懐石において八寸はフォトジェニックさで女性を喜ばせ、同時に旬の恵みが一堂に会する華やかな膳。

一方で、食材が勝負となる〆のごはんは男の胃袋を満たす。

いずれも、店の個性が表れる和食の見せ場なのだ。



旬の恵みが並び、卓上で春を知る瞬間
『乃木坂 しん』

『乃木坂 しん』の八寸は食べる者の舌と心を刺激する構成だ。

「熱々のものを必ず入れ、温度に変化を出しています。出汁で炊いたものもあれば、甘めのものも酸っぱいものもある。味わいにも抑揚が大事」と店主の石田伸二さん。

結果、海と山の食材が多彩に並ぶ八寸は、美しいのはもちろん、ひと口ごとに楽しい発見が続く。



そして、土釜ごはんでは店主の親戚から直送される徳島県産ヒノヒカリを使用し、春であればホタルイカとフキノトウが具材となる。

コースを通して素材の個性をストレートに伝える料理を提供するが、ごはんでも具材の風味を大切に味つけは控え目。

炊きあがってすべてを合わせた時、米はホタルイカを美味しく食べるための名脇役として人に口福を与えてくれる。



ひと口ごとに広がる多彩な味に心ときめく
『銀座 和久多』

木を多用した設えと、ほのかに薫る香におもてなしを感じる銀座8丁目にある『和久多』。

素材本来の美味を追求した正統派の懐石コースが魅力だ。八寸にはあわびや飯蛸、若鮎など、贅沢な食材をふんだんに盛り込む。

とくに素材の味がダイレクトに出る山の幸は、秋田産と京都産が外せないという。

「体に優しい味付けが基本。素材に合わせて冷感のジュレをかけたり、出汁の使い方を変えます」と、店主の亀山昌和さん。



〆の土鍋ごはんは、ふたを開けた瞬間の高揚感を大切に、海山の幸を必ず数種類は盛り込むのだとか。

彩りの巻海老をのせ、いい塩梅についたおこげの食感を楽しむ。店主自慢とあり、雅味で自然の恵みを感じられる。

贅を知り尽くした大人にこそ、味わってほしい。