女の知らぬ間に、元カレ同士が急接近…。2人の男が交わしていたヒミツの会話とは

女の知らぬ間に、元カレ同士が急接近…。2人の男が交わしていたヒミツの会話とは

男も女も、誰だって恋愛しながら生きていく。

だから愛するカレには、必ず元カノがいる。

あなたの知らない誰かと過ごした濃密な時間が、かつて存在したかもしれないのだ。

愛するカレは、どんな相手とどんな人生を歩んでいたのか――?

幸せ未来のため、相手の過去を知ることは、善か悪か。

あなたは、愛する相手の過去が、気になりますか?

◆これまでのあらすじ

29才の南美は、6才年上の恋人・数也がプロポーズを考えていると知り、幸せの絶頂にいた。だが同時に、彼の2度の結婚歴が気になり、1番目の妻・竹中桜、2番目の妻・福原ほのかそれぞれと密会する。

しかし数也には、3度の結婚歴があると判明。学生結婚した平木真穂とは交通事故で死別しており、遺族は数也を許していなかった。

そして数也との決別を誓った南美に、かつての恋人・拓郎から電話が来るが…。



「5年ぶり。元気にしてた?」

かつて南美の唯一無二だった男・拓郎は、電話の向こうで声を弾ませた。

「電話番号が変わってなくて良かったよ」

「番号変わってたとしても、どうせLINEで繋がってるじゃない」

まだ何も知らない高校生のころから、7年も付き合っていた相手だ。久しぶりだというのに、話し始めると南美もすぐに緊張がほぐれてしまう。

「俺からはLINEが繋がってるように見えるけど、そっちはブロックしたのかと思ってさ。だから電話にした。ははは」

何がおかしいのかわからないが、拓郎は笑った。

「良かったよ。とにかく繋がって」

「要件は、何?」

拓郎のペースに飲み込まれたくない。南美はあえて事務的に尋ねる。

「うん。そんなに話は長くならない」

拓郎は、急に声のトーンを落とした。

「口止めされていたんだけど、南美には伝えたほうがいいと思って」

「口止め…?」

南美は思わず聞き返す。何の話なのか、見当もつかなかったのだ。

すると拓郎の口から飛び出したのは、耳を疑うような言葉だった。

「藍沢さんって人が、俺に会いに来た」

「えっ……」

突然の拓郎からの電話に混乱した頭は、その話しぶりが懐かしくて一度は落ち着いたものの、今ふたたび混乱し始める。

「数也さんが?」

「そう、藍沢数也さんが『話をさせてほしい』と言って、俺のところに会いに来たんだ」

「なんで?なんで?」

南美はうわ言のように呟いてしまう。

生まれて初めての“ちゃんとしたカレ”だった拓郎のことは、人生二人目の“ちゃんとしたカレ”の数也には話したことがある。

だが名前を告げたことはない。接点はないはずだ。

なのに、なぜ数也は拓郎に会うことができたのか。そして数也は、拓郎とどんな話をしたのか。

「ヒデくんが間を取り持ってくれたんだ」

「ヒデくん…?え、秀人が?」

「そう。ヒデくんとはLINEで繋がったままだから」

大学時代のサークル仲間の秀人と、当時の恋人の拓郎は、南美を介して知り合い何度も遊んだ仲だ。特にバーベキューは大いに盛り上がり、そういえば二人はすっかり意気投合していた。

「秀人とまだ会ってたの?」

「いや、ヒデくんがテレビの仕事を始めてからは、そんなに会ってないかな。彼、忙しそうでさ。でも南美には内緒でたまに会ってたよ」

そして、そもそも南美が数也と知り合ったきっかけは、数也と行きつけのバーが一緒だった秀人だった。

秀人は、数也とも拓郎とも知り合いだ。つまり、二人を繋ぐことができるのだ。

「そうだったんだ…」

「数也さんと俺が何を話したのか、南美に伝えなきゃって思って電話した。数也さんには口止めされたから、絶対秘密にしてよ」

一体、どんな話をしたのか。南美は次の言葉を待ちながら、心臓が止まりそうになった。


数也と拓郎がかわした、秘密の会話とは…?

