女の幸せは、チヤホヤされること?貢がれること?

いいえ。私の幸せは、そんなんじゃない。欲しいものは自分で勝ち取るの。

「若くたって、女だって、成功できるんだから。私にかまわないで」

これは、銀座の一等地でランジェリーショップを経営する、勝気な女社長の物語。

◆これまでのあらすじ

祖母のお墓参りの帰りにふと見つけた画廊。入り口に飾られた絵画に惚れ込んだメイコは、その作者であるコウタと一緒にランジェリーを作りたいと思い立ち…?

▶前回:「彼との出会いに興奮して…」同棲中の彼氏をフッたばかりの女が、魅力的な男の前で取った行動



約束の17時まで、あと少し。

メイコは表参道のカフェ『uni』で、コウタからの電話を待っていた。

今朝までは、俊也と別れたことへの後悔で頭がいっぱいだったが、今のメイコは高揚感に満ちている。

着替え直してきたバレンシアガのシャツワンピース。そして、赤いルージュ。

辺りには、そこはかとない存在感が漂っているはずだ。

そんなメイコの目の前に広げられたノートには、新作ランジェリーのラフ画が描かれていた。コウタの作品を見た瞬間から「こんなデザインの下着を作ってみたい」という案がいくつも浮かんだのだ。

―うんうん。これ、きっと人気出るわ!

メイコは溢れる笑顔を隠すように、コーヒーカップに口をつけた。

コウタという才能との出会いが、暗くなりかけていた自分を明るい世界へと導いてくれる感じがしている。メイコはうっとりと目を閉じて、コウタの顔を思い出した。

少し眠たそうな目に、フワッとした髪。

その姿は、彼の描く絵に通ずるものがあった。

メイコの周りにいるビジネス界隈の人間とは、確実に異なる何かを持っているコウタ。彼がいったいどんな人なのか、メイコは気になって仕方ない。

その時、スマートフォンが震える。…午前中に登録したばかりのコウタの番号からだった。


コウタが指定した場所は、まさかの…?

「あ、もしもし。本庄さんですか?」

メイコが電話に出ると、少しオドオドとしたコウタの声が聞こえてきた。

透き通るような、少し高い声。

「ええ。個展、終わりました?」

「はい。すみません、ちょっと遅くなってしまって」

メイコは思わず首を横に振りながら「いいえ」と笑った。そして「これから、どこ行きましょうか?」と尋ねる。

するとコウタは、メイコの予想していなかった答えを返してみせたのだ。



「よかったら、僕の家に来ませんか?」

その言葉に、メイコは「えっ!?」と素っ頓狂な声をあげる。

「いや!よかったら、です。僕の自宅、アトリエも兼ねているので…」

メイコはそれを聞いて、自分が少し早まった想像をしてしまったと思い、頬が熱くなった。

「あ、ああ…。じゃあ、ぜひ」

メイコがそう言うと、コウタはホッとしたように笑って「カフェの前まで、車で迎えに来てるんで出てきてください」と言う。

慌てて外に出ると、そこにはコウタの運転する車が止まっていた。

メイコは、助手席にまわってドアを開けてくれるコウタを見ながら、不思議な気持ちになる。

―なんか、この人には全然危険を感じないかも。

メイコは女性を弄んだり、騙したりするような男をたくさん見てきた。だからこそメイコは、コウタから醸し出される安心感に、ホッとするのだった。



コウタの自宅兼アトリエは、目白にあった。

白い壁の大きな家に、広い庭。

「…あれ?ご実家だったんですか?」

メイコが焦って聞くと、コウタはふわりと笑いながら「違います」と言う。

「今は海外にいる師匠の持ち家です」

「し、師匠…」

ビクビクしながら玄関に足を踏み入れると、すぐ向こうには大きなリビングが広がっていた。広々としたリビングには、コウタが描いたと思われる絵画があちらこちらに転がっている。

