「LINEの相手は、誰…?」四六時中スマホを離さない彼女へ向けられた、男からの残酷過ぎる一言

「LINEの相手は、誰…?」四六時中スマホを離さない彼女へ向けられた、男からの残酷過ぎる一言

東京で1人暮らしを始める際、家賃の高さに目を疑う人も多いのではないだろうか?

特に23区の人気エリアでは、狭い1Kでも10万円を超えることはザラ。まだ収入の低い20代の若者たちの中には、“実家暮らし”を選択する者も少なくない。

家賃がかからない分可処分所得が多くなり、その分自分の好きなことにお金を使えることは、大きなメリットだ。

大手総合商社で働く一ノ瀬遥(28)もそのうちの一人。

仕事は完璧、また収入の大半をファッションや美容に投資できる彼女はいつも隙なく美しく、皆の憧れの的。最近は新しい彼氏もでき、全てが順風満帆…のはずだったが!?

実家暮らしだった遥は思い詰める余り、圭介に同棲の提案をする。圭介は遥の気持ちを受け止め、何とか両親の許しを得て、ウキウキの同棲生活がスタートするが…!?



圭介の苛立ち


―またスマホ見てる…

遥と同棲を始めてから、2ヶ月が経とうとしている。圭介は自分の中でモヤモヤとしている、ある違和感に気付き始めていた。

―仕事で俺が疲れているだけだと思おう…。遥は頑張ってくれてるんだから…。

最近圭介は毎日帰りが遅く、日付をまたいで帰ることもある。それ故、ストレスが溜まっているのも事実なのだ。

今日は久しぶりに21時頃に帰宅出来た。遥の作った食事を一緒に食べ、少し寛ぐ時間が出来たのは久しぶりである。

「後片付け、今夜は俺がきちんとやるから。遥は先にお風呂に入って」

遥が風呂場で水を流す音が聞こえ始めてから、圭介はようやく重い腰を上げ、食器を洗い始める。

洗いながらふと、彼女との関係に思いを馳せた。

食器洗いはもともと圭介の分担だったが、ここ最近は遥が黙ってやってくれることが続いていた。仕事に惜しみなく時間を割くタイプだった彼女が区切りをつけ、圭介の家事を多めに引き受けてくれている。圭介にとっては、とにかくありがたい事…のはずだった。

1人暮らしをしたことがない遥が、この暮らしを守るために恐らく実力以上に奮闘している。そのことに対して、最近までは感謝と愛おしさしかなかったはずなのに。

―…それなのに、このわだかまりはなんだ?

圭介は食器を洗いながらリビングに目をやる。風呂上りの彼女がソファに座り、スマホを握ったままバラエティ番組を観てクスクスと笑っている。

―つい最近までただ愛おしくて、ありがたくて、大好きだったはずなのに…。

“ピコン”

LINEの受信音が鳴ると、彼女はすかさず画面を開き、なにやらテキストを打ち返している。

圭介は、その「不満」の原因のひとつは彼女の握りしめているスマホだと気付いた。

―あんなにひっきりなしに、誰とやりとりしてるんだか…。

仕事の疲れもあり、圭介はいま一つ落ち着かないのだった。


苛立つ圭介の横で、遥がやりとりしている相手とは。

平日は忙しい上に、土日は両日とも彼女と一緒のため、趣味のクロスバイクにもなかなか時間が取れていなかった。

またどんなに遥が頑張っても、実家にいた時のようには家事は回らない。自分が頑張ればいいのだが、なかなか思うようには出来ない。圭介は、至極自分勝手なのはわかっていても、苛立ちを隠せなくなっていた。

「遥、誰とそんなにやり取りしてるの?」

出来るだけ平静を装い、遥の隣に腰かける。

「…お、お母さんとだよ」

遥はさっと携帯を隠すようにし、こう言ってまた洗面台に戻った。

「…ふーん」

―また、「お母さん」かよ…。

遥の動揺した様子に、圭介の心にはわだかまりが残ったままだった。


遥がやりとりしていた相手は…


圭介が帰宅する1時間前のこと。

遥は誰もいない部屋の玄関を開け、キッチンの床にどさりと買い物袋を置く。

暦の上では9月に入ったが、残暑が厳しく朝から締め切っていた部屋はサウナのようになっている。

ソファの上には朝、圭介が使ったタオルがそのまま丸まって置いてあるし、隣の部屋のベッドの上には脱ぎっぱなしのパジャマ、布団も乱れたままだ。



「はあ…。」

遥は思わず溜息をついた。今日も定時で帰ろうと思っていたのに、夕方に急な打ち合わせが入った。これまで頼まれごとは何でも引き受けやりきるキャラクターとして会社で頑張って来た以上、「今から打ち合わせはちょっと」なんて言いづらい。

