「やばい。グッときた…」恋人候補だった年下男に、美女が心を射抜かれた瞬間

「やばい。グッときた…」恋人候補だった年下男に、美女が心を射抜かれた瞬間

同窓会で再会した独身キャリア・工藤千明と、専業主婦・沢田美緒。

かつて学校一のモテ女だった美緒は、商社マンの夫との間に一人息子を設け幸せに暮らしていた。しかしその風貌にかつての輝きはなく、夫もつれない。

一方、洗練された美女へと変貌した千明は複数の男性から言い寄られており、キャリア女性向け雑誌から取材を受けるなど華やかな生活を送っている。

そんな中、千明はキャリア女性向け雑誌から取材を受ける。

すると発売された雑誌を見た6歳年下の後輩・酒井聖から熱烈アプローチを受け、誕生日を一緒に過ごそうと誘われる。

しかし誕生日当日。ある電話のせいで、千明は聖に会うことができなかった。



千明:不穏な着信


相手の男性をどう思っているか。

それは、デートの支度をしているときのテンションの高さに如実に表れると思う。

ドレッサーの前で自分が鼻歌を歌っていることに気づき、私はひとり失笑してしまった。

−私ってば、めちゃくちゃ浮かれてる…。

今日は朝から予定を入れずにゆっくり過ごし、午後からは時間をかけて半身浴もした。

スペシャルな日のために買っておいたLANCOMEのシートマスクで肌も整えたから、化粧ノリもバッチリなはずだ。

聖との待ち合わせは、18時に銀座。

どこに行くかなど詳細は知らされていないが、“ディナー予約しました!”と意気込んだ連絡がきていたから、おしゃれにも気合が入る。

どの洋服を着て行こうか。やっぱりここは大人の女らしく、ブラックワンピにTASAKIのパールが正解?

足取り軽くクローゼットへと向かった、その、次の瞬間。

ベッドの枕元に置いたままにしていたスマホから、着信音が大音量で鳴り響いた。

その呼び出しのけたたましさは、まるで悲鳴かのよう。…いつの間に、こんなにも音量を大きくしていたのだろう。

私はただならぬ不穏を感じ、慌ててベッドサイドに駆け寄ったのだった。


こうして、美緒の呼び出しに応じた千明。そこで知った、彼女の秘密とは

ホテルニューオータニの『ガーデンラウンジ』で見つけた美緒の姿は、まるで高校時代に戻ったかのように、うんと小さく映った。

窓側の奥の座席で、肩を落として佇む美緒。

そういえば、こんな風に彼女を慰めたことが過去にも何度かあった。彼氏と喧嘩をしたとか、女たちに悪口を言われたとか…。

その度に「千明、千明」と頼ってくる美緒を、鬱陶しく思わないわけではない。

しかし異性はもちろん、女同士であっても、全身全霊で「支えが必要だ」と頼られてしまうと、やっぱり放っておけないものだ。

呆れるが、羨ましくもある。

矛盾した気持ちを吐き出すように小さくため息をついたあとで、私は静かに「美緒」と声をかけた。


美緒の秘密


「それは…さすがに酷い…」

美緒の口から村尾との一件を聞いた私は、思わず声を詰まらせた。

しかし意外だった訳ではない。バーで偶然会った夜、村尾は「人妻を狙って何が悪いの?」と言い放った男なのだから。

−この男、危険。

そう思った私は、彼の本性を伝えようとすぐさま美緒に連絡を取った。しかしタイミングが合わず会話ができないまま、結果、美緒が傷つけられることになってしまった。

「ごめん、美緒…。村尾くんには近づかないほうがいいって、もっと早く忠告してあげられたらよかった」

今更言っても仕方がないとわかっていても、後悔が押し寄せる。

しかし美緒はそんな私の謝罪を聞いていたのかいないのか、見当違いの言葉を口にするのだった。



「私…千明が羨ましかったの」
「え…?」

思いがけない発言に戸惑う私の前で、美緒は再び繰り返す。

「本当は、ずっとずっと羨ましかった。高校生の時から、ずっと」
「どうしたのよ、急に…」

一体、何を言い出すのか。困ったように笑いながら、私は美緒の顔を覗き込む。すると彼女は、私から目をそらしたまま、懐かしい名前を口にした。

「宮本くんのこと、覚えてる?」

宮本輝之。もちろん、覚えている。高校時代、私が片思いをしていた相手。

結局その恋は、彼と美緒が付き合うという結果で終わりを告げた訳だが…。

「宮本くん、本当は高校時代から千明のことが好きだったのよ。私、それが羨ましくて…それで、千明は別の人のことが好きよって彼に嘘を言ったの」

−え?