「すみません、散らかりっぱなしで。ここ、座ってください」

苦笑しながら、コウタはカッシーナのソファを指差した。メイコはそのソファに腰を沈めながら、改めて部屋をグルリと見渡す。

「うわあ…。私、あの絵が好きです」

メイコが指差したのは、様々な濃淡のターコイズブルーで描かれたデザインの絵。

コウタはそれを聞くと、嬉しそうにその絵を抱えてメイコの前に持ってきた。

「これは少し前に瀬戸内海を見に行って、その記憶から描いたものです」

その絵を見て、新作ランジェリーのラフ画のことを思い出したメイコは、カバンからノートを取り出してコウタに見せた。

すると、そのラフ画を見たコウタがデザインに近い作品を次々と持ってくる。そうこうしているうちに、気づけば小1時間が経過していた。

―あれ、もうこんな時間?彼といると、時間が過ぎるのが早く感じるかも。

「今日、すっごく楽しいです…!コウタさんの部屋に来てよかった」

メイコがそう言うと、コウタはニコリと微笑む。そして唐突に「あ、そうだ!」と言って立ち上がった。


その後コウタが放った、衝撃の一言

「本庄さん、お腹空きました?」

その言葉にメイコがうなずくと、コウタは「一緒に蕎麦打ちしませんか?」と笑った。

全く想像していなかった展開に、メイコは「えっ?」と大きく目を見開く。

「今朝、ちょうど出汁を取ってたんです。それで、せっかくだから今夜は蕎麦にしようと思ってて。…ちょっと時間かかるけど、どうですか?」

そう言ってはにかむコウタに、メイコは全身で新鮮さを感じていた。



「いただきます!」

食卓には一緒に打った蕎麦と、コウタが自分で漬けたというナスときゅうりのお漬物が並んでいる。

「うわあ…。美味しいです!」

一口すすると、思わずうっとりとしたため息が出るような、香ばしい蕎麦の香りが鼻に抜ける。あまりにも美味しくて、横にいるコウタに微笑みかけると、彼も満足そうにうなずいた。

「本庄さん。僕も今日、とっても楽しいです」

「…ねえ、コウタさん。実は私たち、同い年なんですよ?」

まだ少しよそよそしいコウタにメイコがそう明かすと、コウタは「ええ?」と拍子抜けした声を出した。

「すごいしっかりしてるから、僕の方が絶対年下だと思ってた…」

コウタはようやく緊張がとけたようで、ホッとしたように笑った。

「ねえ、それって褒められてます?」

いたずらっぽくメイコが聞くと、コウタは首をブンブンと縦に振った。その子どもっぽい仕草に、メイコは思わず吹き出す。

「だって僕、いろんな人に子どもっぽいって言われるんです。いつまでも成長しないねって」

「私はそのままでいいと思う。私のいる世界には、コウタさんみたいな無邪気な人って1人もいないもの」

「…そう言ってもらえると嬉しいです」

コウタはそう言った後、きちんと座り直してこう言った。

「仕事、一緒にしましょう。やってみたいです。あとメイコさんのこと、もっと知りたいっていうのもあります」

メイコは、カッコつけたり取り繕ったりしないコウタのまっすぐさを、尊く感じた。

「そうだ。今日のお礼に、ひとつ絵を」

コウタはそう言って、両手におさまるくらいの真っ白なキャンバスに絵を描き始めた。そうして10分もしないうちに差し出されたその絵には、大きな花が描いてあった。

「メイコさんのイメージです」

恥ずかしそうに、はにかむ笑顔。メイコは心臓がバクバクと音を立てるのを感じた。



その夜の帰り道。

タクシーに乗り込んだメイコは、コウタからもらったばかりのキャンバスを、車内でもずっと眺めていた。

そして、その絵を見つめながら考えるのは、コウタのこと。

―いったいこの先に、どんな未来が待っているんだろう。

キラキラとした想像の中で、5年間も一緒にいた俊也の影がビックリするくらいに消えているのが分かった。


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コウタの絵を使った新作下着で、ひと騒動が…。


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