“上場中止”というイタすぎる損害。女優と付き合ったIT社長の、予期せぬ試練

“上場中止”というイタすぎる損害。女優と付き合ったIT社長の、予期せぬ試練

—芸能人。

それは選ばれし一部の人しかなれない、煌びやかな世界で生きる人たちのこと。

東京という街は、時に芸能人と出会うチャンスに溢れている。

テレビの中の人物が、ある日突然、レストランで隣の席に座っていることもある。

東京には、夢が溢れている。ドラマのような出会いが、実際にある。


IT社長として財を成した中澤隼人(35歳)も、そんなドラマのような体験をした一人。

今をときめく女優・悠美(ゆうみ)と出会い、仲を深めていく隼人。しかし週刊誌に悠美との2ショット写真が掲載されてしまう。だがそれがキッカケで、二人は急接近する。そんな中、悠美がイケメン俳優・翔平とデートしている所をスクープされ愕然としたが、結局誤解だと分かったのだった。



“女優と付き合う”、という意味


それは、とても平凡な朝だった。

先週悠美が家へ来てお互いの気持ちを素直に話し合い、僕たちの仲はようやく深まった気がしていた。

しかし、そんな心地良い充足感と少し甘酸っぱい幸せに満たされていた僕の気持ちは、スマホを見た途端粉々に砕け散るのだ。

朝早くにも関わらず、秘書から電話が入っている。

うちの秘書は仕事の鬼だが、早朝と深夜は僕に気を使って緊急時以外は絶対に連絡してこない。その秘書から電話があるということは、何かを意味している。

それに追い打ちをかけるかのように、会社の役員からも何通もメールが入っている。

妙な胸騒ぎを覚え、まずは役員連中のメールから開封することにした。しかし、そこには信じがたい文字が躍っていたのだ。


—中澤さん。上場できなくなったって、どういう意味ですか?


メールを読んだ途端に、サァっと血の気が引いていった。


女優と付き合った弊害!?隼人が陥った絶望的な状況とは

「上場、できない・・・!?」

前の会社はもう売っているので株しか保有しておらず、経営はノータッチと決めているが、今携わっている会社は上場間近だった。

そのためにずっと準備をしてきたつもりだし、何よりも関わってくれてきた人たちが何百人といる。

彼らの夢であった上場をこの会社で実現させてあげたいと思っていたのに、そしてついこの前まではほぼ確定だったのに、何故急にこんなことになるのだろうか。

慌てて秘書に電話すると、僕はようやく事態が飲み込めたのだ。

「隼人さんのせいでは、決してないです。ただ、ちょっと顔が割れすぎてしまったために、調査が厳しくなったみたいで・・・」

—悠美とのことか。

週刊誌の記事が瞬時に脳裏をよぎる。あの記事が掲載されて以降、好奇の目に晒されることは多くなったし、周囲は騒がしくなった。

でも、もしかしたら僕はどこか他人事のように捉えていたのかもしれない。

いや、違う。まさかこんなことにも影響するなんて、思いもよらなかったのだ。

慌てて会社へ向かうが、こういう時に限ってタクシーが捕まらず、社用車をあえて持たない主義だったことを悔いる。そしてようやく捕まえたタクシーの車内でも、電話とメールは鳴り止まない。

「くっそ・・・何をやってるんだ、俺は」

思わず、悔しくて拳を握りしめている自分がいた。



「あぁ、隼人さん、来ましたね」

僕より家は遠いはずなのに、会社に着くと秘書が慌ただしく迎え入れてくれた。社内も騒然としている。

「遅くなってごめん。状況、どんな感じ?」

奥の会議室に入り、ブラインドを閉める。さっきまでの喧騒が嘘のように、この会議室内は凛とした静けさが漂う。

「先程お電話で申し上げた通り、隼人さんのせいではないんです。ただ、マスコミが過剰に騒ぎ立てたせいで、ちょっと世間からの目が冷たくなったようで・・・」

秘書が申し訳なさそうに、僕の方を見ている。その目を見て、僕は悟った。何か重大なミスを犯してしまったようだ、と。

「違うんです、本当に隼人さんのせいではないんです。ただ、今回の騒動でうちの会社への調査が強化されて。それで役員の一人である佐藤さんが・・・彼の身辺調査と言いますか、過去の経歴や実績、そして交友関係諸々を洗い出されたようで。私たちも見逃していたことが見つかりました」

