大学生の印象が強い駒沢。しかし、コスパを求める学生は渋谷に流れるため、街には大人の雰囲気が漂う。

路地には、そんな大人に似合うレストランが点在。熟れた大人を満足させるレベルの高さは流石だ。



駒沢が誇る名ビストロは「世田谷にある意義」を常に問い続ける
『ビストロ コンフル』

初めて訪れる際は、少し心細くなるかもしれない。それほど、この店があるのは何もない裏道。だからこそ、温もりある灯りを見つけた瞬間の安堵感は格別だ。

そして、扉を開けた直後、「絶対に美味しい」を確信する、間違いないオーラが満ちている。パリのビストロをも感じさせるこの店は、いつもほぼ満席。



『コンフル』は開店してすでに10年以上。この事実だけで十分、実力は測れるが、黒板に書き出されたメニューを見ると「タルタル」や「ロティ」など、クラシカルな王道ビストロ料理がズラリ。

安定したラインナップで、ボリューム感も本場さながらだが、この店は「世田谷にある意義」を考えてきた。



たとえば、タルタルは酢漬けにした穂ジソを忍ばせて繊細な酸味を醸し、本国なら刻んだ生のニンニクを合わせるところ、ガーリックオイルに差し替えて、優しい味わいに。

「40代以上で近隣在住の人中心」という常連に愛されるべく、工夫を重ねてきた。



料理はオーナーソムリエの倉田俊輔さんを始めとするスタッフ全員で意思疎通を重ね、アイデアを出し合うことで「間違いない」空気を育む。こうしたワンチームが織りなす料理を皆、楽しんでいる。

恐ろしくなるほど、常習性の高いビストロだ。



家路の途中に心から寛げる馴染みの一軒を持つのが大人の嗜み
『ふじい de みのり』

駒沢公園通りから路地を西へ少し入ると、真っ白い長暖簾が清々しい、和食店が現れる。

カウンターでわずか10席という小体さだが、どこか懐かしく、温もりがあって、一度座ってしまうと抜け出せなくなる魔力がある。『ふじい de みのり』は福島・川俣シャモの専門店。



川俣は、店主・藤井勇二さんの故郷。地元の味を広めたいと2003年に創業した。駅から少し遠いロケーションだから、集うのは「地元の人ばかり」と藤井さん。

シャモと会津の地酒を求め、都心からの仕事帰りにひとりで訪れる女性も少なくはないという。「駅周辺と違って、公園の西側は本当に静か。その雰囲気を求めていらっしゃるんだと思います」。



オーダーすると、驚くほど機敏で、無駄な動きは一切ない。控えめな音量で流れるジャズも心地良し。

串焼きのシャモは思ったとおり、ブリンブリンの食感で旨みは濃厚。素朴な美味しさにホッとする。噛み締めながら、今日を振り返る。

都心と自宅との中継地点に、このような店がいつもある。それがこの街の奥深さだ。


ナチュラルワインを楽しめる店から正統派フレンチまで!今訪れるべき駒沢の人気店!


“アットホーム”が濃縮した一軒家バーで楽しむ夜
『ミャンカー』

まるで店主宅の夕食会にでもお呼ばれしたかのような心落ち着く空間がここにある。

大通りからほんの80mほど、路地を入り、向こう三軒、両隣が宅地というロケーションで「隠れ家感」を存分に感じる。窓から覗く、暖色に照らされた店内は、今宵も賑々しい。

築50年を超える物件を一軒家ワインバーに改装し、オープンしてからもうすぐ10年。舌の肥えた駒沢周辺の大人に、美食と寛ぎのひとときを提供し、愛され続けている。



「ナチュラルワインを楽しむ居酒屋」――ひと言で言うとこんな感じだろうか。

オーナー夫妻が太鼓判を押す各国のナチュラルワインを軸に、新鮮な野菜を中心とした創作料理を肴に楽しめる。



この店の定番「しらすと九条ネギの自家製つまみピザ」¥650。自家製焼きのりソースととろけるチーズが絶妙。



世界各国のナチュラルワインを350種類以上のボトルで備える。グラスワイン¥700〜は、赤白合わせて10種程度を用意。



カウンターを中心に話の輪が広がって、いつしか知らぬ客同士も盛り上がっているなんてのは、この店の日常風景だという。

駒沢に「ワインと料理がうまい別宅」をもちたいなら、この店の敷居をまたぐといいのかもしれない。



正統派のフレンチを日常的に楽しむ。それは、この街だから許される
『オーボナクイユ』

ガラス張りのファサードから覗く優美なシャンデリアの灯り。周囲に広がる暗闇に反し、自然と心は躍る。『オーボナクイユ』は駒沢を代表するフレンチレストラン。

オーナーシェフ田中俊資さんは青山『ブノワ』創設メンバーのひとりで、つまりは、あのアラン・デュカスの薫陶を受けた料理人。青山の開店時はソーシエ(ソース担当)だった。

独立は12年前だが、沿線で探して辿り着いた駒沢で「街と一緒に成長できる店」を目指してきた。そんな信念があったからだろう、ゲストの9割はリピーターで、界隈在住。

「『良い店だから人に教えたくない』と皆さんに言われちゃうんです」屈託のないシェフの笑顔を見ると、常連が抱え込みたくなる気持ちがよくわかる。



この日のメインは「骨付き仔羊」。ソースは軽やかでコク深く、肉はしっとり柔らか。

付け合わせの野菜もそれぞれが存分に持ち味を発揮している。



塊のまま包み焼きにし、取り分ける。岩塩はナチュラルな塩加減。

個々に応じて調理法を変える野菜も美味。料理はともに全5品のプリフィクスディナーコース¥5,500より。



マリネした金華鯖の炙り、ルッコラのクーリ。脂の乗った鯖を香り良く。



テーブルクロスにシャンデリアのインテリアだが、シェフの人柄も相まって流れる空気はカジュアル。

寛いだまま、正統派フレンチのフルコースが味わえるから、駒沢は楽しいのだ。