―もしあなたが、 ”善人の顔をした悪魔”と仲良くなってしまったら…?

世の中には、こんな人間がいる。

一見いい人だが、じわじわと他人を攻撃し、平気で嘘もつく。そうして気がついた時には、心をパクッと食べられている…

そう、まるで赤ずきんちゃんに出てくるオオカミのように、笑顔の裏には激しい攻撃性を隠しているのだ。

◆これまでのあらすじ

結衣は、ユリアと一緒に参加した食事会で、健人と良い感じになる。しかしそう思っていたのは結衣だけだったようで…?

▶前回:「皆の前で、恥ずかしいコト言ってごめん…」男たちとの食事中に、女が逃げ出したくなった理由



「え?今なんて…?」
「ごめんね。結衣ちゃんって、健人さんのことちょっと狙っていたよね?」

イケメンハイスペ経営者の飲み会から二週間後の土曜日。

その日はユリアと一緒に、私の知り合いと食事する予定があったのだが、ユリアの提案で、少し早めに会ってお茶をしていた。

しかし、呑気にソイラテを飲もうとしていた私は、ユリアの言葉に驚いてしまった。

健人に関して言えば、私が狙っていた…というよりも、彼の方から積極的に来てくれていた。それなのにユリアから突然、彼女と健人がデートをしたことを聞かされたのだ。

「なんか、健人さんが“どうしてもユリアちゃんに会いたい”ってプッシュがしつこくてさ…結衣ちゃんが狙っていることも知っていたんだけど。ごめんね」
「ううん。それは健人さんの意思だし、ユリアが謝ることじゃないよ!」

そう笑顔で答えたけれど、実はガッカリしていた。

何よりも腹が立つのは、あの食事会で会ってからほぼ毎日、健人から連絡が来ていた点だ。ついさっきだって、他愛もない会話だがLINEが入っていた。

—何よ、健人さん。二人同時進行していたのか…

ショックを受けながらも、これが現実だから仕方ない、と自分に言い聞かせていた。


果たしてユリアの言っていることはどこまで本当なのか…??

「結衣ちゃん、相手にしてもらえない健人さんのことは忘れて、次の出会いを探したら?」

神宮前のペルー料理店『bépocah』へ向かいかながら、ユリアから背中を押される。

「そうだね…。でもユリア、良かったね」

そう言うのが精一杯だった。結婚願望のない彼氏と別れてから、ようやく巡ってきたチャンス。健人さんのことを良いなと思っていたのも事実だ。

けれども、人の気持ちはどうしようもない。もう諦めよう。

今日はこの後、ユリアも交えて、男友達との食事なのだ。私は気分を切り替えてお店のドアを開けた。



「じゃあ次郎さんの会社は、六本木なんですね」

今夜は、私の学生時代からの友人であり、現在は大手外資系証券会社に勤めている次郎が主催してくれた、“結衣を慰める会”だった。

二人きりもなんだし…ということでお互いの友人も連れてきたのだが、次郎が連れてきてくれたのは、有名な老舗メーカー勤務の幸太だった。

「あれ?幸太さん?」
「え?ユリアちゃん…??」

どうやら二人は顔見知りだったらしい。世間の狭さを認識しながらも、4人でさっそく乾杯をする。そしてお料理のオーダーを済ませたタイミングで、正面に座る次郎がニヤニヤと話しかけてきた。

「で、何。結衣振られたの?(笑)」
「ちょっと次郎、相変わらずハッキリ言うねぇ〜。まぁでもそうなのよ。次郎は?最近彼女は?」
「いいなと思う子がいたんだけど、上手くいかなくてさ」

こうしてお互いの恋愛話をざっくばらんにしていたが、私はふと気がついた。幸太とユリアは顔見知りのはずなのに、あまり話をしていないのだ。

「幸太さんの会社はどこにあるんですか?」
「僕は浅草の方なんです」
「じゃあお住まいもそちらの方で?」
「いえ、家は番町の方にありまして…」

そんな話をしていると、次郎が横から入ってくる。

「あ。今度さ、幸太の別荘行かない?お祖父様の代から葉山にすごい別荘を持っているんだけど、最高なんだよ」
「何ですか、そのセレブリティーな響きは…」

その瞬間だった。さっきまで静かだったユリアが、急に早口で話し始めたのだ。

「葉山っていいですよね。私はそこまで詳しくないんですけど、葉山に別荘がある田中さんって分かります?あの企業の社長の。私はそこまで仲が良い訳ではないんですが、一度別荘にお邪魔したことがあって…….」

そういえば前回の食事会でも、ユリアはこんな風に、いきなり早口になって話し始めたことを思い出す。

—ん……?

いつも自信満々な彼女が、急にへりくだって“私はそこまで…”を連発し始める。妙な違和感が、私の胸をかすめた。


コロコロと変わる女の態度。その背景にあるものとは…??

