「私、彼氏がいるのに…」女を虜にする男が、デートの帰り際に発した一言とは

「私、彼氏がいるのに…」女を虜にする男が、デートの帰り際に発した一言とは

女には少なからず人生に一度、“大人の男”に恋する瞬間がある。

特に新入社員時代、先輩や上司に憧れを抱き、社内恋愛にハマる女性は多い。

だが場合によっては、その先にはとんでもない闇が待っている場合も…なくはないのだ。

◆これまでのあらすじ

同期の海斗と食事に出かけた咲希。しかし自慢話ばかりする海斗との会話に、食事に行ったことを後悔する。

全く興味のない話題が続く中、唯一咲希の気を引いたのが、海斗の口からでた「吉沢(圭太)さん」という一言。

食事の次の日の朝には、圭太を含むミーティングを控えていた。



―返信、来ないな…。

海斗との食事から一夜明け、相変わらず通知のならないスマホを握りしめる咲希を乗せた電車は、二子玉川駅に停車していた。二子玉川駅からは大井町線の乗客も増えるため、咲希は憂鬱な気持ちになる。

―ドアが閉まります

電車のドアが閉まる瞬間に、多くの人が駆け込んできた。咲希はうんざりしながら、閉まる扉に詰め込まれてくる人の圧力に耐える。

俯いていては呼吸が苦しくなるため、咲希はふと顔をあげた。その瞬間、心臓が半分くらいの大きさに縮まり、直後に一気に破裂する。

圭太が、乗ってきたのだ。

思わず「あっ」と声に出してしまうと、周りの大人たちに怪訝そうな顔で一瞥された。周囲から頭一つ飛び出した圭太は、満員電車なんてなんでもないような涼しげな表情をしている。

圭太の前髪は丁寧にアップされていて、目尻のラインにだけ前髪がかかっている。耳の中に綺麗に収まっている黒のBluetoothのイヤホンからはどんな音楽が流れているのだろうと、思わず想像した。

スーツの中に着たワイシャツの襟と圭太の首が、やけに色っぽく見える。咲希は何気なく見ていたドラマで急にラブシーンが始まったときのような感覚になり、思わず目を逸らしてしまった。

しかし見てはいけないと思うほど、見てみたくなる。そして咲希はもう一度、顔を上げた。

圭太と目が合う。

咲希は慌ててペコっと顔を下げ、声に出さない挨拶をした。圭太は「おはよう」と口パクで返事をする。乗車率が180%を超える電車内ではこれ以上の会話がされることはなかったが、咲希は有頂天になった。


ついに電車が渋谷駅に到着。二人の間にはどんな会話が・・・?

