「私は、夫に見捨てられた女なの…?」夫に出て行かれた妻が、夫婦の危機を誰にも言えない事情

「私は、夫に見捨てられた女なの…?」夫に出て行かれた妻が、夫婦の危機を誰にも言えない事情

—女は、愛されて結婚するほうが幸せ。

その言葉を信じて、愛することよりも愛されることに価値を見出し、結婚を決める女性は数多くいるだろう。

めぐみも、夫からの熱烈なアプローチを受けて結婚を決めた女のひとりだ。

だけど、男女の愛に「絶対」なんて存在しないのだ。

好き放題やってきた美人妻・めぐみ(30)は、夫の様子がおかしいことに気づく。夫を大切にすることを完全に忘れてしまった妻の行く末は…?

◆これまでのあらすじ

仲直りしようと歩み寄るめぐみだが、言い争いになってしまい夫・弘樹が家を出て行ってしまった。夫、妻、それぞれの思いとは…?



「俺、離婚するかも」

弘樹の言葉に、その場が静まり返った。

平日のランチタイムにそぐわない、随分ヘビーな話題である。

今日は、定例のサッカー部同期の結婚式の二次会打合せのため、実咲と悠斗と『サングリア』に集まっていたが、弘樹はそんな気分にはなれず、開口一番切り出した。

「喧嘩、まだ続いてたの?」

シーンとなっていた空気を打ち破ったのは、実咲だった。

「そう。3日前に家を出て、今はホテル暮らししてる」

悠斗は「まじかよ」と驚いた様子だったが、「他人が口を挟めることじゃないからな」と呟いて、ランチにオーダーしたカレーに視線を戻す。

「色々考えて、やっぱりもう無理かなって。めぐみとは話し合いも出来ないし、俺と理想の家庭像も違うし…。もう一緒にいる意味がない」

肩を落としながら話し始めると、実咲が予想外の反応をしてきた。

「弘樹って、出世出来なそうだね」

「はっ?何が?」

唐突で、しかも失礼な実咲の物言いに苛立ちを覚える。

悠斗も彼女の言葉には驚いたようで、一触即発の空気を鎮めようと「実咲、何言ってんだよ」と仲裁に入った。

「色々考えたって言うけど、しっかり考えたとは思えないもん」

ばっさりと切り捨てる実咲の言葉に、弘樹は思わず耳を塞ぎたくなった。


不躾な物言いをした実咲の真意とは…?弘樹の心にも、これまでと違う感情が生まれるが…。

気になる世間体


「言葉が悪かったことは謝るわ。でもさ」

実咲は、一度そこで区切ってから話を続けた。

「弘樹ってメガバンクでしょ?離婚は出世に響くって聞いたことあるけど」

「それは…原因が不倫の場合とかだろ。俺の場合はそういうんじゃないし。今時、結婚してるか否かで出世が決まるわけない。時代遅れだよ」

声を荒げて反論しながらも、弘樹は内心ビクッとしていた。なぜなら、実咲の話は100%嘘だとも言えないからだ。

メガバンクは考え方が古い傾向にあり、結婚して一人前という風潮がある。だから皆、結婚が早く、早婚の男性の割合は他の業界よりも高いと言われているのだ。

その結果、転勤についても、既婚か未婚かで差が出てしまう。

既婚者は、家族も一緒に赴任出来るような地域、つまり都市部や、海外ならば先進国が多い。一方未婚者は、地方や途上国などを中心に配置される傾向がある。

一般的に、都市部や先進国の方がいわゆるエリートコースであり、そこでキャリアを積める。結婚していた方が、その道に近づける可能性が高いのは確かだろう。もちろん、仕事の能力によるが。

そして、弘樹自身、めぐみとの結婚を意識し始めた時、こういうことを考えなかったといえば嘘になる。

「こんな言い方したら悪いけど…、離婚って弘樹にもダメージあると思う。だから、現実的なことも考えて、仮面夫婦とか別居婚とか離婚しない選択をする人もいるんでしょう?」

