12星座の女たち:忘れられない男が残した、深い傷跡。過去の恋に苦しむ28歳女の運命の行方

12星座の女たち:忘れられない男が残した、深い傷跡。過去の恋に苦しむ28歳女の運命の行方

人生には思いがけない出来事が、いくつも用意されている。

良いことばかりが人生ではない。

受け止めきれずに取りこぼしてしまうこともあるだろう。時には呼吸ができないほど苦しい時もある。

そんな困難に直面し、心が折れてしまいそうになった時、ほんの少しだけ背中を押してくれる存在に出会えた時、人生は好転していくのかもしれない—。

これは生まれ月の違う12星座の女たちが、ある存在をキッカケに自分を取り戻していくストーリーである。

前回は、都合のいい関係に苦しむ“牡羊座の女”を紹介した。今回は―。



名前:浅井玲奈(28歳)
誕生日:5月11日
職業:外資系メーカー 経理
住居:不動前


Case.2 一途。だけど不器用な、おうし座の女


「玲奈ちゃんって、本当にかわいいね。清楚系美女って感じだ」

軽い気持ちで参加した『GENIES TOKYO』での食事会だったが、玲奈は早々に切り上げたくてたまらなかった。

男性陣たちは、ITベンチャーの経営者仲間らしい。玲奈の向かいには、ペラペラの褒め言葉ばかり口にする軽薄そうな男。そして隣には、いま勢いのあるIT会社の社長だというが、不愛想に黙々と食事を口に運ぶばかりで、こちらに気を遣う様子は一切見せない。

―やっぱり、来るんじゃなかった。

時折話しかけられても愛想笑いでごまかしながら、玲奈をこの食事会に誘った友人・藍に時折視線でSOS信号を発する。

しかし、一向に気付いてはもらえない。玲奈は何度も、この苦痛な時間が早く終わるようにと祈らずにはいられなかった。

そして、ようやく終電の時間が近づき全員が連絡先を交換したところで、食事会はお開きとなったのだ。

この時ほど、ほっとした瞬間はない。

玲奈は早々にグループLINEの通知をオフにして、その場を立ち去る。

「なんでこんな所に来ちゃったんだろう」

思わずそんなセリフが口から飛び出してしまった。

真夜中だというのに、どこもかしこも煌々と明かりがついていて少しも気が休まらない。六本木の真ん中にそびえたつミッドタウンを見上げながら、ふとある男の存在が脳裏をよぎる。

松江亮太―。

その名をもう一度胸の内で復唱する。人生で一番恋した人。

彼との恋は、ずいぶん昔に終わっているというのに、玲奈の心にはいつまでも彼の存在が居座り続けていたのだ。


一途に想い続けた男との、越えられない過去とは…

明治通りに植わった桜が満開を迎える度、玲奈は“あの日”のことを思い出す。

「もう、玲奈の気持ちには答えられない。別れよう―」

松江は玲奈の瞳をまっすぐに見据えて、いつも通り表情を崩さずそう切り出した。忌々しいほど満開に咲いている桜が、はらりはらりと花びらを散らし、茫然としているうちに彼は去った。

松江とは会社の忘年会で知り合い、一か月以上猛アタックを受けた。そしてそれに折れる頃、玲奈は情熱的な彼にすっかり恋していたのだ。

しかし、付き合い始めてしばらくすると二人の関係は徐々に噛み合わなくなった。

「仕事が押している」と言って、デートをドタキャンされたり、電話をかけても通じなかったり。最終的にはLINEさえ、既読がつくまで24時間かかるようになった。

それでも、玲奈は松江に文句ひとつ言わず、たまに顔を合わせればねぎらいの言葉さえかけていたのに。

別れの理由も理解できないまま、気が付けばもう2年もの月日が経つ。

そして先日…。松江が社内恋愛の末に婚約したと風のウワサで知ったのだった。



松江がまだ玲奈を熱心に口説いていたころの思い出に浸りながら、自宅までの道のりを歩いていると、トレンチコートのポケットに入れていたスマホが震え着信を知らせた。

2年経った今も、真夜中に着信があると松江からのメッセージではないかと期待してしまう自分が嫌になる。

しかし、実際に表示されているのは玲奈の隣で黙々と食事をしていた、坂下という男の名前だった。

『今日はありがとうございました。無事に帰れましたか?』

初対面の印象通りの堅苦しい雰囲気の文面に、玲奈は思わずため息が出る。グループLINEではなく、わざわざ玲奈に個別でメッセージを送ってくれたのだけれど、それに返信する気力もわいてこない。玲奈はスマホをポケットに押し込んだ。

