女課長アリサ:“彼氏と自然消滅...?” 気付けば2ヶ月連絡していない、32歳キャリア女子の葛藤

女課長アリサ:“彼氏と自然消滅...?” 気付けば2ヶ月連絡していない、32歳キャリア女子の葛藤


「恋も仕事も順調」なんてあり得るのだろうか?

必死に仕事に打ち込んでいたらプライベートは疎かになり、

かといって婚活に精を出していたら、キャリアを追い求めることは難しい。

今日も働く女子達は、仕事とプライベートの狭間で自分らしい生き方を模索している。

大手証券会社で働く、野村アリサ(32歳)は、問題児ばかりが集まる丸の内本店・営業8課の課長に任命される。

これは「女課長アリサ」が、仕事と恋愛に悪戦苦闘しながら成長していく物語である。



AM5時45分。大手証券会社で働く野村アリサの1日は、朝の経済番組“Newsモーニングサテライト”と共に始まる。

今日が晴れやかなものになるか、どんよりしたものになるかは、昨晩のニューヨークのマーケット次第だ。

―午前中のアポは10時に六本木か...。それまでに提案資料を準備して、その前にあのお客様に電話して...。

身支度をしながら、いつも無意識に今日一日の流れをシミュレーションしている。

髪の毛を綺麗に整え、慌ただしくコーヒーを流し込み、セオリーのジャケットに腕を通す。家を出る前には必ず全身ミラーの前に立ち、心の中で静かにつぶやく。

―よし。戦闘準備完了。

アリサは、中目黒の自宅からオフィスへと向かう。

9月の期末を控えたその日、午前中の顧客訪問から戻ると支店長室に呼ばれた。

「まさか?」と心臓が早鐘を打つ。

支店長室のドアをノックして、緊張しながらドアを開けた途端、支店長の野太い声がした。

「おつかれ!ノムちゃん!」

ーノムちゃんって、何度呼ばれても職場にそぐわないな・・・

違和感を覚えつつ、支店長の前に腰かける。50代半ばの彼は、バブル時代を未だに引きずっているという感じで、明らかに一昔前の人間だ。

「今回の人事異動だけど、ノムちゃんに丸の内本店の営業課長の辞令が出たよ。おめでとう!」

―とうとうこの日が来た!

これまで、週末だろうと夜だろうと数字の為であれば迷わず顧客のもとへ駆けつけ、プライベートよりも仕事を優先させてきた。

その苦労を思うと、目頭が熱くなった。

「あ、ありがとうございます・・・!」

「入社10年目で管理職だったら、同期の中でも早い方じゃないかな」

心の中でガッツポーズをして、喜びを噛み締めていたときに支店長が水を差す。

「あれ?ところでノムちゃん、今、何歳だっけ?」

ー入社10年目って知ってるんだから、30過ぎていることくらいわかるのに。わざわざ聞くかな...

「32です」

早くこの話を終わらせたくて、淡々と応えるアリサに対して、支店長が食いついてくる。

「もうそんないい年なんだ。バリバリ仕事もいいけれど、そろそろ結婚した方がいいんじゃないの?」

セクハラやパワハラ発言を気にする人が増えたこのご時世に、社内には昔と変わらずハラスメント発言をあえて積極的にするおじさんが一定数存在する。

彼らは、ハラスメントだとか気にせずに、言いたいことを言う自分をカッコイイと思っている。殊に証券会社には数多く生息しているのだ。

「そうですね。そのうちに」

完全に面白がってこちらを見ている支店長に、アリサは表情を変えることなく答える。

「ノムちゃんも美人だからって、のんびりしない方がいいぞ。男なんて女は若ければ若いほどいいんだからさ」

正直、イラっとした。

―私をからかって面白がっている。動揺した私の顔が見たいに違いない。

「...そうですね。そのうちに」

もう一度そう言って、アリサは眉ひとつ動かさずに部屋を出た。

ハラスメント発言なんて、今に始まったことじゃない。

それなのに、今日は妙に胸がチクリと痛んだ。

付き合っている(はずだった)彼氏ともう2ヶ月以上連絡をとっていないことを、思い出したからかもしれない。


仕事に夢中になりすぎて、気づけば音信不通の彼氏。キャリア女子の抱える葛藤とは?