「丸2年の交際記念日に、南美と数也さんが別れちゃったって話は、数也さんから聞いた。その理由も全部聞いた」

拓郎の話によれば、たしかに数也はプロポーズする予定だった、という。

しかし南美が数也の過去を探るため元妻たちと密会していたことを知り、別れを告げた。ここまでは南美もよく把握している事実だが、あらためて聞かされると耳が痛い。

「数也さんは元奥さんたち二人ともに浮気されたから、自分のパートナーに陰でコソコソされることがトラウマなんだって言っていた」

「でも、それは数也さんのことが好きで…。好きだからこそ相手のすべてを知りたいと思って…」

南美は思わずそう返した。本当は一番、数也に言いたかったことだ。

「数也さんも、それは分かってると思う」

拓郎は、落ち着いて、と言わんばかりに優しく話し続ける。

「だから数也さんは俺を探したんだよ」

「…え…」

「数也さんも、南美のことを知りたくて、過去の男である俺に会いに来たんだ。南美に別れを告げててもなお、ヒデくんを通じて俺を探して、やってきた」

影でこっそり相手を探るような行動を最も嫌っていたはずの数也が、南美を理解するために、あえて南美と同じ行動を取っていたのだ。あまりにも意外すぎる話の内容に、南美は驚いた。

