彼の好きな人ってまさか…?憧れ続けた男の心を奪い去った、“圏外女”の正体とは

彼の好きな人ってまさか…?憧れ続けた男の心を奪い去った、“圏外女”の正体とは

容姿にコンプレックスを抱く美咲麗華は、モテ男・平塚勇太に恋をし、あっさり失恋したことである決意を抱く。

−“美しさ”を金で買い、人生を変えてやる−

整形で“美人”の仲間入りを果たした麗華は、大学時代からの親友・大山恵美を通じてついに初恋の彼・平塚くんと再会するも、平塚くんに彼女がいることを知ってしまう。

傷心の麗華は、外銀勤めのエリート・俊介と付き合い始めるが、平塚くんの彼女の裏切りを知った麗華は、たまらず真実を暴露。

しかしこの行動が俊介の逆鱗に触れ愛想を尽かされてしまう。さらには恋敵・花音が俊介に再びアプローチして麗華の心をかき乱す。



「…入れば?」

玄関先で躊躇してしまった私に、俊介は視線を合わせぬままそう声をかけてくれた。ぶっきらぼうな言い方だが、声色は優しい。

私は促されるまま、相変わらず整頓されたリビングへと足を踏み入れる。

俊介の家の匂いがして、それは不思議と私の心を落ち着かせた。

つい先ほどマンションロビーで、また追い返されるかもしれないと怯えながら、私はインターホンを押した。すると思いがけず扉が開いて、ここに来ることを許されたのだ。

「…さっき、下で花音と会った」

言うべきか迷いつつも、タイミング的に伝えないのも不自然だろうと思って花音の名を出してみる。

しかし俊介は無関心に「ああ」と呟くだけで、それ以上何も語ろうとしなかった。

「私ね…俊介も気づいていた通り、付き合っている間もずっと心の中に別の人がいた。けど、俊介と会えなくなってやっとわかったの。私が本当に好きなのは、そばにいてほしいのは俊介だって」

後ろを向いたままの背中に向けて、私は勢いのまま俊介に想いを伝えた。再び心が怯えてしまう前に。このタイミングを逃したら、今言わなければ、俊介ともう二度と会えなくなってしまう気がして。

−せっかく綺麗になったなら、自信持ちなさいよ−

花音にぶつけられた言葉が、私の背中を押した。

「今さらもう遅いかもしれないけど…私は俊介のことが好き。俊介だけが、好きだから…」


ようやく俊介に想いを伝えた麗華。彼の反応は…?

「…遅いわけないだろ」

すべてを言い終える前に、不意にこちらを振り向いた俊介から抱きしめられた。

力強い腕と、薄手のニットから伝わる体温にホッとして思わず涙が出そうになる。

「俺はずっと…麗華がそう言ってくれるのを待ってたんだ」

頭一つ分背の高い俊介の声が頭上で聞こえる。その響きから、私はお互いが同じ想いで今ここにいることがわかった。

−戻ることができて良かった…。

俊介の腕の中で私は繰り返しそう思い、ようやく自分の“居場所”を見つけた喜びをかみしめる。

そして私たちは、まるでお互いの存在を確かめるように、しばらくずっと抱き締めあっていた。


恋敵からの新情報


「まさか、麗華に誘われるとは思わなかった」

シフトのない週末に待ち合わせをしたハイアットセントリック銀座のオールデイダイニング『NAMIKI667』で、テーブルに着くなり花音はそう小さく呟き、こちらをチラと睨んだ。

といっても、その目に以前のような嫌悪は滲んでいない。むしろ俊介の一件で仲違いをしてしまう前…普通に仲の良い同僚だった時にもなかったような、ある種の連帯感のようなものさえ感じる。

