「彼、お金に余裕ないのかも…?」7歳下の男とのデートで、年上女が抱いた違和感とは

「彼、お金に余裕ないのかも…?」7歳下の男とのデートで、年上女が抱いた違和感とは

30を過ぎた女たちは、“年下の男”に対して幻想を抱く。

かわいくて、甘え上手で、癒し系。年下の恋人ができたら、きっと、とびきり楽しい毎日が待っている。

…だけど、もしもそれが「結婚」となったら?

―年齢差があればあるほど、頼りない。
―将来浮気されてしまいそう。
―もしかして、お金目当て?

そんな疑念がつきまとうのだ。

ベンチャーキャピタル勤務の山口泉(34)は、7年付き合った恋人の智也に浮気され、結婚直前で別れを決意する。

そんな時に出会った7つ下の西村晴人から、いきなり告白された泉は、友達から始める事に。

晴人に誘われたバーベキューに参加し、そこで彼の友人の濱野舞が現れる。ライバル出現に、泉は自分の晴人に対する淡い恋心に気が付き…



「あはは、嘘でしょう?」

「いや、ほんとなんですって。多分その店員さん相当疲れてて、弁当と間違えてサラダを熱々に温めちゃって。野菜が萎びれて1/5くらいの嵩になってたんですよ」

バーベキューの後、私と晴人は早めに抜けて、『カルペ・ディエム』で飲み直すことにした。

彼からの告白以来、久しぶりの二人の時間に緊張をしているのか、お互い妙にハイテンションだった。

「あはは。それは食べたくないなぁ。…て、こんな話しに来たんじゃなかったよね…?」

「…はい、そうでしたね…。単刀直入に聞きますね。彼氏さんと、何かありました?最近ずっと俺の誘いを断っていたのに、今日は来てくれたので…」

自分から話そうと思っていたが、晴人もやっぱりずっと気になっていたのだろう。一気に空気がピンと張った。

「…別れたの。少し前に…」

「そう…ですか…。それは辛かったですね」

晴人はそれだけポツリと言うと、そのまま何も言わずにしばらく黙り込む。

だが、その沈黙は居心地の悪いものではなかった。


別れた経緯を話した泉が救われた、晴人の真っ直ぐな言葉とは?

「きっかけはね、彼の浮気だったの。凄く悲しかったし、傷付いた。でも…後から冷静になって、気がついたの。

長く付き合っていたから、結婚するのが当たり前だし、しなきゃって思ってた。でもきっと二人の関係って、どこか惰性があったんだって。彼のこと、本当に大好きだと思っていたけれど、それってきっと過去の私で、今の私じゃなかったんだと思う」

「…」

晴人は特に頷いたりすることもなく、ただ黙って聞いている。彼を包む柔らかい雰囲気に安心感を覚えた私は、少しずつ心を紐解いていった。

「だから、悲しかったけど、どこかでほんの少しだけホッとしているの。もしかしたら、あのまま結婚していたら、何年か何十年か先に後悔していたんじゃないかって思う。…単なる強がりかな?」

私が晴人に問いかけると、彼は私を見て優しく微笑み返す。そして少しの沈黙の後、穏やかな声で言った。

「結果は…悲しいものだったかもしれないですけど、きっとお互いにとって、本当に大事な存在だったんでしょうね。だから、時と共に変わってしまった気持ちに向き合えなかったんだと思います。でもそれは二人とも、相手を想ってのことだったのかなって感じました。