「その結果、『相手の過去を探ることは必ずしも悪くない』とか『安心した』とか言ってたよ」

「数也さんが、そう言ったの?」

「うん。そう、本人が言ってた。『拓郎くんと会ってみて、それを実感した』とも言ってた」

拓郎は、あはは、と笑って続ける。

「俺のおかげだぞ。褒めてくれよ」

そして拓郎は、柔らかい口調でこう言った。

「大丈夫。数也さんはまだ南美のことが好きだよ」

言葉にならない感情が、一気にこみ上げてくる。

“二人目のカレ”は知らないところで自分のことを想ってくれていた。そして“最初のカレ”は自分たち二人のことを想ってくれている。

「…今、泣いちゃってるでしょ?」

拓郎がいたずらっぽく笑いながら言った。

「泣いてない」

南美は、声が震えてうまく言い返せなかった。



「だから、ごめんね。数也さんの想いと勇気に免じて、俺が知ってる南美のことは全部正直に言わせてもらったよ」

「うん。いいの。ありがとう」

南美はそっと涙をぬぐう。

「感謝されるようなことじゃないけど。…それよりも南美には、ひとつ大きな不満があって」

口では"不満"と言いながらも拓郎の声は明るい。首をかしげる南美に、拓郎はこう続けた。

「数也さんと付き合う前に、俺のこと『死にました』って伝えたらしいね」

「あ」

「あ、じゃないよ、ははは」

拓郎は本気で責めているわけではないようだが、南美の顔はすっかり青ざめていた。

かつて数也に「初恋の相手はどんな人?」と問われて、お酒が入っていたこともあり、「死にました」と大げさに答えてしまったのだ。

その本当のところは、拓郎が南美に隠れて浮気三昧だったことから「私の好きだった拓郎はもう死んだ、と思うことにしている」という意味だった。

しかし数也は、最愛の人であり最初の妻だった平木真穂と死別していたこともあり、南美にシンパシーを感じたのだろう。その瞬間から態度が変わっていた。

その後、訂正できないままに数也と交際を続けてしまった。

真穂の存在を知らなかったとはいえ、南美は軽率なウソに罪悪感を覚え、謝罪したかった。愛する人を亡くした数也に対して、言うべき言葉ではなかった、と。

だが、それより先に数也は気づいていたのだ。南美の初恋の相手・拓郎はしっかり生きているのだということに。

「大丈夫。大丈夫。落ち込むことない」

拓郎は穏やかな声で南美をなだめ、心配を消し去ろうとしてくれる。

「数也さんは、ヒデくんを通じて俺に連絡をくれたときに、まず最初に言ったんだよ。『南美の発言がウソで良かった』って」

「……」

「『生きててくれて、ありがとうございます』とまで言われたぜ?」

数也は愛する人を亡くす悲しみを知っている。だからこそ、南美がその悲劇に直面しなかったことを安堵したのだ。

「たしかに俺と別れる直前、南美は『拓郎のことは死んだと思うことにする』って言ってたからね。それを思い出したよ」

「…ごめん…」

「謝るのは俺のほう。あのときは若かったんだ」

「…うん。拓郎は大人になったみたい」

「だろう?ははは」

ひとしきり大笑いしたあとで、拓郎は咳払いをする。

「とにかくさ、数也さんはいい人だよ」

南美は懸命に言葉を振り絞り、ぼそりと呟いた。

「…知ってる」

「良かった!知ってたか!ははは!」

拓郎は電話中、ずっと笑っているけれど、南美はずっと泣きたい気持ちだ。うれし涙とはちがう、優しい想いに包まれた高揚の涙だ。

「以上、幽霊からの御報告でした。じゃあね」

さわやかな空気を保ったまま、拓郎はあっさり電話を切った。

南美はしばらくスマホを持ったまま、その場から動けなかった。

そしてふたたび、あの6文字が目に飛び込んでくる。墨で書いた、南美の下手な字だ。

ー迷ったら走れ。


またしても南美は、走ってしまうのか。彼女がとった行動とは?

「いつかまた、連絡がくるとは思ってたけど、こんなに早いとは思ってなかったよ」

困ったような笑みを浮かべて、数也は言った。

表参道の骨董通り。付き合っていたころ、南美が数也と待ち合わせに使っていたいつものカフェ。

南美が「話をさせてほしい」とLINEで数也を呼び出すと、数也もすぐに応じてくれたのだ。

「拓郎から、いろいろ聞いたの」

「…やっぱ、そうかぁ…。なんだよ、口止めしてたのになぁ」

「拓郎が死んだってウソを伝えてたこと…本当に、ごめんなさい」

「いいよ。大丈夫。そんなことは…」

数也は、それよりも、と言って姿勢を正す。

「俺のほうこそ、本当は結婚歴が3回だったって言わなくて、ごめん」

「…うん…」

「もう南美もいろいろ知ってると思うけど、真穂は俺にとってやっぱり特別な人だったから…言いにくかった…」

「大丈夫。最初は混乱して悲しかったけど、今となっては数也さんの気持ちも、少しだけ理解できるようになったから」

「…そっか、ありがとう。でも、実は、俺もそうなんだ」

数也は目を伏せ、噛み締めるように言った。

「俺も、南美の気持ち、少しでもいいから理解したいと思ったら、勝手に体が動いていて…。それで拓郎くんに会いに行ったんだ。不安になったとき、人間は思いもよらない行動を取ってしまうんだって、自分でも驚いている」

「不安だったの…?」

「愛していた人間に自分から別れを告げたんだ。不安になるよ…。もっと言うと、怖かった…。自分の選択が間違っていたんじゃないかって迷い始めた」

迷ったら走れ。数也もまた同じ迷路で、もがいていた。

「でも…拓郎くんと会って、話をさせてもらって、本当に良かった。南美のことが少しは理解できた気がする。今になって何を言ってるんだって思うかもしれないけど、それが本心だ」

南美は、数也を理解したかった。そのために過去を探ったのだ。そして数也もまた、南美を理解したかったから過去を探った。

方法は遠回りであまりに不器用だったけれど、二人は同じゴールを目指していた。

ーでも…。あのことだけは…。

南美は、フーッと息を吐き、心を鬼にする。数也に、言おうと決めていたことがあるのだ。

「でもね、ひつとだけ、どうしても理解できないことがあるの」



「真穂さんのご両親とのこと」

南美がそう口にした瞬間、数也の表情が変わった。

「すごく悲しかったのは理解できる。でもご両親とまったく会わなくなったのは…どうしてなの?」

「……」

数也は、言葉を選びながら何度も話し出そうとしているように見えた。だがその都度、言い淀み、何も言わないまま時間だけが流れていく。

気まずい空気の中で、南美も下を向いたまま黙っていた。しかしとうとう耐えられなくなって、勢いよく顔を上げると、はっきりと告げた。

「これから一緒に会いに行こう」

「…え?」

「数也さん、私と一緒に真穂さんのご実家に行こう」

南美は、目を丸くする数也の手を取り、強引に席を立つのだった。


▶Next:11月24日 日曜更新予定
数也が愛した最初の妻、その遺族が明かす心情とは…。



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