必要なのは、顔でも性格でもなかった。モテる男の彼女になるための条件とは

必要なのは、顔でも性格でもなかった。モテる男の彼女になるための条件とは

「モテる男なんて苦労するだけ」
「結婚するなら誠実な男が一番」

早々に結婚を決めた女友達が、口を揃えていうセリフ。

だが本当にそうなのだろうか。ときめきのない男と結婚して幸せなのだろうか。

そう疑問を呈するのは、村上摩季・27歳。

モテ男・相原勇輝に心奪われた摩季。

当日夜の呼び出しや不完全燃焼のデートに意気消沈するも、予想外に彼女の座を掴み取った。

ところが幸せもつかの間、強敵の登場や女の影を見つけるなど、やはりモテ男は一筋縄ではいかない。



「ねぇ、玲奈。男の一人暮らしの部屋に女ものの化粧品があった場合、やっぱり黒だよね…?」

唐突に、何の前触れもなく問いかけた私を、玲奈はただ黙って見つめ返した。

勘の鋭い彼女のことだ。私が「話があるの」とランチに誘った時から“何かあった”ことを察していたのかもしれない。

「…それで、相原はなんだって?」

静かに尋ねる玲奈は、すべてを理解している顔だ。

「ああ姉ちゃんのだよって、さらっと返された。…本当かなぁ」

勇輝に姉がいるのは本当だ。その姉に私が少し似ているのだと話していたこともある。

彼の返答は淀みなく自然で、何より「また疑ってるのか」と思われたくなくて、私は「そっかぁ」と笑い返すに留めた。

「さぁ、私には弟いないからよくわからないけど。でも相原がそう言うならそうなんじゃないの?」

憶測で物を言わない玲奈の存在に救われた気がした。

グループLINEで裕子と花苗に相談したときは「絶対嘘に決まってる」と断言されて終わっていたから。

「ありがとう玲奈。やっぱり私、勇輝くんのこと信じる」

決意表明をするように言った。

すると玲奈はハッとしたような表情で私を見つめ、しみじみと、こんなことを言うのだった。

「相原が摩季と付き合おうと思った理由、わかる気がするわ」


「信じる」と断言した摩季。そのとき玲奈が思い出していた“苦い記憶”とは

玲奈:信じる強さ


−私、勇輝くんのこと信じる−

摩季の言葉を聞きながら私は、もう遠い昔となったある出来事を思い出していた。

あれは確か、大学2年の夏。毎年蓼科で行われるゴルフサークルの夏合宿に参加していた時のことだ。

合宿所のリビングに皆で集まり、スーパーやコンビニで買ってきたお酒とお菓子で目的もなく語り合う。

そのうち、十分だったはずのドリンク類が足りなくなってしまって、私が「買いに行ってくるよ」と声をあげた。コンビニまでは徒歩で10分ほど。近くはないが、なんとなく夜風に当たりたい気分でもあった。