オオカミ少女。


そして気がつけばユリアはますます早口になり、ずっと一人で喋っている。まくし立てるような彼女に気圧されて、私は呆気に取られていた。

—さっきからずっと、ずいぶん熱く語ってるけど…そんなに葉山が好きなのかしら…?

少し怪訝に思っていると、突然ユリアが私の方を向き直った。

「今度みんなで幸太さんの別荘に遊びに行きたいです!ね、結衣ちゃん?」
「え?う、うん。そうだね。葉山の別荘とか素敵ですよねぇ」

ユリアの勢いに引いていた私だったが、その直後に彼女が放った意外な言葉に、ハッとした。

「結衣ちゃん最近ちょっと元気なさそうだったから、心配だったの」
「えっ…」

「ね。結衣ちゃん。少し遠出して、パァっと気分を晴らそうよ!気分転換も大事だし」

ユリアはそう言って、優しく微笑んでいた。

そうだ、私は落ち込んでいる場合ではない。積極的に自らが動かなければ、出会いも恋も、何も進まないのだ。

結局2時間半くらいでこの会は終了し、飲み足りなかった私たちは二人で飲み直すことにした。

「結衣ちゃん、私こうやって男性と食事した後に二人で飲める時間が大好き♡」
「そんな。ユリア、こちらこそだよ!」

ユリアには、不思議な魅力があると思う。

時々、理解できないような言動をする彼女のことを、私は少し恐ろしくなることがある。なのにこうして天使のような笑顔で甘えられると、まるで魔術にかかったかのように、違和感も警戒心も、一瞬にしてかき消されてしまうのだ。

「ユリア、今日は付き合ってくれてありがとう。あの幸太さんって人、お勤めのメーカーの跡取りなんだねぇ。だから落ち着いていたんだね」
「ううん、こちらこそ今日は呼んでくれてありがとう。楽しかった!」

女同士になり、私たちは互いに仕入れた情報をシェアして盛り上がっていた。ところがユリアは、いきなり眉をひそめた。

「でも結衣ちゃん、幸太さんって人は辞めておいたほうがいいと思う」
「え?何で??」
「実は前に、あの周りのグループと一時期遊んでいたことがあって。結衣ちゃん、気をつけた方がいいかも。彼らって育ちがいいから、中途半端な…というよりも、彼らのコミュニティー外から結婚相手を選ばないの。育ちが悪いと結婚できないから」

あれくらいの御曹司になれば、それくらいの縛りはあるだろう。私は適度に相槌を打ちながら、ユリアの話を聞く。

「あとさ、話もつまらなくなかった?葉山の話とか自慢げだったし。何か幸太さんって、男としては見られないよねぇ…」
「そうかなぁ。あまり気にならなかったけど、私鈍感だから気がつかないのかも」

そんな話をして、この日は解散したのだ。

しかしその翌週、私は驚くべき真実を聞くことになる。



「あれ?結衣ちゃん?」
「あら?幸太さん!」

それは、クライアントとの打ち合わせがてら麹町の方へ行った時のこと。駅に向かって歩いていると、偶然、幸太とバッタリ会った。



「そっか、幸太さんのご自宅、番町の方ですもんね!」
「そうそう。地元なんだ…それより結衣ちゃん、前回はごめんね、つまらない話しちゃって」

人の良さそうな幸太が、申し訳なさそうに謝っている。しかし一体何のことか分からず、私は首を傾げた。

「え?何のことですか?」
「いや、ユリアちゃんからあの後連絡が来て。前回の食事の際に、僕の葉山の話とか自慢げだったし、結衣ちゃんがつまらなかったって…そもそも結衣ちゃんを慰める会なのに、と。貴重なお時間を頂いていたのに、申し訳ない」


持っていたスマホが手から滑り落ちそうになる。

それを言っていたのは、私じゃない。一言一句、ユリアのセリフだ。


「え…?」
「結衣ちゃんって、ユリアちゃんと昔から仲いいんだっけ?」

動揺する私に、幸太が優しく問いかける。

「学生時代のカフェのバイトが一緒で…」
「そっか、じゃあ知らないか。僕さ、前に彼女とその周りの子と飲んだことがあるんだけど。あの子、あまりいい噂を聞かないから気をつけた方がいいかも」
「どういうことでしょう…」

どうしよう。胸がドキドキしてきた。

「僕の女友達が、何人か被害に遭っていて。男の僕には分からない世界だけど、ユリアちゃんと一時期仲よかった子達って次から次へと消えていったんだよね。だから気をつけてね」

あくまでも柔和な表情の幸太だが、その瞳の奥に、私に対する警告が含まれている気がした。

—消えていった…??

すっかり日が短くなった東京の街。17時を過ぎ、いつのまにかあたりは暗くなっている。不意に悪寒がして、私はまるで何かから逃げるかのように家路を急いだ。


▶前回:「皆の前で、恥ずかしいコト言ってごめん…」男たちとの食事中に、女が逃げ出したくなった理由

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明らかに様子がおかしい女友達。結衣は少しずつ距離を置こうと試みるが…。


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