ロマンスが恋しくて:気がつけば婚活歴15年?幸せを諦めかけていた独身女が、再起を誓ったキッカケ

ロマンスが恋しくて:気がつけば婚活歴15年?幸せを諦めかけていた独身女が、再起を誓ったキッカケ

いつの頃からか、「婚活してるの?」とすら聞かれなくなった。

幸せになりたいと願う気持ちは、何歳になっても変わらないのにー。

35歳を過ぎてから「独身」がコンプレックスとなっていく女。婚活歴15年の山崎真理子も、まさにそういう女だった。

顔は悪くない、性格は難なし、仕事は順調。結婚願望は今もある。

—40歳になったって、恋愛も結婚も仕事も、諦めたくない。

これは、年齢を重ねるにつれて“幸せになること”を諦めかけていた女が奮起し、幸せ探しを再スタートする物語である。



—ああ、疲れた。やっぱり無理してお食事会なんて、行かなきゃよかったわ…。

「山手通り沿いのドンキホーテあたりまで」と運転手に告げ、恵比寿からタクシーに乗り込んだ真理子は、ドサリと後部座席にもたれかかった。

会社の後輩・日下部ひなの(33歳)に誘われて参加することになった、木曜夜の恵比寿『福笑』でのお食事会。お相手は、外資コンサルティングファームの男たちだった。

「真理子さん、肌がとっても綺麗ですね!」
「真理さん、絶対モテるって!結婚していないのは、相手を選びすぎなんじゃないですか?」

そんな聞き飽きたセリフを言われ、「いえいえ、そんなことないですよ〜!」なんて、台本に書かれたかのような言葉を返す。

ーああ、このやりとり、人生何度目かしら…。これじゃ、まるでコントじゃない。

絶世の美女、とまではいかないけれど、少なくとも自分が美人の部類に入るということは、これまで散々人から言われてきたからよく知っている。

でも、知りたいのはそこじゃない。 真理子は、タクシーの中でガックリとうなだれた。

―結婚していない理由を、本当は「私が」一番知りたいのに…!

二次会は『バーノアール』に行くと言っていたが、そんな気分にはなれずお先に失礼することにした。

「真理子さーん、本当に二次会行かないんですかー?」

早足でタクシー乗り場へと向かう途中、後ろからひなのが大きな声で叫んでいるのが聞こえた。その周りでは、他の後輩たちや男性陣が何かの話題で盛り上がって大爆笑している。

真理子はクルリと振り返ると、完璧な笑顔を作る。

「ごめんね。私、明日朝早いんだ。みんな、楽しんでね!」

そう言い残すと、まだ騒がしい恵比寿の街を後にしたのだった。

タクシーから降りる直前、携帯がブルッと振動しLINEの通知を知らせる。

『今日は、最後までご一緒できなくて残念でした。真理子さんとお話しできて楽しかったです。今度、改めてゆっくりお話したいです。』

それは、今日のお食事会メンバーの一人、早川春馬(38歳)からのメッセージ。

今日来ていた男性陣の中では、ダントツのイケメンだ。そんな男からの誘いに思わず頰が緩みそうになって、すぐにハッと我に返った。

—ダメダメ、私ったら。何を本気にしてるのよ。

『こちらこそ、楽しかったです。ごちそうさまでした。また、ぜひお食事にでも行きましょう。』

心を無にして定型文を返しつつ、ぼんやりと考える。

きっと早川は、真理子のことを、今日一緒に参加したひなのと同じ33歳くらいだと思っているのだろう。

ーだけど私の本当の年齢を知ったら…この人は同じように誘ってくれるのかしら…?


婚活歴15年に及ぶ、真理子のこれまでの人生とは?

“婚活歴15年” 難もない女、何もない女


透き通るように白く、衰えを知らないハリのある肌のおかげなのか、真理子は実年齢よりずいぶん若く見られ、30代前半と思われることが多い。真理子自身も、見た目の若さには自信がある。

今日のお食事会中、幸い年齢についての話題が上がることはなかったが、おそらく参加者の男性陣は、真理子が他の女性陣より7つも年上だなんてまさか想像もしていないはずだ。

そう、真理子は、1978年生まれの40歳なのだ。

—それにしても、どうして33歳の後輩たちが、私を食事会に誘ってくれたんだろう?

