「私、結婚できるのかな…」

見た目は悪くないし、モテなくない。これまでに、結婚しようと思った彼氏だっている。

「でも、どうして"結婚”には結びつかないの?」

そんな思いを抱える全ての女性に贈るストーリー。

◆これまでのあらすじ

2019年3月。占い師マダム・カミーリアに「3ヵ月で結婚させてあげる」と言われ、素直にミッションを実行し人生が好転し始める。そして、ビジネススクールで出会った徳山に心惹かれていく叶実。そんなとき偶然元カレに遭遇したのだった。



「おぉぅ、久しぶり!」

恵比寿駅前の駒沢通り沿い。聡は、驚いた表情をしながらこちらに向かってくる。

「ぅうん、ひ、久しぶり!」

7ヵ月ぶりに元カレと再会するというシチュエーションに叶実はびっくりしすぎて固まってしまう。

「なんだ、元気そうじゃん!」

そう言われて、叶実は慌てて自分の全身をチェックする。

―よかった…。今日は、綺麗にしておいて。

叶実と別れてから出会った彼女とスピード婚した元カレを前に、33歳で独身・彼氏ナシの自分はとても惨めに映るんだろうと思うがとりあえず、見た目だけは綺麗にしておきたい。

それに、「元気そう」という言葉が自分の中で、勝手に「前の恋を引きずっていないように見える」に変換されて、元カレを目の前にしながらも、こうして笑顔を作っていられるのだ。


結婚願望がない元カレがスピード婚した理由とは…?

「落ち込んでるって、友達から聞いて心配してたけど、そんな訳ないよな」

心の中の本音を微塵も出さないように、大げさに驚いたフリをする。

「やだぁ〜、そんなこと言われてたの〜?!」

「もしかしたら、知っているかもしれないけど、俺、実は結婚したんだよ」

「そ、そうみたいね、おめでとう!」

気遣いのない突然の発言に呆れるが、Facebookで聡の結婚を知ったことがきっかけで本気で婚活を始めたなんて言えない…。



次に何を言ったらいいのかわからなくなり、ずっと聞いてみたかったことを思わず口にする。

「結婚願望がないって言っていた聡が急に結婚って、何があったの?」

そんなに聞きたいなら話すけど、と前置きをしてから話し始めた。

「俺、彼女と付き合った時は、結婚なんて考えてなかったんだけど。ちょうど彼女のマンションの契約更新のタイミングだったから同棲する?って聞いたら、同棲するなら結婚したいって言われて…」

「うん」と口で答えながら、自分には同棲する?なんて聞いてもくれなかったと思うと、胸が締め付けられる。

「そして、この先もずっと一緒にいたいから結婚したいって。もし、あなたが仕事をできない状況になったり、病気になったりしても、私はあなたを支える。それだけの覚悟を持って、結婚したいって言っているのって熱弁されちゃって」

目の前にいるのが元カノだってことを忘れているかのように、聡は全てを話してくれた。

「正直、今までは、結婚って相手の人生を支えなきゃってビビっていたけど、相手の覚悟が見えると少しハードルが下がったというか、楽になったんだよね。それに、一生一緒に暮らすなら、自分の意見をちゃんと言ってくれる子じゃないと疲れるしね、って…、なんかごめん…」

気付けばノロケ話を披露していたことに気付いたのか、喋りすぎたことを謝ってくる。

「じゃ、そろそろ…俺、帰らなきゃ」

急に気まずくなったのか、聡が日比谷線の乗り口に向かう。

「そういえば、叶実はまだ千葉に住んでるの?」

「目黒に引越したんだよ」

「おっ、ついに一人暮らし始めたんだ!じゃ、元気でな」

そう言って、聡は駅の階段を降りていった。


元カレに本音を突き付けられ、叶実が思うこと

最後まで、なんとか笑顔でいられたと思う。

でも、聡が自分と別れて別の人と結婚を決めた理由を聞いて、多少のショックを受けた。

未練があるからじゃない。

「結婚したい」とは口で言ってるくせに、相手を思いやることなんてちっともせずに、考えてるのは自分のことばっかりだったことに気付いたから。

結婚だけじゃない。仕事で忙しい聡が構ってくれなくて喧嘩になった時も「言わないと分からない?」と言って詰め寄ったことも思い出した。

ーそりゃ、私は選ばれないよね…。

『あなたの人生を支える覚悟がある』なんて思ったことすらなかった叶実は、結婚に“進めた女”と“進めなかった女”の違いを思い知らされた気がした。



ー翌週ー

マダムの部屋を訪れ、いつものように紅茶を出してもらう。

「あの、今日は相談じゃなくて、実は、先週の土曜日に元カレに偶然会ったことを報告したくて」

「まぁ!あなた今、世界と通じ合っているわね。前進するのみよ!」

色々と突っ込みどころのある発言だが、元カレと別れた原因の話をした直後に遭遇するタイミングの良さから、良い流れが来ている、と言いたいのだろう。

「元カレが3ヵ月で結婚した理由を聞かされて、マダムの言う通り“察してちゃん”だったなって反省してます…」

自分で言っていて情けなくなり、だんだんと声が小さくなる。

「まだそんなこと言っているの?そんなの、確認するまでもないじゃない」

何がそんなに可笑しいのかと思うけれど、マダムはふふふっと笑って言うので、落ち込むのがアホらしくなる。

「そんなことより、好きな男に本音で勝負する準備できているの?」

きっとマダムに聞かれると思っていた質問に、叶実は自分の中で考え抜いた答えを力強く言った。

「はい、自分の想いをちゃんと伝えようと思います。恥ずかしいけど、33歳で付き合うなら結婚前提であることも隠さず伝えようって。もし付き合った後に、結婚願望がないって言われたら、もう心がくじけそうだし」

最後は自虐っぽくなってしまったけど、マダムは優しい笑顔になる。

「ヘレン・ケラーがね、『人生はどちらかです。勇気をもって挑むか、棒にふるか』って言っているの。プライドを手放せると前に進めるのかもしれないわね」

マダムの部屋からの帰り道、バッグに入れていたスマホが揺れたので確認すると、徳山からのLINEだった。

このタイミングの良さに、マダムが言うように『私、世界と通じ合っているかも』と思ってしまい、苦笑いする。

『こんばんは。あれから漫画を読み返しているんですが、なかなか止められず寝不足になりそうです』

ー食事のお誘いかと思ったのに…。

”肝心の”お誘いがなく、思わず「あ~ぁ」と声が出てしまった。

しかし、マダムの言葉が頭の中で響き、「よし!」と気合を入れ、文字を打つ。

『漫画さっそく読み返してるんすね!もしよかったら、木曜日のスクールの後、飲みに行きませんか?』

自分でも驚くほどの直球だけど、躊躇することなく送信ボタンを押した。


【マダム・カミーリアの9ルールズ】
ルール1 余裕が必要。引越しをしなさい。
ルール2 スペースを空けよ。身の回りの整理整頓をすること。
ルール3 行動せよ。“必要”と感じることは全ておやりなさい。
ルール4 自分に興味を持ってくれる男性とデートせよ。
ルール5 男性に求める事と求めない事を書き出せるだけ、書き出してみるの。
ルール6 相手を楽しませるコミュニケーション力をつけなさい。
ルール7 脱“察してちゃん”。本音で勝負すること。


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本音で勝負すると決めた叶実が、ついに徳山とデート!