実咲がまくし立てると、悠斗がたしなめるように割り込んできた。

「ちょっと言い過ぎじゃない?これは、弘樹とめぐみさんの問題なんだから。二人で決めるべきことだよ」

弘樹は、自分が離婚の話を切り出したせいで空気が悪くなったことに、気まずさを感じる。

「ごめん、俺がこんな話したからだよな。悪かった」

それだけ言うと、黙々とカレーを食べ続けた。

「ごめん、私そんなつもりじゃ…」

弘樹は、困り果てた顔で謝罪してくる実咲と目を合わせないようにして、すぐにその場を立ち去った。



−デメリットか。

仕事を終えた弘樹は、ホテルの部屋の眼下に広がる夜景を眺めながら、水をグッと飲み干した。

実咲の、歯に衣着せぬ言い方は不快だったが、言っていたことは間違ってはいない。

自分の社会的立場や周囲の目、これまで考えていなかったことが次々に脳裏をよぎる。

「もう別れるしかない」と考えていた弘樹にとっては、良い冷却作用のあるアドバイスだったのだ。

いよいよどうするべきか分からなくなってきて、頭を抱えていると、スマホの画面が光った。LINEの送り主は、実咲だった。

“今日のお昼は本当にごめん。謝罪したいから、会えない?”

夕飯はまだだった弘樹は、“軽く飯でも行こうか”と、返信した。


一方のめぐみ。友人と会ったことで、ある決意を固めるが…?

夫からの連絡


「いよいよかあ、楽しみだね!」

千春が、大きくなった樹里のお腹をなでながら話しかけている。

今日めぐみは、銀行時代の同期・千春と樹里と『オーパス』でランチをしている。樹里の出産前、最後に皆で会おうということになったのだ。

「夫は仕事が忙しいから、ワンオペだと思うと今から戦々恐々だよ…」

そういって不安そうな顔をのぞかせるが、めぐみの目には、幸せに満ち溢れているようにしか見えない。

−弘樹のこと、相談出来ないな…。

夫・弘樹が家を出て行ってから5日経過している。だが、めぐみはこのことを誰にも相談出来ずにいた。

本当なら誰かに全てを吐き出したいが、今は叱責されるのに耐えられるメンタルではないし、“夫に見放された妻”として哀れみの目を向けられるのも苦痛だ。

ましてや、この二人のように幸せ真っ只中という雰囲気の女友達に相談するのは、自分のプライドが邪魔をする。

これまで散々、「猛烈にアプローチされたから、仕方なく結婚してやったのよ」と豪語してきた。

結婚後も、"私がどんなにやりたい放題やっていても、夫からは愛されているの"という調子に乗ったアピールをしてきた。

正直に言えば、夫が出て行くなんて他人事で、妻側の努力不足で魅力がないのが原因とすら思っていた。

そんなめぐみが夫に出て行かれていたなんて、アイデンティティが崩壊する。

二人には相談しない、正しく言えば、相談出来ない。そう思い、そのまま時が流れるのを待った。



“俺が何で悩んでいるのかとか、考えたことある? 何一つ理解してないくせによく言うよ!”

帰宅し、リビングに戻っためぐみは、先日の弘樹の言葉を思い返していた。

弘樹との離婚を回避したいめぐみにとっては、自分の何がそこまで彼を激怒させ、家出させてしまうほどだったのか、早急に考える必要がある。

手抜きの家事?外出の多さ?ショッピングし過ぎ?

頭の中に、いくつもの?が浮かんでは消えていく。これだけ次々に思いつくということは反省点ばかりだが、どれも核心ではない気がするのだ。

−なんなんだろう…。

めぐみが頭を悩ませていると、スマホの画面が光った。ちょいと目をやると、そこには弘樹からのメッセージが表示されていた。

“明日の晩、帰る”

弘樹が帰ってくるとホッとしたのも束の間、続いて表示されたメッセージに背筋が凍った。

“少し長文になるけど、これから僕の考えを送ります。それを読んで、今後について考えて欲しい”

めぐみは、続くメッセージを固唾を呑んで待った。


▶︎Next:11月19日 火曜更新予定
弘樹から送られてきた、長文メッセージ。そこに書かれていたのは…?



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