「仕事も恋愛も順調です!とか、一度でいいから言ってみたいわ…」

自席に戻ったアリサは、頭をくしゃっとかきむしりながら、誰にも聞こえない様な声で呟いた。



友達の紹介で半年前に出会った彼とは、仕事が忙しい事を言い訳にこっちから連絡をしていなかったら、あっさりと音沙汰なし状態になってしまった。

付き合い始めこそ盛り上がっていたが、振り返ればこの半年でデートした回数は両手で足りる程度かもしれない。土日も関係なく仕事を優先してきた結果がこれだ。

今回だけじゃない、今までだってずっとこんな感じだった。

―32歳にもなって、彼氏と自然消滅なんて、何やってんだろ・・・

でもなぜか、プライベートが上手くいかない時ほど、仕事では面白いほど評価される。

課長に昇進できたことは、顔がにやけてしまうくらい嬉しいのに。

真剣に結婚を考えられるような男性と付き合えていないこの現状に対する焦りが、喜びに水を差すのだ。

今まで、決してモテなかった訳ではない。顔だって、美人だと褒められることもある。

仕事が面白くて、この年まで仕事中心の生活をしてきた。

でも、決して結婚を諦めている訳ではない。

もはや夢物語にも思えてくるが、近いうちに自分の仕事を理解してくれる男性と巡り合って、いずれは子供も産みたいと思っているのだ。

―恋愛って、どうやって頑張るんだっけ?どうやったら結婚できるの?

仕事についてはやるべき事がクリアに分かるのに、恋愛のことになると何をどうやって頑張ったらいいのかさっぱりわからない。

脳裏には、数ヶ月前に母親が勧めてきた結婚相談所のことがぼんやりと浮かんでいた。


喜んだのも束の間、女課長アリサが配属された新部署は、お荷物社員の巣窟?

アリサの配属された新たな部署は、丸の内本店の営業8課だった。



初めて管理職となるアリサは、この本店内最下位の8課を担当させられることになったのだ。

営業担当者は常に数字を競わされ、管理職は課の成績を競わされている。

アリサが前任課長との引き継ぎをするため、初めて丸の内本店を訪れたのは、期末の1週間前だった。他の課は期末までの数字をつめており、戦々恐々としている。

しかし、その中で8課だけが場違いなほど穏やかな雰囲気だった。

その日の夜22時、課員が早々に帰宅した静かなオフィス。アリサと前任の課長は、顧客カルテを見ながら引き継ぎをしていた。

前任の課長は40代の男性で、理由は知らないが赴任してたった2年で札幌支店に異動することになった。若干くたびれた雰囲気はあるものの、どこか吹っ切れた様な清々しさも感じさせる。

「気になっていたんですけど、なんで8課だけ予算が大幅に少ないんですか?」

アリサは、この事実が不思議で仕方なかったのだ。

「ああ。去年までは結構出来る奴がこの課にいたんだけど、彼が1課に異動しちゃって。そいつが割といいお客さんを担当してたからさ。それからうちの課はずっと苦しい状況だよ。まあ、その分予算を下げて貰ってるんだけど・・・」

―エース不在の課なのね・・・。まあ、でも、そんなのはよくある事だし、想定の範囲内よ。

前任課長は、さらに脅すような言い方で続ける。

「その上、他のメンバーもなかなかキツイからねー。センスないのに目標だけは高い奴とか、そもそも全然仕事する気がない女子とか・・・はっきり言ってお前らなんか一生仕事できねーよ!って、毎日思ってたよ」

―課員全員が仕事が出来ないというなら、それは課長であるあなたの責任なのでは・・・?

確かにこれまでも、煮ても焼いても仕事が出来ない人をたくさん見てきた。会社なんて蓋を開けてみれば、8割方は仕事が出来ない人で構成されているはず。

でも、上司との出会いがきっかけで、見違える様に仕事が出来る様になる人もいるはずだ。

―だって、私自身がそうだったから。この課だって、私の力でなんとかしてみせるわ。

「野村さん、内心では私なら大丈夫と思ってるでしょ?でもね、なかなか苦労すると思うよ〜。この課」

意味深な笑みを浮かべてまるで「こちらの苦労をお察しします」とでも言いたげに、同情の眼差しで笑いかけてくる。

アリサは、この時まだ知らなかった。営業8課で今後待ち受けている困難を・・・。

そして、プライベートの充実は更に困難を極めていくのだった。


▶︎Next:11月29日 金曜更新予定
仕事の出来ない8課のメンバー達と対決。そして、アリサのワークライフバランスの行方は?



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