ふとそんな疑問が湧いたが、彼女たちは、真理子が40歳の独身だからといってそれを見下すようなことはしない。

むしろ日頃から、「自分もアラフォーになったら真理子さんみたいになるのが目標」だなんて絶賛してくれている。そんな可愛い後輩たちの褒め言葉を、真理子はありがたく受け止めていた。

今日誘ってくれたのも、年齢は関係なく純粋に婚活仲間として認めてくれているからなのかもしれない。 そう、自分に言い聞かせた。

池尻大橋の自宅マンションに着くと、エレベーターに乗り込み「3」のボタンを押す。エレベーターの中で、ポストに届いていた郵便物をチェックしていると「賃貸契約更新のお知らせ」が届いていた。

―この部屋に暮らし始めてもう10年か。 こんなに長くここに住むはずじゃなかったのに…!

10年前、31歳の誕生日に、このマンションの賃貸契約をした。

「次の更新までには、絶対に結婚を」。毎回そう誓いながら、気づけば4回も更新していた1LDKのこの部屋は、真理子が初めて一人暮らしを始めた場所でもある。

同じ田園都市線沿いの溝の口に実家があるため、実家まで一本で帰れることと、目黒川沿いの桜並木に惹かれて、当時は家賃もちょっぴり背伸びして選んだ部屋だった。

―10年間も家賃と更新料を払い続けていたんだったら、マンション買った方が良かったじゃない…。

シャワーを浴びて、ベッドの上でお気に入りのジョーマローンのボディークリームを、自慢の細くて長い脚に塗りながら考えていた。マンションの更新のたびに、独身の長さを実感するのだ。



最後にこの部屋に男が訪れたのは、もう5年も前になる。

商社勤務の元カレ(当時36歳)とは3年付き合っていたが、突然海外転勤になり音信不通になった。噂によると、20代の女と結婚したとのこと。

真相は追究しなかった。これ以上傷つきたくなかったから。

20代の頃は、失恋だって大々的にできた。友人たちに集合をかけて、元カレの不甲斐なさを語り合い、慰め合う「失恋儀式」を開いたものだ。

気付けばそんな儀式をする仲間も減っていた。しかも35歳の失恋なんて痛すぎたから、自虐ネタの笑い話にして、さほど傷ついていないフリをするのに必死だった。本当は、心がズタズタだったのに。

その後、35歳にして3年ぶりに婚活市場に舞い戻ると、そこで真理子を待ち受けていたのは、現実だった。

20代の頃は毎日のように誘われていた食事会が、激減していたのだ。

学生時代の同級生たちも、ほとんどが結婚して子育てに忙しい。気付けば、夜集合の飲み会から、昼間のBBQに子連れで参加という企画に移行していた。

子供は好きだけど、育児やお受験の話題にはさっぱりついていけず、いつも真理子は子守役に徹するのみだ。

―私のどこがいけないの…?顔も悪くない、性格も悪くない、仕事も頑張っているし、それなりに認められている。難はないはずよね?

そんな風に、結婚できない理由を探しているうちに、月日だけが過ぎていく。

37になるとついに、それまで稀にあった食事会は皆無となり、婚活パーティーも、自分より一回りも若い女の子たちさえ参加していると思うと気が引けて、参加する勇気が湧かなかった。

それでも友人の紹介で知り合った男性などから、誘いはポツポツあり、デートはしてきた。でも、3回以上続くデートはなかった。

こうしてあっという間に数年がたち、40になってしまったのだ。いつのまにか、婚活歴が15年にも及んでいるという驚愕の事実に、時折ものすごく落ち込むことがある。

夜用リップクリームを唇に塗りながら、真理子はふと考えた。

「最近キスしたの、いつだっけ…?」


これが40代の真実か?後輩の心無い一言に撃沈する…!

金曜日の朝、通勤風景はいつもより華やいでいる。

風になびくフワフワスカートやヒール率が高く、すれ違うOLたちは、金曜だからか明るい顔つきに見える。その様子を見ているだけで、なんだか微笑ましい気分になった。

真理子は、大手飲料メーカーでPRの仕事をしている。赤坂の駅に着くと、梅雨の合間の青空を見上げた。

「山崎さん、おはようございます、昨日は助かりました。ありがとうございます」

声をかけてきたのは、先月外資系PR会社からマネージャーとしてヘッドハントされてきた年下の上司・黒田陽介(35歳)だ。海外向けのPRに力を入れていきたい真理子の会社にとっては、最適の人材だった。

「黒田さん、おはようございます。いえ、お役に立てて光栄です」

真理子は黒田に向かって軽く頭をさげると、ニッコリと微笑んだ。昨日、急遽変更になったクライアントの意向を踏まえて、真理子が新しく企画案を作成したところだったのだ。

「黒田さんってかっこいいですよね、寡黙だけれども仕事できます!というオーラが」
「帰国子女で慶應の法学部出身らしいですよ。結婚しているのかな」

女性陣がそんな噂をしているのを、耳にしたことがある。身長は180㎝近くあり、イケメンと言えなくもない顔立ち。コミュニケーション能力が高く、仕事が迅速かつ丁寧だった。



