私たちはこれまでに散々、LINEやデートのHow toを学んできた。

しかし、やっとの思いでLINEやデートに漕ぎ着けても、失敗の可能性は常につきまとうのだ。

あんなに盛り上がったはずなのに、突然の既読スルーに予期せぬ別れ。 恋人同士になれたかと思ったのに、いつまでたっても一進一退を繰り返す関係性。そんな経験、無いだろうか?

男女の関係を次に繋げる方法を学ぶため、あなたに宿題を出していこう。

さて、今週の宿題は?



「ねぇねぇ、来週の土曜は何してる?映画でも行かない?」

日曜の朝。私は潤の部屋で、彼が脱ぎ捨てた洋服を畳みながら、来週の予定を確認してみる。

「来週土曜かぁ…ちょっと予定が分かんないなぁ。ごめん」

カーテンの隙間から差し込む朝陽に照らされ、潤の猫っ毛で細い髪は、さらにふわっとして見える。男性なのにずるいくらい肌が綺麗で、鎖骨のラインが美しい。

ぼーっとベッドの上で頭を掻いている潤に、私は畳み掛けた。

「じゃあ、次はいつ会える?今週金曜日とかは?」
「金曜は、会社の飲み会が入っていたような気がする」

いつも潤とは予定が合わない。いや、合わないのではなく、予定が見えないことが多くて計画が立てられないのだ。

こうして一緒に朝を迎えるほどの仲なのに、彼から本当に大切にされているのかどうか、不安は募るばかり。

冷たい水で顔を洗い終えると、私は洗面台の鏡に向かって小さくため息をついた。

「一体、彼は何を考えているのかな・・・」


出会ったときから全てが始まっていた、男女のカラクリ

宿題1:この時、男は彼女をどう見ていたか述べよ


潤と出会ったのは、新丸ビルの7階だった。金曜の夜は丸の内界隈で働く男女が集うため、出会いの場にもなっているのは有名だ。

そんな場所で、仕事帰りに同期と飲んでいる時に、友達と連れ立って声をかけてきたのが潤だった。

「お二人の職場は、近いんですか?」
「はい、すぐ近くです。お近くですか?」

いわゆるナンパというのだろうか。普段ならば声をかけられても相手になんてしないけれども、潤はとても爽やかで良い感じだ。加えてイケメンだったこともあって、私たち女二人はすぐに心を開いた。

結局この日は4人で二軒目にも移動し、大いに盛り上がった。そして解散間際に、また次も皆でご飯へ行く約束をしたのだ。

「今日はとっても楽しかったなぁ〜。こんなにも時間が過ぎるのが早いと感じたのは、久しぶりかも。次回も会えるの楽しみにしているね」

そう言いながら、私にニコッと微笑みかけてきてくれる潤。しかし決してお世辞ではなく本心で言っている感じがして、その言葉に私も嬉しくなった。

「私も。すごく楽しかった。また次回ね」

そしてその2週間後、本当に4人での食事会が『GARB 東京』で決行されたのだが、直前にエステへ行き、気合いを入れたのは言うまでもない。



「玲奈ちゃん、久しぶり。同じ丸の内勤務なのに、全然会えないね」
「本当だね。ちゃんと仕事、してる?(笑)」

ワイワイと盛り上がる中、ふと気がつくと、さりげなく潤は私の隣に座っている。

そして食事中も、何かと私に気をつかってくれていた。

「玲奈ちゃん、何飲む?」
「私はもう1杯ワインいただこうかなぁ」
「玲奈ちゃんってお酒好き?前の彼女があまり飲めない子だったから、一緒に飲める子って最高だよね」

同期もいるのに、潤は私にばかり積極的に話しかけてくるし、前の彼女の話まで引き合いに出して褒めてくれる。そして距離も近い。

—あれ?潤くんって、もしかして私のこと気に入ってくれてるのかな。

「潤くんは、何のお酒が好きなの?」
「僕もワインが好きだよ」
「そうなの?そしたら今度、ワインバー行かない?」
「いいね。いつがいい?」

いつの間にか、私たちは次のデートの約束もしていた。

—これって、順調に進んでいるってことだよね・・・?