―家事もきちんとやりたい、なんて私の自己満足だってわかってるけど…。

遥は散らかった部屋を見回す。圭介が今朝、「帰ったら片付ける!」と言いながら散乱させたものたちを拾い上げながら、自分も今まで実家で同じようなことをしてきたと思い返していた。

同棲を始めてから、遥は実家のありがたみに気付かされるばかりだった。好きでよく着るブラウスはアイロンがけが手間だと知ったし、シンクや風呂釜をはじめ、水回りはすぐに汚れる。

―「暮らす」というのはなんと手間のかかることだろう。

座っていれば夕飯が出て来て、何をしなくても片付いていたあの頃の生活を、遥は情けなく思う。

それにしても、ふたりともフルタイムで働いているのに、なんで自分ばかりがこんなに家事の負担をするのだろう、と遥は思う瞬間もあった。

正直、外で会っていた時からは考えつかないほど、圭介には案外ずぼらな一面があった。声を掛けてもなかなか起きてこない。朝はバタバタして今朝のように散らかしていくこともザラだ。夜は疲れ切ってソファでうたた寝するなど、もはや電池切れ状態になっていることも多い。

―私だって休みたいけど…。

この生活を望んだのは自分なのだから、と遥は今すぐにソファに深く腰掛けたい欲望を抑えて、汗を拭ってキッチンに立ち、野菜を刻み始めた。

―あ、来月の日曜日、圭介の誕生日だ。

包丁を動かす手を止め、ふと思い出す。

―休日は疲れて寝ていることも多いし、圭介のために何かおいしいものを作ろうかな…。

―あ、ビーフシチューとマリネサラダ…

遥は母が作ってくれていたある日の食事を思い出していた。

―あれ、本当においしいから、圭介に作ってあげたい。お母さんに聞いてみよう!

スマホを手に取り、母に連絡を入れてみた。

―遥:お母さん、元気?あのさ、ビーフシチューとマリネサラダの作り方教えてくれる?

暫く待ってみたが、すぐには返事がない。20時半。今頃両親はあの落ち着くダイニングで、揃って食事をしたり、愛犬のミミと戯れたりしている頃だろう。

21時頃、圭介が帰宅した。疲れが溜まっているのか、何となく不機嫌そうだ、と遥は勘づく。同棲したての頃は「おいしい」と何でも喜んで食べてくれていたのに、近頃の圭介は何を出しても反応が薄い。

―せっかくずっと一緒にいられるのに、なんだかなあ…

片付けを圭介に任せソファで寛いでいると、母から返事が来た。

―薫子:元気よ。お父さんは少し寂しそう。レシピ…そうね、文字に残っているものはないから、近そうなのを送るね。

―遥:ありがとう!

母から有名な家庭料理研究家のレシピのサイトが送られてくる。とても平日には作れなさそうな手のかかり方だ。

―遥:こんなに手のかかることしてくれてたの?

―薫子:これが一番おいしいってみんなが言ってくれるから、ついね、張り切っちゃって。でも、遥はあんまり張り切り過ぎない方がいいよ?あなた、手を抜くとか、適当にやるとかできなくて、「0か、100か」でしか出来ないから…

―遥:わあ、お母さん何でもお見通しだね…


遥の母、薫子のアドバイス。それを受け、遥はある行動に出るが…

―薫子:大変なの?