「じゃあ俺も行く」

すると、私とは対角線上の場所で盛り上がっていたはずの勇輝がさりげなく立ち上がったのだ。

「一人じゃ危ないし、重いだろ」

二人連れだって、コンビニまで歩いた。

酔った頬に高原の夜風が心地よい。

その時、私は勇輝の前を鼻歌混じりで跳ねるように歩いていた気がする。都会を離れた開放感と非日常の空気で、珍しく気分が高揚していたのだと思う。



「玲奈。俺と付き合ってよ」

後方から、風に乗って届いた声に立ち止まった。

「え?」

突然の告白に、ドキンと胸が高鳴ったことを否定するつもりはない。

けれども私は別に、相原勇輝を好きではなかった。いや、正確には、好きにならないようにしていた。

前にも話したように、私はモテる男を自認し調子に乗っている勇輝をどちらかといえば軽蔑の眼差しで見ていたのだ。

彼はいつも誰かしら女の子と一緒にいる。数ヶ月前には、キャンパスの中庭を他大学(おそらく女子大)の女の子と仲睦まじく歩く姿を目撃したところでもあった。

あの子とはもう別れたのかそもそも彼女じゃなかったのか。

詳しくは知らないけれどとにかく、そんな彼が私を口説くなんて…一体どういうつもりなのか。

「…そういうこと、軽々しく言われても無理」

自分でも可愛くないな、と思いながら答えた。しかし私のこういう性格は彼もよく知っている。

「いやでもさ、逆に重々しく言われても嫌だろ?」

大して気にもしない様子で笑い飛ばす勇輝に、私は「だからそういうところが」と呆れ顔を見せた、その、次の瞬間。

ぐっと腕を掴まれ、身体を引き寄せられた。

「軽く言おうが重く言おうが気持ちは変わらないよ。…好きなんだ、玲奈のことが」

一瞬、理性がぐらりと揺れるのがわかった。けれども私はすぐに冷静さを取り戻す。

勇輝が付き合うような女の子たちはこういうとき、きっとあと先考えずに飛び込むのだろう。しかし私にはできなかった。

「ごめん。私は…無理」

「無理って…相変わらずきっついなぁ」

腕を剥がし後ずさりする私に、さすがの勇輝も気まずそうに顔を歪める。

「ごめん。でも私は相原のこと、信じられない」

「信じられない」と言った瞬間、勇輝の顔が明らかにこわばり、唇を固く結ぶのが見えた。

しまった、言い過ぎた。すぐに反省したものの、しかし弁解する気はなかった。私にはやっぱりどうしても、彼を信用することができない。

裏切られるのが怖かったから。

裏切られて傷つくくらいなら、最初から信じない。その方が、ずっと楽だと知っていたからだ。


傷つくことを恐れるあまり、玲奈は男を信じられずにいた。

そのあと、私たちは何もなかったように仲間の輪に戻った。そしてそれから先、勇輝が私を口説くようなことは二度となかった。

それもそうだ。彼は、自分を振った女を再び追いかけるような男じゃない。

そのうち私は年上ばかりと付き合うようになり、社会人1年目で浦沢と出会った。

大人の男の魅力に惹かれながらも、私は浦沢を最初から信じていなかった。私はそんなに鈍感じゃない。確信したのは後になってからだが、家庭のある男の気配は感じ取っていた。

最初から信じず、わかったふりをして、聞き分けの良い女を演じた。そうしてずるずると現在に至る、というわけ。

しかし今になって思うのだ。

もし私が摩季のようになれていたら。傷つくことを恐れず、男を信じることができていたなら…そうすれば浦沢との関係も、勇輝とのことも。もっと別の形になっていたかもしれない、と。


摩季:信じることの代償


自分でも現金なものだと呆れるが、玲奈に話を聞いてもらい、「勇輝を信じる」と決めたら途端に気持ちが軽くなった。

最初から、自分の中で結論は決まっていた。しかし裕子や花苗に全否定されたりして弱気になってしまっていたのだ。それを玲奈が払拭してくれた。

“今日この後、家に行ってもいい?”

思いがけず仕事が早く片付き、私はウキウキと勇輝にLINEを送る。こうして突然会いに行けるのも“彼女”の特権だ。

こんな風になれるなんて、ほんの少し前には考えられなかった。まさに脈なしからの大逆転、奇跡のような展開だ。

−もう疑ったりしない。素直に今の幸せを噛み締めよう。

一人でそんな風に誓っていたら、勇輝からの返事が届いた。

“ごめん、今日は別の約束がある”

思いがけず、断りの連絡だった。

思い切り落胆し、ため息まで溢れた。しかしまあ、予定があるなら…仕方ない。玲奈も今日は夕方から外出で直帰らしいから、一人で帰ろう。

諦めて、オフィスフロアを出る。

するとそこでばったり、会いたくない顔に出会ってしまった。



「あ、摩季さん。今帰りですかぁ?」

小走りで近寄ってくるのは、私に宣戦布告をしてきた香織だ。

「うん、まぁ…香織ちゃんも?」

あんな口を聞いておいて、よくもまあ普通に声をかけて来られるものだ。理解に苦しみながらも当たり障りなく言葉を返す。

「私は…これからちょっと、予定があって」
「ああ、そうなの。デート?」

特に興味もないが、適当に尋ねた。しかし私の言葉を聞いた途端、香織は水を得た魚のごとく生き生きとしてしまった。

「すごい!よくわかりましたね♡…そう、大事なデートなんです」

香織はそう言うと、私に意味深な笑みを向けたのだ。


▶NEXT:6月1日 土曜更新予定
まさか勇輝が香織と?まさかの裏切り発覚で、ふたりの中がこじれていく…



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