トントン拍子に進む恋に、胸のときめきを抑えきれない。久しぶりに“好き”という感情が、私の中に湧いてきていた。


そして初デート!そこから関係は続いていくが・・・

宿題2:「初デートで手を出してこない=大切にされている」ってことでしょ?


約束通り私たちは、二人でデートをすることになった。

神楽坂にある『Les Picolos』はアットホームで、グラスワインを豊富に揃えた素敵なビストロだった。

「玲奈ちゃんって、どこに住んでいるんだっけ?」
「私は池尻大橋の方だよ。潤くんの家はこの近くなんだよね?」
「そうだよ。会社まで距離的には遠いけど、実は乗り換えなしで、東西線一本で通えるから便利なんだよね」
「神楽坂に住んでいるって、オシャレだよね。大人な男性って感じがする」

美味しい食事と共に盛り上がっていると、気がつけば私たちは結構な勢いでワインを飲んでいた。



1軒目を終えて近くにある別のバーへと移動したのだが、ふと潤が心配そうな顔をした。

「あれ。玲奈ちゃん、時間大丈夫?」

慌てて時計を見ると、もう12時を過ぎている。

「やっば…終電逃しちゃった」
「え?マジで?タクシーで帰れる?」
「いや、タクシーだと結構かかるからなぁ…」

ここからタクシーで帰るとなると、5,000円はかかる。深夜料金を考えるともっとするかもしれない。けれども、初デートで潤の家に泊まるのは微妙だ。

すると、迷っている私に向かって、潤は何かを察したようにこう言ってくれたのだった。

「・・・ウチ来る?」

潤からのオファーに、一瞬考える。初デートで家に泊まるなんて、軽い女にもほどがある。

しかし、続けて彼は意外な言葉を発した。

「大丈夫。手とか出さないから、安心して」

結局、その言葉を信じて彼の家へ行くことになった。

実際に潤は、帰るなりさっさと寝ようとしている。宣言通り指一本触れてこず、彼がソファーで寝て、私はベッドで寝たのだ。

これは遊び目的ではなく、大切にしたいと思われている証なのかもしれない。“本命には簡単に手は出さない”とはよく聞く話である。

でも、全く私に興味がない可能性もある。

「どっちだろう・・・」

彼の気持ちがわからないまま、翌朝私は眠い目をこすりながら自宅へ戻った。

だがどうやら私の予想は、前者の方が正しかったらしい。それからも潤は、私に会う時間を作ってくれたのだ。



初デートで泊まっても何もしてこなかったエピソードが物語っているように、彼は紳士だった。そして何よりも、優しい。

それからも二人で食事へ行き、ようやく結ばれたのは3度目のデートの後だった。

「ねぇ。なんで初めて泊まった時は何もしなかったの?」

彼の腕の中で、私はずっと聞きたかった疑問をぶつけてみる。

「何でって…それはダメでしょ」

それほど、私のことを大切に考えてくれていたのだろう。

遊びの女だったら、とっくに飽きて捨てられているはずだし、こんなに何度も会わないはずだ。

もしも体だけが目的だったら、初回からそういう関係になっていただろう。

「玲奈って、本当に優しいよね。ご飯も上手だし、絶対いい奥さんになるよね」
「本当?嬉しい」

ご飯を作ると、潤はすごく美味しそうに食べてくれる。泊まりに行くまでの関係にもなり、こうして家でご飯も食べる。

私の中ではもう完全に「彼女枠」なのだが、問題は、カップルらしいデートをしようと思ってもスルーされてしまうので、予定も立てられないことだ。私の苛立ちと不安は募るばかりである。

—どうやったら、もっと愛されているって実感が湧くようになるのかなぁ。

今日もマイペースな潤を見ながら、小さくため息をついた。


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“愛されている”女がしないこととは