夫の職場近くで他の男と密会する人妻。浮かれる女の、身勝手な言い分

夫の職場近くで他の男と密会する人妻。浮かれる女の、身勝手な言い分

やりがいのある仕事でキャリアを重ね、華やかな独身ライフを満喫する女。

早々に結婚し専業主婦となったものの、ひたすら子どもの世話に追われている女。

女として本当に幸せなのは、どっちだと思う−?

独身キャリア・工藤千明と、専業主婦・沢田美緒。対照的な選択をした二人が、同窓会で再会。

洗練された美女へと変貌した千明は複数の男性から言い寄られているが、最も気になる男・宇野から「結婚する気はない」と宣言される。

一方、かつて学校一のモテ女だった美緒は、商社マンの夫との間に一人息子を設け幸せに暮らしていた。しかしその風貌にかつての輝きはなく、夫もつれない。

千明に妙な対抗心を抱く美緒は、同窓会で再会した立場逆転男・村尾からデートに誘われ浮かれる。しかし実は、村尾は“人妻狙い”を公言している遊び人だった。



美緒:「せっかくのいい気分に、水を差さないで」


「美緒って、いつもこんなところでランチしてるの?さすがセレブね!」

グランドハイアット東京の『フィオレンティーナ』。

目の前の席では、高校時代の同級生・由美が「芸能人いそう」などと言って落ち着きなくキョロキョロと頭を動かしている。

由美に会うのは、同窓会以来だ。

東京の女子大に進学した私とは違い、由美は一度も地元を離れることなく金沢にいる。

老舗酒蔵の跡取りである彼女の夫が今日から3日間展示会に出展するとかで一緒に上京してきたらしく、ランチしようと誘われたのだ。

「…舞ちゃんは実家?」

「セレブ」などと見当違いなことを言う由美の言葉を無視して、私は彼女の娘の話題をふった。

由美と私は、結婚も出産も同じタイミングで経験している。高校時代は千明とべったりだった私だが、主婦になってからは、東京と金沢で離れてはいても、SNSやLINEで由美と連絡を取ることの方が多くなった。

「そう。おばあちゃんっ子だから3日間くらい全然平気なの」

由美は私の質問を軽く受け流すと、「そうだ」と思い出したように身を乗り出した。

「ねえ、それより連絡きたでしょ?…村尾くんから」


村尾に美緒の連絡先を教えた由美。彼女は美緒の味方、なのか…?

「村尾くんから、美緒の連絡先教えて欲しいって頼まれてさぁ…私も迷ったんだけど、勝手に教えちゃってごめんね」

両手を合わせ謝罪の言葉を口にしてはいるが、彼女の表情に悪びれた様子はない。むしろ興味津々といった態度で「何の用事だったの?」と詰め寄ってきた。

「…デートに誘われたわ」

一瞬躊躇ったものの、私は真実を話すことにした。

独身バリキャリを貫いている千明は、私が村尾くんの話をすると露骨に嫌な顔をした。しかし同じ子持ち主婦である由美なら、きっと別の反応をするに違いないと思ったのだ。

「ええ!いいなぁ!それで、行ったの?村尾くん、どこに連れてってくれた?」

案の定、由美は大興奮で食いついた。

「お鮨を食べに。すごく素敵なお店だったよ」

普段と変わらぬテンションで答えたつもりだったが、そう答えた声は自分でも浮かれて聞こえた。

…実は昨夜、再び村尾から食事の誘いが届いていた。

一度ならず二度までも、夫に子どもを預けてまで夜に出かけるのはさすがに気がひける。だが正直に「夜は難しい」と返事をしたら、「平日昼間でもまったく構わないよ」と言われたのだ。

村尾はパーソナルトレーニングジムを経営している。時間の自由がきくから、昼間であろうが何の問題もないらしい。

−行ってもいいと思う?

私は由美に尋ねてみようとした。しかしその問いかけは、興奮気味に話す彼女の声に遮られた。

「私さ、実は村尾くんのインスタフォローしてみたの。彼、すごい人気者みたい。ストーリーズ見ていたら、周りにいるの美女ばっかりよ。そんな人からデートに誘われちゃうなんて…さすが美緒だわ!」

同級生とはいえ、夫とは違う男と二人きりで会う。

しかも少なからず浮かれている自分に小さな罪悪感を覚えていた私だったが、由美からそんな風に賞賛されると、断るという選択肢はどんどん小さくなっていった。

「主婦だって、そのくらいの息抜きが必要だわ。いいな、羨ましい」

そう言って由美は、大げさにため息までついてみせた。

女友達から向けられる羨望の眼差し。

−そうよね。食事くらい、いいよね。

私はそんな風に自分に言い聞かせ、今日、このタイミングで由美に会えたことに感謝していた。



ところが、由美と別れてすぐ、六本木駅まで地下通路を歩いている途中で、私の気分は一気に害された。

“村尾くんのことで、話したいことがある”

千明から、そんなLINEが届いたのだ。

−話したいこと…?