電車が渋谷駅に到着し、咲希と圭太は合流する。

「吉沢さんおはようございます。まさか会うなんて驚きでした」

「咲希ちゃんおはよう、ビックリだね。俺、自由が丘に住んでるからたまに二子玉川で乗り換えるんだよ」

咲希は思わず、鼻筋の通った圭太の横顔をうっとり見つめてしまう。

「咲希ちゃんさ、電車でずっと俺のこと見てたっしょ、目が合う前から気付いてたんだ」

笑いながら言われて、思わぬ圭太からの指摘に咲希は頰を赤らめる。

「あ、いや・・・」

「・・・あれ、吉沢と高宮さん?」

返答に困っていると、後ろから圭太の同期である佐藤が話しかけてきた。二人でいるところを見られ、なんとなく気まずさを感じる。

「おー佐藤か、おはよう。高宮さんと電車一緒だったんだ」

「仲良しだな。あ、ごめん俺今日の会議の資料まだだからちょっと急ぐわ、二人ともまた後で。」

じゃあ、と佐藤は歩みを進める。

「高宮さん。吉沢には気をつけろよ、悪い男だぞ」

そのあと佐藤は、圭太にだけ聞こえるように耳元で何か囁く。圭太はその言葉に苦笑していた。



圭太と思わぬ遭遇をしてしまった咲希は、出社早々トイレで鏡にうつる自分を確かめる。大丈夫、化粧も髪も完璧だった。鏡を見ながら、ふと佐藤の言葉が蘇る。

―気をつけろ、って何に気をつけるんだろう。

だがそんな疑問は、圭太と朝から会えた喜びにかき消される。咲希はその感情に、もはや違和感さえ抱いていなかった。



「高宮さん行くよ」

席に戻ると、すぐ梨江子に呼ばれた。咲希は心臓が小さく跳ねるのを感じながら、素早くリップを塗り直して梨江子のあとを追う。心なしか足取りが軽い感じがする。

1時間ほどの会議が始まった。

少しずつ成長している咲希ではあるが、会議でまだ発言する勇気はなく、議事録を取るに留まる。会議中も咲希の視界は圭太に奪われ続けていた。

スーツの袖から覗く綺麗な手首の上の、派手すぎず地味すぎない時計は、誰のものよりも丁寧に時間を刻んでいるような気がする。

だが結局、会議中は一度も圭太と目が合うことはなかった。

いつもなら長く感じる会議もあっという間に終わり、出席者はそれぞれ会議室を後にし、通常の業務に戻っていく。

「吉沢くんと少し打ち合わせがあるから、先にデスク戻っててね」

梨江子が咲希に告げる。

「高宮さんお疲れ様」

圭太はひらひらと手を振った。

その骨ばった指に色気を感じ、また見てはいけないようなものを見てしまった気持ちになり、目を逸らしてしまう。「失礼します」と咲希はその場を後にするが、数歩進んだところで振り返った。

圭太は会議室の壁に寄りかかりながら、梨江子と何やら会話をしている。その二人の様子が大人びて見えて、格好良くて、咲希は自分だけがやけに子供っぽいような気がして惨めな気持ちになる。

―ピコン

ちょうどその時、悠からのメッセージが届いたが、相変わらず素っ気ない内容だった。

それを見た瞬間、咲希の中でプツンと糸が切れる。これまで気にしないようにしていたが、その時ばかりは状況も手伝って、悠にまくしたてるようにメッセージを送った。


朝とは一転、咲希の気持ちは沈む。しかしそんな咲希に急展開が・・・?

その日は、一日中何となく暗い気持ちで過ごした。なんとか業務を終え、重い足取りで渋谷駅へ向かう。悠に送ったメッセージは、既読になっていた。

「あれ、咲希ちゃんだ。お疲れ様、今帰り?」

聞き覚えのある声に体が熱くなるのを感じる。

「吉沢さん、お疲れ様です、いま帰りです」

平静を装って答えるが、自分の発した声があまりにも明るくて笑えてくる。文字起こしされたら、語尾に音符マークがついているだろう。

「今から帰るんだよね、時間ある?ちょっと飲みに行かない?」

唐突な圭太の提案に、一瞬思考回路がショートする。

「あ、はい。お付き合いさせてください」

頭はパニックに陥ったままだったが、こういういざという時はどこかで学んだ定型文が出てくるようだ。

「そんな堅苦しいこと言わないでよ、よく行くお店があるんだよ」

そう言って圭太は歩き出す。はい、と頰を赤らめながら付いてくる咲希を見て、圭太は口角を上げたようだった。



以前海斗と訪れた道を圭太と歩く。圭太は咲希のペースに合わせて歩きながら、質問を投げかけてくる。

「最近調子どう?」「楽しくやってる?」「嫌なことない?」

以前ここを海斗と歩いた時に感じた居心地の悪さは、渋谷の街のせいではなかったようだ。



圭太が咲希を連れて入ったお店は、落ち着いた雰囲気の創作串カツのお店だった。ほどよく混雑した店内では、咲希の話を中心に会話が繰り広げられていく。

咲希の緊張はいつの間にか消え、圭太との会話を純粋に楽しんでいた。ポケットで震える悠からの着信には、もはや気付きさえしなかった。

時計が23時少し前を指した頃、二人は席を立つ。

「あ、お金はいいからね」

圭太は、咲希が財布を出す前に制した。

渋谷駅までの道のりも、圭太との会話は弾んでいた。信号で立ち止まっていると、夏が始まる少し前の湿った風が吹く。その風は咲希の頭に充満する心地よい酔いを、絡め取っていくようだった。

「じゃあね、気をつけて帰るんだよ」

渋谷駅の改札をくぐったところで、圭太は別れを告げる。もう少し一緒にいたい気持ちもあったのだが、今は一人になって今日のことを冷静に振り返りたい。それほど咲希にとっては心地よすぎる時間だった。

「そういえばさ、来週の金曜空いてる?咲希ちゃんと飲むの楽しかったし、よかったらまた行こうよ」

「も、もちろん空いてます!ぜひご一緒させてください」

「ほらまた堅苦しいって。俺クライアントじゃないんだってば」

その圭太の爽やかな笑顔の裏にある大人の表情までは、咲希はもちろんまだ読み取ることができないでいた。


▶︎NEXT:10月24日 木曜更新予定
圭太に二度目の食事に誘われた咲希。容姿端麗、真摯な圭太に魅了される咲希は、大人の世界に引きずり込まれることに・・・。


▶明日10月18日(金)は、人気連載『呪われた家』

幸せな結婚生活を思い浮かべていた新妻。その儚い幻想が、見事に打ち砕かれたら?沙織(26)は、“家”を巡る恐怖の呪縛に追い詰められていく…。続きは、明日の連載をお楽しみに!



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