上場するにあたっては、厳しい評価基準や審査がある。

もちろん、僕たちは僕たちで調べていたし、彼らの経歴や交友関係もチェックしていた。けれども今回の僕の一連の騒動で、何故か役員の一人の情報が晒され、そしてバツがつけられたのだ。


まだまだ終わらない。隼人に対する世間からのバッシングとは!?

世間からのバッシング


長い1日を終え、ようやく家へ着く頃には24時を回っていた。

フラフラとソファへ倒れ込み、携帯電話で自分の名前を検索してみる。

今まで、あまりこういうことをしてこなかった。僕は有名人でもないし、ただの一般人だ。自分の名前を入れたところでFacebook関連か、もしくは会社の役員名簿の箇所に名前がある程度だった。

しかし、僕は携帯電話を思わず落としそうになってしまった。

つい数ヶ月前までは大した検索数もなかったのに、今は何百、いやそれ以上に自分の名前がヒットする。

しかもその半数は、バッシングだった。

—このIT社長、キモくない?
—どうせ金でしょ?
—俺らの悠美様がぁぁぁぁぁ〜!!
—俺もIT社長だったら、女優を抱けるのかなぁ。

見るのも嫌になり、僕は携帯電話を思わず床に投げつける。

今日の一件といい、このネット民達のコメントといい、まさかこんな事になるなんて思ってもいなかった。

それは自分の脇の甘さにあるのかもしれないが、今までただの一般人として生きてきた以上、ここまで世間から色々と囃し立てられるとは想像さえできなかったのだ。

「やっぱり、俺じゃ無理だったのかな」

その声は、意外にも大きな声となり、誰もいない部屋に響いていた。





どれくらい、寝ていたのだろうか。

さっきから、電話がずっと鳴っている。出たくない、と心の中で思いながらもあまりにもしつこいその電話に、僕は仕方なく上半身を起こす。

時計を見ると、まだ25時前だ。疲労困憊していたのか、30分ほどソファーでそのままうたた寝をしていたようだ。

まだ鳴っている電話に手を伸ばし、僕は静かな声で出た。悠美かもしれない。でもマスコミかもしれないし、秘書かもしれない。

もう、半ば投げやりな状態だ。しかしその電話は、予想外の人からだった。

「あ、ようやく出た〜!!隼人さん、大丈夫ですかぁ?落ち込んでるんじゃないかなーと思って♡」

その声を聞いて、慌てて受話器を耳から話す。寝ぼけててきちんと発信先を見ていなかったが、その声の主は亜弥だった。

「げ・・・亜弥ちゃん?」
「ヒッド〜い!“げっ”とか言わないで下さいよぉ」

彼女と関わるとロクなことはない。それに、相手が彼女となると悠美に対して後ろめたさのようなものも感じる。

「ごめん亜弥ちゃん。僕は今君と話しているような状況じゃないんだよ。ごめんね、切るよ?」

「え、あ、ちょっと待って!佐藤さんのことで、隼人さん落ち込んでるんじゃないかなぁ〜と思って心配して電話したのにぃ」

携帯電話を持ったまま、僕は固まった。

亜弥は、なぜそれを・・・?


「亜弥ちゃん。どうして佐藤のことを知ってるの・・・?」


▶NEXT:5月27日 月曜更新予定
亜弥の沼に陥っていく隼人と悠美は、どこまで落ちるのか?



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