付き合っていない男の部屋に誘われて、思わず・・・。「好き」とは言わない男の誘惑に負けた女

付き合っていない男の部屋に誘われて、思わず・・・。「好き」とは言わない男の誘惑に負けた女

女には少なからず人生に一度、“大人の男”に恋する瞬間がある。

特に新入社員時代、先輩や上司に憧れを抱き、社内恋愛にハマる女性は多い。

だが場合によっては、その先にはとんでもない闇が待っている場合も…なくはないのだ。

◆これまでのあらすじ

遠距離恋愛中の彼氏・悠からの素っ気ない連絡の日々は続く。

そんなある日、咲希は朝の電車で憧れの圭太に遭遇する。圭太を思わず目で追ってしまうが、そんな咲希の気持ちは圭太にお見通し。

その日の仕事終わり、圭太に食事に誘われる。スムーズなエスコートにますます圭太の虜に。しかしこれが地獄の始まりとは、知る由もなかった…。



圭太との食事の帰り道、咲希は一人浮かれていた。

「咲希ちゃん可愛い、まじで」
「一生懸命頑張ってる咲希ちゃんがすごい好きだよ、俺は」

先ほどの圭太の発言を何度も何度も頭の中で繰り返す。しかし人間の記憶力はそれほど優秀ではなく、少しずつ記憶が薄れていくのを、焦れったく感じていた。

―早く、もう一度会いたいな。

そんな思いが頭の中を埋め尽くしていることに自分でも驚いていると、スマホが震えた。悠からだった。

そういえば、先ほども着信があったのを忘れていた。あんなに待ち焦がれていたはずの悠からの着信を、素直に喜べないでいた。

10秒ほど画面を見つめたのち、電話に出る。

「おい、お前どういうつもりなん」

開口一番、悠が強い口調で言った。昼間に悠に送ったLINEのことを言っているのだろう。

―もう好きじゃないなら、私も悠と付き合ってるのが辛い

そういう類のメッセージを立て続けに送っていたのだ。

「咲希、ほんまに俺と別れたいん?」

何もわかっていないような悠の発言に苛立つ。それでも、久しぶりに聞く悠の声にホッとしていた。

「別れたいわけじゃないけど・・でも冷たいの嫌だもん」

「何それ、女々しいなあ。てかその変な東京弁やめて、東京がうつったなあ」

社内では、関西弁を話すことが気恥ずかしく普段は標準語を使うようにしていた。特に電話対応は関西弁を一切使わない。思わず会社の癖が出てしまったことを、悠はこれでもかと指摘する。

その声は、LINEのどんなに素っ気ないメッセージよりも冷たく聞こえた。何となく感じていた悠との距離が一気に開いたようだった。

「そっかな。自分ではそんなつもりないけど」

悠の態度についてこれ以上言及する気にもなれず、それとなく返す。

「ま、考えすぎやって。夏休み帰ってくるんやろ?その時はその変な東京弁やめてや。じゃあ眠いし切るわ」

電話は一方的に切られてしまった。こんなはずではなかった、という思いで胸がいっぱいになる。先ほどまでの圭太との楽しかった時間が、今の電話で全て、消え去ってしまうようだった。

それ以来どちらから連絡することもなく、1週間が過ぎていった。


そして訪れる金曜日。2回目の圭太は想像以上に積極的で・・…?



「ごめん、待たせたね」

金曜日の夜、待ち合わせ5分前に圭太がやって来た。

「あ、いえ、私が早く着きすぎたので」

「今日も可愛いね、行こっか」

暑くなってきたねと言いながらワイシャツの胸元をパタパタさせる圭太の仕草に、また思わず目を逸らしてしまった。

スーツのジャケットを手に持ちながら歩く姿を一歩後ろから眺める。自分よりもひと回りも大きい背中に、肘まで捲られた袖から覗く男性らしい腕に、心がざわついていた。

「また俺のこと見てる」

なんか変かな?と笑顔で振り返りながら言うので、「見てないです」と思わずムキになって返した。

まあいいやと言う笑顔が優しくて、でも少し意地悪で。咲希の動きは誰かに操られているかのように、ぎこちなくなってしまう。



「まだ俺に緊張してるの?」

「もう、大丈夫なはずです」

「まだ、“はず”なんだね」

二軒目のバーでも会話が弾む。翌日は休みということでいつもより多めにお酒を飲んでいた二人は、アルコールで頰を赤らめていた。

「咲希ちゃん、日曜日は用事あるの?」

唐突に圭太が聞いた。

「日曜日は家を掃除するくらいだから、特にこれと言った用事はないです」

「そうなんだね。じゃあさ、日曜日、何もないなら俺とデートしない?」

「・・・デート」

驚きのあまり一呼吸置いて思わず声に出してしまった。

「咲希ちゃんに休みの日も会いたいしさ」

さらに圭太が重ねた。その言葉に、もしかしてこの人は私のことを好きなのではないかという感情がじんわりと顔を出してきた。

まだ私には悠がいる。でも‥もし仮に吉沢さんが私のことを好きなら、無理に悠と付き合っている必要はないのではないか。

―ずるい

こんな考えはあまりにもずるすぎる。そもそもまだ私のことを好きと決まったわけではない。いやでもー。

ぐるぐると頭の中を思考が巡る。

「何をそんなに考えてるの?」

圭太が困ったように笑いながら言った。

「あ、いや。デートとかいう言葉、久しぶりに聞いたから・・」

今まで自分が考えていたことが急に恥ずかしくなり、それっぽい回答をした。慌てて声を出したので、関西のイントネーションが混じってしまう。思わず出てしまった関西弁に気づく余裕さえなかった。

