男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

—果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「夫もしっかり手伝っていたのに、妻がある日突然家事を放棄した理由は?」という質問。さて、その答えとは?



「金輪際、一切家事は致しません」


夫である太一にそう宣言した瞬間、私の心はまるで五月晴れのような清々しい気持ちに包まれた。だがその一方で、太一は目を丸くして驚いている。

「え?春香どうしたの?体調でも悪いの?」

いつもだったら、食卓には私が作った美味しいご飯が並べられている時間だ。でも、今日はもちろん何もない。冷凍食品でもなんでも、勝手に作って食べればいい。

「ううん、すこぶる元気だよ。でも、私今日から何もしないから。金輪際、家事は一切致しません」
「へ・・・??」

帰宅した格好のまま、呆然と立ち尽くしている太一。私はその様子を見ながら、少し面白くなってきた。

「どうしたの、春香。大丈夫??」
「うん、私は大丈夫。ただ、そういうことだからヨロシク」

口ではそう言ったけれど、別にずっと家事を放棄するつもりはない。けれどもこの数日でいいから、太一に気がついて欲しかったのだ。

太一が意味する“家事”と、私の意味する“家事”が全く違うことに。


夫とは全く別の視点。日々募っていた、妻の不満とは!?

A1:献立を考えるのも一苦労。“何でもいいよ”じゃなく、何が食べたいかを考えて


太一と出会ったのは、仕事がキッカケだった。

当時私は、営業最前線にいた。仕事をしている私の姿に惚れてくれたのか、私の恋愛相談に乗るふりをして一生懸命仲良くしようとしている太一が可愛らしくて、いつの間にか心惹かれていたのだ。

そこからトントン拍子に交際、結婚まで駒を進め、今に至る。

もちろん、優しくて素敵な人であることに間違いはない。だが結婚すると、良い点も悪い点も目立ってくる。

「ちょっと太一、ゴミ出し忘れているよ?」

ある朝の事だった。いつものごとくゴミ出しを忘れる太一の背中を慌てて追いかけ、昨日のうちに“私がまとめておいた”ゴミ袋を差し出す。

「ヤベ、ごめん。忘れてた!!」
「も〜いつも忘れるんだから」
「ごめんごめん。じゃあ春香も気をつけて行ってきてね」

彼の中でゴミ出しは、“ゴミ袋をゴミ置場まで持っていくこと”のようだ。

でも実際は違う。ゴミを分別し、袋にまとめてまた新しいゴミ袋をセットする。

そこまで全てを含めて、“ゴミ出し”という。そのことを彼は知らないのだろうか。

「ちなみに太一、今日の夕飯何がいい?」
「何でもいいよ。って、ヤベェ遅れそう。とりあえず行ってきます!!」
「は〜い。気をつけて行ってらっしゃい」

ちなみに夫は、この事にも全く気がついていないようだ。

毎日ご飯を作る側からすると、その日の献立を考えることがいかに大変で、もはや重労働だということに。



献立がかぶらないように色々考えねばならないけれど、レパートリーだって底を尽く。毎日昼休みにInstagramで夜ご飯レシピを検索し、アイディアをひねってご飯を作るのはこちらの仕事。

だから、せめて献立のヒントくらい協力してほしいのだ。

結局“なんでもいい”と言われたので、言葉通り、その晩は唐揚げを作ることにした。

「うわぁ今日もうまそう!春香、ありがとう」

美味しい、ありがとう、はちゃんと言ってくれる。それだけでも、まだ救われていると思う。(この言葉さえなくなったら、もはや末期だと思うが)。

「献立考えるのが面倒だったから、また今日も唐揚げにしちゃったよ。肉続きでごめん」

さり気なく献立を考える億劫さをアピールしてみるが、太一は全く気がついていない。

「いやいや、唐揚げは俺の大好物だから!めっちゃ美味しいよ、これ。それに家では肉が多いから、魚はランチで食べるようにしているし大丈夫」

—肉ばっかりで悪かったね!!