―遥:うん、ちょっと…家事の分担って難しいね。それに、仕事も家も、ってなかなかしんどい。聞いてくれる?疲れて不機嫌なことも多いし、最近は私が多めに家事をやっても、前みたいには感謝もしてくれなくて。

―薫子:そうだね、なかなか難しいけど。全てうまくやろう、って思わないこと、期待しすぎないこと。あとは、よく話し合うことね。

それから遥は、掃除などの家事の工夫なども母・薫子から教えてもらった。近くに住んでいるとはいえ、好きで同棲を始めた手前、そんなにしょっちゅう実家に戻ることもできない。遥は母とのLINEのやり取りを心底有難いと思っていた。

―でも、圭介にこのLINEは見せられないな…愚痴っぽくなっちゃってるし…

そんなタイミングで、圭介が苛立った様子で「遥、誰とそんなにやり取りしてるの?」と聞いてくるから、また明日ね、と母に急いで返信をし、寝支度に入ることにした。

―期待しすぎないこと、話し合うこと、か…

遥は今度の週末は、ゆっくり食事でもしながら圭介と話し合おう、と思い始めていた。


深まっていく溝


遥の計らいで、その週末は珍しくレストランを予約していた。

「圭介忙しそうだったけど、休日ならいいかなって思って。どう?」

「…うん、おいしいよ」

微笑んだ圭介の表情はどこか淡白だ。

―せっかくの外食なのに、今日も反応薄いなあ…。

当り障りのない会話で食事を済ませ、店を出る。これから食事会や2軒目、といった雰囲気の、遥と圭介と同年代の人々が行き交っている。

家まであと少し。人通りが少なくなったのを見計らい、遥は言った。

「圭介、あのさ。…何か、私に不満とかないかな?私たち大きな喧嘩もしたことないけど、その…私の父の前では同棲は半年って言っているし、今後のためにも聞いておきたいな、と思って…」

圭介は遥のすぐ隣を、前を向いたまま歩いている。

遥はふと、最近手を繋いでいないな、と思った。前のように長時間街を歩くこともなくなったからだ、と思いたかった。



「…その話だけどさ。」

圭介が口を開き、遥の方に首だけ動かして言った。

「俺、いつ半年の期限付きなんて言った?」

遥はどきりとした。同棲の許しを得るために、遥は圭介と父の前で「半年の期限付き」と、圭介への打診もなしに言ってしまっていたのだ。

「俺さ、この2ヶ月暮らして思ったんだけど、遥、俺の分の家事までやってくれようとしてるけど、なんか、実力以上に頑張り過ぎてると思う。ずっとせわしないし。それに、この間からずっと誰かとLINEのやり取りしてて、これもなんか落ち着かないし」

圭介の言い分は間違ってはいない、と遥は思った。確かに、今のように必要以上に頑張り続けたら、いつか遥自身も不満を溜めこんでしまうのではないか、と本人なりに自覚していたからだ。

それでも、こんなに頑張っていることを少しは認めてくれたっていいのに、と頭にきたのも事実だった。

「…で、でも…」

大変な時が来るのはお互い様と思って今は圭介に仕事に集中してほしいこと、そして父の前での発言は謝りたいこと。それでも、将来を見据え一緒に居たいこと。遥の頭の中には圭介に伝えたいことが浮かんでいるのに、彼の様子は遥を素直にさせなかった。

「でも、じゃないよ。正直…こんな風に無理してもらうと、『頑張ってる自分』をアピールされてるみたいで、俺なんか嫌なんだよね…」

遥はガン、と殴られたようなショックを受けた。自分の表情がみるみる頼りないものに変わっていくのを自覚し、思わず歩みを止めてしまう。

たった数メートル離れた先にいる彼が振り返る。「しまった」といった表情で、自分の発した強い言葉を反芻しているのが伝わってきた。

「俺、未熟だな…。同棲するの、早かったかな…」

圭介が独りごとのように小声で言うのを、遥の耳は確かに捕えてしまう。

―…それって、圭介が自分自身のために言った言葉?それとも、私に気を遣ったから?

「そんなことない」とすかさず言えない自分に気づき、遥の頭の中は更にぐるぐると渦を巻く。

―こんなたった数メートルの距離なのに…すごく遠く感じる…。

―頑張る、以外に圭介と一緒にいる方法って言ったら、話し合うことだと思って機会を作ったのに…。

遥は、圭介の後ろをとぼとぼとついて歩くのがやっとだった。


▶NEXT:3月31日 日曜更新予定
溝が深まるふたりを、決定的な危機が迫る…



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