浮気はダメですが、もしかすると苦しかったのかもしれないですね…。お二人は、幸せになるための新しい道を歩き出しただけのことです」

ゆっくりとそんなことを言ったかと思うと、「若輩者が、偉そうにすみません」っと、冗談っぽくはにかむ。

どちらかに肩入れするわけでもなく、上っ面の言葉を並べるのでもなく、きちんと話を聞いて私の気持ちに寄り添ってくれた。

川本が言っていた「晴人は周りに慕われていた」と言う意味が、少しだけわかる気がする。

「ありがとう…。そうね、これからがスタートだよね…」

私がひとり言をこぼすようにそう言うと、晴人はわずかに口角をあげ、ウイスキーを口に運んだ。

心地よい静寂が、二人を包み込む。

だがその時、ヴーッヴーッと彼のポケットの中のスマホが振動し、流れていた空気がさっと消えた。

「濱野だ…。あれ、なんか忘れてきたのかな…?ちょっと、ごめんね?」



晴人は一言断りを入れると、彼女からの電話を取りながら席を離れた。そして少し話したかと思うとすぐに戻ってきて、何事もなかったかのように席に座る。

「大丈夫だった?用事、何って…?」

「あ、いや。なんか数人でこっち参加したいとか言ってたから…断った」

「え、良かったの…?」

晴人があっさりと言うので、そんな簡単に断って良かったのかと心配したものの、頭の隅に濱野舞の顔がちらついて、少しホッとした。

すると晴人が、さも当たり前のように言う。

「え、だってせっかく二人で居るのに。俺は泉さんとの時間を楽しみたいんです」


いい感じだった二人だが、あることをきっかけに少しずつ気持ちがずれて…

あまりに堂々と言うので、なんだかこちらが照れる。でも、彼の言葉が嬉しかった。

「ねぇ、晴人君のこと、もっと教えて?」

「俺のことですか?…何が知りたいです?なんでも聞いてください」

そうして私たちはお互いのことをもっと知ろうと、色々な話をした。

長い間忘れていた、友達以上恋人未満の楽しい時間。相手の好意を感じながらも、完全には見えない心に不安ともどかしさを感じる、愛おしいひと時…。

だが、会計時になって少しだけ「ん?」と思うことが起きた。

「あ、泉さん!ごめん、俺今日財布持って来るの忘れてた…!バーベキューの会費も電車賃もスマホで払ってたから、気がつかなかった…」

「そっか。じゃあ私が払っておくね」

晴人とは、普段から割り勘にしていた。それを提案したのは私の方。彼はまだ駆け出しの起業家で裕福とは言えないし、自分の方が年上だし、という気持ちからだった。

「ごめんなさい、ありがとうございます。今度返しますね」

「良いよ、このくらい。気にしないで」

私は本心からそう言ったつもりだった。でも言った後に考えてしまう。

智也と付き合っていた時に、あまりこんなことはなかった。それにいつも彼のほうが多く払ってくれていたから、たとえ忘れたとしても気にはならなかったのだ。

ーまぁ、忘れることくらいあるか…

ちょっとだけ心の端に引っかかったものの、些細なことだと思い直して気に留めないようにし、次に会う約束をして別れた。

それから晴人とは頻繁にLINEをやり取りしている。時には5分ほどだが電話をするようにもなっていた。

彼とのやりとりは、いつも私に元気をくれる。

気がつけば私は、だんだん彼からのLINEを心待ちにするようになっていたのだ。

そしてやっと迎えた次のデート。彼が予約してくれたのは、広尾にある、少し大人な雰囲気の素敵なフレンチレストランだった。

「素敵なお店だね、探してくれてありがとう」

私は彼にそう伝えて微笑んだが、彼はメニューを見ながら少し困った顔をしている。



「どうかした…?」

「あ、いえ…。何でもないです」

何でもない、と言いながらも、明らかに顔は硬直している。彼はこう言う場所に慣れていないのだろうか?

「そう…?大丈夫…?」

「大丈夫です。注文しましょうか」

不自然に笑ってそう答えた彼は、「よかったら泉さんは好きな物選んでね。俺はそんなにお腹減ってないから」と、軽めの前菜ばかり頼んでいる。

しかも、飲み物は初めに頼んだ乾杯のシャンパンだけで、あとは水を飲んでいるのだ。


あることが原因で、泉はさらに自分が年上だということを意識してしまい…

ーお金、厳しいのかな…?なんか、悪かったな…。

だけど、プライドを傷つけてしまいそうで何も言えなかった。ただ、そんな風に思ってからは、どうしても料理の味を存分に楽しめなくなってしまう。



「泉さんって、普段どんなところでご飯食べるんですか?」

「んー、そうだな。ミーハーな友人が多いし、仕事とかでも使ったりするから、ホテルとか話題のお店とか行ったりするけど…」

私の答えに「そっか」と呟くと、何かを考えるように黙ってしまった。どことなく気まずい空気が流れる。私は話題を変えようと、思いついたことを口にした。

「そう言えば、晴人君の出身ってどこ?実家にはよく帰るの?」

「千葉です。実家はここ数年忙しくて帰ってないですね。でも母が来年50歳になるので、その時には顔出さなきゃとは思ってるんですけど…」

「え…お母様、まだ40代なんだ…!?」

私の母は35歳の時に私を産んだので、今69歳だ。晴人のお母さんとは20歳も差がある。

ーそんなに違うんだ…。

結婚するわけでもないし、そもそも家族の年齢など本当は関係ない。けれど、彼との年齢差をあらためて目の前に突きつけられたようで、小さくショックを受けてしまう。

その後も何となくお互いに盛り上がれずに、時間だけが過ぎていく。そしてお会計になり、一瞬迷ったが申し出た。

「今日は、私が払うね。お店選んでもらったし」

「え、いえ、そんな。大したことしてないですし…」

驚いたように晴人が断るのを制して、さっと支払いを済ませる。すると彼は恐縮しながら「すみません、ありがとうございます。ご馳走様です」と笑顔で返した。

ー年下だし、お金にも余裕なさそうだったし、良いよね。彼には感謝しているしね…

私はそんなことを考えながらも、その思考が、自分が“年上”であることへの無意識な引け目から来ているということには、まだ気がついていなかった。




年下男・晴人の思い


「はぁ…何か、疲れたな…」

僕は泉さんと別れた後、タクシー代を節約するために駅まで歩いていた。

ー今日はちょっと、上手くいかなかったな…

泉さんといると、自分を作るせいか上手に話せない。やっとリラックスした気分でいると、僕のスマホが静かにメロディーを奏でた。

「ねぇ、晴人?今からちょっと会えない…?実は、晴人に相談があって…」

「今から…?わかった、どこにいるの?」

それは、昔少しだけ付き合ったことのある、濱野舞からの電話だった。


▶︎NEXT:9月1日 日曜更新予定
少しずつ気持ちがすれ違って行く二人。元カノである濱野舞が電話してきた理由とは?


▶明日8月26日(月)は、人気連載『立場逆転』

〜高校卒業後15年。再会した2人の女の人生は、180度違うものとなっていた…。女のプライドをかけた因縁のバトル、続きは明日の連載をお楽しみに!



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