小さな不満が、私の中では徐々に溜まっていた。

だがそんなタイミングで、これは一度お灸を据えないと分からないのだろうなぁ、と悟るキッカケがあったのだ。


夫からすると完璧だったはずなのに、妻がぶちぎれた行動とは?

A2:洗い物、洗濯をたたむこと…細々した作業全て含めて家事と言うんです!


そんなある日、太一と仲の良い田口夫婦が我が家へ遊びに来ることになった。自宅へ来客となると、朝から掃除をし、ホームパーティーに出すご飯の準備をしたり、飾る用のお花を買ったり、やることは山積みである。

彼らが来るのが昼過ぎの予定だったので、午前中のうちから色々と仕込みをしていると、隣にやってきた太一がニコニコとしている。

「そしたら、俺がメインを何か作ろうか?」
「え?太一が?いいの?」
「もちろん。俺の友達でもあるし」

だが、ここで問題が一つ発生する。メニューにはバランスというものがあるので、メインによって、副菜の内容を少し変えなければならない。

そのため太一が作るメインを聞いてから、私はまた適当にアレンジし直したのだ。

そして田口夫婦が到着し、しばらくすると太一が意気揚々とキッチンへと立ち始めた。

「え?太一が作るの?」
「すごいね!!料理してくれる旦那様なんて、羨ましい!!」

田口夫婦の賞賛を浴び、とにかく嬉しそうにしている太一。

調味料を色々引っ張り出し、キッチンに油を惜しみなくハネさせまくって、ステーキが完成した。

そしてそのメインをテーブルの真ん中に置き、彼のドヤ顏はMAXだ。

けれども、私はそれと同時に小さくため息をついてしまった。

太一が使い終わったキッチンは、調味料は全部出しっぱなし。お肉を切ったまな板と包丁も出しっぱなし。

そして肉を焼いたフライパンも、シンクに入れられることすらなく放置されていたからだ。



「ねぇ太一さんって、いつもこうやって料理してくれるの?」
「うん、まぁいつもって事でもないけど」

お肉を切った以上、早めに洗わねばならないまな板や包丁を洗っていると、アイランドキッチン越しから田口さんの奥様が話しかけてきてくれた。

「へ〜いいなぁ。太一さんもすごいね。って、春香さんも座って食べようよ」
「そうね、ありがとう。これ洗ったら行くね」

妻側は、分かっている。“料理をする”ということは、調理だけではなく、食材の準備や洗い物まで全てが含まれていることを。

そんな事に全く気がついていない太一は、ビールを片手に、自分の作ったステーキを美味しそうに上機嫌で頬張っている。

洗い物を終えて席へ戻ると、どうやら男性陣は出来上がっているようだ。

「でもいつもは春香がやってくれるけど、こういう日とか休みの日は家事を分担しているかな。春香も働いているしね」

この言葉に、思わずカチンときてしまった。

太一の考える“家事”とは、一体何を指すのだろうか。

料理をする行為だけが家事ではない。ゴミ袋を変えること、排水溝を掃除すること。

洗濯物だって、洗濯機のボタンを押せば終わりだと思っているようだが、それを出して、たたんで、指定の場所へ入れなければならない。(ちなみに、乾燥機に溜まったホコリを取るのも家事の一つだ)。

洗い物が終わった食器を、元にあった場所へ戻すこと。枕カバーやシーツを変えること。さらに言うならば、シャンプーやラップなどの備品が切れた時に補充すること・・・全部含めて、立派な家事なのだ。

—これは一度ボイコットをして、本人に全てやらせてみるしかないな。

そう思い、私はしばらく家事を一切せずに全部彼にやらせてみようと思ったのだ。


これで少しは、目に見えぬ家事も大変だということを、彼が分かってくれるのを願うばかりである・・・。


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食事中にボロが出た女