…!」

「はあ…」



「ああ…疲れた」

お見合いを終えた莉央は、重い足を引きずりながらトボトボと歩いていた。

「いきなり子供が何人欲しいかだなんて聞かれても、結婚後のことなんてまだイメージできないわよ…」

ブツブツと独り言を言いながら、ふと気付いた。お見合いをした男は外見もスペックも申し分なく、結婚相手としてはもしかしたら理想的なのかもしれない。

しかし、突然目の前に現れた男との結婚生活を想像しろと言われても、いまいちピンと来ないのだ。

もし自分に強い結婚願望があるなら、この話にも喜んで飛びつくのだろうか?そう思うと、自分が本当に結婚したいかどうか、やっぱりわからなくなってきて、莉央は頭を抱える。

それに、お見合い男から聞いた、「お母さんは、莉央がいつ結婚するのか心配で夜も眠れないらしい」という話は莉央の心に重くのしかかっていた。

独身であることを周囲からあれこれ言われ、それをかわすのにはどんなに慣れっこの莉央でも、親からの重圧をスルーするほどたくましい精神力は、まだ備わっていないのだった。

—なんだか一杯飲みたい気分…。そうだ、この前のバーに行ってみようか…?


お見合いに疲弊した莉央は、将暉の顔が見たくなるが…。

咄嗟に、先日将暉が連れて行ってくれた彼の行きつけのバーを思い浮かべる。女性一人でも入りやすそうな、こじんまりとした居心地の良い店だった。

それに、もしかしたらー。

もしかしたら、将暉がいるかもしれない。お見合いによってすっかり疲弊した今、彼の無邪気な笑顔を見たら疲れもどこかへ吹き飛ぶような気がした。

あの夜以来、別れ際に将暉から言われた一言が、莉央の頭の中でリピートしている。

『あなたが結婚していたら嫌だな、って思っていたから…独身でよかった』

店の重い扉を開くと、店内のどこにも将暉の姿は見当たらない。

—よく考えたら週末だしね。会社の近くの店に、いるわけ、ないか。

肩を落としたそのとき、代わりに莉央の目に飛び込んできたのは、ウイスキーグラスを片手に哀愁を漂わせる友介の横顔だった。


苦手だったバツイチ男の、意外な一面


「あれ?莉央さん。こんばんは」

「こんばんは。あの…今日、佐野さんは?」

莉央がおずおずと尋ねると、友介は「今日マサキはいないよ」と答えた。そして、じろじろと莉央の全身を眺める。

「何、その格好。随分かしこまってるけど…まさかお見合い帰りだったりして」

莉央が黙り込むと、友介は「図星か」と言っておかしそうに笑い出した。

「お見合いねえ…。莉央さんも随分、必死なんだね」

バカにしたような物言いにムッとしつつも、莉央は無視して椅子に座り、グラスのシャンパンをオーダーした。

友介は急にぐいっと距離を縮め、莉央の顔を覗き込む。

「ねえ、なんでそこまでして結婚したいの?」

「あのね、言っておくけど私、別に結婚したいわけじゃありませんから。そもそも、結婚イコール女の幸せなんて考え、反対ですから!」

勢いよくそこまで言ったところで、我に返った。売り言葉に買い言葉でついムキになって、そんなセリフが思わず口をついて出たのだ。

友介はぽかんと口を開け、莉央をまじまじと見つめている。

「へえ、それは意外。ごめん俺、てっきり莉央さんも、結婚して男に幸せにしてもらおうっていう他力本願女の典型かと思ってた」

「“莉央さんも”って言うことは、他にそういう女が友介さんの近くにいるんですか?」

莉央の切り返しに、友介は途端に困惑した表情を浮かべる。この男がこんなに困った顔をするのを見るのは珍しい。

「さすが莉央さん、鋭いな。…俺の元嫁がまさにそういう女で、ちょっとしたトラウマがあってさ。それで、結婚に必死になる婚活女子見るとつい虫酸が走るというか…八つ当たりしてゴメン」

急に素直になった友介は、さっきまでの威勢のいい横柄な男とは別人のようだ。

—この人も、優子さんと同じ。自分の弱さを隠すために、強がってただけなのね。

「でも俺、莉央さんの考え方気に入った。さっき俺に向かって、“結婚イコール女の幸せじゃない”ってキッパリ言ったとき、カッコよかったよ」

友介は、ニヤリと微笑んだ。あいかわらず憎たらしい笑顔だ。そう思うのに、なんだかこの男のことを憎めない。

「それに俺もそう思うよ。結婚だけが、女の幸せじゃないと思う。結婚してもしなくても、莉央さんは十分幸せな人生を歩めるし、あなたが魅力的な事実は変わらないよ」

憎まれ口ばかり叩く男から飛び出した意外な言葉に、自分はこのままでいいのだと背中を押されたような気がして、莉央は少しだけ心が温かくなるのを感じた。


▶Next:11月26日 月曜更新予定
苦手だった男・友介への見る目が変わった莉央。そして、将暉が急接近!?



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