「金で買えないものはない」

愛だって女だって、お金さえあれば何でも手に入る。男の価値は、経済力一択。

外資系コンサルティング会社に入った瞬間、不遇の学生時代には想像もつかなかったくらいモテ始めた憲明、34歳。

豪華でキラキラしたモノを贈っておけば、女なんて楽勝。

そんな彼の価値観を、一人の女が、狂わせていくー。

◆これまでのあらすじ

愛する恋人・麻子のために、総額250万のプロポーズをした憲明。だが、彼女の答えはまさかの「NO」。放心状態の憲明だったが…?

▶前回:運命の女は、金で買う。プロポーズに250万つぎ込んだ男が見た地獄



「げっ…」

帝国ホテルのスイートルーム。

部屋に入った憲明の目に飛び込んで来たのは、100本の真っ赤なバラの花束だった。

予定では、人生で一番ロマンチックな夜になるはずだった今夜。麻子のために準備しておいたが、今となっては無用の長物だ。

憲明は、慌ててゴミ箱に花束を投げ入れるが、100本の花束は想像以上に重く、大きい。

当然ゴミ箱に収まりきらず、鉢植えのように綺麗に飾られる形となった。

−なに、綺麗に咲いてるんだよ!

バラに罪はないが、嫌味の1つでも言わないとやってられない。

ジャケットを乱暴に脱ぎ捨てた憲明は、広々としたキングベッドに倒れこんだ。

そうそう。今日のために新調したこのジャケットも、プロポーズを断られた忌々しい記憶を蘇らせるだけだ。二度と着たくない。

ベッドに寝転ぶと、疲れがどっと押し寄せる。非常事態発生で、体も脳もクタクタに疲れきっていたのだ。

スマホにちらりと目をやるが、麻子から連絡がきている様子はない。

「ああ、むかつく。何なんだよ!」

スマホをソファに投げつけた憲明は、そのまま目を瞑った。


静かに帰宅すれば良いものを、1人スイートルームに泊まることになった憲明。そのワケとは…?

不要なお迎え


遡ること30分前。

「私はここで。本当にごめんなさい」

クルージングを終えた麻子は、足早にタクシーに乗り込み、その場を立ち去った。

憲明は呆然と立ち尽くすことしか出来ない。

プロポーズを断られるという非常事態が発生し、放心状態だったのだ。

だが、ここで待っていても麻子が戻ってくるわけはない。さっさと帰ろうと足早に立ち去ろうとした時、「お客様」と呼び止められた。

目の前には、ド派手なリムジンが停まっている。

−そうだった…。

すっかり忘れていたが、宿泊先・帝国ホテルまでの道のりも豪華にしようと、リムジンをチャーターしていたのだ。

スーツに白い手袋をした運転手が、恭しくドアを開ける。

1人でリムジンに乗るなんて予想もしていなかったが、自分で予約した手前、帰ってくれとは言えないし、ここで白を切るわけにもいかない。

「どうも。よろしく」

憲明は、精一杯の強がりで涼しい顔をして、颯爽とリムジンに1人で乗り込んだ。



「麻子!?」

うっかり眠ってしまっていた憲明は、ピコーンというスマホの音で飛び起きた。

もしかして思い直してくれた麻子から、いい返事が来たのかもしれない。一縷の望みを持ってソファに駆け寄り確認したが、麻子ではなかった。

“おい、報告がないぞ”

“憲明と麻子の写真、見せろよ!”

大学のサークル仲間とのLINEグループに、次から次へとメッセージが増えていく。

最悪だ。あんなに高らかにプロポーズすると宣言した自分が悪いことは分かっているが、今は放っておいてほしい。

「空気読めよ!」

憲明は、イライラする気持ちをスマホにぶつけて、電源を強制的に落とした。

−ああ、何か強い酒でも飲まないとやってられない。

ウィスキーを、クッと飲む。飴玉を舌で転がすようにとか、舐めるようにチビチビと飲んでいる場合じゃない。やけ酒だ。

勢いに任せて飲んでいた憲明だが、15分もすれば頭がズキンと痛み出した。普段、格好つけて飲める風を装っているが、実は大して酒に強くない。

ふらふらする足元で冷蔵庫にミネラルウォーターを取りに行く。

キンキンに冷えた水を喉に流し込むと、一瞬だけ酔いが覚めたような、そんな感覚に陥った。

「うううう…」

だが、それも一瞬の話。すぐに頭が痛み出す。これ以上飲むと大変なことになることは目に見えている。

憲明はミネラルウォーターを大量に飲んで、ベッドに横たわった。


やけ酒した憲明。当然翌日は二日酔い。そんな彼にフツフツと湧いて来た感情は…?