―そういえば、松江君が私に連絡をくれた時も、こっそりLINEしてくれたっけ

別れているはずなのに次に進むどころか、何をするにしても松江の影がちらついてしまう。

あんなに苦しい思いをしなくちゃいけないなら、そんなのはもう懲り懲りだ。

―あの占い、全然当たらないじゃない…。

新しい出会いの予感、と3つのサイトに書かれていたけれど、そのどれもが大外れだった。玲奈にとって今夜は、余計に松江を思い出すことになってしまったのだから。

しかし、それでも玲奈は自宅に帰ると、ある習慣をやめることは出来なかった。


過去の恋に翻弄される玲奈に贈られたメッセージとは?

シャワーを浴び眠る準備を整えた玲奈は、ベッドにもぐりこむと占いサイトを読み漁っていた。

破局、復縁、彼の心を取り戻す方法―。

そんなキーワードが予測変換にズラリと並ぶ。

2年間ほとんど毎晩欠かさずに読み続け、気が付けば復縁の可能性もあれば、きれいさっぱり諦めろという内容まで様々な結果が出ていたのだ。

時には松江と出会った時期の占いまでさかのぼり、あの当時の行動を一つ一つを思い出しては復縁への手掛かりがないか血眼になって答え合わせをしていた。

出会ってすぐに「長い髪が似合う」と言ってくれた日の事や、お台場で過ごしたクリスマス。付き合っていたのは短い期間だったけれど、彼との思い出はいくらでも出てくる。

未だに彼のことがこんなに好きなのだから、きっといつか報われるんじゃないかと、心の奥底で期待しているのだ。だからこうして、せめて占いの中だけでもいいから彼との幸せな未来を感じさせるものが欲しかった。

そんな思いで恒例の占いサイト巡りをしていると、最近始まったばかりの、ある占いコンテンツにたどり着いた。

―おうし座の来月の総合運、もう出てるんだ…。


牡牛座 5月の運勢


牡牛座の方の中には「変化」という言葉に、ネガティブな反応を示す人も多いでしょう。しかし、私たちは時に”変わらざるを得ない”という状況に直面することもしばしばあるのです。

天王星が牡牛座から牡羊座に移動し、2か月が経過すると徐々にその力を増していきます。

無限に広がる可能性を吟味した4月。牡牛座の心は5月上旬、迷ったり方向が定まらず現状維持しようとするかもしれません。しかし、抗えない「変化」が押し寄せていることも同時に実感しているはずです。

「変化」を受け入れるというのは、特にあなたにとっては決して楽な道ではないかもしれません。時には衝突さえ起こりうるでしょう。そんな時はほんの少しだけ、言い過ぎや、やり過ぎに注意してください。

もし前に進めず、堂々巡りを繰り返しているのであれば、まずは自身を取り巻く環境を整えることに集中すると良いかもしれません。特に、自分自身の外見を磨くには最適の時期と言えます。

小さな出来事から、少しずつ。焦らずに、自分のペースを大切にしてください。

変わることや手放すことを恐れずに、受け入れていくのもまた人生なのです。

ラッキーデイ:5月19日

Horoscope:J・ミナト



―なんだか小難しい占いね…。

占いサイトをいくつもブックマークしていたが『J・ミナト』という占い師は初めて見かけた。

妙に堅苦しいこの占いを、真っ向から信じる気にはなれなかったのだが、ほかの占いサイトでも確かに5月は転換期になるだろうというようなことが書かれていたことを思い出す。

「変化ねぇ。」

『J・ミナト』という謎の占い師の言葉について考えているうちに、玲奈は深い眠りへと落ちていった。


5月19日に訪れた玲奈の変化とは?