とっさに、遠い昔の光景が蘇った。人気のない校舎裏で、宮本くんにこっそりラブレターを渡していた美緒の姿。

私の好意に気づいてながら抜け駆けしただけじゃなく、そんな嘘までついていたのか。

もし当時の私がこのことを知ったら、さすがに怒りを抑えられなかっただろう。しかしもはや昔の話だ。宮本輝之に未練もなければ、美緒の愚行を責める気にもならない。

いや、むしろ、責めるどころか、私は美緒が気の毒になった。彼女はきっと、当時の出来事をずっとどこかで気にしていたんだろう。

美緒の告白を聞きながら、私は「なるほど。そういうことだったのか」と全てが繋がった気がした。

ズルをして、ずる賢く立ち回って手に入れても、結局は満たされない。自分が惨めになるだけだ。

同窓会で再会してから、彼女が私に対し異様に対抗心を向けていた理由も、きっとここにあったのだ。

「…美緒」

ずっと下を向いたままの美緒の肩に、そっと手を乗せる。

…こんなこと、別に言うつもりはなかった。けれど、15年ぶりに本音をぶつけてくれた美緒に、私も伝えておきたくなったのだ。

「それなら私も言う。私だって、美緒のことがずっと羨ましかった」


ようやく本音をぶつけ合う二人。一方、デートするはずだった聖との関係はどうなる…?

「美緒から見たら、私は自由で気ままで楽しそうに見えるのかもしれない。でも自由なぶん、私は孤独を背負ってる。言い寄ってくる相手はいても、彼らは私と人生を分かち合う気なんてないんだから。…そうだ、前に美緒にデート現場を目撃された弁護士なんて、結婚する気はないって私に断言してきたのよ?」

美緒を諭すつもりで話し始めたのだが、なんだか自分で言って自分が泣けてきてしまった。

やはり宇野の誘いは断って正解だった。「別に結婚なんて」と口では強がっていても、一度漏れた本音は止まらない。

「だから…私からみれば、美緒が羨ましいのよ。守ってくれる旦那さんがいて、守るべき子どもがいて。それに何より、欲しいものを欲しいと言える素直さが羨ましい。宮本くんに嘘を言ったことも含めて、ね。もちろん褒められたことではないけど、私にもそういうまっすぐさがあれば…って、思わなくもないよ」

こんな風に思いをさらけ出すのは、お互いにきっと最初で最後だろう。

「ありがとう…千明。今日会えて、本当に良かった」

美緒の肩を抱く私の目を、美緒はようやくまっすぐに見た。

その瞳はもう涙も対抗心もなく、昔のままの、無邪気な少女のそれだった。



結局、ようやく美緒と別れたのは20時近かった。当然、聖との待ち合わせ時刻を大幅に過ぎている。

事前に緊急事態が起きたことは伝え、今日は会えないかもしれないと伝えてはおいたが…彼は今、どこにいるのだろう。予約してくれたディナーはどうしただろう。

美緒の一件が落ち着いてようやく、本当に申し訳ないことをしたという懺悔でいっぱいになる。

−とにかく、謝らないと…。

美緒と別れラウンジを後にした私は、すぐさまスマホを取り出し聖を呼び出した。



「あ。用事、終わりました?」

何と言って詫びれば許してもらえるだろうか…。

呼び出し音が鳴る間、私はそればかり考えていたというのに、聖の第一声はあまりにも拍子抜けするものだった。

その声はいつもと変わらず、まるで怒っている様子はない。

「あの…本当にごめんね。せっかく計画してくれたのに。親友の一大事だったとはいえ本当に申し訳ない。ディナーも、キャンセルさせちゃったよね…」

さらには、とにかく申し訳なかったと必死で謝る私を制し、聖はのんびり明るい声でこう言ってくれたのだ。

「謝ることないです。ディナーも、事情を話したら理解してもらえましたし。それに、今日は千明さんの誕生日なんだから。千明さんにとって良い日になれば、僕はそれでいいんです」

−やばい。グッときた。

後輩なのに。6歳も年下なのに。聖が伝えてくれる言葉は、これまで出会った男たちの、どんな甘いセリフよりも私の心に突き刺さる。

−優しさって、愛って、こういうことなんじゃないの…?

美人だ、綺麗だと崇められるより、高級料亭やラグジュアリーなリゾート旅行に誘われるより、ずっとずっと大切に思われている気がする。

私も、素直になろう。後悔する前に、欲しいものは欲しいと言わなければ。

そう決意した私は、もう謝るのをやめた。そして、電話の向こうの聖を自ら誘った。

「私、聖くんに会いたい。…良かったら、これから私の家に来ない?ディナーは私が手作りするわ」


▶NEXT 10月28日 月曜更新予定
最終回。一件落着、のはずが。美緒がもう一波乱を起こす…?

▶明日10月22日(火)は、人気連載『夫の反乱』

夫から溺愛され、好き放題にやってきた美人妻・めぐみ。最近夫の様子がおかしいことに気づき…。夫を大切にすることを忘れた妻の行く末は?続きは、明日の連載をお楽しみに!













東レデート
詳細はこちら >



関連記事

東京カレンダーの他の記事もみる

あわせて読む

主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

トレンド アクセスランキング

ランキングの続きを見る

トレンド 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る 動画一覧を見る

記事検索

トップへ戻る