悲劇からの悲劇


「頭痛いな。うう、気持ち悪い…」

翌朝。

目を覚ますと、体が鉛のように重い。頭だけではない。全身の倦怠感で起き上がるのも億劫だ。

ふと窓の外に目をやると、爽やかな秋晴れが広がっていた。

−はあ…。

一晩寝たら、昨晩の悪夢が記憶の中から綺麗さっぱり消えていないだろうか。昨夜はそんなことを考えたが、そんなことはない。

むしろ、突然のことで混乱していた昨晩と違い、“プロポーズを断られた”ことが、現実に起こった出来事として、やけに冷静に思い出された。

「最悪だ」

体に鞭打ってどうにか起き上がった憲明は、朝食を取ろうと、ルームサービスのメニューを手に取ったが、すぐに閉じた。

案の定、スクランブルエッグの文字を見るだけで気分が悪くなってしまうほど、ひどい二日酔いだったのだ。

自分のせいだと分かっているが、元はと言えば、全て麻子のせいだ。怒りがフツフツと湧いてくる。

思い出せば思い出すほど、腹が立つ。そういえば麻子は、「ごめんなさい」を繰り返していただけで、その理由を言っていない。

憲明も放心状態だったのでその場では追求しなかったが、理由も言わずに断るなんてあんまりだ。

それに、あれだけ豪華なプロポーズを断るなんて、一体何様のつもりなんだ。

スマホを手に取った憲明は、怒りに任せて麻子に電話をかけた。



土曜日のランチタイム。

『オーバカナル銀座』のテラス席は、賑わっていた。

憲明は、今か今かと麻子の登場を待っていた。説明責任があるはずだと、急遽彼女を呼び出したのだ。

「ごめんなさい…」

ついに麻子が現れた。昨晩と同じセリフを発する彼女に、憲明は嫌味ったらしく、「謝罪するなら説明してくれ」と、突き返した。

「…だから、本当にごめんなさい」

頭を下げる麻子を前に、憲明は昨晩から溜めていた怒りをついに爆発させた。

「何様のつもりなんだよ?理由も言わずに、プロポーズ断るなんて。

あれだけ豪華なプロポーズを準備するのに、どれくらいの時間とお金がかかったと思う?

あーあ、時間もお金も無駄にしたっ!」

憲明は、勢いに任せて罵詈雑言を口にしてしまう。

麻子は、「だからその…。申し訳ないとは思ってるの」と、涙声で発するとすぐに言葉を詰まらせた。

そんなしおらしい態度が、憲明の怒りを買い、火に油を注いだ。昨晩自分のことをメタメタに傷つけておいて、なんで泣いているのかさっぱり分からない。

「ほかに男でもいたのか?なに、俺はお財布要員だったんですか?

麻子のこと信じてた俺がバカだったんだな」

「違う。どうしてあなたは…」

麻子が言葉を続けようとした時、憲明のスマホが鳴った。画面には、見知らぬ番号が表示されている。

仕事の電話だろうか。休日にまで電話してくるなんて一体誰だと、憲明が応答すると、電話越しに女性の声が聞こえた。

「古谷様の携帯でしょうか?」

「はい」

一体何が起きたんだ。そして誰なんだと、憲明の胸はザワザワと騒ぐ。

「不正利用!?」

電話越しの女性が話した内容に憲明は思わず席を立って叫んでしまった。

その電話はクレジットカード会社からで、憲明のカードが不正に使われている可能性があり、カードを停止したというのだ。至急確認してほしいという。

オペレーターに言われるがまま、慌てて最近の履歴を一つ一つ確認していく憲明。だが、怪しいところは1つもない。

「そうですか…。突然利用金額が莫大になったので、ガード機能が働いただけのようです。大変失礼いたしました」

彼女の言葉に、憲明のこめかみがピクッと動き、視線が麻子に向けられる。

カード停止の原因は、麻子だ。250万も一気に使ったせいだ。再び怒りが湧いてきた憲明は、電話を切ると同時に麻子に喧嘩をふっかけた。

「この前のプロポーズにかけたお金がデカ過ぎて、カード会社に不正利用だと間違えられたんだけど。どうしてくれるんだよ!」

「えっ…」

言葉を失う麻子に、憲明は追い打ちをかける。

「総額250万ですけど」

すると彼女は驚いたことに、「今すぐには無理かもしれないけど。いずれ私が払えば許してくれる?」と、想定外のことを言ってきた。

憲明は、力強い麻子の視線を前に、モジモジと目をそらすことしか出来なかった。


▶前回:運命の女は、金で買う。プロポーズに250万つぎ込んだ男が見た地獄

▶︎Next:10月27日 火曜曜公開予定
追い討ちをかけるような電話にぶっ倒れそうになる憲明。その内容とは一体…?


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