「他の男とのキスなんて、見たくない」。芸能人と付き合う道を選んだ、IT社長の苦悩

「他の男とのキスなんて、見たくない」。芸能人と付き合う道を選んだ、IT社長の苦悩

—芸能人。

それは選ばれし一部の人しかなれない、煌びやかな世界で生きる人たちのこと。

東京という街は、時に芸能人と出会うチャンスに溢れている。

テレビの中の人物が、ある日突然、レストランで隣の席に座っていることもある。

東京には、夢が溢れている。ドラマのような出会いが、実際にある。


IT社長として財を成した中澤隼人(35歳)も、そんなドラマのような体験をした一人。

平凡な毎日が、今をときめく女優・悠美(ゆうみ)と出会い、仲を深めていく隼人。しかし浮かれる一方で週刊誌に悠美との2ショット写真が掲載され、“仲の良い友達です”と言われてしまう。しかしそれがキッカケで、むしろ二人は急接近したのだが・・・



悠美とお互いの家を行き来するような関係になってから、約半年が経った。

悠美が僕の家にいる時にテレビをつけるとたまに彼女が出ていたりする。その時は何とも不思議な気分になるが、隣にいる彼女は芸能人の悠美ではなく、一人の普通の女の子・田中悠美だった。

「そういえば・・・最近、なんかまた記者の人につけられてる気がするんだよね」

僕は見ていたテレビを消し、食器の片付けをしてくれていた悠美の方を向く。

「また?気をつけないとだね」

僕たちはあの週刊誌事件以来、写真を撮られることに敏感になっていた。

そのため二人での外出は控えるようにし、デートはもっぱら家にするなど、細心の注意を払っている。

「でも、僕たちはあまり外に出ないから大丈夫じゃない?」
「そっか、そうだよね。いつも家ばかりでごめんね」

申し訳なさそうに俯く悠美に、僕は首を横に振る。こうして一緒に居られるだけで幸せだったから。


しかし、悠美はそうは思っていなかったのかもしれない。


せっかく動き出した二人の恋に、新たな危機が訪れる・・!?

「そう言えば、新しいドラマで主演が決まったの!しかもね、最近注目ドラマばかり放送してる22時枠なんだよ〜」

ルンルン気分で僕の隣に座る悠美。上機嫌な様子が可愛くて、僕なりに一生懸命感情を出して、最大限に褒めてみる。

「へぇ、そうなんだ!すごいね、主演なんて。さすが悠美」

しかし“すごい”と言ってみるものの、実際はよく分かっていないところも多い。

そもそも芸能界に入れること、そこで活躍していることも僕にとっては“すごい”事。且つ、その熾烈な競争の中でドラマの主演を張れるなんて、僕のような一般人が想像できる“すごい”レベルをはるかに越えている。

「ちなみに、どんな内容なの?」
「久しぶりの恋愛もの!相手はね・・・翔平さんっていう、モデル上がりの俳優さん。隼人さん、知ってるかなぁ?」

何となく顔は分かる。身長185cmくらいの、今時っぽい塩顔のイケメンだ。

モデル時代はSHOHEIという英語表記で活動していたが、俳優をする時は本名である漢字の翔平を使用していると、何かのインタビューで答えていた気がする。

「聞いたことはあるかも・・・名前なんて、一つでいいのにね」
「え〜どういうこと?相変わらず、隼人さんって面白いね」

そう言って、ケタケタと笑う悠美からは、お風呂上りでもないのにふわりと石鹸の香りがした。



—2ヶ月後—

ドラマの撮影が本格的に始まると悠美は一気に忙しくなり、会える時間はグンと減った。

「ただいまぁ」

誰もいない、真っ暗な部屋に帰る。もちろん誰かが返答してくれるはずもない。僕は明りもつけずに、広々としたリビングの窓から見える東京タワーと、キラキラ光るビル群を見つめる。

悠美にはもう合鍵を渡していたので、僕が仕事で遅くなると悠美が家にいることも多かったのだが、気がつけば2週間以上も会えていないことに気がつく。

無駄に広いこの家が、最近は好きだった。それは悠美が家にいたからだ。

たまに地方ロケの際に、その土地の景色の写真を送ってきてくれたりはするが、前のように頻繁には会えない日々。しかもこのまま映画の撮影にも入るようで、更に会えなくなる気配しかない。

何となく、気になって携帯で“翔平”と検索してみた。

すると物凄く爽やかな笑顔に、完璧なスタイルをした彼の写真と記事が大量にヒットする。しかもネットには上半身裸の写真も載っていたのだが、ガリガリの細身かと思ったら、まさかの筋肉バキバキだ。

—なんだよコイツ・・・勝ち目ないじゃん。

自分で検索しておきながら、勝手に落ち込む。見なかったことにしようとしてもモヤモヤは収まらず、結局眠りにつけたのは明け方だった。


気のせいなんかじゃない。主演女優と俳優の危険な恋が始まる!?

それが、女優という職業。


そして更に悪夢は続く。

遂に、ドラマの放映が始まったのだ。

ドラマの内容は、最初は嫌い合っていた二人が段々と惹かれ合う・・・という至って普通の内容だったのだが、ドラマが進むにつれ、二人の親密度は増していく。

役だから仕方のないことだけれど、最初は翔平のことを“ウザい”と言って相手にしていなかったはずの悠美なのに、ドラマが進むと彼に対する見方が変わっていくのだ。

—嫌いなままでいいよ!

そうテレビに突っ込んでも、どうしようもない。

悠美と翔平の距離感は、回を追うごとに近くなっていく。恋人になる設定なので距離が近いのは当たり前のことだが、“ここまで近くなる必要はあるか”と思わず言いたくなる。

そして、やってきたキスシーン。

好きな女の子が他の男とキスしているのを見て平常心を保てる男なんて、この世の中にいるのだろうか。

きっといない。

—これが、女優と付き合うということなのか・・・。

今までワイドショーを賑わせてきた女優の彼氏たち。僕は心から、その男たちを尊敬した。



しかし、そんな風に呑気にテレビに向かって突っ込んでいられたのは、ほんのひとときだった。

久しぶりに悠美がうちへ来たのだが、僕は何故か嫌な予感がしたのだ。

「ドラマの撮影、どう?」

すっかりくつろぎムードの悠美は化粧を落とし、ルイボスティーを飲んでいる。

「うん、撮影現場は和気藹々としてて楽しいよ〜。スタッフの皆さんもキャストも仲が良くて、本当にいい現場なの。翔平も年齢が近いから、やりやすくて」

“翔平さん”だったのが“翔平”と呼び捨てになっていることに気がついたが、僕は気づかないフリをしてみる。

「そっか、良かったね」

そう言いながら、僕は湯気の立つルイボスティーをゆっくり飲む悠美を見つめていた。



それから2週間後。友人から、一通のLINEが送られてきた。

そこにはネットニュースのURLが貼られていたのだが、それを開くと、そこには見たくなかった、信じられない記事が載っていたのだ。


『ビッグカップル誕生か!?人気女優・悠美とイケメン俳優・翔平のデート現場をスクープ!』


「嘘、だろ・・・」

信じられずに、もう一度記事を読み直す。しかし、たしかにそこには二人でレストランから出てきた写真が載っている。

気がつけば、僕の携帯を持つ手は震えていた。


▶NEXT:4月29日 月曜更新予定
悠美の浮気、発覚!?



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