『J・ミナト』の占いの存在をすっかり忘れていた5月の中旬。玲奈は表参道のヘアサロンを訪れていた。

「ずいぶん伸びたね〜。」

担当美容師の美咲さんはそう言って、玲奈の肩下まで伸び切った髪をコームでとかし始める。

「玲奈ちゃん顔小さいし、ショートも似合うと思うよ〜。ほら、このボブなんて素敵じゃない?少しピンクも入れたら顔色も明るくなるし」

美咲さんが指した雑誌には、かわいらしいショートボブの女性モデルがにっこりとほほ笑んでいる。

「いえ、今日はパーマとトリートメントだけで大丈夫です…。カットはまた今度」

どうしても髪を切ることに抵抗を感じてしまう。松江が好きだと言ってくれた髪の長い自分を手放してしまえば、もう二度と後戻りが出来なくなってしまうのではないかと感じたからだ。

5月になっても、玲奈の心は「長い髪が好き」と言っていた男に支配されていた。

パーマの準備を始める美咲さんの後ろ姿を鏡越しに眺めながら、松江との思い出をなぞっていると、不意に玲奈の携帯が着信を知らせる。

―坂下さん…、あのまま既読スルーしてたのに。

「あ、もしかして彼氏さん?」

LINEを開いたまま固まっている玲奈の様子に、準備をしていた美咲さんが声をかける。

「いえ…、最近知り合った人で。」

LINEには相変わらずあの丁寧な言葉づかいで、「今夜、もしお時間あれば食事に行きませんか?」と書かれていた。まったく興味がなさそうだったのに、数週間も経って突然連絡をよこしたこの男が一体何を考えているのか、玲奈には皆目見当もつかない。

「そっか。新しい出会いの季節だね。」

美咲さんが何気なく口にした「新しい出会い」という言葉をきっかけに、美咲は『J・ミナト』の占いを思い出した。

―変わることや、手放すことを恐れてはいけない

ちょうど予定の無い日曜日だからと、パーマとトリートメントのために予約したヘアサロンだったが、その日付が「5月19日」ということに気付いたのだ。

玲奈は急いで、パーマの準備をしていた美咲さんを呼び止める。

「あの、予約したメニュー、変えさせてもらえますか?」

「え、もちろんいいわよ。カラーにする?」

「はい。カラーと、それからこんな感じでカットしていただきたいんです。」

そう言って、あのショートボブのモデルがほほ笑むページを指さしたのだ。

「本当に?いいの?」

何度も私にそう確かめる美咲さんに、私は微笑んでから頷く。

―彼が好きだった、私を手放してあげよう。

それが変化への第一歩なのかもしれないと気付いたのだ。

「ふふ、少し前に進んでみようかなって、思ったんです。」

玲奈は冗談ぽく、美咲に笑いかけたのだった。



「わあ、やっぱり似合うじゃない!」

そう言って美咲さんは手鏡を私に手渡す。

耳下あたりで切りそろえられたショートボブ。細い首筋がきれいに映えているし、カラーもワントーン明るくしたおかげで顔色が良く見える。

「ふふ、ショートなんて久しぶりです。軽くてうれしい。」

「これならきっと、”彼”も惚れ直しちゃうわね。」

仕上げを終えた、美咲さんがそんなことを口にする。

その瞬間に思い浮かんだのは、あの不愛想に食事をしていた坂下の顔だった。

玲奈は今日はじめて、2年間も玲奈の頭の中を占めていた松江の存在を、すっかり忘れていたことに気付いたのだ。

「そうですね、きっと驚くと思います。」

もう一度鏡でバッサリと髪を切った自分を覗き込む。長い間過去に縛られて、何をするにも松江のことが忘れられなかった自分から、少しだけ距離を置くことができたようだ。

失恋したら髪を切る。その行動は理にかなっているのかもしれない。

お会計をしている間も、美咲さんは玲奈の新しいヘアスタイルを誉めてくれた。

外見を変え心も軽やかになった玲奈はサロンを出ると、おもむろにスマホをバッグから取り出す。

そして、既読スルーしていたあのメッセージにようやく返信を送るのだった。

『返信、遅くなってごめんなさい。お誘いありがとうございます、ぜひご一緒させてください。』


▶Next:4月29日 月曜更新予定
婚期を逃し焦るふたご座の女。そんな彼女を待ち受けていた試練とは…?


<牡牛座について>

英語名:Taurus
エレメント:地
誕生日:4/20〜5/20

・じっくりと向き合う慎重派
・堅実で倹約が得意
・恋愛に対しては受け身になってしまうことが多い
・粘り強く、簡単にはあきらめない



関連記事

東京カレンダーの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

トレンド アクセスランキング

ランキングの続きを見る

トレンド 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る 動画一覧を見る

記事検索