わたし、9時に出社します。:「太ったんじゃない?」飲み会中、無自覚ハラスメント連発の40代男上司

わたし、9時に出社します。:「太ったんじゃない?」飲み会中、無自覚ハラスメント連発の40代男上司

2019年。

「令和」という新しい時代を迎えたが、これまでの慣習や価値観がアップデートされる訳ではない。

このお話は、令和を迎えた今年に保険会社に総合職として入社した、桜田楓の『社会人観察日記』。

1996年生まれ、生まれたときからインターネットが当たり前にある「Z世代」の彼女が経験する、様々な価値観を持った世代との出会いとは…?

◆これまでのあらすじ

30代の先輩社員に「30分前出社は当たり前」と諭された楓。そして今週はさらに衝撃的な場面に遭遇して…?



うだるように暑い毎日が続く、7月。

楓が、丸の内に本社を構える保険会社に入社して3カ月が経過した。

まだまだ不慣れなこともある中、楓は日々の業務にあたっていた。隣の席から、OJT担当者である瀧本が話しかけてくる。

「桜田さん、資料確認したけど、、ホッチキスの止める向きも知らないの?」

OJT担当である、瀧本がため息交じりに言った。

「え…?」

まさか「ホッチキスの止め方」を指摘されると思っていなかったので、戸惑いを隠せずに聞き返す。

「ホッチキスよ。流石に止める位置を間違えるなんてことはないから安心したけど、止める向きよ。平行に止めるの。こういうところ気にしなきゃだめよ?社会人なんだから。」

待ってましたとばかりに、瀧本は楓に指導する。

「はぁ…。あの、印刷をかける際にホッチキスも自動で止めるようにしたので…。コピー機の設定かと思います。」

この返答に、瀧本は面食らった表情をしながらも答えた。

「とっ、とにかく、止める向きも資料作成の際のビジネスマナーとして覚えておきなさいっ」

そう言い残し、席を立ってそそくさとどこかに行ってしまった。

1人取り残された楓は、その場で「ホッチキス 止め方」と検索をかけてみる。

すると横書きだと左上で、縦書きだと右上だという、「止める位置」のマナーは出てくるものの、「止める向き」に関するマナーに言及しているものは見当たらなかったのである。

―ページがめくりにくくなってしまうから、止める位置の決まりは分かるけれど、行と平行になんて何の合理性があるわけ?

楓は冷静に考えたが、意味のないローカルルールにしか思えなかった。


Z世代を悩ます業務外の依頼・・・。それはずばり飲み会の幹事!

この日の午後は、2週間に一度開催する「チームミーティング」があった。

7月の初め、楓の会社では4月以来の大きな人事異動が行われる。楓のチームにも、新しい人が赴任すると噂にはなっていた。

この日のチームミーティングでは、リーダーである平岡が、いつものように日々の業務に関するお知らせを一通り話した後、人事異動に関して口を開いた。

「えー、既にご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、7月1日付けで、このチームに異動してこられる方がいます。岩田さん、です。知っている方の方が多いかな?」

そう言うと、皆の表情が一様に明るくなった。

「え?!がんちゃん!」
「やっぱり、噂は本当だったんだ!嬉しい!」

平岡からの報告を聞いて、盛り上がる皆のテンションについていけず黙っていると、瀧本がこっそりと耳打ちしてきた。

「3年前まで、この部門にいたのよ。一度大阪支社に転勤になって、今回の異動で戻ってくるのよ。私も先輩なんだけど、すごく明るくて、皆のムードメーカーって感じの方ね。」

「へぇ。そうなんですね。お会いするの、楽しみです。」

楓は皆の盛り上がり方を見て、どんな人物なのか興味が湧いた。



そして迎えた、7月の第4週―。異動者の着任日に、「岩ちゃん」という愛称で呼ばれる「岩田」がやってきた。

想像通り、まるでずっとチームメンバーだったかのように岩田はすぐにチームに馴染んだ。

また楓は知らなかったが、この度の異動で岩田は「部長職」、つまり、栄転して楓のチームに入ってきたようだ。言われてみれば、歳は40代半ば、お腹がたっぷりと出ており愛くるしい日本のおじさんという風貌である。

