「可愛い子としか友達にならない」。女同士の薄っぺらな“友情ごっこ”の実情

「可愛い子としか友達にならない」。女同士の薄っぺらな“友情ごっこ”の実情

日々、新しいショップやレストランがオープンし、アップデートを繰り返す街・東京。

東京で、そのすべてを楽しみつくそうとする女を、時として人は「ミーハー女」と呼ぶ。

ミーハー女で何が悪い?

そう開き直れる女こそ、東京という街を楽しめるのだ。

PR会社に勤務するミハル(27歳)も、最新のものをこよなく愛する「ミーハー女」である。

ただミハルの場合は、恋愛においてもミーハーであり、それが人生を少しだけハードモードにしていたのだ。

◆これまでのあらすじ

PR会社勤務のミーハー女・ミハル。匠との話を通じて、男選びや自身に対する勘違いを指摘され、改めて自分のあり方を見直していた。



食事会の時と同じ、赤リップ。いつもより気合を入れて、化粧をする。

なんてったって、今日は同期の祐里奈との代官山ランチ。とびきりのオシャレをしないといけないのだ。

そんな思いでミハルが出かける支度をしていると、スマホの通知が鳴った。

ーわ〜ごめん、寝坊して今起きた...急いで準備するけど13時でも良い?ー

ー了解!ちょうど今家出ようとしてたから大丈夫。13時ね!ー

今日もまた、祐里奈は遅刻だ。彼女との約束はいつもこうなるから、ミハルはギリギリに家を出るようにしている。



13時。代官山には、オシャレな男女が行き交う。

ミハルが改札を眺めていると、明るい髪色の小柄な女の子が小走りで出てきた。

「おはよう〜!起きたら12時だったの!びっくりした、ごめんねぇ」

鼻から抜けるような猫なで声で、少し上目遣いに話しかけてくる。キュッと上がった口角に、少し薄い唇、ふわっと撫でるようなボディタッチをしてくる祐里奈には、同性のミハルでも、ドキッとさせられることがある。


ミハルが祐里奈に対して感じる数々の違和感。祐里奈の歪んだ友情観とは。

入社式で初めて会った時から、ミハルは祐里奈と仲良くしている。

一緒に仕事をしたことはないが、入社当時は祐里奈と仲良くしているとみんなから羨ましがられ、それが少しだけ嬉しくもあったのだ。ただ最近は、祐里奈のある所に少しずつ違和感を覚えるようにもなっていた。

ーよく祐里奈ちゃんと仲良くできるねー

ミハルに対して、そんなことを言ってくる同期もいる。だが、ミハルはそんなセリフを言われる度に「本当はいい子なんだけどね」と言葉を濁すようにしている。

ーよく言えば正直で天真爛漫。悪く言えば…

祐里奈の横顔をちらりと盗み見ながら考えていると、唐突に祐里奈が切り出した。

「で、ミハル。最近どうなの?」

駅から歩く道すがら、祐里奈は大きな瞳をキラキラさせながらミハルに聞いてきた。

「う〜ん。こないだの食事会の商社マンとデートしようとしたんだけど..」

「うわ!やっぱりあいつミハルにいったかぁ〜。ミハルもあの彼もすらっとしてて背が高いから、隣に並ぶとお似合いだよ!」

「それがさ...、結局デート、ドタキャンされちゃって」

先日の”映画すっぽかされ事件”を話すと、祐里奈は言葉をかぶせるように言い放った。

「え、なにそれ!ムカつく、絶対そんなやつやめといたほうがいいよ。ミハルにはもっといい人いるって!」

「ただね、初めてあんな風にドタキャンされて、ちょっと反省したことがあって...」

ミハルが少し真剣な話をしようとすると、祐里奈は食い気味に相槌を打ってきた。

「え〜ミハルは何も悪くないよ!」

「でも...」

「あ!そう、これこれ〜!外観もオシャレ〜!」

ミハルの言葉を遮るようにして、祐里奈が指さしたのは『カシヤマ ダイカンヤマ』だった。



ミハルの話をよそに、スタスタと店内に入っていく祐里奈を見て、ミハルは寂しい気持ちになった。

おしゃれで可愛くて、いつだってスクールカーストの頂点にいるような祐里奈は、根っからの女王様気質なのだ。

ー全部が自分中心に回ってても、仕方ないのかな...。


「インスタで見てから、ずっと来たかったんだよね〜!ねねね、写真撮って!」

席に通されると、祐里奈はいつも通り、スマホをミハルに手渡してきた。

「は〜い、いくよ!3、2、1!」

「見せて見せて、ん〜。もう一回!」

カメラを見つめる祐里奈の目は、いつもあまり笑っていないように見えて、ミハルは祐里奈が本当は何を考えているのか、よくわからないと思うことがある。

写真撮影がひとしきり落ち着くと、2人はシャンパンとカヌレを注文した。

「そういえば、祐里奈は彼氏とどうなの?」

ミハルが聞くと、祐里奈は持っていたシャンパングラスをテーブルに置いて、スマホ画面を見せてきた。

「うん、仲良しだよ。彼、最近起業したから仕事が忙しいみたいだけど、この前の休みは一緒にバリ行ったの〜!ホテルがめちゃくちゃ綺麗だった!見て〜!」

写真に写る笑顔の祐里奈と、その隣には端正な顔立ちの男性。男性の手に光るパネライの時計と、ルイヴィトンのバッグ。

「祐里奈はさ、本当にお金持ちのイケメン大好きだよね」

嫌味でもなんでもなく、思ったことをつい口にすると、祐里奈はいつもの笑顔でこう言った。

「うん、見た目ってすごく大事だと思うんだよねー。中身よりも大事かも」

「私も、それに近い考えだった時もあるけど…。でもさ、それだけで彼氏選ぶのって、なんか違うかなーって思うようになってきたんだけど、祐里奈はどう思う?」

ミハルは匠に言われたことを思い出しながら、祐里奈に恐る恐る問いかけた。すると彼女は少しだけ首をかしげて「う〜ん、どうだろうね?」と言った直後に、運ばれてきたシャンパンとカヌレを見るなりまた高い声を出した。

