「女なら、男の都合に合わせろよ」。お見合い相手から否定され続けた、32歳キャリア女の悲劇

「女なら、男の都合に合わせろよ」。お見合い相手から否定され続けた、32歳キャリア女の悲劇

欠点のない、完璧な男などこの世にはいない。人には誰でも長所と短所があるものだ。

しかし、女性が絶対に許せない短所を持った男たちがいる。

浮気性、モラハラ、ギャンブル、借金、ストーカー…

そんな残念男とばかり引き寄せる女が、もしかしたらあなたの周りにもいないだろうか。

橘梨子(たちばなりこ)、32歳もその一人。人は彼女を男運ナシ子と呼ぶ。

この話は、梨子がある出来事をきっかけに、最後の婚活に挑む物語。彼女は最後に幸せを掴むことが出来るのか、それとも…


直樹からの一方的な深夜のLINEにストレスを感じていた梨子は、思い切って返事が出来ないと伝える。すると、直樹は豹変し、梨子を叱責し始めたのだった。



お見合い相手の直樹との2回目のデートは、梨子にとって辛く長い時間になっていた。

1回目のデートの後、深夜に送られてくるLINEに違和感は抱いていた。でも、まさかここまで酷い男だったとは想像していなかった。

梨子はワインを飲むどころか、すっかり食欲をなくし、目の前にいる直樹を冷めた目で見つめる。直樹は「女なら男の都合にあわせろ」と一方的に熱くまくし立てている。

―海外経験も豊富な直樹さんが男尊女卑で、しかもモラハラ男だったなんて…

「梨子さん、僕の気持ちわかってくれました?梨子さんは、雑誌に取り上げられるくらい、お仕事もバリバリしている。でも、それって男性を委縮させちゃうんですよ」

直樹は、自分のスマホの中に記録した梨子のインタビュー記事をおもむろに見せてくる。

≪私は仕事人間です。コスメプロデューサーの仕事は…長年の夢、生きがい、自分が一番輝ける場所だと確信しています≫

「仕事人間です!って宣言されても。結婚してもそのスタンスだとキツイですよね」

―会って2回目のこの人に、何でこんな事を言われなくちゃいけないんだろう。

ついさっき、一瞬でも分かりました、ごめんなさいと言おうとしていた自分を恥じた。モラハラ男は、謝るとますますエスカレートしてしまうのに。

これ以上、直樹に責められたくない。梨子は腹を決めて、口を開いた。

「会ったばかりの直樹さんに、私の仕事のことで何かご迷惑をおかけしましたか?」

真顔でそう尋ねると、直樹は慌てたように言葉をつなげる。

「いや、だから、結婚したら、仕事よりも家庭を優先してほしい。自分のことよりも僕のことを優先してほしいって言いたいだけなんだけど…理解できないのかな?」

直樹は、お見合いしたら即結婚、とでも考えているのか、梨子を妻にする前提で話をしてくる。

―絶対に、この人とは結婚したくない…!


ついに梨子が直樹に反撃開始!

「私、直樹さんとは価値観が違い過ぎて、結婚はできません」
「帰国子女の僕にとって、日本語ってニュアンスが難しいから、ちょっと誤解を招いてるかもしれないです。僕は初めて会った時に、犬のモモコに似てる梨子さんに運命を感じましたし、梨子さんを幸せにしてあげたいって思ったんです」

もはや、何を言われても気持ちが変わることはない。そして梨子は、直樹に決定的な一言を告げたのだった。

「いえ、何も誤解してないと思います。直樹さんとの結婚は無理です。…直樹さん、ご自身が、モラハラ発言しているっていう自覚はありますか?」

「モ、モラハラ!?僕は、そんなつもりは…!」

"女なら男にあわせるべきだ"とか、"仕事よりも家庭を優先してほしい"と言い、自分の価値観を押し付けてくる男に限って、モラハラの自覚がないのだ。最後は決まって、キミを幸せにしてあげられるのは僕だけだと囁く、お決まりのパターン。

そんな男に、人生を台無しにされるのは二度とごめんだ。

「これ以上、お話しても分かりあえないと思います。失礼します」

そう言うと、財布からお金を取り出し、5,000円を置いてお店を出た。

帰り道、梨子はどうしようもない疲労感に包まれていた。

―マザコンの次は、モラハラか…。

今までは、男運ナシ子と言われても、どこかしょうがないと思う自分がいた。元カレ達に尽くしすぎたという自覚があったし、NOと言えなくて相手をつけあがらせてしまったのかなと振り返っていた。

