「この女、なんかムカつく」って思われるほど、羨望される存在になりたい…

結局、自己アピールの上手い「あざと可愛い女」が主人公の座につくのが世の常

真面目に生きてるだけじゃ、誰かの引き立て役にしかなれないのだ

そんな自分を卒業し、『人生の主人公』になるために動き始めた女がいた…

◆これまでのあらすじ

失恋のショックから立ち直るため、オンライン婚活パーティーに参加した夏帆。しかし予想以上に手強い女性達を前に、上手なアピールをすることができず落ち込んでいた。そんな彼女に、一通のメッセージが…?

▶前回:「好きな男のタイプは…」オンライン婚活で目立つ、モテ女の当意即妙な回答とは?



朝、会社でメールチェックをしていると、見慣れない企業名が目に入る。

―これ、昨日のオンライン婚活パーティーの…?

件名には「1件のメッセージが届いています」と表示されている。記載されたURLにアクセスすると、メッセージの発信者は「祐平」となっていた。

―祐平さん…ウソでしょ!?

参加者男性の中で最もタイプだった、外資系コンサルティング会社に勤務している29歳の祐平。彼に対して上手にアプローチできなかったことを悔やんでいたが、まさか彼のほうから連絡が来るなんて。

急いで開いたメッセージには、昨日のお礼と、祐平のLINE IDが記載されていた。

半信半疑のままラインを送ると、すぐに既読が付き、レスが返ってくる。仕事そっちのけで2〜3通やりとりを交わし、早速今週の金曜日に食事をする約束まで取り付けた。

夏帆はそのスピード感に驚くと同時に祐平とデートができることに心躍らせていた。


祐平とのデートに向けて、気合十分な夏帆だったが…。彼の真意を知ってショックを受ける!?

木曜の夜。

夏帆は一人暮らしをしている中目黒のマンションで、パックをしながら明日のデートに着ていく服を選んでいた。クローゼットから取り出した服を鏡の前で合わせては、なかなか決まらないコーディネートに頭を悩ませている。

ふと、以前淳太との食事会に着ていったボルドーカラーのタイトワンピースが目に入る。シックなデザインのそれは、淳太の隣に並んでも見劣りしない女になりたいという一心で購入したものだった。

―淳太さんは今頃、悠乃と一緒に居るのかな…。

幸せそうな2人の姿を想像するだけで、夏帆は胸が苦しくなる。

若手経営者として活躍を期待される淳太と、大学時代はミスコンにも選出された美しい悠乃。悔しいが、誰が見てもお似合いのカップルだ。

夏帆は、淡い水色のトップスを手に取る。シフォン素材で、胸元にはリボンがあしらわれた可愛らしいデザインだ。

―地味なタイトワンピースより、こっちのほうがモテ路線だよね。

ボルドーカラーのタイトワンピースを端に寄せる。明日はこれを着ていこうと決めて、クローゼットをそっと閉じた。



金曜19時@赤坂

定時ちょうどに退社して、会社ロビーの化粧室で念入りにメイクを直す。全身鏡で何度も自分の姿をチェックしてから、祐平との待ち合わせ場所へと向かった。



華金といえども、決して騒がしくない赤坂駅前。

待ち合わせ場所が見えてくると、グレーのスーツに身を包む長身の男性が目に入った。彼は誰かと待ち合わせをしている様子だ。

「あの、祐平さんですか…?」

恐る恐る近づいて声をかけると、男性は一瞬驚いたような顔をした後、すぐににこやかな笑みを浮かべた。

「夏帆ちゃん?今日は来てくれてありがとう。じゃあ、行こっか」

小さな顔、端正な目鼻立ち。オンラインで見るよりもずっと魅力的な彼に、夏帆は惚れ惚れとした。

しかし。

「えっ、ここですか?」

なんと連れて行かれたのはゴージャスな外観のマンションだった。いきなり部屋に連れ込まれるのかと思い不安に思っていると…。

「今日ここで、友達のバースデーパーティーがあってさ、と言っても少人数だけどね」といいながら最上階のゲストルームに連れて行かれた。

「お、祐平。お疲れ!」

広びとしたリビングルームには、既に数名の男女が居た。出張シェフも呼んでいてテーブル上には色とりどりの料理が並べられていた。

男性はいかにもといった感じで、女性はモデルのような美女。

呆気に取られる夏帆をよそに、祐平は当然のように空いていた席に座る。

―え、何これ。どういうこと…?

