高級住宅街というイメージの強い「世田谷」。

そんな世田谷の街中に「裏グルメ」が多数存在するのをご存じだろうか。

食偏差値の高い世田谷住民をも虜にさせるこの裏グルメは、わざわざ足を運んで食べに行く価値があるものばかりである。

今回は、その中でも選りすぐりの6皿を紹介しよう。



『柴崎亭』の「ワンタン中華そば」¥950(税込)

〝美しすぎるラーメン〞。そう称される1杯が梅ヶ丘にある。行列が絶えない店として、つつじヶ丘に本店を構える『柴崎亭』が昨春、世田谷に2号店をオープン。早くもローカルの胃袋をつかんでいる。

箸を入れるのを躊躇するほど完成されたビジュアルは、「味はもちろん、それ以上に見た目もこだわる」というオーナーのこだわりゆえ。湯の中で踊る麺を箸で絡ませ、平ざるへと上げていき、整えるまでの流れはもはや芸術。

透き通ったスープからのぞく美しい麺に、女性客から歓声が上がることも少なくない。

だが、本当に驚くのは食べてから。ごろっと肉厚のワンタンから溢れ出る肉汁と、見た目からは想像出来ない濃厚な味わいのスープに、いい意味で裏切られる。

「今日だけは自分へのご褒美に」。普段は食事を節制している女性が、そう食べに訪れることも。リラックスムード漂う店内で、目も口も大満足の1杯と向き合う時間は至福のひとときとなること間違いない。



『Baker Bounce』の「ベーコンチーズバーガー」¥1,600(税込)

店内に満ちる肉が焼ける音とスモーキーな香りに、まず心が踊る。空腹で席に着き、今か今かと待ち焦がれる時間もまた、お決まりだ。

オーダーすべきは店の代名詞ともいえる「ベーコンチーズバーガー」。これを食べずして、この店を語ることはできない。

店で仕込む自家製のベーコン、3種類の異なる部位を手切りしたパテ、生トマトから作り出すオリジナルのケチャップとタルタル、そして鮮度を保ったレタス、玉ねぎ、トマト。

焼き方はもちろん、素材のすべてと愚直なまでに向き合ったオーナーが作り出すひと皿は、ジャンクというイメージとはほど遠い。

溶けたチェダーチーズとともに、それらを一体化させて味わうには、サイズが巨大ゆえ、大口を開ける以外にない。だから、ここでは皆、周りはお構いなし。真剣勝負とばかりにハンバーガーと向き合う。

昨今話題のグルメバーガーとも一線を画す職人のひと皿を求め、客は開店前から列をなす。テイクアウトは不可。ゆっくり店で味わう時間もまた、愛おしい。



『バーボン』の「バーボンライス」¥1,150(税込)

世田谷線上町駅から徒歩5分。〝ボロ市通り〞で知られる小さな商店街に、唯一無二のひと皿を出す店がある。創業40年を迎えた街の洋食屋『バーボン』。

懐かしさと温もりあふれる店内で、老いも若きも客が次々とオーダーするのが、店の名前を冠した「バーボンライス」だ。

元々は〝まかない〞だったというだけあり、見た目を取り繕うような素振りは一切ない。

だが、ハンバーグや玉ねぎ、チキンなど、具材はどれも誰もが好きなものばかり。さらにすり下ろした玉ねぎがたっぷり入った醤油ベースのオリジナルのタレが食欲を加速させ、気づけば無限ループへと突入している。

にんにくの香ばしさやほのかに光るスパイシーさも絶妙で、圧巻のボリュームながらも、不思議とペロリ。

近隣の体育会系の学生からも親しまれ、「無性に食べたくなって」と卒業後に訪れる人も多数。食後に付いてくるコーヒーが美味しいのも、元コーヒー専門店ならではだ。


コクが深いのにあっさりという二律背反!毎日食べたくなるカレーとは?


『タイカリーピキヌー』の「グリーンカリー」¥900(税込)

緑か赤か。タイカレーはいつもどちらをチョイスするか悩ましい。駒沢大学駅から徒歩3分に店を構える『ピキヌー』でもそれは同様だ。

だがここは、あえて「グリーンカレー」を推したい。なぜなら、野菜の旨み、食感を引き立てながら、最後の一滴まで「飲み干したい!」という欲望に駆られるひと皿など、他ではそうそう出合わないからだ。

その秘密はルゥを使用するのではなく、すべてスパイスとハーブから作られている点にある。あくまでも甘さはさりげなく、味わいはまろやかだけどさっぱり。

青唐辛子入りのナンプラーを少々かけたライスとともに味わうと、より辛さと香りが引き立ち、食欲は加速する。

ご主人が「毎日食べられる味を」と研究し尽くし、完成して約20年。ホールを担当する肌の美しい奥様を見れば、このひと皿の美肌効果は推して知るべし。

女性客でも気軽に入りやすい雰囲気もまた、世田谷らしいといえる。



『かっぱ』の「煮込み(並)」¥750(税込)

着席して15秒。あふれんばかりのひと皿が目の前に供され、間髪入れずに白米のサイズを聞かれる。

ものの1分で両者がそろうと同時に、客は黙々とそれを食べ進め、店主は無駄のない動きで入れ替わる客たちをさばいていく。

駒沢公園通りを1本、路地へと入った住宅街にある『かっぱ』。ここで、50年以上、変わることなく続く光景だ。

1950年の創業当時は居酒屋だったが、「煮込み」にハマる客が続出。開店10年ほどで1本に絞り、現在は三代目が店を守っている。

誤解のないように言っておくが、ここの「煮込み」には、一切モツは使用していない。牛のありとあらゆる部分を4〜5時間かけてじっくりと煮込んだ、純然たる「煮込み」だ。

味噌味の中にキリッと立った味わいをもたらすのは、ふんだんに使われている生姜である。躊躇せず、白米とともにかき込めば、もう最後まで止まらない。合いの手に最高な「漬け物」150円も忘れずに注文するべし。



『馬来西亜マレー』の「イスパハーニライス」¥1,230(税込)

駅前からにぎやかな商店街が続く祖師ヶ谷大蔵。

お目当ての店へは、その最奥を左に外れ、さらに閑静な住宅街へと突き進む。辿り着くのにスマホは必須だが、どこからともなくスパイスの香りが漂えば、目的地は限りなく近い。

オーナー夫婦の自宅1階で週4日限定で営業する『馬来西亜マレー』。まだ「バクテー」が一般的に知られるずっと以前から、独自でスパイスを調合し、再現していたという。

研究熱心なご夫婦の共作による独創的なメニューの数々は、常連さんでもその好みは分かれるというが、女性人気が高いのは「イスパハーニライス」。

バングラディッシュ産の紅茶の茶葉、「イスパハーニ」で肉を煮込み、スープにもふんだんに使っていることが名前の由来。

具材は素揚げした野菜と卵、そしてスープの中にひそむ豚の肩ロース。ホクホクの食感に優しい甘みのあるスープが溶け合い、一度食べ始めたら、スプーンを口に運ぶ手が止まらない。

世界でここにしかない、完全オリジナルの逸品だ。