気にはなったが、どうせ良い話じゃないだろう。そもそも千明は、私と村尾が二人で会うことに賛成していないのだから。

“ちょっと今忙しいの。あとでこちらから連絡する”

連絡など、する気はない。しかし私はそう返事を送ると、スマホをバッグの奥底へとしまった。


千明の連絡を無視した美緒。ウキウキと村尾とのデートに向かうが、そこで思いがけないものを目にする


村尾との、二度目の約束の日。

息子も夫も家にいない、一人だけの時間を、私はゆっくりと身だしなみを整えることに使った。

−やっぱり女には、こういう時間が必要よね。

ドレッサーで髪を梳かしながら、私はそんなことを思う。

まあ、本当ならば別の男のためなんかじゃなく、夫のための時間であるべきなのだろう。しかし現実、夫は私の見かけに無頓着で、綺麗に着飾ったところで無反応なのだ。

褒めてもくれない相手のために頑張るのは虚しい。

普段は使わない赤いリップを取り出し、ブラシで丁寧に唇にのせる。パッと顔色が華やいで、気分まで高まっていく。

するとその時、視界の端でスマホが光った。

“工藤千明”

画面に表示されているその名を、私は一瞥し…しかしそのまま見て見ぬフリをした。

…今、この気分の良い時間を、誰にも邪魔されたくない。


村尾から指定されたのは、アマン東京のラウンジだった。

夫が勤める総合商社の本社ビルは丸の内にある。家族のために懸命に働いてくれているであろう夫の、目と鼻の先で、私は別の男と会っている。

その事実は微かに胸を刺したが、エレベーターが33階に到着し、一面の窓から東京を一望する壮観な景色を目の当たりにすると、非日常の高揚が勝った。

「来てくれてありがとう。無理させてないかなって心配だったんだけど…」

早めに来て仕事をしていたのだろうか。村尾は私が到着すると、広げていたMacBookを閉じ、バッグへと仕舞った。

「ううん。昼間は私、時間があるから。それにこんな場所…村尾くんに誘ってもらわなきゃ来ないからすごく新鮮」

村尾の前に座り、そう言って微笑んでみせると、彼は照れたように笑い、鼻を掻いた。

今や注目の若手経営者となった村尾。しかし私に見せるそんな仕草にはどこか愛らしい学生時代の面影が残っていて、私の心をなんともいえない甘い感情で包んだ。


この日は昼間だということもあってか、会話は自然と村尾の仕事の話題が中心になった。

彼がパーソナルトレーニングジムを始めようと思ったきっかけは、自らが筋トレで人生が変わったからなのだという。

トレーニングは、体型だけじゃなくメンタルも変える力があるのだと、村尾は目を輝かせて語ってくれた。

夫がする仕事の話は愚痴ばかりでちっとも面白くないが、村尾の話は前向きで、聞いていて心が躍る。

しかしこの日、楽しい時間は長く続かなかった。

仕事の話を一区切り終えた彼が、急に話題を変えたのだ。

「そうだ。沢田さん、これ見た?」

そう言って村尾が取り出したのは、とある女性誌のミニサイズ版。

“ブリランテ”というキャリア女性をターゲットにした雑誌で、私には縁のない内容だから手に取ったこともなかった。

「ブリランテ…この雑誌が、どうかした?」

意図がつかめず聞き返す。

すると村尾は思い切り目尻を下げ、まるで自分のことのように嬉しそうな笑顔を見せたのだ。

「工藤さんがすごい大きく取り上げられてた。俺、思わず買っちゃったよ」

▶NEXT 9月23日 月曜更新予定
掲載雑誌が発売され、にわかに騒がしくなる千明のプライベート。

▶明日9月17日(火)は、人気連載『夫の反乱』

夫から溺愛され、好き放題にやってきた美人妻・めぐみ。最近夫の様子がおかしいことに気づき…。夫を大切にすることを忘れた妻の行く末は?続きは、明日の連載をお楽しみに!



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