女友達というのは一度喧嘩してしまったら終わりだと思っていたが、相手によってはぶつかってから始まる友情もあるのかもしれない。

「…ありがとう、が言いたくて」

なんだか照れくさくて小さな声になってしまったが、私は素直な気持ちを彼女に伝えた。

「花音のおかげで俊介と仲直りできたから。…あの時花音が叱ってくれて目が覚めたっていうか。だから…ありがとう」

俯きながら言い終えて、顔を上げる。すると今度は花音の方が慌てて目をそらした。

「別に私、感謝されるようなことなんか…ただ、思ったことを言っただけ」
「うん、知ってる」

視線を合わせぬまま、お互いに小さく笑う私たち。そうしてそのあとは、また以前のように他愛のない話で盛り上がったのだった。


「ねぇ、そういえば。俊介と喧嘩する原因になった、麗華が『マデュロ』で一緒だった男って…アナウンサーの平塚って人なんでしょ?」

2杯目のグラスが空になる頃、花音がふいに私に顔を近づけて囁いた。

私にとってはあまり思い出したくない出来事だが、嘘をついても仕方がないので「ああ…うん」と曖昧に頷いてみせる。

花音は、私と平塚くんの関係を何も知らないはずだ。少なくとも私が彼女に平塚くんの話をしたことはない。

花音は一体、何をどこまで知っているのだろう。もしくは、本当に何も知らないのか…。

ひとり訝しむ私をよそに、彼女は特に表情を変えることもなく、私の知らない新情報を語り出した。

「私もね、最近まで知らなかったんだけど…ほら、先輩の岸さゆりさん。政治家の息子と婚約してるのは確かなんだけど、実はその平塚って人とも付き合ってたみたいで」

その話は、前に同僚たちの噂話で聞いて知っている。しかしこの後に続けた花音の言葉が、私を大いに驚かせた。

「…少し前にね、さゆりさんが明らかに落ち込んでる日があって。それで仕事の後に二人で飲みに行ったの。そしたら、さゆりさんが『大好きな人にフラれちゃった』って。好きな人ができたって言われたんだって」

−今、なんて…?岸さゆりが、振られた…?


平塚くんが岸さゆりを振っていた…?そして麗華は花音から、さらなる新情報を聞く


それは予想外の事実だった。

平塚くんが彼女と別れたことは恵美から聞いて知っていたが、てっきりフィアンセがいることを理由に岸さゆりの方から振られたとばかり思っていた。

それがまさか、平塚くんの方から別れを切り出していたなんて。

私は花音の話と、『マデュロ』で平塚くんが見せたあの苦しげな表情を交互に思い出し、頭が混乱してきてしまった。

私が真実を告げた時の、彼のあの切ない顔。あんな顔をするくらいなのだから、平塚くんは岸さゆりのことを心から愛していたはずだ。

それなのに、なぜ…?

「ねぇ…もしかしてその平塚って人が好きなの、麗華なんじゃない?」
「え…?」

花音が語った内容があまりに衝撃的だったため私はしばし放心状態となってしまい、すぐにはその意味を咀嚼できなかった。

しかし徐々に冷静になるにつれ、花音が大きな“勘違い”をしていることに気がつく。

「違う違う、それは絶対にないわ」

慌てて全否定した私に花音は「そう?」と少々不服そうだったが、平塚くんが岸さゆりを振った理由は、もちろん私なんかじゃない。

そもそも「他に好きな人ができた」と言ったという彼の言葉の真偽も怪しい。しかしもしそれが真実だとしたら…相手は私ではない、別の女性だ。

−もしかして。

ふと、頭に1つの仮説が浮かんだ。

平塚くんの“好きな人”というのは…もしかしたら恵美ではないだろうか。

頭をフル回転させる私はつい黙り込んでしまっていたが、花音は気にする様子もなく話を続けている。

「まあでも、さゆりさんの話聞いてたらご令嬢も色々と大変なんだなって思っちゃったわ」

私は怪しまれないよう「そうだよね」とだけ相槌を打ち、再び自身の仮説について検証した。そしてやはり何度も考えれば考えるほど、確信に近づいていくのだった。

恵美と平塚くんは、おそらくお互いに好意を持っている。

花音と食事を共にしたことで図らずもその事実にたどり着いた私は、この時密かにあることを決心していた。

もう一度だけ平塚くんに会おう、と。

もちろん今度はきちんと、俊介の許可を取ってから。

そして今度こそ自分のためではなく、平塚くんのために。


▶NEXT:12月19日 水曜更新予定
番外編:平塚くんの(元)彼女“岸さゆり”が語る、二人の別れの真相とは



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