「てか、咲希ちゃんのたまに関西弁が混じっちゃう標準語、すごい可愛いよね」

その言葉を聞いた瞬間、咲希の心が自分でも驚くほどの勢いで圭太に引き寄せられた。1週間前に悠に変だと言われた言葉を、可愛いと言ってくれる人が目の前にいる。

それだけでもう十分だった。そんなよそから見れば何でもない些細な理由が、咲希の背中を押した。

「・・・デート、したいです」

うつむきながら必死に震える声を絞り出した。

「うん、デートしよう。もっと嬉しそうに言いなよ。楽しみだね」

スマホは振動しないままだった。


ついに圭太との初デート当日。圭太が選んだ場所は…?

日曜日のお昼前、咲希は待ち合わせ場所で圭太を待っていた。いつもより丁寧に巻かれた髪に、派手すぎない化粧。

圭太が到着するまでの間スマホを触って時間を潰そうとするが、表示される文字がまるで頭に入らない。緊張しているのだ。

「毎回待たせてごめんね」

待ち合わせ時間5分前に圭太はやって来た。

「いえ、私が早かっただけなので」

初めて見る私服姿に、心臓が跳ねるのを感じる。ずば抜けてオシャレというわけではないが、全てが完璧に似合っていた。

そして、微かな甘い香りが咲希の鼻をかすめる。仕事のときとは違ったふんわりと甘い香りに自然と呼吸が深くなっていた。

「あ、今、俺の匂い嗅いだでしょう」

意地悪く笑う圭太に身体ごと吸い込まれていくような感覚になる。

「ね、今から俺の家おいでよ。お昼作ってるから」

それはあまりに自然な誘いで、“男性の家で二人きりになる”という予感を一切させなかった。ましてや恋愛経験などほとんどない咲希には、危機感を抱く隙さえ与えない言い方だった。



「入って入って」

お邪魔しますと言って玄関に足を踏み入れる。他人の家のはずなのに、圭太の家の匂いを咲希はすんなりと、むしろ好感を持って受け入れることができた。

決して広くはないが綺麗に片付けられた家の中は、所々に圭太らしさを感じられる。

座っていいよと言われるが、どこに座っても違和感があるような感じがしてバッグだけソファの横に置き、所在無さげに佇んでいた。

「手洗っておいで、お昼にしよ」

洗面所も綺麗に片付けられていて、ホコリひとつない。かけられたタオルからも圭太の日常を感じてしまい手を拭くのさえ意識してしまった。



昼食を食べ終え、紅茶を片手にソファで映画を見ていた。最初の違和感はいつの間にか消え、純粋に映画を楽しんでいたとき、隣に座る圭太の腕が咲希の方へと伸びてきた。

このままソファにもたれかかれば圭太の腕と触れてしまうー。そう思うと、咲希は姿勢を正したまま崩すことができなくなってしまった。先ほどまで映画に向いていた意識が、背中に集中する。

「咲希ちゃんこっちおいで」

圭太の柔らかい声が咲希を包む。甘い声に誘われるかのようにほぼ無意識のまま咲希は力を抜いて腕の中へとおさまる形になってしまった。

圭太の暖かさに体が沈んでいく感覚になる。

「可愛いね」

腕の中の心地よさに心を預けていると、不意に両手で優しく両頬を包まれ、目と目が絡み合った。目が合う恥ずかしさに照れ笑いを浮かべ目を逸らしてしまいそうになる咲希の唇を圭太が優しくふさいだ。

もう映画の音声はただのBGMと化していた。

体全体の力が抜けるような、優しく暖かい時間。うまく息継ぎのできなかった咲希のことをふっと笑い、圭太の唇が首元へと移動する。

初めての感覚に思わず声がもれる。

「うん大丈夫だよ、ここ気持ちいいんだね」

優しい声が咲希を包む。圭太の指先は輪郭をなぞるように咲希の身体に柔らかく触れた。

ソファの隅に置かれたバッグの中のスマホは、音も立てずに二人の様子を見守っているだけだった。


▶︎NEXT:10月31日 木曜更新予定
言葉巧みに誘われた咲希。初めて知った大人の世界は甘すぎるゆえに元の世界に戻ることはもうできないー。













東レデート
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