2020年のプレ花嫁達は、この状況下で不安を抱えながら準備に励んでいる。

「この気持ち相談できる友達が欲しい」

そんな想いが通じ、運命的に出会った2人の花嫁、紗理奈とアヤ。

……ところが、「あの子が羨ましい」 互いの距離が近づけば近づくほど、比べ合うのが女の定め。

結婚式準備を通じて変化していく女の友情の行く末は……?

◆これまでのあらすじ

結婚式まで残り1ヶ月を切った紗里奈とアヤ。しかし、本番間近に紗里奈のゲストから相次いで欠席連絡が届き、挙げ句父親まで式に出ないと言い始めた。果たして2人は無事本番を迎えることができるのか?

▶前回:「スマホが振動する度にドキッとする…」結婚式まであと3週間の女が恐れている、ある連絡とは



―結婚式まであと2週間―

「ねえ、式に出ないってどういう事なの!?なんで?」

「結婚式には行かない」と突然言い始めた父をかれこれ1週間も毎日電話で説得し続けている。理由を聞いても、頑固な父は「行かない」の一点張りだった。直接顔を合わせて話すことができず、電話越しなのがもどかしい。

「一緒にバージンロード歩くの、楽しみにしてるって言ってくれてたじゃん…」

今日も行く行かないの押し問答を繰り返して早1時間。ジッとしていられなくてiPhoneを耳に当てたまま意味もなくリビングと寝室の間を往復してしまう。

ふと、上京する際に父と揉めた過去の記憶が蘇ってきた。

高校時代、東京の大学に合格し上京することが決まった時だって。あの時も父は“ダメだ”の一点張りだった。母の説得で最終的には折れてくれたものの、家を出る日までずっと父は仏頂面で不機嫌だった。

理由も言わず、急な出席拒否発言に苛立つ紗里奈は、トントントンとネイルを施した爪でダイニングテーブルの角を叩いてしまう。

「………から」

すると、耳を澄まさないと聞き取れない音量の声で、父がボソッと一言呟いた。

「え?」


出席したくないと言い張る父親の意外な言い分とは?