ランチタイムに、真理子は、ひなのともう一人の後輩の3人で『赤坂 鳥幸』にいた。

「真理子さん、昨日は無事帰れました?私、飲みすぎちゃって、今日は二日酔いで午前中は、ぼーっとしてました」

「あの後バーで、けっこう盛り上がったんですよ。今度みんなでゴルフ行くことになったので、真理子さんも一緒に行きましょ!」

「え?あ、うん、そうね。ゴルフだったら、私、腕には自信があるのよ」

その後も二人は、真理子がパスした二次会の話で盛り上がっている。そのテンションについていけずにいると、ひなのが気を使ったのか、慌てて話題を変えた。

「それにしても、真理子さん、新規の海外クライアント向けのプロジェクトリーダーに大抜擢ってさすがですね。黒田さんも、頼りにしてるみたいですよ」

「ひなのったら。おだてても何も出ないわよ」

つい照れ笑いしたが、お世辞抜きに真理子は、会社では「仕事ができて、親しみやすい美人」で通っているのだ。"頭の回転が速くて機転が利く"と評価されており、上司にも部下にも気に入られる存在だ。

ー本当は、"お局様"にならないように細心の注意も払ってるけどね。

後輩たちに対して、口うるさくはなりたくない。だけどきちんと指導やフォローは欠かさずに。社歴が上だからといって決して偉ぶらず、彼らの意見にもいつも耳を傾ける。

黒田のような“年下の上司”なんていう設定にも、この年になると慣れてきた。

しかし、化粧室に席を立って戻ってきたときに聞こえてしまったのだ。後輩たちが話しているのを。

「真理子さんって見た目は若くて綺麗だけど、滲み出る貫禄なのかな。気を使ってたよね、昨日の男性陣。結局なんだかんだいって、真理子さん帰った後の方が普通に盛り上がったしね」

「さっきは二次会の話なんてしちゃって…気を悪くしてないかな…?」

「帰るって言い出したのは真理子さんなんだし、大丈夫じゃない?そもそも真理子さんも、私たちが人足りなくて困ってたから、親切で来てくれただけでしょ。さすがに本気で婚活も出会いも、求めてないだろうし…」

ーか、貫禄…?私って、貫禄が滲み出てるの…?

その言葉は、あまりにショッキングであった。



ランチが終わってデスクに戻った後、真理子はさっきの後輩たちの言葉を思い返していた。

あの後、真理子は何も聞いていないフリをして笑顔で席に戻ったけれど、少なからず動揺していたのだ。

二人に悪気はないと思う。これが、40代の真実なのだろう。

ーもし、私が結婚していたら、こんな惨めな気持ちにならなくて済むのかな。40歳という年齢も気にならないんだろうな…。

胸がチクリ、と痛んだのは、貫禄があるなどという衝撃的な単語を耳にしたからだけではなかった。

『さすがに本気で、婚活も出会いも求めてないだろうし…』

ひなのが最後に呟いたその一言が、真理子の心に重くのしかかっていた。

たしかに、以前だったら当然のように聞かれていた「婚活してるの?」とか「最近いい出会いあった?」なんていう質問を、誰からもされなくなったのはいつからだろう。

ーちょっと待ってよ。40で、出会いを求めちゃいけないの?婚活しちゃダメなの?

だけど、このまま誰かとキスすることもなく、"何もない"まま人生を終えるなんて絶対にゴメンだ。

そのとき、真理子は心に誓った。

ー何歳だとしても、恋愛も結婚も仕事も、諦めたくない。私、絶対に幸せになる…!!

こうして、真理子のシアワセ探しが始まったのだ。

ちょうどそのタイミングで、昨日のお食事会メンバー早川からLINEが届いた。

『昨日は、楽しかったですね。早速ですが、来週の金曜日食事でもどうですか?』

『是非、楽しみにしています!』

昨日までの真理子だったら、こうした誘いに飛びつくこともなかったかもしれない。だけどこのときは、タイミングの良さに運命を感じながら返信したのだった。


▶Next:7月2日 火曜更新予定
誕生日に、思わぬ人からLINEが届く…。真理子の人生が動き始める!



関連記事

東京カレンダーの他の記事もみる

あわせて読む

主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

トレンド アクセスランキング

ランキングの続きを見る

トレンド 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る 動画一覧を見る

記事検索