でも、マザコン男もモラハラ男も梨子がそうさせたわけでもなく、引き寄せてしまったのだ。

―これじゃ、本当に救いようのない男運ナシ子だ…。

赤坂サカスでは、カップルが熱い抱擁を交わしている。その光景が梨子をますます絶望的な気持ちにさせる。

―みんな幸せなのに…。私には、なんで手に入らないんだろう…。



そのまま家に帰る気になれなくて、梨子の足は会社に向かっていた。仕事をすることで、自分の存在価値を確かめようとしたのかもしれない。

デスクに座り、一息つくと社内向けのプレゼン資料のコンセプトを考える。

輝く私でいるために。
明日の私は、私が決める。
恋に破れても、私は私。

PCに一心不乱に文字を打ちながら、「やっぱりダメだ」と呟く。

こんな気持ちの時に、女性に憧れてもらえるような商品は思いつくはずがない。

そのとき、オフィスの部屋の入り口から聞き覚えのある声がした。

「おい、梨子?デートじゃなかったのかよ?」


梨子に救いの手を差し伸べてくれたのは、やっぱりあの人だった…!

振り返ると、驚いた顔で竜也が立っていた。

「竜也、私また…」

そのまま話を続けると、確実に泣いてしまいそうだった。だから慌てて言葉を飲み込む。

竜也は一瞬困った顔をしたが、すぐに笑顔をつくって梨子に言う。

「よし!陽菜もまだ仕事してたから、久々に3人で今から飲みに行こうぜ」

全てを察したうえで、多くを聞かない竜也の優しさがありがたかった。



『酒場シナトラ目黒店』で竜也はビール、陽菜と梨子はレモンサワーを頼んだ。

「で、梨子は何があったの?」

陽菜にそう尋ねられて、ここ最近起こったことを、ぽつぽつと語り始める。落ち着きを取り戻した今なら、感情的にならずに話せそうだ。

「んとね、合コンで出会った智也さんはマザコン。そして、お見合いした人、直樹さんはモラハラ男だった」

医師の智也とのデートで母親が隠れて指示を出していたことや、お見合い相手の直樹から、結婚する気があるなら男にあわせろと言われたことなどを二人に淡々と説明する。

陽菜は悲鳴をあげ、竜也は眉間にしわを寄せながら梨子の話を聞いてくれる。

「梨子、大変だったね。まさか、そんな目にあってたなんて。ていうか、私に早く連絡してくれれば良かったのに。マザコンの背中に蹴りいれて、モラハラの帰り道に落とし穴掘ったのに」

陽菜の冗談に、心から救われる。

―この2人がいてくれて本当に良かった。そうだった。もっと早く相談して話を聞いてもらえば良かったんだ…。

すると、陽菜の携帯に誰かから電話がかかってきたらしく、ちょっと外にでるね、と言って彼女は席を立った。

黙って話を聞いていた竜也が、遠慮がちに口を開く。

「梨子、なんかごめん。俺が"お見合い相手に気持ちを伝えろ"とか言ったから、変なことになったよな…」

「何で竜也が謝るのよ。むしろ、気付かせてくれてありがとうだよ」

微妙な沈黙が気まずくなり、お酒を飲みほすと、隣に座っているサラリーマン2人組の会話が耳に入ってきた。

「家に帰っても、話を聞けだの。子供の世話をしろだのうるさいんだよ」「そうそう、誰のおかげで飯食えたんだ!って言ってやろうぜ」

―奥さんの悪口、大きな声で嫌だな。いや、でもこれが現実なのかも。結婚したら幸せになれるって思ってたけど、私は結婚に夢を見すぎてるのかもしれない。

弱音を吐きたくないと思っていたけれど、お酒のせいもあり、ついつい本音をこぼしてしまう。

「やっぱり、私は男運ナシ子だよね。婚活、諦めようかな。結婚しない人生だって、そんなに悪くないかもしれない」
「なぁ、梨子。俺はそうは思わない。俺はお前のこと…」

気がつけば、真剣な眼差しで、竜也がこちらを見つめていた。


▶Next:5月29日 水曜更新予定
梨子を一番近くで支えてきた、竜也と陽菜の本音が明らかになる



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