「夫といるのは、もう疲れた」男に頼って生きてきた女の思わぬ誤算。30歳の妻に起こった想定外の事態

「夫といるのは、もう疲れた」男に頼って生きてきた女の思わぬ誤算。30歳の妻に起こった想定外の事態

美男美女カップル、ハイスペ夫、港区のタワマン。

上には上がいるものの、周囲が羨むものを手に入れ、仕事も結婚生活も絶好調だったあずさ・30歳。

まさに順風満帆な人生を謳歌するあずさは、この幸せが永遠に続くものと信じていた。

…ところが、夫の非常事態で人生は一変、窮地に立たされる。

幸せな夫婦に、ある日突然訪れた危機。

それは決して、他人事ではないのかもしれない。もしもあなただったら、このピンチをどう乗り越える…?

うつ状態の夫・雄太をサポートすることに必死になっていたあずさは、心身ともに疲れ切っていた。

そんな時、再会した同期・河村から「好きだった」と告げられる。夫でない男に甘えるあずさに、さらなる試練がふりかかる。



「ただいま。わあ、すっごく良い匂い…」

あずさが帰宅すると、家中にカレーの匂いが立ち込めていた。

夫がUber Eatsでも頼んでおいてくれたのだろうか。そう思いながらリビングに入ると、エプロン姿の雄太がキッチンから顔を出す。

「今日はカレーを作ってみたよ。料理なんて中学の家庭科の授業以来かも」

「え!ゆうちゃんが作ったの!?」

あずさが驚くと、雄太は照れ笑いしながら大きく頷いた。

もともと家事には協力的な夫だが、料理はめっぽう苦手で、炊飯器のスイッチを入れることくらいしか出来なかったはずだ。

「お腹すいたでしょ?早く食べようよ」

夫に急かされ、洋服を着替えたあずさがリビングに戻ると、食卓にはカレーとコールスローサラダが並んでいる。

ゴロゴロ野菜といえば聞こえの良い、いびつな形のじゃがいもやにんじん。コールスローのキャベツもかなり荒い切り方だが、こうやって雄太が作ってくれたことが何より嬉しい。

「すっごくおいしい!ありがと」

満面の笑みで褒めると、雄太が冗談交じりでこんなことを言った。

「俺、主夫にでもなろうかな」

あずさはスプーンを動かす手を、ぴたりと止める。

−え…?それは困る。

冗談だと分かっていても、笑い返すことが出来なかった。


家庭的な夫になっていく雄太。一方で、あずさの心の内とは…?

家事なんかいいから、働いて欲しい


「俺、中野のことが好きだったんだよ」

あの日、同期の河村からそう告白されたとき。あずさは突然の出来事に固まってしまった。

ありがとうと返すのもおかしいし、なんと答えるべきか、頭が混乱して言葉が出てこない。

「ごめん、突然。でも中野が辛そうにしてるの、見ていられなくて。俺の正直な気持ちを伝えたまでだから、気にしないで」

そう言い残して、河村は逃げるようにベンチから立ち去った。

ひとり取り残されたあずさは、雲ひとつない青空をぼんやりと見つめる。

−私、ゆうちゃんと結婚して良かったのかな。

雄太と結婚してから初めて、自分の選択が間違っていたのではないか、本当に結婚して良かったのかという不安に襲われたのだった。





「俺やるから。あずさ、お風呂入ってきなよ」

カレーを食べ終え片付けをしようとするあずさを、雄太が制止した。そして柔軟剤の香りのするふわふわのバスタオルを差し出してくる。

「…何から何まで、ありがと。じゃあ、お風呂入ってこようかな」

そう言って、バスルームへと向かう。

バスタブに沈み込んだあずさは、昼間雄太が磨いてくれたであろう、ピカピカの鏡を眺めながら大きなため息をついた。

−ありがたいんだけど…。

休職してからというもの一日中家にいる雄太は、掃除に洗濯などほとんどの家事をこなしてくれており、あずさの負担は大幅に減った。

確かにありがたいし、感謝の気持ちはもちろんある。

しかし、和田家での雄太の役目は、大黒柱なのだ。雄太が稼ぎ、あずさが家事。その構図でないと和田家は存続不可能である。

いくら雄太が家事に精力を出したところで、代わりにあずさが雄太の年収を稼ぎ出すなんてことは出来ないのだ。

−家事なんかしなくていいから、早く復帰してほしい。ちゃんと働いてよ…。

雄太の協力的な家事も否定し、収入のことばかり考える自分が心の底から嫌になる。

しかし、結婚して男に頼る人生設計のもとに働いてきたあずさは、今さらバリキャリに転向することなんか出来ない。

結局、家事に協力的な夫を尊敬できるのは、"ある程度の収入がある"という前提があってこそなのだと痛感した。

−はぁ…。

理想の人生と現実が離れつつある今、先日の美奈のアドバイス通り、自分は思い切った決断をする必要があるのだろうか。あずさは頭を抱えるのだった。

そのとき不意に、あることに気がついた。

−そういえば、最近…?