「あ、来たよ!美味しそ〜」

そして、すかさずスマホを取り出してストーリーズの撮影を始めるのだった。



−どうしていつも、こんなに雑に扱われるんだろう...。

「祐里奈って、時々何考えてるかわからないっていうか、なんかすごくドライだよね。結構オープンな性格かと思えば、実はあんまり自分のこと詳しく話してくれないし。なんか、いつまで経っても壁があるっていうか。すごく近くに感じることもあるけど、すごく遠くに感じることの方が多いっていうか…」

思い切ってミハルが質問をすると、スマホに夢中だった祐里奈が目を上げた。

「ていうか、逆にミハルってすごいよね」

「え?」

「いつも自分のこと、よくそんなにベラベラ話せるなぁって思うんだよね。だってさ、自分の悩みとか、友達に相談しても何の意味もないじゃん?友達なんて、正直言うとどこまでいっても他人なのかなって思ってるんだよね」

目の前に置かれたカヌレを頬張りながら、何の悪びれる素振りもなく話す祐里奈の姿に、ミハルは少し胸が痛んだ。

−私って、”他人”だったんだ。


祐里奈のドライな視点に対してミハルの対応は?

ミハルにとって祐里奈は、特別な存在だった。

知り合った当初は、その可愛さもあって一緒にいるだけで自慢に感じたこともある。

だが、時が経つにつれ、いろんな経験を共有し、お互いが仕事で辛い時は会議室に集まって泣きながら励ましあったり、他の友達には言いづらい相談だってしてきた。

祐里奈の性格に少し極端なところがあり、そんな彼女を嫌いだと言う人がまわりに増えても、ミハルにとってはかけがえのない同期であり友人であることに変わりはない。

それなのに彼女からは、”他人”程度にしか思われてなかったという事実に、ミハルは困惑の色を隠せなかった。

「祐里奈にとって、友達って何?どんな存在なのかな?」



ご機嫌でシャンパンを飲む祐里奈に、ミハルは今まで彼女に対してなんとなく思っていた疑問を、いい機会だと思いぶつけてみた。

「え、どんな存在って?なんか話重くない?」

祐里奈は少しだけ驚いた顔をしたが、ミハルの真剣な表情を見てトーンダウンすると、わずかな間を置いて口を開いた。

「私、あんまり人のことが信用できないんだよね。人なんてすぐに態度変えるし、信じた方がバカを見ることだってあるじゃない?他人に変な期待を持ちたくないんだよね。だから私は、可愛い子と一緒にいられればいいから、友達は顔で選ぶ」

あまりにストレートな物言いに、ミハルは少し面食らったが、初めてきちんと祐里奈の本音を聞けた気もして、複雑な気持ちになった。

祐里奈はそんなミハルの気持ちなんて気にせずにさらにこう続けた。

「それにね、顔だけで選ぶっていってもファッションとかメイクも含めたトータルで選ぶから、それって自然と価値観が似た人になると思うんだよね。合理的じゃない?」

「合理的って…」

友人関係に「合理的」などという言葉がでてくるとは思いもしなかったミハルは、またも軽い衝撃を受けた。

しかしミハルには、祐里奈との忘れられない思い出がある。

それは祐里奈と知り合って2年目の冬のこと。風邪で高熱を出したミハルは、一人暮らしの部屋で、ろくに食べ物も飲み物もなく、薬なんてもちろんない一人暮らしの部屋で寝込んでしまった日があった。

歩いて2分の場所にコンビニがあるのに、そこに行くことさえできず、ただ布団にくるまり、あまりのつらさに涙が流れてきた時だった。

祐里奈から急な誘いのメッセージがきて、「体調が悪いから行けない」と断ると、祐里奈はすぐに電話をかけてきて「大丈夫?薬買っていこうか?」と言ってくれた。

みんなで楽しんでいる時にそんなことはお願いできないと思い、ミハルは何度も断ったが、祐里奈はそれを頑として受け付けず、本当にミハルの家までやってきたのだ。

手には、1.5Lのペットボトルが2本、たくさんの果物、レトルトのおかゆ、3種類の風邪薬という、大量の荷物を抱えて。

そんなことまでしてくれた祐里奈が、心の底から他人を信用していないとは、ミハルには思えないのだった。

「ねえ、祐里奈。友達を顔で選ぶっていうのは本人の自由だから否定するつもりはないけど、友達を信用しないって言われると、私としては寂しいな…。私は、祐里奈のこと信用してるから、さ」

あまり説教臭くならないよう、気を付けながらミハルが言うと、祐里奈は「うーん、考えてみるよ」とそっけなく言った。

ミハルは、祐里奈の頬が少しだけ緩んだのを見逃さなかった。


▶︎NEXT:10月27日 日曜更新予定
祐里奈の恋愛事情に迫る。彼氏から言い放たれた予想外の本音に祐里奈は?


▶明日10月21日(月)は、人気連載『立場逆転』

〜高校卒業後15年。再会した2人の人生は180度違うものとなっていた…。女のプライドをかけた因縁のバトル、続きは明日の連載をお楽しみに!













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