「…リハーサルビデオを見て、不安になったから」

「……は、はい?」

予想もしていなかった答えに唖然としてしまう。

「…お辞儀の仕方から手の動きまでイチイチ指示が多くて気に食わないんだよ。それにお前の手を取って男に渡すというのも、いけ好かない」

「な…なにそれ。そんな事で!?」

たしかにこの前、ベールダウンをする母と、バージンロードを一緒に歩く父の予行練習代わりになればと思って、式場から借りたリハーサルビデオを実家に送ったばかりだった。

「“そんな事で?“じゃない。お前も子どもを持てばわかる…」

拗ねたような口調でそんな風に話す父親を初めて見た。思わず笑ってしまうと、「だから理由なんて言いたくなかったんだ」と不貞腐れた声が聞こえてくる。

「…お父さん。私はお父さんに来て欲しいよ。バージンロードを一緒に歩くのは、私の夢でもあるから」

そう言うと、父親は電話越しで押し黙ってしまう。

ープツッ

そして、そのまま電話が切れたことを知らせる機械音が耳に響いたのだった。



結婚式まであと1週間となった、11月中旬の週末。

「ふぅ、これで全部運び終わったね」

ホテルのブライダルサロンに紗里奈と陽介は、持ち込み品であるプチギフトや衣装小物、ウェルカムグッズ、CD等をせっせと搬入していた。

荷物の引き渡しが終わると、ようやく肩の荷が降りた気がして大きく伸びをしてしまう。

「せっかくだしロビーラウンジでお茶してから帰らない?」

陽介の提案により、ホテルのラウンジに立ち寄り、少し休憩することになった。

「……あれ、紗里奈ちゃん?」

聴き慣れた声がして振り返ると、アヤとアヤのご主人が手を繋いで立っていた。

話ではよく聞いていたが、お互いの夫と直接対面するのは初めてだ。諒太郎さんは眼鏡が似合う背の高い人で、いかにもインテリな雰囲気を醸し出している。

アヤ達も同じタイミングで、ホテルに音源のCDを持ってきたらしい。何となくそのまま相席する流れになった。



もうすぐ本番を迎える結婚式のこと、大変だった準備の話など…同じ境遇で共通点の多い4人なので話題は尽きず、時間はあっという間に過ぎていく。

「そういえば、紗理奈ちゃんのお父さんって来てくれることになったの?」

「そうなの〜!ひと安心だよ。でも、また直前になって心変わりするかもしれないからわからないけどね」

紗理奈もアヤも、ここに至るまでたくさんの問題に直面し、乗り越えてきた。2人の表情はいつになくスッキリしている。

「“カッコいいお2人に憧れている、羨ましい”といつも紗里奈が話していたので、今日はお2人にお会いできて光栄です」  

陽介がそう言うと「それはこちらもですよ」とアヤの夫である諒太郎が反応した。

「“紗里奈ちゃんのとこは、仲がよくて理想の夫婦像。ホント羨ましい”といつもアヤが言っています」

紗里奈とアヤはそれぞれの夫の言葉に苦笑いして、思わず顔を見合わせたのだった。

“隣の芝生は青い”とは、こういう事を指すのかもしれない。

アヤ達と別れ、家に帰る車の中。後ろの席に積んでいた荷物が掃け、急に広くなった車内にて、紗里奈はここ数ヶ月の出来ごとをゆっくりと思い返していた。

アヤを羨み、豪華な式にしたいと見栄を張ったり、夫の浮気疑惑に落ち込んだり…先の見えない情勢の中不安を抱えながら行う結婚式準備は辛いことも多かった。

―でも…なんだかんだ、振り返ると総じて楽しかったかも。

心地よい車内の揺れを感じながら、紗里奈は穏やかな気持ちで助手席のシートに身を預けたのだった。


そして、結婚式を無事迎えた2人の花嫁たちは、新たな未来に立ち向かう…!?

アヤ:「これからも、この友情関係がずっと続くと良いな」


年が明け2021年1月中旬。

「アヤちゃん、久しぶりだね♡元気だった?」

新年会と称してアヤと紗里奈は、東京ミッドタウン2階の『ノック クッチーナ ボナ イタリアーナ』でランチする約束をしていた。

店で再会するなり、口元を隠すように覆っていたベージュのマフラーを外し、脱いだマックスマーラのコートを素早く椅子に掛けた紗里奈は、「もう待ちきれない」といった様子でアヤの近況を聞いてくる。

「うん、無事式も終わって、安心する気持ちが大きいかな。あとは赤ちゃんが無事生まれてくるように願うばかり」

そう言ったタイミングで、ポコンと赤ちゃんがお腹を蹴る感覚がして、アヤは優しくお腹をさする。

「男の子は胎動が激しいっていうけど、本当その通りだわ」

検査のタイミングでいつも“見えないような体勢“を取っていた赤ちゃんだったので、ずっと性別不明だったが、式が終わり7ヶ月検診の際、ようやく男の子だと判明した。

「男の子かぁ、アヤちゃんに似たイケメンが生まれるね!」

そこからはアヤの妊娠生活や、お互いの式の話で盛り上がった。カメラマンが撮ってくれたという紗里奈達の撮影データを見せてもらうと、同じホテルで挙げているのに全く違う場所のように見えてとても新鮮だ。

「やっぱり紗里奈ちゃんのお父さんも泣いたか」

ふと、“紗里奈が花嫁の手紙を読み上げた時の光景”を切り取った写真に目が留まる。

「うん…。一時はどうなることかと思ったけど、何とか式に来てくれてよかったよ」

2人とも温かくて充実した式が挙げられたと満足していた。これまでの出来ごとを振り返りつつ、共に苦労を労いあう。

「なんか、結婚式準備自体が夫婦になってから初めての共同作業であり、試練なんだなぁって実感したよ」

大袈裟かもだけど、と前置きして紗里奈が言った言葉にアヤも頷く。

「たしかに。大変だったけど、私も諒太郎と、結婚式準備を通して本当の意味で夫婦になれた気がする」

「うんうん。正直、こんなご時世じゃなかったらって何度も凹んだし、悩んだけど…今挙げたからこそ気づけたこともたくさんあったな。アヤちゃんと出会えたのも“今”プレ花嫁だったからだし♡」

満面の笑みでそんなことを言う紗里奈につられて、アヤも笑顔をこぼす。

紗理奈と自分を比べて落ち込んだり妬ましく思ったりしたこともあったけれど、同じ試練を乗り越えた者同士、いつの間にか2人の間には友情が芽生えていたのだと実感する。



「それでね…これからは、同い年の子どもを持つ母親同士仲良くしてくれたら嬉しいな」

紗里奈が発した思いがけない言葉に、アヤは驚きのあまり数秒間グラスを持ったまま固まってしまった。

「ウソ!紗里奈も妊娠したの!?おめでとう!」

そして次の瞬間、歓喜の声をあげたアヤに、嬉しそうに頷く紗理奈。

「まだかなり初期だけどね。つい最近、妊娠してることが分かって、予定日は8月22日なの」

紗里奈の良いニュースにアヤも嬉しくなり、頬が緩んでしまう。

「子ども同士、公園で遊ばせたりしたいなぁ♡同じ学校に入っちゃったり?」

「気が早いけど、子どもの教育について色々考え始めてるの。お受験させようか、インターに入れるのがいいのかとかね」

早速張り切っている紗里奈に、アヤも驚きながらも大きく頷く。

「うちもよ。早いうちから対策するのが良いって聞いたから、インターのプリスクールに入れようと思って、今色々調べてるところ」

「わー!そしたらぜひ、また色々と情報交換しよう♡」

これからも長く続く女の友情と明るい未来を想像する2人の女の瞳は、キラキラと輝いている。

女同士の友情は、ライフステージが一緒であれば、お互い刺激し合いながらも、こうして続いていくものなのかもしれないー。


Fin.


▶前回:「スマホが振動する度にドキッとする…」結婚式まであと3週間の女が恐れている、ある連絡とは


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