「なんてみっともない男…」。女が一瞬で冷めた、男が家族の前で晒した醜態とは

「なんてみっともない男…」。女が一瞬で冷めた、男が家族の前で晒した醜態とは

女にとって、人生で最も幸せなときと言っても過言ではない、“プロポーズから結婚まで”の日々。

そんな最高潮のときに婚約者から「別れ」を切り出された女がいる。

―この婚約は、なかったことにしたい。全部白紙に戻そう。

澤村麻友、29歳。

夫婦の離婚とも、恋人同士の別れとも違う、「婚約解消」という悲劇。

書類の手続きもない関係なのに、家族を巻き込み、仕事を失い、その代償はあまりにも大きかった。

ーさっさと忘れて先に進む?それとも、とことん相手を懲らしめる?

絶望のどん底で、果たして麻友はどちらの選択をするのか?


なんと良輔の浮気相手は、麻友の後輩・三原愛だったということが発覚。

現実をようやく受け入れた麻友は、イケメン弁護士・吉岡の助けを借りて、両家交えての話し合いに向かうのだった。



「お父さん、お母さん。お願いです。頭を上げてください」

良輔の両親が、麻友の実家のリビングルームで、頭を床に擦り付けて謝罪している。

―二人は何も悪くないのに…。ご両親にこんなことまでさせるなんて…。

麻友は良輔の母親の肩を抱き、顔を上げるように促した。

今日ついに、弁護士・吉岡立会いのもと、両家の話し合いの場が設けられたのだ。

ここにたどり着くまで、ずいぶん時間がかかってしまったが、麻友はようやく現実と向き合うことができた。

良輔は逃げ回ってばかりだと心の中でずっと責めていたが、結局逃げていたのは麻友の方だったのかもしれない。

「婚約破棄の原因は自分にあるのだ」と自分を責めることで、真実から目をそらしていた。自分さえ改善すれば、復縁できるかもしれないと本気で思い込んでいたのだ。

だから周りから散々言われてきたにも関わらず、代理人を立てての話し合いや慰謝料の請求などはこれまで求めてこなかった。

「戻りたかったから」。「好きだったから」。誰に笑われようと叱られようと呆れられようと、それしか理由はない。でも、もうその気持ちはないことを、今この場で確信した。

良輔の母親は肩を震わせながら嗚咽を堪え、「私の育て方が悪かった」と何度も繰り返している。父親は、頭を床に擦りつけたまま謝り続けていた。

良輔は一人でふてくされたような顔で、ボソボソと謝罪とも言い訳ともつかないことを言っている。

その姿はただただみっともなく、麻友も呆れ返るしかなかった。


土下座して詫びる両親の隣で、ふてくされる良輔の言い分とは?

「麻友は、ご存知の通り一人っ子で甘やかして育ててしまいました。わがままですし、夢中になると周りが見えなくなります。良輔さんにもお父さんとお母さんにも、大変ご迷惑をおかけしたでしょう。ここまで良くしてもらったことに感謝しております。

ただ…高齢で授かった、目に入れても痛くない愛おしいひとり娘です。こんな風に傷つく姿は見たくなかったというのが本音です」

父親は冷静な口調でそう言ったあとで、吉岡の顔を見た。



「今日は弁護士の先生にも立ち会っていただきました。まずはこちらで受け取ったままの結納金をお返しするところからお話させてください」

麻友の父が封筒を差し出すと、良輔の父は「どうかそちらはお納めください」と言った上で、さらに分厚い封筒をバッグから取り出した。

大金が入っていることは間違いないが、いくら入っているのかは検討もつかない。厚みに圧倒されるが、まさかこの場で開けるわけにも受け取るわけにもいかない。

父親同士の押し付け合いが始まりそうなところを、吉岡が割って入った。

「松川さん、今日のところはこちらの封筒はお引き取りください。謝罪として適切な額はあらためてこちらで提示します。松川良輔さんの年収を加味した上で、精神的な苦痛や婚約破棄に伴う被害に応じた相場があります。

また今回の場合、麻友さんが結婚に伴い仕事を辞めたことで無収入になったこと、今後続くはずのキャリアを失ったということが重大な問題です。また、留学でかかった費用など…」

吉岡が眉ひとつ動かさずに、淡々と状況を説明していると、突然良輔が食ってかかる。

「いや、ちょっと待ってください。僕はそもそも留学にもそこまで乗り気ではなかったし、デパートの仕事をそんなに続けたいんだったら別に家業にはいらなくったって…」

吉岡が無言で厳しい視線を良輔に送ると、その迫力に圧倒されたのか押し黙った。

ーこの人は、一体なにを言っているのだろうか。

麻友は絶望的な気持ちになる。たった数ヶ月前まで愛していた恋人と同一人物とは、まったく思えなかった。

なぜなら、良輔がたった今主張した内容は、婚約していた当時言っていたことと、全く違っていたからだ。


ようやく決別した元婚約者の二人。しかし“あの女”の問題は?

―一緒に家業を手伝って欲しい。デパートでキャリアを積んだ麻友がいれば安心だ。公私ともに最高のパートナーを目指そう。

そう言って手を握り合ったこと。

―松川の本格的な海外展開を考えているんだ。麻友が得意の英語が活かせるよ。短期留学とか英会話学校とか、良い環境は何があるかな?