皆から慕われている様子を見て、楓も出来るだけ距離を縮められるといいなとぼんやり考えていた。



終業時刻を迎えて、本日の業務を終えた楓が帰宅の準備をしていると、瀧本から呼び止められた。

「桜田さん、ちょっといいかしら?」

「はい。」

まだ新人である楓が、終業間近に声をかけられることは難しく、ドキドキしながら返事をする。

「お願いがあってね、岩田さんの歓迎会をやるんだけれど、その幹事を桜田さんにやって欲しくって。お店探しとか、出欠の取りまとめとか、新人であるあなたがやることでチームの皆とも話すいい機会だと思うのよ。よろしくね。」

そう話をまとめ、瀧本は自分の席へと戻っていく。気は重いが、もちろん断ることなど無理だ。楓はため息をつきながら、帰り道、ネットでお店探しをするのであった。


ついに本性現る?!40代昭和型価値観で生きる男性上司

その週の金曜日、岩田が串揚げ好きだということを聞き、東京ビルTOKIA地下1階の『串あげもの 旬s』を予約した。

業務を終えたチームのメンバーが続々と集まり、19時から歓迎会が始まった。そこで気を利かせた先輩達が、楓に岩田の隣に座って挨拶する機会を作ってくれた。

「はじめまして、2019年度入社の桜田楓と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」

すると岩田も「よろしくね、期待しているよ」とにっこりと笑顔を向け、第一印象はいたって普通だった。



会が盛り上がってくると同時に、プライベートな話が始まり、誰かが「桜田さんは彼氏いるの?」と聞いてきた。

ストレートすぎる質問に何と答えようか迷った楓だが、素直に「いません」と答える。

すると信じられないことに、岩田はこう言って笑う。

「じゃあおひとりさまか。しばらくは仕事が恋人だな。でも君のOJTみたいになるなよ!独身街道真っただ中。女は結婚した方がいいぞー。」

それを聞き、楓は絶句した。

まず「仕事が恋人」という言葉。その人の人生において何に重きをおくのか、何を充実させたいのかは自分で決めることではないだろうか。また「女は結婚した方がいい」という価値観の押し付けにも、ゲンナリした。

周りの反応はというとつられて笑っている人が大半で、何人かは表情が引きつっているように思えたが、部長職として戻ってきた岩田にはっきり言える者はいないようだった。

「そういえば、俺が大阪に行っている間に、瀧本太ったんじゃないのか。もっとスタイル良かったよな。そんなんじゃまたおひとりさま街道まっしぐらだぞ。」

「太った」という人の外見を中傷するような言葉は、間違いなくハラスメントだ。楓は「痩せたね」という言葉も言わないようにしている。こちらが良いと思って言っていてることでも、人には分からない問題を抱えているかもしれないからだ。

瀧本さんは「やーだ、岩田さん。がんばりますぅ」と言いながらも、何でもないように笑って見せていた。

また例え飲み会の席とはいえ、岩田が発したセリフに何も言わない周囲にも違和感を抱いた。

ハラスメント発言が飛び交う飲み会もどうにか終盤に差し掛かり、辺りを見回すと、瀧本さんが先ほどからずっと席を外していることに気づく。気になって楓が化粧室に行くと、鏡の前でぼんやりしている彼女を発見した。

「…瀧本さん、大丈夫ですか?」

楓に見られて恥ずかしかったのか、瀧本さんは「大丈夫」と笑いながら席に戻った。

―瀧本さん、泣き寝入りか…。

その姿を見て、楓は心の中で誓った。

「責任のとれない相手の人生を、とやかく言ったりするようなことは絶対しない」
「岩田さんのような上司達から嫌な思いをさせられないように、周囲を守れる人間になりたい」

この2つは、これからずっと守っていこうと思ったのであった。


▶Next:10月22日 火曜更新予定
向かい風続きの楓に、やっと尊敬できる上司登場?!40代キャリア女性が教えてくれた「働き方の男女平等」とは













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