状況が全く理解できないまま、取り敢えず祐平の隣に腰掛ける。

「えっと…祐平さん。これはどういう…?」

「僕が一緒によくつるんでる仲間なんだけど。今日はこいつの誕生日だからさ。いきなりで申し訳ないんだけど、ニコニコしてくれてたらそれで良いからさ。タクシー代も出すし」

―え…?それって要するに盛り上げ役ってこと?デートじゃなかったの!?

祐平の言葉に、夏帆は大きなショックを受ける。

タクシー代は出るし、料理も美味しそうだし「ま、いっか」と自分に言い聞かせ、その場に残ることを決めた。


デートだと思ったのに、接待要員としてパーティーに連れて行かれ…

「じゃあ次、AKB歌いまーす!」

食事会が始まって1時間ほど経過し、夏帆はすっかりいつもの引き立て役になっていた。

女性は夏帆の他に2人。皆美人なだけでなく、話し上手で感じが良い。

夏帆がカラオケで盛り上げている間に、彼女たちはすっかりお気に入りの男性たちと話し込んでいた。

主役の男性と楽しそうに話してるあの子は、今度ゴルフに一緒にいく話でもりあがっている。祐平と話しているモデル風の美女は、熱くサッカーの話で盛り上がっている。

「あ、これ美味しいから食べたほうがいいよ〜」

そんな中、夏帆は料理を丁寧にとりわけ配り歩いている。そんな自分が情けなくなった。

―サラダなんて配らなくても、カラオケなんて上手く歌えなくたって男性と楽しく話すことができれば本当はそれだけで十分なのに…。

賑やかさを増す部屋の中で、まるでスタッフのように動きまわる自分は何のためにここにいるのかわからなくなった。祐平とのデートを楽しみにしていただけに、一層この状況がいたたまれない。



楽しそうに笑う彼らを後目に、夏帆はふと大学時代の自分を思い出した。

“可愛いから”と飲み会に呼ばれて行っても、同じようにサラダを配り歩いていた。

こういう場で上手く立ち回る女性達に目を向けると、見えていなかったものが見えてくる。

居心地の悪さを誤魔化すように、手元のシャンパンを飲み干す。「良い飲みっぷりだね」と笑う祐平に対し、曖昧な笑みで返した。

「今日はありがとう。オンラインパーティーで夏帆ちゃんと話した時、こういう場所で上手くやってくれる子だろうなって思ったんだよね。気が利くし、歌もすごくうまいんだね、びっくりした」

こういう時に何か気の利いた一言が言えたらな、と思いながらも続く言葉は出て来ず、会話はそこで終了した。



帰りのタクシーの中で、夏帆は窓の外の景色を眺めながら物思いに耽っていた。

最初こそ、接待要員として自分を利用した祐平に対して苛立っていたが、後半はそんなことも忘れるくらい、いつもの引き立て役になってい自分と向き合うのが辛かった。

こんなふうに落ち込んだ時、いつも頭に浮かぶのは淳太の顔だ。

携帯を取り出し、淳太のトーク画面を開く。悠乃と付き合ったことを告げられたあの日を最後に、やりとりは止まっていた。

―LINEするくらい、良いよね…?

夏帆は「元気ですか?」とメッセージを打ち込み、送信ボタンを押す。既読が付くのを見届ける前に、携帯をバッグにしまい込んだ。


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彼女が居る淳太に、ついLINEを送ってしまった夏帆。次回、淳太から悠乃の話を聞かされ…。