留学という言葉は良輔が持ち出したこと。

愛し合っていた日々の思い出が、唐突に蘇る。

麻友はただひたすら虚しかった。これらの言葉が嘘だったのか、忘れてしまったのか、それとも麻友の思い違いだったのか、もう確かめるすべはない。

当時と別人のように感じるのも当然のことだ。麻友のことを愛していた良輔と、そうではない良輔。目の前にいるのは同じ人ではないのだ。

「お父さん、お母さん、短い間でしたが本当にお世話になりました。お二人と家族になれる日を心待ちにしていました。松川のお茶も大好きだったので、良輔さんを支えながら一緒にお仕事できる日を楽しみにしていました。

こうなってしまった以上仕方がないですが、これからも陰ながら応援させていただきます」

麻友は言葉を選びながら、良輔の両親に語りかけた。何ひとつ嘘のない本音で、ただ感謝の気持ちでいっぱいだった。

しかし、ひとつだけ譲れないことがある。

「慰謝料の件ですが、お父さんとお母さんからはいただけません。良輔さんが働いたお金からのお支払いをお願いします。金額などに関しては、今後はすべて吉岡さんから連絡差し上げます。必要であればそちらも代理人を立ててください」

我ながらかわいくない女だと思う。

結局最後まで泣いてすがることはできなかった。あの日、「そういうところだよ」と言い放った良輔の言葉は、いつまでの麻友の心には突き刺さったままだった。

「では今日のところは…」と吉岡が言いかけたところで、良輔の父が意を決したように「あの…!」と口火を切った。

「最後に一つだけ言わせてくだだい」と震える声で語り出した。

「実は、この縁談。破断になってよかったと思っています。なあ、秋子」

そして小さく震えながら、隣に座る妻の顔を覗き込むと、二人は意を決したように頷いた。

「実は…」と神妙な面持ちで切り出した。

「家業が、傾いています。実は麻友さんが留学している間に、これまでやってきた状況が大きく変わりました。この先持ちこたえることができるかどうか…。

もしこのまま松川に入ってもらっても、苦しい思いをさせたかもしれません」

あまりにも悲痛な告白を聞き「そうですか…それは残念です」としか、麻友は答えられなかった。

老舗を潰すわけにはいかないだろう。でも、良輔に松川を立て直す能力があるのだろうか。とても気がかりだったが、もはや麻友が関知することではないのだ。

ただ、経済的にも限界なのだと知ればなおさら、金銭的な負担を彼の両親に頼るわけにはいかない。

この場にいる全員が、あらゆる視点から「良輔と麻友は結婚しない方がよかった」という共通認識を持とうとする。先へ進むためには、たしかにそうするべきだ。

麻友自身は、やはり虚しさを感じていたが、同時にこうも思った。

ーもう、私が結婚したかった彼は存在しない。今、目の前にいる無責任な浮気男に再び求婚されても、こちらから願い下げだわ。

こうして麻友は、良輔と完全決別をした。





東京へ戻る車はハイエース。「案外乗り心地悪くないでしょう」と、吉岡は得意げに語った。

「快適なシートに付け替えていますし、何より視点が高いので海辺では特に眺めが良いですよ。男一人なら車中泊だって余裕です」

「またー。男一人だなんて」

麻友が少々ふざけた口調で吉岡を冷やかす。

「添い寝してくれるのはサーフボードだけです。相棒は大事にするタイプなんです。僕はこう見えて一途なので、愛情を込めて丁寧に扱って、長い間一緒に過ごします」

「誰かさんと違って…ですね」

二人は、笑いあった。

「吉岡さんが引っ張ってくれなければ、泣き寝入りでした。ここまで本当にありがとうございました」

「ようやくスタート地点ですよ。一緒に頑張りましょう」

「はい。きちんともぎとるので、しっかりお支払いさせてくださいね」

「…はい」

運転席のサイドポケットで、吉岡のスマホが鳴っている。運転中ということもあり気にも留めていない様子だったが、あまりにしつこい着信に吉岡はため息をついた。

見たくなくても、麻友の視界にその着信名が目に入ってしまう。

三原愛ー。

「三原さんも慰謝料請求の対象だとしっかり釘をさしたので怯えているのだと思いますが…。こうしてたびたび言い訳がましい弁明をしてきては…」

吉岡は口ごもると、ため息をつく。そして呆れたような口調でこう言った。

「女性の気持ちがさっぱりわかりません。仕事柄、そうも言っていられないんですけどね。僕は、三原さんみたいな女性は正直、苦手です。色仕掛けで慰謝料が割引になるとでも思っているんですかね」

「え?どういうことですか?」

「さあ。僕が知りたいくらいです」

愛はもしかして、この状況で吉岡のことまで誘っているのだろうか。

横取りした老舗の御曹司と同時進行で、エリート弁護士まで手玉に取ろうとしている姿が目に浮かぶ。

二人の共通点はハイスペックであること。そして、麻友と親しい間柄であること。

−これから、また何か始まるの?

麻友は、背筋が寒くなるのを感じた。


▶NEXT:9月25日 水曜更新予定
次のターゲットに狙いを定めた後輩の粘着に疲弊する麻友。彼女の言い分とは?



関連記事

東京カレンダーの他の記事もみる

あわせて読む

主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

トレンド アクセスランキング

ランキングの続きを見る

トレンド 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る 動画一覧を見る

記事検索