「もう東京に戻りたくない」同僚の彼と楽しむ、誘惑的な大阪出張の夜

「もう東京に戻りたくない」同僚の彼と楽しむ、誘惑的な大阪出張の夜

―愛情か、それとも執着か?

幼い頃から、聖母マリアのような妻になりたいと願っていた、秋吉紗奈32歳。

しかし、彼女の運命の歯車は、航平からプロポーズを受け取ったときから狂いはじめる。

少しずつ蝕まれていく彼女の心。愛は時に凶器となり得る。

繰り返される心理戦、前代未聞の惨劇が今、はじまる。

♦これまでのあらすじ

会社の後輩・東航平(29)からプロポーズされ、幸せいっぱいの紗奈(32)。一方、以前から航平に想いを寄せていた今井美雪は、紗奈から婚約の事実を聞かされ、航平に対して動き始める。そしてついに美雪は、航平と一緒に大阪出張に行けることになった



その日の午後、紗奈は社内の打ち合わせがあり航平たちがいる上のフロアを訪れていた。打ち合わせ終了後、ついでに同期の志穂のデスクに向かった。

「志穂、ちょっといい?」

仕事中の志穂に声をかけると、彼女はパッと顔を上げた。いつもパンツスーツを着こなす彼女は、紗奈と違ってサッパリとした明るい性格をしている。

「あ、紗奈! お疲れさま」
「仕事中にごめんね、2次会の打ち合わせをする日を決めようと思って。今大丈夫?」

そう小声で切り出すと、志穂はニッコリと笑顔を見せて頷いた。

「うん、大丈夫。あ、でも、打ち合わせなら今井さんも一緒の方がいいよね」
「そうだね、もし美雪ちゃんも会社にいるなら予定を聞いちゃおうと思ったんだけど…」

紗奈はそう口にしながら美雪の席に目を向けたが、デスクに彼女の姿はなかった。予定表のあるホワイトボードに目を向けると、そこには「出張」という文字が書かれてある。

「今井さん、明日まで東君と大阪出張だから居ないんだよね」

志穂がさらっと口にしたセリフに、紗奈の体がピクリと反応した。

「え、美雪ちゃんも大阪出張なの?」

航平から出張に行くとは聞いていたが、美雪が同行する話は出ていなかった。ただ、大規模なイベントに出展してる企業と出資の商談が入っていると言っていただけだ。

―航平も、言ってくれても良さそうなのに…。

正直、2人のことが気になって仕方なかったが、どうしてこんなにも不安になるのか、自分でも理由がわからずにいた。

―まさか、何か起きるなんてないよね…。


航平と出張に行く美雪。彼女はその時間が何よりも愛しいと感じていた

その日の12時―。

東京駅から出発した新幹線のぞみは、あと10分程度で新大阪駅のホームに到着しようとしていた。金曜日でも指定席はかなり埋まっていたが、偶然にも横並びの席が取れ、航平と並んで座れることに内心美雪ははしゃいでいた。

「東先輩、今日の商談会うまくいくといいですね。担当の方がうちのWEBメディアに興味持ってくだされば出資に繋がりますし。成立すればかなりいい影響が出ますよね」

航平は開いていたパソコンを鞄に仕舞い、美雪の言葉に大きく頷いた。美雪が初めて目にする、新調したばかりであろうスーツが彼の意欲を物語っているように見える。

「今回の商談は決めたいね。この出資が決まれば、今井さんがやれる仕事の幅も大きくなるよ。もしこっちの商談が早く終わったら合流するよ」

新大阪までの所要時間は、2時間30分。2人きりで過ごせる貴重な機会だ。仕事の話がほとんどだったが、彼との距離を縮めることができたようで嬉しかった。

ーもっと、2人で一緒にいたい。このまま大阪に着かなければいいのに...。

そうは思っていても、楽しい時間はあっという間に過ぎる。気づけば新大阪駅到着の車内アナウンスが流れていた。

ジャケットを羽織り、新幹線が新大阪駅に到着する直前、ふと航平と視線が合った。目の前に立つ彼に、美雪は動きを止め、そのままじっと彼を見つめた。

航平は何事もなかったかのように視線を逸らして、手早くキャリーケースを手にした。しかし美雪は、彼の表情が変わったのを見逃さなかった。

「早く降りないと。出発しゃちゃうよ!」



航平のその言葉に、美雪はあえて返事をせず、沈黙したまま彼の横を歩きはじめた。

大阪に着くと、航平は商談会に向かい、美雪はアポを取っている新規の広告制作会社にそれぞれ向かった。


仕事がうまくいった日の夜。2人の関係はどうなる・・・?


美雪が梅田駅近くにある高層ビルで商談を終えると、もうあたりは暗くなりはじめていた。駅前のショッピングセンター上にある巨大な赤い観覧車がライトアップされ、賑わう大阪の夜を演出している。

航平に仕事が終わったことをLINEで連絡すると、ちょうど航平も終わったところで、“今天満橋からこちらに向かっている”という返信がすぐに来た。

まだ時間は17時過ぎ。最終の新幹線は21:23発だから、まだ時間は十分にある。美雪は事前に調べておいた和食屋のURLを航平に送信した。

「気になってるお店があるんですけど、一緒に行きませんか? 日本酒が美味しいって有名なところなんです」

すぐに既読になり、返信が来る。

「いいね!じゃあ、今日はそこで食べてから帰ろう」

先方との話がうまくいったのか、メッセージから航平の機嫌の良さが伝わってきた。今夜は2人だけでその嬉しさを共有できることに優越感を抱かずにはいられない。

駅前の喧騒を抜け、先に店に入って彼を待つ。

「お疲れさま。ごめん、待った?」

と言いながら、美雪がいるカウンター席の隣に彼がやってきた。

「とりあえず、ビール!」

航平は乾杯をしてすぐに一杯目のビールを美味しそうにクッと飲み干した。

2杯目から日本酒に切り替え、すっかり酔いの回った航平の靴先に、さり気なく自分のヒールのつま先を当て美雪はそのままぴったりと脚を寄せた。

「でもほんと、今井さんといると気持ちが前向きになるよ。本当に助かってる。ありがとう」
「...それは、仕事相手としてだけですか?」

「え?」と驚いた表情で、こちらを見つめてくる。すぐそこにある彼の瞳が大きく開いた。

美雪はそのまま視線を逸らさずに、グラスを胸の前で抱えるようにして、自分の鼓動を感じていた。

そして、しばらく黙り込んだあと、ようやく口を開いた。

「実は私...東先輩のことがずっと好きだったんです。紗奈さんと結婚するって頭ではわかっているんですけど、どうしても気持ちの整理ができなくて。二次会の幹事まで引き受けておいてこんなこと言うなんて、最低ですね...私...」

航平は真剣な面持ちでこちらを見ていたかと思うと、彼女の背中にゆっくりと手を添えた。

「そんなことないよ・・・」

美雪は自分の背中にある航平の手に触れた。そのまま自分の前に持ってくると、両手で包む。彼の手の平は美雪がわかるほどに熱い。

美雪の顔には、自然と笑顔がこぼれていた。


▶Next:11月15日 金曜更新予定
それぞれの思惑が交錯する中、結婚式の打ち合わせの日がやってくる…!


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