ここのところ、雄太のうつ問題ですっかり忘れていたが、生理がきていないのだ。


苦難続きのあずさをさらなる試練が襲う…?

「なんで今…」発覚した想定外の事実


慌てて、iPhoneの手帳アプリを見返す。その記録によれば、最後に生理がきたのは1ヶ月半前。

これまで、1日2日のズレはあるにしても生理不順とは無縁だったため、こんなに遅れるなんて初めてのことだ。

生理は精神的なダメージやストレスにより遅れたり止まったりするということは、よく耳にする。夫のうつには、正直に言えばかなりダメージを受けたし、ここ最近あずさも相当参っていた。

きっと、生理が遅れるほど自分も疲れ切っていて、体も悲鳴をあげているのかもしれない。そんな風に考えていた。



問題が起きたのは、その翌週、あずさが風邪をこじらせて急性気管支炎を患った時のこと。

あまりにも咳がひどく息苦しいため耳鼻科を受診すると、医師から「抗生物質を処方するが妊娠の可能性はないか」と確認されたのだ。

「ない………と思います」

「ない」と言った直後、生理がずいぶん遅れていることを思い出す。

−ま、まさかね?

とはいえ、絶対に妊娠していないとは言い切れるだろうか。すると、あずさの曖昧な返事に医師がすかさず反応した。

「思いますというと?この薬は非常に強いので、妊娠の可能性があるなら処方出来ません」

そう強く忠告されると、ますます断言出来なくなってしまう。結局、生理が遅れていることを正直に打ち明け、抗生物質の処方は取りやめることになった。



病院を後にしたあずさは、マンションに着くなり1階の共用トイレに駆け込んだ。

そして、震える手で妊娠検査薬の箱を開ける。それは、さっき帰り道に寄ったドラッグストアで買ってきたものだった。

夫の待つ部屋に直行しなかったのは、余計な心配をかけたくなかったこともあるが、まだ雄太には何も話す気になれなかったからだ。

−まあ、念のためよ、念のため。

そう自分に言い聞かせるが、心の中ではかなり動揺していた。

妊娠なんてありえないと言いたいところだが、実際に生理はきていない。それに、冷静に考えてみるとー。

最後に雄太と抱き合ったのは、うつ発症よりも前のことだった。だけど、その時期から考えるに妊娠の可能性がないとは言えないのだ。

正直、今、妊娠や出産なんて想像出来ない。

雄太はうつ状態でいつ復帰出来るか分からないし、雄太をサポートするあずさも精神的にギリギリの状態だ。

二人とも不安定な今、子どもを産むことなんて不可能だ。祈るような気持ちで、妊娠検査薬を試す。

しかし結果を見たあずさは、言葉を失った。

−え…。うそでしょ…。

そこにはなんと、“陽性”の判定がくっきりと出ていたのだ。途端に頭の中が真っ白になった。

それから、どのくらい時間が経っただろう。ようやく立ち上がりフラフラとトイレを出たあずさは、部屋に戻る気にもなれず、オープンスペースにあるソファに座り込む。

−なんで今なの…。なんで…。

数ヶ月前までは待ちわびていた瞬間だというのに、今となっては正直、素直に受け止めることができなかった。

しかしどんなに一人で悩んだところで、これはあずさだけの問題ではない。まずは夫である雄太に、報告することが必至だ。雄太は一体、なんというだろう。

−もう、どうしたらいいか分かんない…。

どうしてこんなにも、試練ばかり降りかかるのだろうか。目から涙がポタポタとこぼれ落ちる。

ふと窓の外に目をやると、先ほどまでの青空は、重苦しい灰色の雲に覆われていた。


▶︎Next:3月26日 火曜公開予定
妊娠が発覚したあずさ。夫・雄太に報告するが…?


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